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ロシアは儲かる! ジェトロ調査で明らかに
黒字率は過去最高、縮小・撤退も念頭にない企業が大半
2019.4.11(木) 梅津 哲也
ロシアに浸透する日本ブランド(写真:ジェトロ)
旧聞に属する話で恐縮だが、筆者が勤める日本貿易振興機構(JETRO)では毎年、在外日系企業向けにアンケート(活動実態調査)を行っている。
ロシアにおいては開始以来7回目となる調査を昨年10〜11月にかけて行った。
一般的に、ロシア市場の攻略は難しいと思われがちだ。しかし、気をつけるべきポイントに留意すれば意外に儲かる市場であることが、アンケートの結果から見えてくる。
黒字率は過去最高
今回のアンケート結果の特徴は、「ロシアは儲かる市場であることがいよいよ明らかになった」ことだ。
2018年の営業黒字を予測する回答企業は全体の72.8%。それまで最高だった2017年を6.5ポイント上回り、過去最高を更新した。
営業黒字見込みが底だったのは2015年。
2014年末の原油価格の暴落とそれに伴うルーブル為替レートの下落のほか、EUや米国などが2014年に発動したロシア向けの経済制裁措置、それに対するロシアの対抗措置(EUなどからの食品などの輸入禁止)が背景にある。
その後はロシア経済の安定・回復とともに、在ロシア日系企業の景況感も回復、それとともに黒字を見込む日系企業も増えていった(下の図)。
2018年は実質GDP(国内総生産)成長率が1.9%とそれほど大きな回復ではなかったが、消費動向を示す小売売上高は前年を1.6ポイント上回る2.9%増と、それなりに好調を示したことが大きい。
国内調達の進展も黒字化に貢献
改善した要因として最も多く指摘されたのは「現地市場での売上増加」。
6年連続のトップとなった。特に非製造業では20.2ポイント増加となり、市場の回復を裏づける結果となった。
回答企業からは「販促強化などによる市場回復への積極的な対応が売上増に貢献した」などの声が聞かれた。
ロシア政府が進める輸入代替(注)政策も、黒字比率の向上に貢献したとみられる。製造業では「調達コストの削減」を営業利益が改善する理由に挙げる企業が3割となった。
ロシア国内での技術力の向上、生産品目の多様化などが国内からの調達を促した可能性がある。
制裁、付加価値税引き上げへの懸念じわり
2019年の状況についても比較的明るい見通しだ。
2019年の営業利益見通しは、「改善」あるいは「横ばい」との回答が前回調査(2017年10〜11月実施)より減少したものの、依然として8割を超えている(前回調査は両者で91.3%)。
営業利益見通しの改善要因は、「現地市場での売上増加」が最も多く、8割を超えた。多くの企業は市場拡大が続くと期待してるようだ。
このほか製造業では、「生産効率の改善」や「輸出拡大による売上増加」も改善要因として挙がる。
その一方、「現地政府・他国政府の政策による影響」を懸念する声も目立った(製造業、非製造業ともに回答企業の4割超)。
世界的な保護主義や米国による対ロ追加経済制裁の影響を懸念する声のほか、ロシア政府が2019年1月に実施した付加価値税(VAT)引き上げへに対しても慎重な見方が示された。
縮小・撤退は念頭になし
このような状況を背景に、将来の事業展開にもやや慎重な見方が広がっている。
今後1〜2年の事業展開を「拡大」と回答した企業は前回より7.4ポイント減の53.5%。非製造業では前年比10.8ポイント減少し53.1%に。全体で「現状維持」が8.6ポイント増加し、事業拡大への慎重な姿勢が伺える。
その一方で、製造業は「拡大」が前回より4.5ポイント上昇し54.5%と製造業全体の過半数を超えた。「縮小」と回答した製造業は、前回調査に引き続きゼロとなった。
市場からの縮小・撤退を考える企業の少なさもロシアの特徴だ。
ジェトロは同様の調査をロシア以外の地域(北米、中南米、欧州、中国、ASEAN=東南アジア諸国連合、中東など)でも行っているが、どの地域も「縮小・撤退」が3〜5%、国によっては高い所は7%を占める。
ロシアが日本企業にとって比較的新しい市場であることを差し引いても、ロシアで活動する日系企業の「縮小・撤退」見通しの少なさは驚異的だ。
課題は本社とのギャップの克服
その一方、日本の本社の認識は異なるようだ。
ジェトロは2018年11月〜2019年1月にかけて別の調査を行い、海外で事業展開をする企業の本社に対して各社の海外展開の取り組みについて聞いた。
そこでは、「海外で事業拡大を図る国・地域」に占めるロシアの割合は、製造業で4.5%、非製造業で3.6%にとどまる。
世界的な景気減速、保護主義などの懸念からアジア以外の新興国は全般的に低い数字となっているが、ロシアに着目した場合、日本の本社サイドとロシアの現場との温度差が見えてくる。
海外事業を世界的に俯瞰して見なければならない本社としてはロシアだけに目配りできないという事情はあるかもしれないが、「ロシア側当局との交渉より本社の説得に骨が折れる」と嘆く現地駐在員の声も聞く。
本社サイドの認識が少し変わるだけ、現場との認識ギャップの差をほんの少し埋めるだけで、実は日本のロシア・ビジネスは状況が大きく変わる可能性があるのではないか。
市場拡大で競争が激化
筆者は手放しでロシア市場が良いと言うつもりはなく、また何も問題がないとも言うつもりもない。ハードルが低くなりつつあるとはいえ、ロシアでビジネスも他国と同様、留意すべき点は存在する。
留意すべきは、第一に他社との競合の激化。
儲かる市場であれば参入企業が増えるのは当然のこと。投資上のリスクの項目では、「競合相手の台頭(コスト面で競合)」が前回より5.2ポイント上昇し50.9%で最多となった。
日系企業同士の競合もさることながら、地場企業との競合も少しずつ増えている。今回の調査では、地場企業が競合先と回答した企業は前回から3.4ポイント上昇し20.1%となった。
通関手続きではいまだ及第点に届かず
このほか、貿易制度面では「手続きの煩雑さ」を挙げる企業が依然として多く(52.6%)、次いで「通関に時間を要する」が34.2%となった。
ロシア税関当局は通関制度改善に取り組んでいるが、今回の調査からはその変化を肯定的にとらえる声は少なかった。
通関制度の改革には「変わらない」がほとんどの項目で過半数を占め、実感としてはいまだ不十分、及第点には届かないと感じる企業が多いようだ。
他方で、これだけビジネス上の障壁がありながらも3年連続で営業黒字を計上する日系企業が増えているということは、やはりロシア市場の潜在性を示すものであろう。
存在するリスクを適切に評価してビジネスに取り組むことで、これまでロシアに取り組んだことがなかった企業のフロンティア市場にもなり得る。
中小企業で20の成功例
ロシア市場が「儲かる市場」であることは、ロシア国内の日系企業だけでなくロシアとのビジネスを行う日本国内の中小企業にとっても同じことだ。
その一例を示そう。
ジェトロでは2017年以降、新たにロシア・ビジネスに取り組む中小企業向けに、ロシア・ビジネス専門家による個別支援を行ってきた。
この結果、20に上る中小企業のロシア向け新ビジネスが生み出された。品目も、果物や食品、日用雑貨から、機械部品、水産関連設備と幅広い。
これまでロシア市場と言うと何となく不透明で気後れしていた企業も多いかもしれない。しかし、この2年でロシアは中小企業にとってもターゲットとなる市場であることが分かってきた。
ロシア市場は、多くの日本企業にとってはいまだイメージがわきにくい地域だ。しかし、中に入ってみると実は見える風景は違ってくる。
今回のアンケート結果は、その一端を示していると筆者は考えている。
(注)輸入代替:国内で使用または消費される製品・商品を輸入品から国産に切り替えようとするもの。それまでロシア向けにその製品を輸出してきた企業にとっては打撃となるが、国内での生産設備や生産技術を輸出できる企業、ロシア国内に生産拠点をもつ企業にとっては新たなチャンスにもなり得る。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56059
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