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(回答先: 説得力に乏しいポンペオの中東政策演説 投稿者 うまき 日時 2019 年 1 月 30 日 17:35:18)
スペースX、従業員の1割解雇の波紋
2019/01/30
土方細秩子 (ジャーナリスト)
(Tom Cross/Gettyimages)
スペースXが突然全従業員6000人のおよそ1割に相当する577人の解雇を発表した。解雇者の中にはプロダクション・マネージャー、宇宙航空技術者、機械工、在庫管理者など様々な分野の従業員が含まれている。
昨年には21ものロケット打ち上げに成功し、飛ぶ鳥を落とす勢い、と周囲から思われていたスペースXが、なぜ今大量のリストラを行うのか。CEOであるイーロン・マスク氏はこの件についてコメントしていないが、同社社長であるグイン・ショットウエル氏は「火星に宇宙飛行士を送る、というような大望を実現するために、会社をスリム化する必要がある」と語る。
スペースXは1月11日に10個の通信衛星を打ち上げるためのファルコン9の打ち上げに成功したばかり。売上額は明らかにされていないが、NASAや米軍との契約により数十億ドル規模の収入があるとみられている。特に国際宇宙ステーションへの貨物や人を輸送するカプセル計画は26億ドルに達する支払いが行われる、と見られている。
それがなぜ今大量のリストラを行うのか。ひとつ考えられるのは、昨年の21基というロケット打ち上げのペースが今年も維持できる保証がない、という点だ。一昨年の18基の打ち上げから増加した分、人手も必要だったが今年の先行きが不透明であり、月周遊旅行用のロケット開発にも巨額の資金がかかることから、まずは余分なコストをカットする、という見方だ。
しかし一方でスペースXの経営は本当に大丈夫なのか、という懸念の声もある。スペースXに付帯する形で作られたトンネル会社、ボーリングは昨年12月に初のトンネルとそこへ昇降するための車用エレベーターをロサンゼルスで公開したが、当初のロサンゼルス西側、UCLA付近と空港を結ぶトンネル計画は通過地帯の住民の反対により頓挫。他の計画も順調に進んでいるとは言い難い。
マスク氏はボーリング社のロゴがついた火炎放射器やTシャツ、キャップなどを売り出し、「資金の足しにしている」とジョークとも取れる発言を繰り返しているが、実際にそうしたグッズ販売に頼りたくなるほど台所事情は厳しいのではないか、と疑う声は以前からあった。スペースX本体の経営は企業や政府との契約のため一応安泰ではあるが、本来の業務を超えて月旅行や火星移住ロケットなどに資金を使っているため、全体として経営が苦しい、という見方だ。
従業員にとっては寝耳に水のような解雇通告だったようで、ツイッターなどでは「ハードワークをこなしてきた人々にとって、あまりにも不公正なやり方だ」などの内部批判も見られる。会社側は最低でも8週間分の賃金保証、またロサンゼルス周辺での他の宇宙航空産業への再就職斡旋などを行う、としているが、納得できない従業員からは「自分のスキルセットがもう不必要になったから簡単に切り捨てられた」という恨み節も聞こえてくる。
パフォーマンス?
レイオフは政治的なもの、あるいはマスク氏のパフォーマンス、という批判もある。実際レイオフによるコスト削減は年間で最高でも1億ドルだ。大型ロケットであるBFRや全世界に衛星インターネット網を提供するためのスターリンク開発費用から見るとあまりにも些少な額とも言える。
しかも、マスク氏が突然「BFRロケットの開発、組み立て施設をテキサスに移す」と発言した、と報じられ、ロサンゼルス市長が不快感を表すコメントを出す騒動も起きた。というのもロサンゼルス市はロサンゼルス港の一等地をスペースXに対し優遇リースで提供する、という発表が昨年行われたばかりだ。BFRは全長300メートルを超す大型ロケットで、「陸上での輸送が困難」であるため直接海上輸送に出せるロサンゼルス港での工場建設を市に対し申請していた。
この報道について、マスク氏は1月16日に「報道は正しくない。テキサスに作る予定なのはプロトタイプの開発施設で、ロサンゼルス港の工場建設予定は変わらない」と返答した。しかし大量リストラに続き土地価格が安く、企業誘致に熱心なテキサスが法人税の優遇などでスペースXにアプローチしているのも事実で、ロサンゼルスにとってはトヨタが米国の本社機能などをテキサスに移した、という悪夢が蘇るのも頷ける。現在ロサンゼルス市の南にあるホーソン市にあるスペースX本社までテキサスに移るのはなんとしても避けたい、というのが市の本音だが、テキサスに移ることでスペースXが経費を削減できる側面もある。
一方でこのようなコスト削減への努力は投資家へのアピールにもつながる。少数精鋭で最新技術開発に挑む、という姿勢が評価されるのだ。しかしそのようなポーズあるいはパフォーマンスのために首を切られる側としては納得できない、という声が上がるのも無理はない。
スペースXは米国でも有数の人気企業であり、就職は非常に困難と言われる。無償のインターンシップでさえ募集をかければすぐに枠が埋まるほどだ。会社とすれば人を減らしてもまた募集をかければ必要な人材はすぐに集まる、という考えかもしれないが、マスク氏の壮大な夢を共有したいと願い、努力を払ってきた人々への道義的責任が今後問われることになるかもしれない。今年もマスク氏をめぐる話題は尽きそうにない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15217
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