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気候変動サミットと「温暖化論」の破綻 モンスター化したIPCC
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/13417
2019年10月4日 長周新聞
「ニューヨークの国連本部で開かれた気候行動サミットは大きな成果を出せずに閉幕した。各国の削減行動は限られ、温暖化対策の国際枠組み“パリ協定”の目標達成の難しさがあらためて露呈した」(『日経』9月25日付社説)。大手マスコミはこうした状況を憂い、国連が演出した大人たちを叱咤するスウェーデンの少女を大きくとりあげ、各国政府が脱炭素に向けて舵を切るよう論陣を張っている。それは、「人為的CO2による地球温暖化」は科学者の大多数が認めている定説であり、それに異論をとなえるものは科学を否定するものだという調子である。
IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)は、この気候サミットにあわせて特別報告書を発表した。報告書は、このまま有効な対策を講じず温室効果ガスを排出し続ければ、今世紀末には20世紀末ごろから海面が最大1・1b上昇し、2300年には最大5・4b高まると警告している。また、巨大台風や高潮、豪雨などのリスクも増大すると並べている。
マスメディアは、これが公表済みの約7000の論文を基に、日本の研究者4人を含む36カ国計104人の専門家が執筆にかかわって作成されたものであり、確固とした科学的な裏付けがあることを強調している。しかし、現実には元米副大統領ゴアらが先頭に立ってIPCCが発足し「地球温暖化の脅威」をふりまいて以来、地球の気温は横ばいのままである。
IPCCが公表した1990年8月の第一次評価報告書は、今後も温室効果ガスの規制がなければ地球の平均気温は10年間当り0・2〜0・5℃上昇し、2025年までに約1℃、21世紀末までに3℃の上昇が予測されると記し、IPCC初代委員長は「2020年にはロンドンもニューヨークも水没し、北極圏のツンドラ帯は牧場になる」と予言していた。
だがその後30年間の気温上昇は、世界のCO2排出量が中国などの工業化で激増してきたにもかかわらず0・2〜0・3℃。10年間当りに換算して0・07〜0・1℃である。IPCCの予測がまったくはずれていたことを示すとともに、CO2による人為的温暖化説の根拠を根底から揺るがすものだといえる。
温暖化の横ばい自体はIPCCも認めていることであり、科学者の定説は次のようなものである。地球の気温の温暖化は、1700年ごろの寒冷期から徐除に進行してきた。しかし、IPCCがいうような二酸化炭素の排出の影響による急上昇は起こっていない。権威ある複数の機関が発表する地上気温も、衛星観測気温も横ばいのまま推移している。太陽活動の影響で寒冷化するという学説が増大している。
ちなみに、ヒートアイランド現象(都市部での気温上昇)による暑さが続く日本においても、衛星観測による大気温は、過去35年間まったく上がっていない。
こうしたことから、専門家の間でIPCCの内実−−「科学」を標榜する政治的ロビー集団−−についての研究、批判があいつぎなされてきた。
中立になり得ぬIPCC
IPCCは1988年に世界気象機関と国連環境計画により設立された政府間組織で、もともと研究機関ではない。地球温暖化に関する評価(アセスメント)を世界に、とくに政策担当者や政治家に伝えることを目的とする広報機関である。
深井有・中央大学名誉教授(物理学)は、『気候変動とエネルギー問題』(中公新書)で、IPCCはその活動規範として「人間が起こす気候変動(=温暖化)のリスク(=脅威)の科学面と影響、対策を考える」と謳っているように、「温暖化は人類への脅威」を大前提とする団体であることを強調している。
IPCCの報告書は中立でなくてはならないとされている。また、内容を包括的で公正、信頼性の高いものにするために多くの国の科学者が執筆に携わり、各部会の統括責任者がとりまとめるまでには専門家による査読を何度も受けることになっている。たとえば第4次報告書(2007年)では、3000人以上の専門家の協力を得て130カ国以上の450人の科学者が執筆に携わったことが強調された。
深井教授は、「しかし、実際には、もともと温室効果ガスによる地球温暖化を前提として作られた組織であり、科学的根拠については中立ではありえないものだった。気候変動の自然要因を認めることは、自己の存在理由を否定するから許されるものではなかった。IPCCが人為的温暖化の防止という目標に向けて一直線に走り出してブレーキが効かなくなったのは、この性格上、当然の成り行きだった」と指摘している。
第4次報告書には、温暖化が今のまま進むとヒマラヤ氷河は2035年までには消失し、下流域は重大な水不足に陥るだろうと書かれていた。専門家ならだれでも気付く誤りが「何度も受けた」はずの査読をすり抜けて印刷された。この説の出所は、環境保護団体のパンフレットであること、ほかにも、科学的裏付けのないパンフレットからの引用が数多く発見された。
ヒマラヤ氷河の問題では、当時のIPCC議長・パチャウリが主宰するインドのエネルギー資源研究所が「ヒマラヤ氷河の消長」をテーマにした研究に多額の研究費を受けていた。その一員の科学者は「2035年消失説が間違っていることは知っていたが、立場上いえなかった」と証言した。IPCCの統括責任者も「間違いには気付いていたが、この方がインパクトがあると思った」と語っている。
嘘やデータ捏造が次々露呈
こうして、少なからぬ気候学者が二酸化炭素削減という目標に奉仕する役割を担わされた。「先に結論ありき」という逆立ちした「科学」は無理な作業をくり返したあげく、その破綻を覆い隠すことすらできなくなった。IPCCの科学部門を統括する「公正な権威ある機関」の中枢にいる科学者が気候温暖化を印象づけるために、データねつ造や都合の悪いデータの公表を抑えるためにやりとりしたメールが大量に流出した(クライメートゲート事件、2009年)。IPCCの元幹部でカリフォルニア大学のシュナイダー教授(2010年没)が記者会見で、「国民をその気にさせるには、あやふやな部分は隠し、国民が怖がりそうな話だけをメディアにズバッといわせるんです」と正直に吐露したこともあった。
温暖化によって、ハリケーンの発生頻度が高くなるという報告書の主張も、米国・国立ハリケーンセンターのランドシーらの研究によって完全に否定されている。この根拠も査読つき論文とは程遠い災害保険会社のための内部資料だった。
ランドシーはIPCC報告書の作成に携わっていたが、主筆が根拠のない記述を削除することに同意しなかったので、辞任した。
温暖化による雨量の減少で北アフリカの食料生産が50%減少するという記述や、アマゾンの熱帯雨林の40%が影響を受けるという記述も根拠がないことも告発されている。温暖化による海水面の上昇でオランダの国土の半分以上が海面下になったという記述についても、オランダ政府が「今も昔も26%程度あった」として訂正を求めている。深井教授はこうしたことから、「IPCCがモンスター化したのは経済原理、平たく言えば地球温暖化は金儲けの種になる−−それも個人のレベルではなく国のレベルで商売になると判断されたからに違いない」とのべている。
科学技術振興機構の佐藤靖フェロー(現新潟大学教授、科学社会学)は『科学的助言』(東京大学出版会)で、IPCCの大きな特徴として「科学者だけの組織ではなく行政官も入っている」ことをあげている。「しかも、それらの科学者や行政官は、先進国、発展途上国双方をバランスよく含む各国政府によって指名される。したがって、IPCCから政治的影響を排除することは最初から意図されておらず、むしろ科学的見解に政府が一定の形で関与することにより参加国が受け容れやすいものになり、また各国政府が無視できないものになる仕組みになっていた」とのべている。
第1次報告書作成の作業部会にかかわった西岡秀三氏(国立環境研究所)は、次のように記録している。
「要約原案を一行一行検討し要約づくりをする部会は、まさに科学を政策に伝える場である。ところがここでは科学の論理は通用しない。出席者は政府を背負う外交官であり、ロビイストであり、NGOである」。そして、予見をもった政治的発言や議論の引き延ばし戦術がまかり通るなかで、政策決定者向け要約が妥協の産物として合意された。「このような状況でなされる要約づくりが科学者の意見を正しく伝えているかには相当の疑問があるが、なんとか議長が踏み耐えている状況である。土足で神殿に踏み込まれた感じである。部会に参加した多くの研究者が、嫌気がさして二度とIPCCには出ていかないと宣言している」。
「京都議定書」にかかわって気候変動交渉にとりくんだ経験を持つ有馬純・東京大学公共政策大学院教授(国際環境経済研究所主席研究員)も、途上国の交渉官や環境NGOが「“地球とは交渉できない”“科学とは交渉できない”“だから2度(あるいは1・5)目標は絶対だ”と、あたかも自分たちが科学を体現しているかのような発言をするのをしばしば聞いた」ことを回想。「先進国は2020年までに90年比25〜40%削減すべき」という途上国やEUの主張も「科学が(IPCCが)求める数字」であるとされてきた。しかし、温暖化のメカニズムやその影響について完全に解明されていない以上、上記の議論は特定の学説を根拠とした政治的発言であり、「科学による判決」ではなかったと断言している。
そして、第5次報告書第二作業部会の総括責任執筆者の一人、リチャード・トール・サセックス大学教授が「IPCC報告書は温暖化の危機感を過剰に煽っている」との理由で報告書執筆者の名前から自分を削除することを求めて話題になったため、同教授を訪ねて聞いたことを紹介している。ドール教授は次のように語っていたという。
「最近のIPCCは執筆者の選考過程にバイアスがあり、集団思考に陥っている。温暖化問題に懐疑的な学者はもともとIPCCに参加しないし、各国政府が執筆者を推薦するため、どうしても各国政府の立場を保証する執筆者になりやすい。もちろん中にはIPCCの主流派と異なる考えの学者もいるが、“招かれざる客”になるため、居心地が非常に悪く、離れていく人も多い。この結果、ますます似たような考え方の人人がIPCCに集まることになり、自分たちの確信を相互に補強しあうことになる」。
有馬教授は、「“IPCCは温暖化のリスクを過剰に強調する一方、温暖化のポジティブな側面(例えば寒冷リスクの低減等)を過小評価している”というのがトール教授の議論である。彼は自分のブログの中で“さしたる根拠もなく、温暖化による貧困、紛争、移民、死のリスクを黙示録の四騎士のように煽り、マスコミがそれをさらに助長している”と警鐘を鳴らしている」ことも紹介している。
専門家のなかには、IPCCが2007年にアメリカのアル・ゴアとともにノーベル平和賞を受賞したことをめぐって、「科学的というより政治的な組織であるということが改めて明確になった」と指摘する声もある。
こうした批判を払拭するかのように近年、「人為的地球温暖化」説は「97%の科学者が合意している」などと、まことしやかにふりまかれてきたが、これも明確なでっちあげであることが暴露されている。このことも含めて、大手マスコミの異常な偏向報道に鋭い目が向けられている。
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