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CIAの協力者が少なからず活動している西側の有力メディアが嫌うウィキリークス
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201906200000/
2019.06.20 櫻井ジャーナル
ロシアのニュースサイト「メドゥーサ」の記者、イワン・ゴルノフに対するに刑事訴追を同国の内務省が証拠不十分だとして6月11日に取り消した。ゴルノフは6月7日に麻薬取引の容疑でモスクワ市警察に逮捕され、欧米の有力メディアで話題にされていた。 このケースについて書くだけの情報を持っていないが、ジュリアン・アッサンジが逮捕された際の有力メディアが冷淡だったこととの対比も話題になっている。 アッサンジは4月11日、エクアドル大使館の中でロンドン警視庁の捜査官に逮捕された。アメリカの支配層が隠しておきたい情報を明らかにしてきたウィキリークスを創設したひとりであるだけでなく、看板的な役割も果たしていた。 その彼をアメリカの当局が秘密裏に起訴したのは2010年4月から11年初めにかけての時期だった。2010年4月にウィキリークスはアメリカ軍がイラクで行っている殺戮の実態を明らかにする映像を含む資料を公開している。 その中にはロイターの特派員2名を含む非武装の人びとをアメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターに乗っていた兵士が銃撃、十数名が殺される映像も含まれていた。 こうした情報をアメリカなど西側の有力メディアで働く記者や編集者は明らかにしたがらない。 例えば、1968年3月に南ベトナムのカンガイ省ソンミ村のミライ集落とミケ集落において住民がアメリカ軍の部隊によって虐殺された際、そうした行為を目にしたはずの従軍記者、従軍カメラマンは報道していない。 この虐殺が発覚したのは内部告発があったからである。虐殺の最中、現場近くを通りかかった偵察ヘリコプターのパイロット、ヒュー・トンプソン准尉が村民の殺害を止めたことから生き残った人がいたことも一因だろう。 そうした告発を耳にし、調査の上で記事にしたジャーナリストがシーモア・ハーシュ。1969年11月のことだ。本ブログで繰り返し書いてきたが、この虐殺はCIAが特殊部隊と組んで実行していたフェニックス・プログラムの一環だった。 この秘密作戦を指揮したひとりであるウィリアム・コルビーはCIA長官時代に議会でこれについて証言、自身が指揮していた「1968年8月から1971年5月までの間にフェニックス・プログラムで2万0587名のベトナム人が殺され、そのほかに2万8978名が投獄された」と明らかにしている。解放戦線の支持者と見なされて殺された住民は約6万人だとする推測もある。 ソンミ村での虐殺はアメリカ陸軍第23歩兵師団の第11軽歩兵旅団バーカー機動部隊第20歩兵連隊第1大隊チャーリー中隊の第1小隊によって実行された。率いていたのはウィリアム・カリー中尉。虐殺から10日後、ウィリアム・ウエストモーランド陸軍参謀総長は事件の調査をCIA出身のウィリアム・ピアーズ将軍に命令する。ピアーズは第2次世界大戦中、CIAの前身であるOSSに所属、1950年代の初頭にはCIAの台湾支局長を務めていた。事件を揉み消すために人選だろう。 第23歩兵師団に所属していた将校のひとりがコリン・パウエル。ジョージ・W・ブッシュ政権の国務長官だ。2004年5月4日にCNNのラリー・キング・ライブに出演した際、彼は自分も現場へ入ったことを明らかにしている。 ジャーナリストのロバート・パリーらによると、パウエルはこうした兵士の告発を握りつぶし、上官が聞きくない話は削除する仕事をしていたという。その仕事ぶりが評価され、「異例の出世」をしたと言われている。 この当時から組織としてのメディアは支配層の宣伝機関にすぎなかった。これも本ブログで繰り返し書いてきたが、そうした機能を推進するためにモッキンバードと呼ばれるプロジェクトを第2次世界大戦が終わって間もない段階で始めている。 日本ではウォーターゲート事件を調査、「大統領の陰謀」を明らかにしてリチャード・ニクソンを辞任に追い込んだワシントン・ポスト紙を崇める人が今でもいるようだが、モッキンバードの中枢にいた4名はアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムである。 ウォーターゲート事件はワシントン・ポスト紙の若手記者ふたりが中心になって取材したが、ボブ・ウッドワードは少し前まで海軍の情報将校で記者としては素人に近く、事実上、取材はカール・バーンスタインが行ったという。 そのバーンスタインは1977年に同紙を辞め、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書いている。CIAが有力メディアをコントロールしている実態を暴露したのだ。ウォーターゲート事件の裏側を明らかにしたとも言えるだろう。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) その記事によると、それまでの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、そのうち200名から250名が記者や編集者など現場のジャーナリスト。1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。 1970年代の半ばには議会でも情報機関の不正行為が調査されているが、それに危機感を抱いた人びとは情報の統制を強化する。そのひとつの結果が巨大資本によるメディア支配。気骨あるジャーナリストは追放されていった。 ドイツの有力紙、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出している。 彼によると、ドイツだけでなく多くの国のジャーナリストがCIAに買収されている。人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開、人びとをロシアとの戦争へと導き、引き返すことのできない地点にさしかかっているというのだ。2017年1月、56歳のときに心臓発作で彼は死亡する。出版されたはずの英語版は市場に出てこなかった。 情報機関がジャーナリストをコントロール下に置く手法はさまざまだが、一緒にコーヒーを飲むようなところから始まることが少なくない。スクープに飢えている記者の鼻先に情報をぶら下げ、秘密保護の誓約書にサインさせる。そうなると情報機関の協力者だ。ワシントンDCあたりの特派員になると、そうした誘惑が待っている。 勿論、それ以上の接待もあり、接待を受けている場面が隠し撮りされて弱みを握られるということもあるようだ。企業にしろ情報機関にしろ犯罪組織にしろ、見返りを期待せずに接待することはない。このようにして取り込まれた記者や編集者にとってウィキリークは目障りな存在だろう。 |
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