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英ガーディアン紙、トランプの訪英「歓迎しない」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/06/post-12260.php
2019年6月4日(火)16時00分 ドニカ・ファイファー ニューズウィーク
英バッキンガム宮殿の外でトランプ訪問に抗議する人々(7月3日) Toby Melville-REUTERS
<人権侵害、環境破壊、懲罰関税によるメキシコいじめ、女性差別......平和と民主主義を脅かすトランプに直接異議を唱えられなければ、イギリス政府がお墨付きを与えたと思われる、と社説で警告>
ドナルド・トランプ米大統領による3日間の公式訪問を前に、イギリス最大手の新聞がトランプを歓迎しないとはっきり明言した。
英ガーディアン紙の編集委員会は、トランプのイギリス到着に合わせて発表した社説で次のように述べた。「トランプ氏は扇動家で、平和や民主主義や地球に対する脅威を象徴する存在だ。イギリスの最も親しい同盟国の、選挙で選ばれた指導者である彼を無視はできない。だが彼とその妻と4人の子どもを女王陛下の賓客とすることは、彼の破壊的な政策や縁故主義、独裁政治を正当化することにもなりかねない」
辞任するが決まっているテリーザ・メイ首相についても次のように辛辣に批判している。「メイ氏が、大統領就任後のトランプ氏と初めて会談する海外首脳になるべくワシントンに駆けつけてから2年半。彼女はトランプ大統領を国賓として迎えるという、あってはならないことを、首相としての最後の行動に選んだ。政治的な判断力の稚拙さや頑固さは、3年に及んだ首相の在任期間を通じた特徴だが、トランプ訪英中の3日間に展開される光景は最後の醜態を演出するものになるだろう」
■英国内の右翼が勢いづくリスク |
数多くの抗議デモも計画されている。2018年のトランプ訪英時にも大規模なデモが行われた。当時、トランプを赤ん坊に見立てた巨大バルーンが飛ばされたが、これを今回も飛ばす計画だ。ロンドンのサディク・カーン市長が、デモを計画している「ストップ・トランプ連合」に対して、6月4日に国会議事堂前の広場で数時間、飛ばす許可を与えたのだ。イスラム系のカーンはかねてからトランプに批判的で、トランプもイギリスに到着する直前にカーンは「負け犬」とツイートした。
「女王が米大統領を国賓として迎えるのは、トランプ氏で3人目。あとの2人はジョージ・W・ブッシュ氏とバラク・オバマ氏だけだ。トランプを国賓として招いたことはとんでもない間違いであり、イギリスが(EU離脱の混迷で)政治的危機のさなかにある今、その計画を遂行したことはひどく無責任な行為だ」と、社説は批判した。
エリザベス女王をはじめとする英王室メンバーと会見することで「トランプのエゴがさらに肥大する」ことも心配だが、トランプ訪英の「最大の危険」は、彼がイギリスに姿を現すことで、英国内の右翼や「反民主主義」の運動がこれまで以上に人々の信用を集めることになりかねないことだ、とも述べている。
「実際、既にそうなっている」と、社説は続く。「EUとの今後の離脱交渉に(ブレグジット党党首の)ナイジェル・ファラージを加えるべきだとするトランプ氏の発言は、既に大々的に報じられている」「保守党の次期党首には、EUからの『合意なき離脱』
を支持するボリス・ジョンソン前外相がふさわしいとも言った」
右派ポピュリストのファラージは、トランプと比較されることが多い。2人は、トランプが米大統領選中だった2016年にアメリカで会っており、トランプは6月2日付のサンデー・タイムズ紙に掲載されたインタビューの中で、EUからの離脱交渉にファラージュを起用しないのはイギリスの「間違いだ」と述べている。
トランプは、イギリスのもう一人の右派政治家であるボリス・ジョンソンのことも称賛しており、サン紙に対して、ジョンソンは6月7日に保守党党首を辞任するメイ首相の「素晴らしい」後任になるだろうと語っている。
■「害」は国内外に広がると警告 |
社説ではまた、ロバート・ムラー米特別検察官が5月29日にロシア疑惑の捜査に関する声明を発表したことを受けて、大統領の弾劾をめぐる緊張が高まっていることや、トランプが今も中国と貿易戦争を繰り広げていること、メキシコからの輸入品に懲罰関税を課すと発表したことや、ルイジアナやアラバマなど複数の州で可決された妊娠中絶禁止の州法を支持するトランプの姿勢などを引き合いに出して、次のように警告した。
「憲政上の危機に直面しているイギリスの政府が、外国の内政に無責任な干渉をする人物を招くことは、自傷行為に等しい。だがトランプ氏を喜ばせることでもたらされる害は、国内外に広がっていくだろう」
社説は最後に、メイ首相らに対して「トランプに直接、異議を唱えるべきだ」と主張。さもなければ「女性の権利への攻撃や近隣諸国へのいじめにお墨付きを与えたように思われる危険がある」と警告した。
(翻訳:森美歩)
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