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「人間の肥料化」が合法化されそう、何それ?
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/04/post-12038.php
2019年4月24日(水)16時30分 キャサリン・ハイネット ニューズウィーク
野菜くずから肥料を作る施設(中国山東省) REUTERS
<墓不足や環境への配慮から、「グリーン埋葬」にこだわるアメリカ人が増えている>
ワシントン州のジェイ・インズリー知事がもし、「人体堆肥化(人間の遺体の堆肥化)」を合法化する法案に署名すれば、アメリカの歴史に名を残すかもしれない。インズリーは2020年大統領選で民主党の指名獲得を目指す候補のひとりであり、気候変動対策を選挙戦の目玉に位置づけている。
火葬や従来の埋葬に代わる環境にやさしい選択肢と宣伝されてきたこの法案は、2019年5月に発効する見込みだ。法案の支持者たちは、この埋葬方法により、環境志向の選択肢を提供し、葬儀業界に革命を起こせると期待されている。では人体堆肥化とは、いったいどういうものなのか? どのような仕組みなのだろうか?
このコンセプトが注目を浴びる大きなきっかけをつくったのが、人体堆肥化の非営利組織(NGO)「アーバン・デス・プロジェクト」と、公益会社「リコンポーズ(Recompose)」を立ち上げた起業家で建築家のカトリーナ・スペードだ。
スペードの狙いは、遺体が埋められたあとに起きる自然の分解プロセスを、従来の埋葬のような広い土地を使わずに再現することにある。AP通信によれば、リコンポーズは既存の農業技術に発想を得て、木のチップや牧草やわらの助けを借りて、人間の遺体を「やさしく」土に還すことを目指しているという。
■細菌の力を引き出す
具体的には、遺体を大きな円筒形の容器に入れ、前述のような有機物で覆う。酸素供給量を制御して分解を加速させれば、遺体は数週間で、約0.76立方メートルの堆肥になると、NBCは伝えた。
ワシントン州立大学の研究チームは2018年、小規模な試験プロジェクトを実施し、献体された遺体7体でこのプロセスをテストした。
「ワイアード」が2016年に伝えた初期の設計は、複数の遺体が大きなサイロ状構造のなかを通過しながら、分解が進むに従って地面に近づいていくというもの。この多層階式の「リコンポジション(堆肥化)センター」は複数の遺体を収容でき、遺体は木のチップで仕切られる設計だった。
スペードは2018年11月、ライフスタイル・メディア「マインド・ボディ・グリーン」でこの人体堆肥化プロセスを説明した際に、次のように述べている。「要は、自然に本来の仕事をさせるのが私たちの仕事だ。細菌が繁殖しやすいよう環境を整え、木のチップなどの炭素に富んだ材料と水分を使って遺体を分解しやすくする」
ワシントン州立大学の研究者リン・カーペンター・ボッグスとともにこのアイデアを練り上げたスペードは、その他の環境志向の葬儀団体の支援も受けている。「グリーン埋葬協議会(Green Burial Council:GBC)」のリー・ウェブスターは本誌に対し、スペードのコンセプトは地球にとっても人間にとっても「ウィン・ウィン」だと語った。「地方でも墓地が満杯になりつつある現状を考えれば、場所の確保、利用のしやすさ、環境への影響、遺族の感情的なニーズにしっかり対応できる、代替的な手法を開発する必要がある」とウェブスターは話している。
GBCが推奨する「グリーン埋葬」は、「生分解を妨害しない」柩や布を用いて、3.5〜4フィート(1〜1.2メートル)の深さに埋葬する方法だという。また、遺体防腐処理用に化学物質を使うことや、墓地の下の地面を支えるためにしばしば使われるコンクリートや金属のアーチに反対し、二酸化炭素排出量の多い火葬にも異を唱えている。
「グリーン埋葬が不可能なところでは、遺体の堆肥化はきわめて理にかなっている。堆肥化は、グリーン埋葬の分解プロセスを再現するのに加えて、有益な物質を生み出す。つまり、肥料だ」とウェブスターは言う。
「死に意味を求める人間古来の習慣を、私たちは思い出すべきだ」
(翻訳:ガリレオ)
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