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アメリカ支配層に破壊された多くの民主的政権
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2019.02.04 櫻井ジャーナル
アメリカの支配層は少なからぬ民主的に選ばれた政権を破壊してきた。そして今、彼らはそのリストにベネズエラを書き込もうとしている。アメリカは民主主義を押しつけているのでなく、民主主義を破壊してきたのだ。 第2次世界大戦後にアメリカが行った最初の内政干渉はイタリアに対して行われた。戦争中、ヨーロッパで国としてドイツ軍と戦ったのはソ連だけ。西側でドイツ軍と戦ったのは市民で編成されたレジスタンスだった。 その中心メンバーがコミュニストだったこともあり、大戦後のフランスやイタリアではコミュニストが強く、その勢力をアメリカやイギリスを支配する人びとは潰そうとしたのだ。そうした戦略に基づいてNATOは作られ、破壊工作(テロ)部隊がNATOの内部で活動することになる。 イタリアで1960年代から80年代にかけ、極左を装って「爆弾テロ」を繰り返したグラディオはそのひとつだが、1962年8月にシャルル・ド・ゴールを暗殺しようとしたジャン-マリー・バスチャン-チリー大佐の背景も同じだった。 この人物が所属したOAS(秘密軍事機構)という秘密組織は1961年、ド・ゴールに反発する軍人らによって構成されたが、その黒幕はCIAの破壊工作部門だったのである。 OASは1961年4月にクーデターを計画するが、これをアメリカの新大統領、ジョン・F・ケネディが阻止した。クーデター軍がパリへ侵攻したならアメリカ軍を投入するという意思を明らかにしたのだ。CIAは驚愕した。1962年にOASの一派はド・ゴール大統領の暗殺を試みたものの失敗、ド・ゴールを救ったケネディ大統領は1963年11月に暗殺された。 アメリカは1953年にイランで合法政権をクーデターで倒している。大戦後、イラン政府はイランを食い物してきたAIOCの国有化を決める。クーデター後、1954年にAIOCは社名をBPへ変更した。 AIOCが生み出す収入で支配システムを維持していたイギリス支配層は激怒、アメリカ支配層を巻き込んでクーデターを実行しようとしたのだ。このクーデターはアメリカ側が主導権を握ることになった。 まずアメリカは反政府デモを開始、その際にコミュニストを装ったグループに暴れさせる。反政府デモの一部はモサデク支持の新聞社や政党、政府施設などを襲撃、CIAのエージェントがテヘラン・ラジオを制圧、首相だったモハマド・「モサデク解任の命令が国王から出され、ファジオラー・ザヘディが新首相に就任した」とする情報を流してクーデターは終わる。モサデクの支持派と反対派の衝突で約300名が死亡たと言われている。 イランの民主的な体制をクーデターで倒したアメリカ支配層は中央アメリカのグアテマラの政権を倒しにかかる。1950年に行われた総選挙で勝利、翌年に大統領となったヤコボ・アルベンス・グスマンが農地改革法を公布して国有地を分配、大地主の土地買い上げを実施、アメリカの巨大資本、ユナイテッド・フルーツの利権を脅かした。 そして1953年にアメリカ政府はクーデターを計画、CIAの破壊工作部門が指揮することになる。CIA配下の軍人が軍事蜂起するが、一般国民はクーデター軍と戦う意思を示した。それをアルベンス大統領は押しとどめ、1954年にに大統領官邸を離れる。流血の事態を避けたかったという。 クーデター政権は労働組合の結成を禁止、ユナイテッド・フルーツでは組合活動の中心にいた7名の従業員が変死、コミュニストの疑いをかけられた数千名が逮捕され、その多くが拷問を受けたうえで殺害されたとされている。その後40年の間に軍事政権が殺した人の数は25万人に達するという。クーデターを間近で見ていたひとりがエルネスト・チェ・ゲバラだった。 1973年9月11日にはチリでアメリカ政府を後ろ盾とするオーグスト・ピノチェトが、軍事クーデターで民主的に選ばれたサルバドール・アジェンデ政権を倒した。アメリカ政府でクーデターを指揮していたのは大統領補佐官だったヘンリー・キッシンジャー。その命令でCIAの破壊工作部門が動いている。 まずCIAは選挙に介入した。メディアや映画だけでなく、パンフレット、リーフレット、ポスター、郵便物、壁へのペインティングなどを総動員したのだが、アジェンデが勝利する。 一方、アメリカ資本と結びついていたチリの支配層は生産活動を妨害、アメリカの巨大金融機関はチリへの融資をストップ、世界銀行も同国への新たな融資を止めた。1972年になるとトラックの運転手がストライキを実施、商店主、工場経営者、銀行なども同調して全国的なロックアウトに発展する。アメリカ自身を含めてCIAは労働組合の幹部をコントロール、自分たちの手先として使ってきた。 クーデターの結果、アメリカの巨大資本に盾突く勢力は潰滅、新自由主義が導入される。シカゴ大学のミルトン・フリードマン教授のマネタリズムに基づき、大企業/富裕層を優遇する政策を実施したのだ。その政策を実際に実行したのがいわゆるシカゴ・ボーイズ。フリードマン教授やアーノルド・ハーバーガー教授といった経済学者の弟子たちだ。 現在、ベネズエラの大統領は2018年5月の選挙で選ばれたニコラス・マドゥロだが、アメリカやEUは勝手に大統領を名乗っているフアン・グアイドを支持している。その直前、2月にアメリカの国務長官だったレックス・ティラーソンはベネズエラでのクーデターを示唆、ラテン・アメリカ諸国を歴訪してベネズエラへの経済戦争に協力するように要請している。それでもマドゥロは勝利した。 ドナルド・トランプ政権はベネズエラに経済戦争を仕掛け、石油の輸出を止めようとしている。イランの石油も買うなと各国を恫喝、猶予期間は過ぎ去ろうとしている。アメリカの命令に従う人びとはどのようにエネルギー資源を確保するつもりなのだろうか? |
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