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クィア・ベイティングは搾取か、それとも進歩の表れか 
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投稿者 うまき 日時 2019 年 4 月 11 日 18:48:14: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

クィア・ベイティングは搾取か、それとも進歩の表れか
2019/04/11
BBC News

ホリー・ホンデリッチ、BBCニュース、ワシントン
アメリカの歌手アリアナ・グランデが、ある曲で自分はバイセクシャルかもしれないとほのめかし、同性愛者のファンを惑わせたとして批判を浴びている(一部敬称略)。
ヴィクトリア・モネとのコラボレーションによる新曲「Monopoly」は、発売からわずか1日でiTunesのランキングトップに躍り出た。
しかし、この曲でグランデが「女性も男性も」好きかもしれないと歌ったことで、いつも以上に世間の厳しい注目を浴びることになった。
バイセクシャルの表現だと称賛するファンもいるが、これをクィア・ベイティングだと批判する声もある。クィア・ベイティングとは、性的指向の曖昧さなどをほのめかして世間の注目を集める手法だ。
アリゾナ州立大学のジュリア・ヒンバーグ教授(映画・メディア研究)は、「クィア・ベイティングは新しいものではないが、その影響はこれまで以上に力強くなっている」と指摘する。
ヒンバーグ教授をはじめとする専門家は、クィア・ベイティングは2010年代初頭に、映像作品などを愛するファンから生まれたと説明する。
アメリカのCWテレビジョンネットワーク発のテレビドラマ「スーパーナチュラル」や「The 100 ハンドレッド」、BBCの「シャーロック」といった作品のファンは、作品の中でほのめかされる登場人物のLGBT的な関係性について、Tumblrなどのソーシャルメディアで議論してきた。
「こうした作品は視聴者を誤解させている」と、米オハイオ大学のイヴ・ウン教授(メディア・女性・ジェンダー研究)は指摘する。
「視聴者はミスリードされたと感じる。(中略)納得のいく物語が展開されると思ったのに、そうはならないのだから」
こうした脚本が計算づくの戦略だとの批判が出ている。
「クィア・ベイティングはさまざまな層の視聴者をターゲットにするため、保守層を刺激しない一方で、LGBTQの視聴者に対しても信号を発している状態だ」とヒンバーグ教授は指摘する。
グランデには同性愛者の権利を支持してきたという評判がある。だが今回の件では、同性愛関係をちらつかせる言動にも関わらず、それらが意味するものをはっきりと認めてはいないのだ。グランデは前述の「Monopoly」だけでなく、最近のミュージックビデオでは女性とのキスをほのめかしている。
「私たちの(同性愛者という)アイデンティティーは、ポップカルチャーの中で何度も何度も、強烈なアイデンティティーを形作るために使われてきた」とヒンバーグ教授は説明する。
ヒンバーグ教授は、アイデンティティーをもてあそぶことは攻撃になると付け加えた。
「私たちをからかわないでほしい、私たちを利用しないでほしいという思いがある。安っぽいマーケティングツールのように思えてしまう」
最大の懸念は、ゲイカルチャーが商品化されていることだとヒンバーグ教授は話す。メディアでLGBTの存在感を示したい人たちに楽曲を売ったり、視聴率を上げたりする戦術として使われている。
しかしそれは注目を集めるための釣り餌で、実態が伴わないのだ。
一方で、クィア・ベイティングの存在そのものが、メディアにおける同性愛関係の取り扱い方が改善されてきたことの表れだという意見もある。
ウン教授は、「LGBTQの存在感が増してきたからこそ、プロデューサーがクィア・ベイティングを使っているという批判が生まれた」と説明する。
「これは進歩だ。10〜15年前にグランデのような大物歌手がそんなことを言い出したら、大半の女性ファンは悲鳴を上げて驚いただろう」
過去に性的指向のあいまいなアーティストが、こうした世間の目をかわしてこれたのはそのためだとウン教授は指摘した。
デイヴィッド・ボウイやエルトン・ジョン、マドンナの性的指向は、現在と同じような形で詮索されてこなかった。
「LGBTQのオーディエンスはメディアでの存在感に飢えていたし、こうしたスターたちがそれを提供していた。しかし私たちは今、違う時代を生きている」
ウン教授は、クィア・ベイティングは文脈によるものだと指摘する。
また、クィア・ベイティングをめぐる不満は、視聴者がメディアの同性愛表現に求めるものとポップカルチャーが実際に提供しているものの「ミスマッチ」が原因で起きているという。
同性愛の取り扱いが増え、それに慣れた視聴者は、そうした関係がより尊重された、より意味のある表現を求めている。
クィア・ベイティングで批判されたのはグランデだけではない。イギリス人歌手リタ・オラは昨年リリースした「Gilrs」で、女性同士の性的関係を歌って批判を浴びた。
オラはこの批判にすぐさま反応し、ツイッターで謝罪すると共に、自分はバイセクシャルだとカミングアウトした。
オラの声明、特に自分の性的指向を明らかにしたことは、クィア・ベイティングという考え方についての力強い反論となった。
国連人権委員会のサラ・マクブライド報道官は「どんな方法であれ、誰かに性的指向やジェンダー・アイデンティティーを表現することを強要できない」と指摘した。
「それが最も重要な事実だと思う」
「Monopoly」発売後、グランデは性的アイデンティティーをはっきりさせろという世間からの声に言及した。
「今も昔も、そうする必要はないと思っている」とグランデは話している。
しかし専門家は、確かに性的指向の表現は監視されるべきではないが、ものごとにラベルを付けたくないという現代的な嫌悪感にも問題があると指摘した。
ウン教授は、「それはどこか、LGBTQというアイデンティティーを抹消してしまっているように感じる。同性愛者は、自分たちをレズビアンやゲイと呼ぶ権利のために戦ってきたのに」と語った。
こうした流動性を好む傾向は、プロデューサーやアーティストに同性愛アイデンティティーの人気の利用を許していると同時に、同性愛コミュニティーに向けられる差別や虐待を回避させる一因にもなっている。
何よりも、クィア・ベイティングをめぐる議論はメディアがLGBTというアイデンティティーの定義や理解をどれだけ取り扱っているか、その規模を示すものかもしれない。
マクブライド氏は、「取り扱われること、それ自体が重要だ。クィアな若者にとって(中略)自分たちのアイデンティティーが舞台や音楽、映画に反映されているのを見ることは、人生を変える出来事というだけでなく、命を救う出来事にもなりえる」と話した。
さらに、グランデの曲などがこうした議論を引き起こすことで、メディアでのLGBTQの取り扱われ方も改善するのではないかとマクブライド氏は指摘した。
「人々に勇気と安らぎを与えられる芸術、人々に何かを教えられる芸術(中略)は力強いので」
(英語記事 Queerbaiting - exploitation or a sign of progress?)
提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-47877196
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15897
 

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