★阿修羅♪ > 国際25 > 551.html
 ★阿修羅♪
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
一触即発のベネズエラ、「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨 強国の介入で残るのは 内戦の泥沼と悲惨な暮らし
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/551.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 01 日 15:13:45: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

2019年3月1日 山田厚史 :デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員
一触即発のベネズエラ、「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨
ベネズエラ国旗
Photo:PIXTA
 ベネズエラに緊張が走っている。

 コロンビア国境に集められた「緊急援助物資」の搬入を巡り、マドゥロ政権と反政府勢力が一触即発の状況だ。

「暫定大統領」を宣言したフアン・グアイド国会議長をいち早く支持したトランプ政権は、軍などに反政府勢力側につくように呼びかけ、米国メディアも「人道支援を独裁政権が阻んでいる」と伝える。

「独裁vs民主化」の分かりやすい対立の図式には既視感がある。イラクやリビア、シリア、アフガニスタンなどがそうだった。

 独裁、非人道的と決めつけられた政権に対して、「倒されて当然」という世論作りが行われ、他国の軍事介入が正当化されてきた。

 不都合な政権は武力で破壊する力を持つ国の代表は米国だ。だが介入の後に残るのは、終わりなき内戦と悲惨な暮らし。

 ベネズエラはその瀬戸際にある。

「暫定大統領」の承認で世界が二分
米国は「武力介入」示唆
 二期目に入ったマドゥロ大統領の退陣を求め、グアイド国会議長が「暫定大統領」就任を宣言したのが、今年1月。以来、政権と反政府勢力の対立が激化するばかりだ。

 1月23日、首都カラカスで大規模な反政府集会が開かれ、「大統領選挙は無効だ」と気勢をあげた。集会に彗星のごとく現れたのが35歳のグアイド氏だった。

「野党を排除した選挙で選ばれたマドゥロ大統領には正当性がない」と、自分が「暫定大統領」と名乗りを上げた。

 ベネズエラでは、大統領不在の時、国会議長が暫定大統領に就く、という規定が憲法にある。

 2015年の総選挙で勝利した野党は議員数で上位4党が輪番制で議長を出している。グアイド氏の党は4番目の小党だが昨年12月、国民議会議長になった。

 だがそれまでは、ベネズエラでも庶民になじみのない政治家だった。

 反政府集会の直前にペンス副大統領から電話で指名された、と現地では伝えられている。いわば米国が選んだ「持ち駒」である。 

 グアイド議長は「祖国を解放するため、あらゆる選択肢が用意されている」とツイッターで述べた。

「あらゆる選択肢」という言葉は、トランプ大統領が1月に、「グアイド大統領」を承認、し、「武力介入」の可能性を示唆した時、使った言葉だ。

「暫定大統領」を、その後、カナダやEUなどの先進国、近隣国が承認。日本も2月20日、支持を表明した。 

 米国はベネズエラの国営石油会社に対して米国内の資産を凍結するなどの経済制裁を実施し、マドゥロ大統領へ退陣の圧力をかけ続ける。

 一方で、中国、ロシアなどは内政干渉を禁じる国連憲章を守るとしてマドゥロ政権を擁護し、世界が二分された状況だ。

「喉に刺さったとげ」抜きたい米国
「反米政権」の転覆を狙う?
 米国でベネズエラ問題を担当するのは、共和党右派を代表するペンス副大統領と、安全保障担当のボルトン大統領補佐官だ。

 ボルトン氏は「ベネズエラに5000人派兵」と書かれた文書を、これ見よがしに抱えて記者団の前に現れ、「ベネズエラ軍最高司令部よ、今こそ国民の側につくべき時だ」と訴えた。

 ボルトン氏はハノイでの米朝協議に備え、2月23日から韓国を訪問する予定だった。急きょ取りやめベネズエラ情勢に集中すると外電は伝えた。

 ペンス副大統領も25日、コロンビアの首都ボコダで、グアイド氏と会った。

 中南米は、「米国の裏庭」とされ、多くの国は米国と政治的にも経済的にも深く結びついてきた。そうした地域で、「反米」を掲げるマドゥロ政権は、米国は「喉に刺さったとげ」である。

 トランプ政権は、ベネズエラを転覆する千載一遇のチャンスと見ているからだろう。

 だが政治が混迷するなか、ベネズエラは猛烈なインフレが人々の暮らしを破壊し、1日に約5000人が国境を越えコロンビアやエクアドルに流出しているといわれている。

 グアイド議長は国際社会に人道支援を要請。米軍の輸送機がコロンビアに大量の援助物資を輸送し、国境を開くことを求めている。

 これに対し、ベネズエラ政府は「人道上の問題はない」と主張、国境を開けば米国の軍事介入を招く、と警戒する。

「人道の危機」には、様々な見方がある。

 2017年11月、ベネズエラを調査した国連人権部門の独立専門家アルフレッド・デ・サヤス弁護士は「不満や物不足はあるがベネズエラの状況は人道危機に当らない」と結論づけた。

 その後、インフレは勢いを増しているが、食糧などは配給券が配られており、戦火にさらされたシリアやイラクなどの状況とは全く違う。

 見方が分かれるなかで、米軍が「人道支援」を名目に、ベネズエラ国内に“侵攻”する可能性はないのか。

過去にはCIAが
反チャベスクーデターを画策
 米国には“前科”がある。

 カリブ海を挟んでフロリダ半島の対岸にあるベネズエラは、サウジアラビアをも上回る世界最大の石油埋蔵量を誇る南米の産油国。長く親米政権が続き民主主義も定着していた。

 だが一方で、貧富の差は激しく、裕福な暮らしをする白人層とヒスパニックなどの下層に分断され、石油の恩恵は多くの人には届かなかった。

 1999年、貧しい人々を背に政権を取ったのが、チャベス前大統領である。

 スペイン系、先住民、黒人の血を引き、陸軍士官学校で頭角を現した「青年将校」。一度はクーデターに失敗し投獄されたが、合法的政治運動に転じ1999年の大統領選挙で勝利した。

 医療無料化、農地解放、価格統制など貧困層に手厚い政策を推進した。南米に左翼政権が広がることを恐れた米国の干渉が始まる。

 2002年、CIAの支援を受けた軍がチャベス大統領を監禁。財界人のペドロ・カルモナ氏を暫定大統領に立てた。

 怒った貧困層が大規模なデモを展開し、情勢不利と見た軍が寝返り、チャベスは解放された。カルモナ氏は亡命しクーデターは2日で終息した。

 CIAはチャベス政権発足直後からクーデター工作を始めていたことが分かった。その後も暗殺計画が発覚するなど、米国との緊張関係が続いてきた。

 米国の干渉を受けながら、チャベス政権が社会主義的政策を遂行できたのはオイルマネーがあったからだ。豊富な石油収入がが貧者に手厚い分配を可能にした。

 一方で、取り分が減る大企業や富裕層は反発、海外からの投資は鈍化。国内の供給体制は、脆弱になっていった。

 経済が暗転する引き金になったのが、原油価格の急落だった。

経済制裁は
罪なき人を襲う「焦土作戦」

 石油収入で得た外貨で工業品や生活物資を輸入する経済は、原油安をもろに受け国際収支が悪化した。

 通貨ボリバルは下落、輸入品の価格は上昇し人々の暮らしを直撃した。

 石油企業を国有化し、要職を軍関係者に与えた内政が災いした。市況がいい時は素人経営でもしのげるが、悪化すると経営判断が追いつかない。原油生産は落ち込み、経済を委縮させた。

 2013年にチャベス大統領が死去、副大統領から後継についたマドゥロ氏は、石油一本足経済の弱点をもろに受けた。

 米国との対立で外資導入は進まない。原油の値下がりで資金不足に陥った。

 救いの手を差し伸べたのが中国だった。南米への影響力拡大を目指す習近平国家主席はベネズエラを橋頭保に見立てた。マドゥロ政権は中国マネーに頼り対外債務が急拡大した。

 一方で、ロシアもこの間、「反米政権」にずっと経済支援を続けてきた。

 脆弱なベネズエラ経済がマヒする決定打となったのが、米国による経済制裁だ。

 2015年から米国は、ベネズエラ要人が米国に持つ資産の凍結を開始。マドゥロ大統領の全ての資産まで凍結された。

 17年8月にはベネズエラ政府や国営石油会社が発行する株や債券の購入を禁止。資本市場から締め出した。

 金融制裁が追い打ちをかける。貿易の資金決済が制限され、日用品や医薬品の代金が支払えず、輸入が止まるという事態が起きている。糖尿病薬のインスリンやマラリア治療薬などが入手できない。

 貿易はドル決済がほとんどだが、米国の銀行が決済しないためベネズエラは「兵糧攻め」にあっているに等しい。

「子どもに薬を」などと人道支援を訴える記事が日本の新聞に載るが、医薬品不足の根っこには米国による経済制裁があることを忘れてはいけない。

 資金不足を補うためベネズエラは、中央銀行の輪転機をフル回転させ景気を好転させようとした。その結果が、とんでもないハイパーインフレだ。

 アベノミクスと似た通貨の増発だが、モノがあふれる日本と違い、経済制裁で物資の供給が足らないところで通貨が大量発行されたから、たちまち物価急騰にに火がついた。

 国際通貨基金(IMF)は、昨年7月、「ベネズエラの物価上昇率は年率100万%になるだろう」と推計した。トイレットペーパーを買うのにレンガ3つ分ほどの札束が必要になる天文学的なインフレが起きている。

 石油に頼り切った脆弱な経済や経済運営に不手際があったにせよ、事態を深刻化させたのは、他でもない経済制裁という「兵糧攻め」である。

 そしてその影響をもろに受けたのはチャベス大統領を熱狂的に支持した下層の人々だ。

 命と直結する食料品や医薬品の不足がマドゥロ政権への不信となって現れた。

 今のベネズエラはの状況は、米国にとって首尾上々だろうが、これは「焦土作戦」ではないか。

 気に入らない為政者を引きずり下ろすため、罪のない人たちの生活を破壊し、難民が生ずるような状況を作り出している。

 むしろ米国のやっていることの方が、「人道に反する行為」だと思うが、一方で米国は支援物資を届けるからと、国境を開くよう要求している。

強国の介入で残るのは
内戦の泥沼と悲惨な暮らし

 大国が「大義」を掲げて他国に侵攻したり、影響力を強めようとしたりした例は、歴史上、枚挙にいとまがない。最近のイラクやアフガニスタン、シリアなどもそうだ。

 ブッシュ政権時代、「9・11同時多発テロ」事件(2001年)を首謀したアルカイダのビン・ラーディン氏の引き渡しなどを求めて、米軍がアフガニスタンを制圧した後、首都カブールでカルザイ大統領を取材したことがある。

 大統領邸を警護するのは海兵隊で、周囲は全て米軍で固められ、その中にポツンと大統領がいた。

 好感の持てる人物だったが、亡命アフガニスタン人の中から、米国が選んだのはこういう人か、と納得した。見栄えがよく、好感度の高い外向けの役者である。

 ベネズエラで、無名のグアイド氏に正当性を付与するには「独裁者と戦う民主化のヒーロー」に仕立てるのがいい、ということなのだろう。

 ウォール・ストリート・ジャーナルが「新しい民主的リーダー」とたたえるなど、米国の主要メディアも政権と足並みをそろえ、軍事介入の露払いをするかのような論調だ。

 中南米は、巨大な覇権国家の風圧にさらされ、多くの国は“隷属”を強いられてきた。歯向かえば、「非民主的」の烙印を押され、政権転覆や経済封鎖にさらされる。

 逆らって得はなく、かろうじてキューバ、ニカラグア、ベネズエラが抵抗を続けている。ベネズエラが倒れれば、ドミノ倒しも起きかねない。

 しかも強国が介入したの後に残るのは、終わりなき内戦と悲惨な暮らしだということも、歴史が教えている。

(デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史)
https://diamond.jp/articles/-/195555  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
1. 2019年3月01日 15:14:50 : OO6Zlan35k : L3FGSWVCZWxFS3c=[11] 報告

介入しなくても、既に一般国民にとっては地獄ではある
2. 2019年3月01日 20:45:03 : o4ZxWSpuaU : cmp4OUZBQlJQcUU=[169] 報告
許さねえ 俺の傘から 抜ける奴
3. 2019年3月02日 23:11:13 : R6AUI0aIho : SFZJWGFtVExhdUk=[2] 報告
アメリカはベトナムの失敗から何も学んでいないのだろうか
実は世界各国で反米国家は増える一方
ソ連崩壊冷戦時代以降の方が激化している
中南米もご多分に漏れず
キューバ、ニカラグア、そしてベネズエラと本文とは逆のドミノ倒しが激化している
その典型例がニカラグア
1980年代 レーガン政権のもとで散々、傭兵を使った軍事侵攻を繰り返したが失敗
ソ連崩壊後今度は経済的締め付けを強め一時は親米国家に引き戻してが
新自由主義に反発した国民により再び反米政権が復活している
軍事的優位も揺らぐ一方
ベネズエラには過去親米国家だった頃、供与したF16を初め米製兵器が多数渡って手の内を読まれている一方、最近ではロシア・中国からフランカーを初め多数の最新兵器が供与され、軍事的にも決して侮ることはできない
しかも昨今の中国の海軍力の増強、ロシアの軍事力復活を見ると南米沖で超大国間の軍事的緊張の発生の可能性すらある
今やキューバ危機など遙かに超越した危険な状態にあることをアメリカ自体がよく理解していないのではないか
4. 2019年3月03日 15:15:26 : lGrhVgTDck : ak5MQ2J5bXVXb3M=[5] 報告
田中龍作より元朝日の山田の方がニュートラルに見ているのが面白い。

>>1
もっとひどくなるということなんだが。
だいたい本当に地獄かどうかわかるのか? 

▲上へ      ★阿修羅♪ > 国際25掲示板 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 国際25掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
国際25掲示板  
次へ