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トップニュース2019年3月16日 / 10:08 / 12時間前更新
焦点:裏口入学は割に合うか、米一流大不正事件の「損得勘定」
Ann Saphir and Howard Schneider
3 分で読む
[サンフランシスコ/ワシントン 14日 ロイター] - 大学には行く価値があると専門家も認める。だがそれは、どのような代償を払っても、ということなのだろうか。
子どもを名門大学に入学させるため、入試で不正を働いたり賄賂を贈ったりした疑いで、米国の芸能人や企業幹部ら50人以上が訴追された。高等教育への進学が目的だったとしても、罪を犯しては報われないという教訓を、手痛い形で学ぶことになった。
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彼らは刑事処分を受けることになるだろうが、同事件はまた、次のような疑問を提起している。
親が支払ったカネは、今後子どもが長期にわたって手にするであろう経済的利益に果たして見合うものなのか──。
カリフォルニア州の不動産投資会社ウッドサイド・プロパティー(WP)インベストメンツの共同創業者、ブルース・アイザックソン夫妻は2015年7月、娘をカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にサッカー選手枠で入学させるため、当時25万1000ドル(約2800万円)相当だったフェイスブックの株式2150株を譲渡したことを、刑事告訴状は示している。もし譲渡していなかったら、現在その価値は約37万3000ドルになっていただろう。
夫妻はその後、下の娘をボート競技選手と偽って南カリフォルニア大に入れるために、さらに35万ドルを費やした。
ヘラクレス・キャピタル(HTGC.N)のマヌエル・エンリケス最高経営責任者(CEO)と妻のエリザベスは、娘をジョージタウン大に入学させるため、試験で不正を行い、娘がテニス選手であると偽るために50万ドル以上を支払った疑いで、ニューヨークで逮捕された。
また、当局によると、有力選手でないにもかかわらず、サッカー特待生として女子生徒をイエール大に進学させるために親戚が120万ドル支払ったケースもあるという。
子どもの願書を良く見せるため、共通テストの結果を改ざんするのに1万5000ドルを支払い、訴追された親たちもいる。
こうしたカネはすべて、学費や生活費など他の初期費用の前にかかる。いずれのケースにおいても、犯罪は報われたといえるのだろうか。
<損か得か>
5年前、サンフランシスコ地区連銀のメアリー・デイリー総裁(当時は調査部門のアソシエートディレクター)は、大学費用は長期的に見ると、その費用に見合うことが多いと、論文で主張した。2014年の時点で年間2万1200ドルの費用を支払っていた4年制大学の学生は、38歳までに高卒の人と損益の差がなくなり、定年退職するまでには累計83万1000ドル多く利益を得ることになると結論づけている。
しかし、入学するために120万ドルを事前に使い、その後、学費やら生活費やらで年間7万ドル超かかる前出のイエール大に入学した女子生徒の場合はどうだろうか。卒業までに計148万ドルかかる計算だ。
デイリー氏のアプローチを手がかりに、平均所得に関するより新しい政府データを加味してロイターが分析したところ、年間の学費7万ドルを払った大卒者は、生涯仕事をする中で、高卒者よりも収入が130万ドル多いことが分かった。
だがこの女子生徒の場合、親戚が賄賂を贈ったことで、イエール大を卒業するまでにかかる正規の費用の5倍以上かかったことになるため、全費用は彼女が64歳になるまで回収できないことになる。
裕福な親が関与するケースの多くでは、子どもの将来的な収入は、自分の子どもがイエール大やスタンフォード大で学んでいると自慢できることに比べ、あるいは、有力な一流大卒業者とのコネクションを築けることに比べ、重要ではないようだ。
とはいえ、今回逮捕されていなかったら、子どもが得られる収入だけ見ても「収穫」といえるケースもあった。
UCLAのような費用が比較的安い大学では、前出のアイザック被告の場合、賄賂25万1000ドルと4年間の学費などの費用14万ドルを合わせたコストの全体は39万1000ドル。娘の生涯所得は120万ドル超のプラスとなる。
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一方、テレビドラマ「デスパレートな妻たち」などへの出演で知られる女優フェリシティ・ハフマン被告のような親の場合、子どもの入試の点数をかさ上げするために1万5000ドルしか支払っておらず、「収穫」はより大きくなっていただろう。この子どもが卒業したと仮定すると、高卒者と大卒者の平均年間所得の差である2万2000ドルだけみても、初期の「投資」は容易に回収できるだろう。
<無形資産>
長期的に見ると、一流大卒には高収入のほかにも利点がある。大卒者の方が失業率が低く、仕事の満足度も高い。
トロント大の経済学教授であるフィリップ・オレオプーロス氏は、大卒者の仕事以外での利点を調査。その結果、賃金の違いを考慮しても、大卒者は離婚率が低く、健康状態も良好で、全体的に幸福感を感じているという。
同教授は 「金銭的な利益をはるかに超えている」と述べる一方で、親による不正入学は「極めて不公平」だとして絶対に支持できないと付け加えた。
まだ全容が明らかになっていない今回のスキャンダルは、裕福な家庭の子どもを合法的に優遇することもある大学入試プログラムによって悪化した経済格差を浮き彫りにした。その一方で、学費ローン残高が1.56兆ドルに達していることを、連邦準備銀行のデータは示している。
金銭面だけで見るならば、少なくとも一部の賄賂や不正は、純粋な利益をもたらしたことをロイターの分析は示唆している。ただし、そのカネを賄賂や不正に使わなかったらどのように投資していたかを検討しない場合の話だ。
裏口入学にかかった平均額25万ドルを、長期のフィナンシャルプランナーが広く計算に使っている年率6%で運用した場合、そのリターンは、高校を卒業してから65歳までに390万ドルになる計算だ。
120万ドルの場合、リターンは最大1860万ドルに達する。
次の機会では、母親にただカネをくれと頼んだ方がいいかもしれない。
(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/us-college-scandal-idJPKCN1QW13X
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