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「支配権を取り戻す」ブレグジットの妄想
大きな世界の中の小さな島国の現実――マーティン・ウルフ
2019.4.1(月) Financial Times
「裏切りをやめろ」 英EU離脱、当初予定日迎え賛成派怒り
英ロンドン中心部で開かれたブレグジット賛成派の集会に集まった人々(2019年3月29日撮影)。(c)Daniel LEAL-OLIVAS / AFP〔AFPBB News〕
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年3月27日付)
筆者が今いる北京からは、英国は小さく見える。
また、唖然とするような国家的自傷行為に及ぶ狂人たちの手に落ちた国のようにも見える。
だが、これは錯覚だ、とブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)支持派は言うだろう。英国は「支配権を取り戻す」のだという。
スローガンは秀逸だった。だが、これが何より大きな妄想だった。
支配権は主権とは異なる。EU加盟をめぐる英国の国民投票のキャンペーン中に筆者が論じたように、英国はすでに主権国家だった。
もし望むのであれば、投票でEU離脱を決められた。そして実際に離脱を決めたが、すぐさま、確かに英国は主権国だが、あまり力がないことを思い知らされた。
しかし、支配権とは要するに力の問題だ。
国民投票後のEUとの交渉では、博識な人たちが最初から分かっていたように、EUの方が英国より力があることが判明した。
一つの単純な理由から、このような力関係になっていた。EUが英国に科せるペナルティーは、英国がEUに科せるペナルティーよりずっと大きいからだ。
英国が製品輸出の47%をEUに出荷している一方、残るEU諸国の対英輸出は輸出全体の15%にとどまる。EUにとって英国市場は重要だが、英国にとってEU市場は不可欠なのだ。
これが国際関係の厳しい世界だ。
我々は頻繁に、英国は(まもなく第6位になる)世界第5位の経済大国だと言い聞かされる。確かに事実だが、ミスリーディングだ。
世界には、3つの経済的スーパーパワーが存在する。米国、EU(英国を除く)、そして中国だ。
これらの超大国・地域は昨年、世界の国内総生産(GDP)合計の約60%を生み出した。英国の貢献度は3%だ。小国にしては大きいが、小国であることに変わりはない。
では、隣人にして最も緊密な経済的パートナーだった国々と決別しようとしている小さな島国にとって、「支配権」とは何を意味するのだろうか。
一部の分野では、英国は支配権を行使できるだろう。だが、それは常に支配権を行使できた分野だ。
EU予算に対する英国の貢献(純額ベース)は直近の会計年度で、公的支出全体のわずか1.1%だった。
医療、教育、住宅、年金、社会福祉、インフラ、文化、それを言ったら防衛と対外援助についても、EUは英国の支出(または政策)に対して大きな影響力を持たない。
ところが、かなり身近な国内分野では、英国は支配権を失う恐れがある。自国の存続そのもの、だ。
英国という連合王国内における北アイルランドとスコットランドの未来がいずれも、ブレグジットによって不安定になったからだ。
では、英国は一体どこで、現在は持たない支配権を得られるのだろうか。
明白な例は、EUの競争政策、国家補助と単一市場のルールの範疇に入る経済的な規制だろう。
英国がEUから完全に離脱した場合、積極的な競争政策を捨てて、破綻企業を支えることにお金を無駄遣いできるというのは正しい。ただし、なぜこの2つのことを魅力的と見なすべきなのかは、ナゾだ。
英国は、良きにつけ(多くの場合)悪しきにつけ、国内問題については概ね縛りのない支配権を持っている。
だが、英国は開かれた貿易国であり、その規模と限られた資源を考えると、それ以外の国としての未来は存在しない。
英国は、大きな世界の中の小さな国だ。2019年は1860年ではない。ほかの主権国の行動に依存しているのだ。
EUは数々の交渉、特に貿易と気候変動をめぐる交渉で、英国の影響力を高めてくれた。
まず、これが失われることになる。離脱交渉がすでに浮き彫りにした通り、EUの対英政策に対する影響力も失われる。
だが、4億5000万人の人口を擁する玄関先の市場への優遇アクセスを失っても、英国はこれを埋め合わせるために全世界の市場をこじ開けられると言われる。
残念ながら、たとえ世界が好意的だったとしても、そうはならない。EU市場は英国にとって、とにかく不可欠だからだ。
もっと言えば、世界は好意的に対応してくれないだろう。
米国は今、英国がEU離脱後に頼りにする世界貿易機関(WTO)の解体を進めている。
米国とのどんな2国間交渉においても、米国側が非常に厳しい条件を突き付けてくるだろう。最も不快な条件はおそらく、食品基準と健康に関するものになる。
中国は、中国側の条件を英国が受け入れることを要求してくる。ちなみに、保護主義のインドも同じことを求めるだろう。
昔の英連邦のオーストラリア、カナダ、ニュージーランドは友好的かもしれないが、経済的には英国にとって、これらの国の6500万人は取るに足りない存在だ。
要するに、EUの外に出ても、世界環境に対する英国の影響力は強くならない。英国は単独で歩むことになり、自国よりはるかに有力な国を含む他国の意のままになる。
しかも、これですべてではない。
貿易協定は次第に、規制の標準の問題になりつつある。すべての主要国において、規制の標準が国内でますます重要になっているからだ。
英国がEUと自由に貿易することを望むのであれば、これまで加盟国としてやってきた通り、EUの標準を採用しなければならない。
だが、その他の国との貿易にも同じことが当てはまる。相手が米国の場合は特にそうだ。
しかし、データ保護や食品がそうだったように、標準が衝突した場合はどうすればいいのか。
様々な標準に合わせて生産できる製造業にとっては、これはそれほど重要ではない。だが、作業手順が極めて重要なサービス、データの扱い、食品にとっては重要だ。
最終的に、英国は大抵、どこかの経済ブロックの基準に合わせなければならないだろう。通常はEUの基準に合わせることになると筆者は予想する。
それよりまだ大きな問題もある。
2016年以降、自由で民主的な価値観に対する挑戦が格段に明白になった。
ドイツのジグマール・ガブリエル元外相がプロジェクト・シンジケートへの寄稿で論じたように、これはEUにとって危険で意気消沈するような環境だ。だが、英国にとっても、それは同じだ。
かなり単純な話、我々がその展開を目の当たりにしている物語は、真の悲劇だ。
英国は孤独な道を選んだ。しかし、EUも考え直すべきだ。結局のところ、ガブリエル氏が指摘しているように、ドイツ国内でさえ移民に対する見方は多少変わってきた。
これほどひどい愚行を阻止するのは、まだ手遅れではない。
英国はEUを離脱することで、どんな重要な意味においても支配権を得られない。それどころか、失う公算の方が大きい。
次第に敵対的になるこの世界において、我々ヨーロッパ人は団結する必要がある。分別のある人たちが再考を試みる時が来た。
By Martin Wolf
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55962
メイ首相に5月までの辞任要求、政権崩壊辞さずと離脱派−英紙
Steve Geimann
2019年4月1日 12:10 JST 更新日時 2019年4月1日 14:57 JST
首相の下で総選挙なら「壊滅的な敗北」を喫すると与党議員らは懸念
首相案の代案を模索する投票が4月1日に下院で再び行われる
メイ英首相
メイ英首相 Photographer: ADRIAN DENNIS/AFP
メイ英首相が、欧州連合(EU)との離脱合意案の代案として「EUとの関税同盟への残留案」を受け入れたり、5月の欧州議会選挙に英国が参加する方向に与党議員らを動かしたりすれば、そろって辞任すると離脱推進派の閣僚らが申し合わせた。3月31日付の英日曜紙サンデー・タイムズが報じた。
情報源を明らかにせずに同紙が伝えたところでは、閣僚らは3月31日の閣僚会合で、辞職の警告をメイ首相に伝える意向。また、与党保守党の過半数に相当する170人の議員と政権メンバーらは首相宛ての書簡で、ソフトな離脱を受け入れるより「合意なき離脱」を推進するよう求め、5月22日までに辞任するよう首相に要求した。
期限となる4月12日か、それ以後の速やかなEU離脱を求める首相宛ての書簡に10人の閣僚を含む約170人の与党議員が署名したと英大衆紙サンも報じており、ルイス保守党幹事長がBBCラジオとのインタビューで書簡の存在を確認した。
一方、ガーク司法相は3月31日のBBCテレビの番組で、「合意がないまま離脱することが責任ある行動とは思えない」と発言。ラッド英雇用・年金相とクラーク民間企業相も、合意なき離脱を支持するよりは辞任する構えだ。
英紙テレグラフによれば、メイ首相の下で解散・総選挙に突入した場合、保守党が「壊滅的な敗北」を喫すると与党議員らは懸念しているという。
英下院では、首相案に代わる「プランB」の選択肢を絞り込むため、代案を模索する投票が4月1日に再び行われる。これらの代案には、関税同盟へ残留案のほか、2回目の国民投票で賛意が得られるまで離脱協定案の承認も施行もすべきでないという「再国民投票案」が含まれる見通し。
ガーク司法相はBBCテレビに対し、「われわれは議会の決定を非常に注意深く検討する必要があるだろう」と語った。
原題:PM May Faces Cabinet Rebellion on Customs Union, EU Vote: Times
May’s Tories Plan for Election Amid Deep Divisions Over Brexit
U.K. Parliament Seizes Control Amid Brexit Rift in May’s Tories(抜粋)
(保守党幹事長が書簡の存在を確認したとの情報などを追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-04-01/PP9FFO6TTDS001?srnd=cojp-v2
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