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(回答先: 「反日」だけが頼みの綱に、韓国・文在寅政権 トランプだけではない:ポピュリズムのもたらす独裁政治が世界に蔓延 投稿者 うまき 日時 2019 年 1 月 08 日 05:44:03)
早読み 深読み 朝鮮半島
韓国はレミングの群れだ
もう、止められない「北朝鮮との心中」
2019年1月8日(火)
鈴置 高史
1961年の「5・16軍事革命」は朴槿恵前大統領の父・朴正煕少将(前列中央)らが主導した(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
(前回から読む)
韓国が奈落の底に堕ちて行く。
「クーデター前夜」を思い出す
鈴置:ソウルでこの記事を読んでくれている韓国の識者Aさんから、2018年末にメールを貰いました。文章を整えて引用します。
この国は激動の真っただ中です。朴槿恵(パク・クネ)女史は1年9カ月間牢屋に繋がれていますが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も遠からずして、その後を追うかもしれません。
ソウル都心は連日、文大統領退陣を叫ぶデモで交通はマヒ寸前です。保守団体は文在寅を金正恩(キム・ジョンウン)の手先と糾弾し、朴槿恵の弾劾無効と復権を叫んでいます。
文在寅支持だった民主労組など左派団体まで経済失政をとりあげ反政府の示威行動に走っています。
金正恩のソウル訪問を歓迎する集会を開く親北団体があり、これに負けじと保守団体も親米パフォーマンスをくり広げる。ソウルはデモ満開です。
というのに警察は違法なデモを規制せず傍観しています。デモ鎮圧の責任を追及されるのが怖いのです。
今の状況は約60年前の1960年、李承晩(イ・スンマン)政権が学生デモで倒れ、民主党政権が出現した時に酷似しています。
デモで政権が転がり込んだ民主党政権は、失政の連続と南北和解を唱える左派の蠢動で混乱に陥りました。結局は朴正熙(パク・チョンヒ)少将が軍事クーデターを起こし、韓国は開発独裁政権に移行しました。
現在の状況は当時にそっくりに思えてなりません。しかしクーデターを起せるほどの主体はいまのところ見当たらないのです。
保守は分裂、左派も利権争いで内輪揉め、軍は骨抜きにされ、マスコミも国民から信用されていません。
いろいろ書きたいことがありますが、物言えば唇寒し――。これ以上はやめます。新年の韓国は韓流ドラマよりもっと劇的に展開するでしょう。
●韓国歴代大統領の末路
@李承晩(1948年7月―1960年4月) 不正選挙を批判され下野、ハワイに亡命。退陣要求のデモには警察が発砲、全国で183人死亡
A尹潽善(1960年8月―1962年3月) 軍部のクーデターによる政権掌握に抗議して下野。議院内閣制の大統領で実権はなかった
B朴正煕(1963年12月―1979年10月) 腹心のKCIA部長により暗殺。1974年には在日韓国人に短銃で撃たれ、夫人の陸英修氏が殺される
C崔圭夏(1979年12月―1980年8月) 朴大統領暗殺に伴い、首相から大統領権限代行を経て大統領に。軍の実権掌握で辞任
D全斗煥(1980年9月―1988年2月) 退任後に親戚の不正を追及され隠遁生活。遡及立法で光州事件の責任など問われ死刑判決(後に恩赦)
E盧泰愚(1988年2月―1993年2月) 退任後、全斗煥氏とともに遡及立法により光州事件の責任など問われ、懲役刑判決(後に恩赦)
F金泳三(1993年2月―1998年2月) 1997年に次男が逮捕、懲役2年判決。罪状は通貨危機を呼んだ韓宝グループへの不正融資関与
G金大中(1998年2月―2003年2月) 任期末期に3人の子息全員が斡旋収賄で逮捕
H盧武鉉(2003年2月―2008年2月) 退任後、実兄が収賄罪で逮捕。自身も2009年4月に収賄容疑で検察から聴取。同年5月に自殺
I李明博(2008年2月―2013年2月) 2018年3月に収賄、背任、職権乱用で逮捕。1審で懲役15年、罰金130億ウォンの判決。韓日議員連盟会長も務めた実兄も斡旋収賄などで逮捕、懲役2年
J朴槿恵(2013年2月―2017年3月) 2017年3月10日、弾劾裁判で罷免宣告。収賄、職権乱用などで逮捕、1審で懲役24年、罰金180億ウォンの判決
外交官・裁判官が受難
ソウルは騒然としているのですね。
鈴置: 韓国は革命状態にあります。2016年11月に始まった「ろうそく集会」が功を奏し翌2017年3月、朴槿恵大統領は弾劾・罷免されました。左派は「ろうそく革命」ムードに乗って、同年5月の大統領選挙で勝利。
政権を握った左派は「積幣清算」の呼号の下、米国や日本を専門とする外交官を左遷、退職させました。気にいらない裁判官らも起訴しました。
一方、公社のトップには学生運動のリーダーを務めた仲間を続々と任命。左派はわが世の春を謳歌するかと思われました。
しかし左派の中で、文在寅政権の中枢を占める親北派と、労働運動に根を張る非北朝鮮派の戦いが勃発したのです。
後者は「ろうそく革命」の功は街頭に繰り出した自分たちにあると主張、労働者のさらなる権利拡大を要求しています。
しかし、最低賃金の大幅な引き上げにより解雇が多発するなど、左派的な経済政策は大失敗。政権は労働側の要求をおいそれとはのめません。
四分五裂の南をかき回す北
保守にとってはチャンスですね。
鈴置:そう見えます。が、保守は保守で朴槿恵派と反・朴槿恵派に分かれて抗争中です。韓国では「左派政権が朴槿恵を釈放するかもしれない。朴槿恵を担ぐ人々に勢いが付き、保守の内部抗争がますます激化するからだ」と語る人もいます。
国が四分五裂する中で違法デモが日常化し、秩序が急速に破壊された。そこに北朝鮮が手を突っ込み、親北派を使って米国大使館前での反米デモや、金正恩委員長歓迎集会を開かせる。韓国は自らを制御できなくなっています。
メディアは警告を発しないのですか?
鈴置:保守メディアは時々、秩序の崩壊を嘆く記事を載せます。しかし左派の人々にとって今は「世直し中」なのです。彼らにとって保守メディアの警告など、守旧派の「反革命行為」に過ぎません。
一部の保守も保守メディアには冷ややかです。現在の混乱の原点たる朴槿恵弾劾には保守メディアも加わったからです。
保守系紙の代表的な存在である朝鮮日報が文在寅政権を批判すると、読者のコメント欄はたちどころに「朝鮮日報は『ろうそく集会に行こう』と書いたではないか。まず、この政権を作ったお前から反省せよ」との非難で埋まります。
一方、左派系紙のハンギョレの書き込み欄は「北朝鮮の使い走りの文在寅を称賛する売国奴新聞」といった罵倒で満ち溢れます。韓国ではメディアは合意を作るのではなく、対立に火を注ぐ装置なのです。
左派系紙は左派政権の、保守系紙は保守政権の失政を批判しない。すると左派と保守の人々が持つ現実認識には極めて大きな隔たりができる。両者の間では「事実」に基づいた議論もできないわけです。
韓国軍を疑う韓国記者
「対立に火を注ぐ装置」ですか……。
鈴置:自衛隊哨戒機へのレーダー照射事件でも、それが露わになりました。韓国国防部に詰める記者たちは、自分の国の発表に疑問を持っています。
「日誌・レーダー照射事件」をご覧下さい。12月21日、国防部は記者の携帯に文字メッセージを送り事件に関し説明したのですが、そこには「レーダーを使った」とちゃんと書いてあったのです。
そこで21日から22日にかけ、韓国メディアは一斉に「火器管制レーダーも使ったが、北朝鮮の漁船を救助するためだった」との国防部と関係者の説明をそのまま報じました。
ところが韓国での報道を見た日本の防衛省が22日「火器管制レーダーは捜索には使わないものだ」と国防部の嘘を暴いた。NHKも「レーダー照射は一定時間続いた」と報じ、意図的に哨戒機を狙ったと指摘しました。
すると24日に国防部は一転、主張を変えました。「追跡(火器管制)レーダーからは一切電波を出さなかった」と言い出したのです。誤報させられた韓国記者は当然、自国の発表を疑うようになりました。
27日の国防部の会見で「低空飛行したという日本の哨戒機になぜ無線交信を試みなかったのか」との質問が出ました。
24日の会見から国防部は「日本機が異例の低空飛行をした。我々が被害者だ」と言い始めていた。普通の記者なら「ではなぜ、直ちに無線で抗議しなかったのか」との疑問を持つものです。
この質問に対し国防部の副報道官は「今、答えるのは適切ではない」とはぐらかしたのです。韓国記者は国防部への疑いを深めたでしょう。
●日誌・レーダー照射事件
▼2018年▼
12月21日 「12月20日に日本海の日本のEEZ内で、韓国駆逐艦が日本の哨戒機に火器管制レーダーを照射」と防衛省が発表。BSフジの番組で岩屋毅防衛相が「攻撃直前の行為だ。不測の事態を招きかねない。韓国は説明すべきだ」と発言(共同通信などが報道)
12月21日 国防部、記者の携帯に向け「正常な作戦活動。当時、レーダーは使用したが、日本機を追跡する目的では使った事実はない」と発表(聯合ニュース報道)
12月22日 「12月20日に漂流中の北朝鮮の漁船を海軍が救助したが、その際に捜索のためレーダーを使用した」との関係者の話を独自ダネとして東亜日報が報道
12月22日 国防部の発表を踏まえ「遭難した北朝鮮の船舶を捜索するため火器管制レーダーを使ったが、日本機を狙ってはいない。正常な作戦任務だった」と韓国MBCが報道
12月22日 「国防部関係者が『海軍は漁船救助の過程で火器管制レーダーを使い、これが日本機に当たった』と説明した」と聯合ニュースが報道
12月22日 国防部が日本に対し「正常な作戦中だった。北朝鮮の漁船を救助中に一時的に全てのレーダーを稼働した際、電波が日本機に届いた」と説明したと聯合ニュースTVが報道
12月22日 統一部、救助した北朝鮮漁民を板門店を通じ送り返したと発表 (中央日報など報道)
12月22日 「レーダー照射は複数回で一定時間続く」「偶然とは考えにくい」「哨戒機はレーダー受けて回避」とNHKが報道
12月22日 「火器管制レーダーは捜索には使わない。その照射は危険な行為」と防衛省が発表
12月23日 「火器管制レーダーは哨戒機を向いていた」とFNNなどが報道
12月24日 「人道主義的な救助のための正常な作戦活動であり、日本機の脅威となる措置は取らなかった」「日本機が低空飛行したので、この異例の行動を監視するため追跡(火器管制)レーダーの光学カメラで監視した。だが、電波は一切出さなかった」「日本機からの通信はノイズが多く『韓国海洋警察』だけが聞きとれた」と国防部が会見で答弁
12月24日 韓国外交部が「事実を確認せず発表した」と日本に遺憾を表明したと聯合ニュースが報道
12月25日 「火器管制レーダー特有の電波を一定時間、複数回受けたことを確認した」「海自機は韓国の駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行」「緊急周波数で韓国海軍艦艇に向け英語で3回呼び掛けた」と防衛省が発表
12月25日 菅義偉官房長官、会見で韓国に再発防止を強く求めたうえ「当局間の協議を進める」
12月25日 岩屋防衛相、会見で「照射があったことは事実。(把握しているデータに関し)我が方の能力に関することは公表できないが、先方となら専門的な話もできる」
12月27日 「低空飛行したという日本機に無線交信を試みなかったのか」との質問に対し「今、答えるのは適切でない」と国防部副報道官が答弁
12月27日 日韓防衛当局の実務者協議をテレビ会議で実施したが平行線で終わる(日経など報道)
12月28日 防衛省、「レーダー照射映像」を公開、韓国にも伝達
12月28日 「映像発表に深い憂慮と遺憾を表明。事実関係を誤魔化すものだ」と国防部が声明
▼2019年▼
1月1日 テレビ朝日の番組で韓国海軍のレーダー照射に関し「危険な行為だ」と安倍晋三首相が発言
1月2日 国防部、「日本はレーダー歪曲を直ちに中断し、低空飛行を謝罪せよ」と声明(聯合ニュース報道)
1月3日 「なぜ、半月後の昨日になって初めて低空飛行に関し日本に抗議したのか」との質問に「対応を変えてはいない」と国防部が会見で答弁
1月3日 「常任委員会で日本機の低空飛行の深刻さを論議」と韓国NSCが発表
1月4日 「協議中に日本が映像を公開したことに憂慮」と 国防部が発表したうえ映像(韓国語)を公開
1月4日 「日韓両国の外相が電話で協議し、レーダー照射問題に関しては国防当局同士が対話して解決することで合意した」と韓国外交部が発表
1月4日 「韓国国防部が動画を公表したが、我々の立場とは異なる主張」と防衛省が声明(日本語、英語、韓国語)
韓国の「大本営発表」
12月28日の防衛省の動画公開で、韓国メディアはますます国防部の発表を疑うようになりました。当初、韓国軍が主張していた「漁船の捜索のためのレーダー使用」が真っ赤な嘘だったことが判明したからです。
自衛隊機が撮影した映像では、駆逐艦から目視できるところに漁船がいた。ほぼ同時に自衛隊の哨戒機の機内で「照準された」ことを示す警報音が鳴り響いた。「漁船を探すためにレーダーを照射していた」という説明は全くの絵空事だったのです。
しかし韓国メディアにはこうした自国政府に対する疑惑――@なぜ、レーダー使用の目的を漁船捜索と偽ったのかAなぜ、火器管制レーダーを含め全てのレーダーを使っていたとの説明を翻したのかBなぜ、低空飛行した自衛隊機に無線を使わなかったのか――を一切報じていません。
韓国メディアが大書するのは「低空飛行で威嚇された韓国こそが被害者である」「一方的に画像を発表した日本が悪い」といった国防部の発表――"大本営発表"ばかりなのです。
これでは国民が「傲慢な日本」と「弱腰の国防部」に怒り出すのも無理はありません。青瓦台(大統領府)のサイトには「レーダー映像公開…! 日本は同盟か…!主敵か…!」(1月3日)という見出しの投稿が載りました。骨子は以下です。
誇らしい大韓のイージス艦は今後、日本の哨戒機が接近したら直ちに撃墜すべきだ。なぜなら(日本は)同盟国になることがない最悪の主敵だからだ。
今、日本は軍事力を膨張させている。韓国が非核化を叫んでいる時か。必ず、核武器と水爆を自ら開発、配備せねばならない時だ!
こんな国民の声が青瓦台に届き、それへの反応も「いいね!」ばかりですから国防部も日本に強腰に出ざるを得ない。1月2日に日本に謝罪を要求したうえ、4日には「反論映像」も公開しました。
こうした国防部に対し、韓国メディアは会見で「なぜ半月後の今になって謝罪を要求したのか」と対応の鈍さを追及するに至った(1月3日)。事実の追求は放っておいて世論を煽り続けています。
こんなメディアのいい加減な姿勢がレーダー照射問題をはじめ、内政、外交のありとあらゆる面で韓国を苦境に落とし込んでいるのです。
扇動に踊る韓国人
なぜ、韓国メディアは国防部発表の不審な点を突かないのでしょうか。
鈴置:韓国では「事実」よりも「主張」が大事なのです。このケースで言えば「日本の言い分が正しそうだな」と記者が思っても、そう書けば「売国新聞」と非難されてしまう。
それなら徹底的に韓国の立場に立って報じ「不都合な真実」はネグってしまおうということになります。
「無明」というペンネームを使う韓国人ブロガーがいます。日本の自民党の内幕や日韓関係に極めて詳しいことから、日本を長らく担当した外交官OBと見られています(『米韓同盟消滅』)第4章第2節「韓国人をやめ始めた韓国人」参照)。
無明氏は「日本の防衛省、韓国のレーダー照射問題に対する証拠動画公開2」(12月29日、韓国語)で、韓国の世論形成のあり方に警鐘を鳴らしました。
火器管制レーダーの使用に関しても、最初はすべてのレーダーを使っていたと言い、後になって火器管制レーダーは使用しなかったと言葉を変え、さらに翌日には使ったが照準は当てなかったと嘘をつく。これが今の国防部の言い訳だ。
言葉を変え続けるのを信じるのなら、それはあなたが詐欺師に簡単にだまされる脳の構造を持っているとの証拠にほかならない。
韓国人なら詐欺や嘘と知っていても無条件に韓国をかばう必要がある、などととんでもないことを言うのなら、あなたはナチ(Nazi)などと変わりのない人間のゴミだ。
無明氏の韓国批判は常に激烈です。でも、この記事の激しさは格別です。身びいきのあまり真実から目をそらしたい国民。それに応じ、いい加減な情報しか流さないメディア。こんな韓国社会に対する絶望感がこの記事を書かせたのでしょう。
無明氏が1月4日に載せた「韓国、レーザー照射問題に関する反駁動画公開」(韓国語)という記事は以下の文章で結ばれています(編集部注:原文のまま掲載)。
朝鮮王朝が滅びた時がそうだったように、韓国の支配層が嘘を言い張ると、被支配層の韓国の豚どもは常に騙されてきた。扇動しておけば365日、騙される韓国の豚どもに人間の知性はないのだ。
人権蹂躙国家とスクラム
「亡国の危機」ですか!
鈴置:「世の中がよく見えている」韓国人は今、絶望に陥っています。米国からは同盟を打ち切られそうになっている。韓国が米国を裏切って北朝鮮の核武装に協力しているからです(「『米韓同盟消滅』にようやく気づいた韓国人」参照)。
そこに起きたレーダー照射事件。日韓関係は悪化する一方で修復のメドがたちません。左派政権の「反日」は「反米」の伏線です(「『現場の嫌がらせ』では済まないレーダー事件」参照)。米国との同盟はさらに危くなるでしょう。
問題は米国との関係に留まりません。人権蹂躙国家の北朝鮮とスクラムを組んで、その核武装を幇助する文在寅政権の異様さが世界に知れ渡りました。北朝鮮だけではなく韓国も「危ない国家」と認定され始めたのです(「北朝鮮と心中する韓国」参照)。
周辺国家と世界はテロ国家たる北朝鮮の核武装を全力で阻止するでしょうから、文在寅政権の狙う「民族の核」の実現は容易ではない(「半島がまた、きな臭くなってきた」参照)。
仮に成功してもそれはあくまで北朝鮮の核。韓国が核を持つ北の支配下に入るのは確実です。それに普通の韓国人が耐えられるとは思えません(『米韓同盟消滅』第1章第4節「『民族の核』に心躍らせる韓国」参照)。
国が危機にあるというのに指導層は権力闘争に没頭する。国民は政府やメディアに扇動され、「積幣清算」や「反日」に浮かれる。国が奈落の底に堕ちて行くのに、見動きがとれないのです。
今回は「出口」なし
韓国の混乱は収拾できない?
鈴置:1960年に李承晩政権がデモで倒れた後の混乱は翌1961年、反共を掲げる軍人のクーデターにより収拾されました。
私は1987年から5年間ソウルに住みましたが、当時を知る韓国人の中には「クーデターが起きなかったら韓国は北朝鮮に吸収されていた」と説明する人がかなりいました。
クーデター自体には賛成しないが、北朝鮮の一部となるよりはましだった、というのです。もちろん「あのクーデターによって成立した軍事政権が韓国の民主主義を破壊した」と言う人もいましたが。
今回はもう起きない……。
鈴置:……と、多くの韓国人が言います。軍人もサラリーマン化して、もはやクーデターを起こす根性はない、との理由です。今回は良かれ悪しかれ「出口」はないのです。
自分たちを、集団自殺するとされるレミングに例える韓国人が出てきました。その1人が趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムの金泌材(キム・ピルジェ)記者です。
「『レミング効果』に見る『韓国人の群衆心理』」(2016年11月16日、韓国語)は「ろうそく集会」が始まった頃に書かれた記事です。
書かれた時点では朴槿恵大統領が弾劾されることまで想像した人はあまりいませんでした。それによる左派政権登場と、米韓同盟の危機を予想した人も少なかった。
しかし金泌材記者は韓国人の扇動に弱い体質を指摘し、国が危くなると当時から警鐘を鳴らしていたのです。
韓国はどうなる?
鈴置:この段階に至っては手遅れと思います。北朝鮮との共闘路線を修正するのは難しい。それが左派政権の存在理由なのですから(『米韓同盟消滅』第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。
それに米国や日本は「北朝鮮の使い走り」と見なして韓国に向き合うようになりました。米国は今、韓国との「思いやり予算」交渉でいつになく強硬です。
米国の専門家は在韓米軍の削減・撤収まで公言し始めました。いざとなれば韓国との同盟をやめてもいいのだ、との合意が米政界に広がっているのです。
「レーダー照射事件」で日本が韓国を徹底的に追い詰めているのも「韓国が仮想敵になりつつある」との認識があずかっています。
韓国はもう、奈落の底に堕ちて行くだけと思います。
■トランプ大統領の韓国国会演説(2017年11月8日)のポイント(1)
北朝鮮の人権侵害を具体的に訴え
10万人の北朝鮮人が強制収容所で強制労働させられており、そこでは拷問、飢餓、強姦、殺人が日常だ
反逆罪とされた人の孫は9歳の時から10年間、刑務所に入れられている
金正恩の過去の事績のたった1つを思い出せなかった学生は学校で殴られた
外国人を誘拐し、北朝鮮のスパイに外国語を教えさせた
神に祈ったり、宗教書を持つクリスチャンら宗教者は拘束、拷問され、しばしば処刑されている
外国人との間の子供を妊娠した北朝鮮女性は堕胎を強要されるか、あるいは生んだ赤ん坊は殺されている。中国人男性が父親の赤ん坊を取り上げられたある女性は「民族的に不純だから生かす価値がない」と言われた
北朝鮮の国際的な無法ぶりを例示
米艦「プエブロ」の乗員を拿捕し、拷問(1968年1月)
米軍のヘリコプターを繰り返し撃墜(場所は軍事境界線付近)
米偵察機(EC121)を撃墜、31人の軍人を殺害(1969年4月)
韓国を何度も襲撃し指導者の暗殺を図った(朴正煕大統領の暗殺を狙った青瓦台襲撃未遂事件は1968年1月)
韓国の艦船を攻撃した(哨戒艦「天安」撃沈事件は2010年3月)
米国人青年、ワームビア氏を拷問(同氏は2016年1月2日、北朝鮮出国の際に逮捕。2017年6月に昏睡状態で解放されたが、オハイオに帰郷して6日後に死亡)
「金正恩カルト体制」への批判
北朝鮮は狂信的なカルト集団に支配された国である。この軍事的なカルト集団の中核には、朝鮮半島を支配し韓国人を奴隷として扱う家父長的な保護者として指導者が統治することが宿命、との狂った信念がある
これまで読んで下さった皆さまへ
今回で「早読み 深読み 朝鮮半島」の連載を終えます。2012年1月以降、7年間も続けることができたのは、ひとえに熱心に読んで下さった皆さまのおかげです。本当にありがとうございました。
2018年12月14日に参議院議員会館で開かれた国際セミナー「激動する朝鮮半島情勢の下で拉致被害者救出を考える」を取材しました。「半島がまた、きな臭くなってきた」で紹介した集まりです。
受付でお目にかかった拉致被害者の家族の方々から「毎回、読んでますよ」「記事を読むために日経ビジネスオンラインに登録しました」と声をかけられました。
この連載で拉致問題に触れたことはほとんどありません。しかし家族の皆さんは朝鮮半島情勢を勉強しようと、藁にもすがる思いで読んで下さっていたのです。それを知り、身の引き締まる思いでした。
記事を書くにあたって、匿名の方々にも支えられました。日本語で「シンシアリーのブログ」をお書きになる韓国の歯科医師さん。冷静な韓国人が「動乱の韓国」をどう見ているかを紹介するために、ブログを何度か引用させていただきました。
「新宿会計士の政治経済評論」というサイトを主宰される公認会計士さん。日本の危機を防ごうと、専門知識をフルに発揮した評論を書いておられます。「通貨スワップと為替スワップについて、改めて確認してみる」など、大いに参考にさせていただきました。
私の英文和訳の誤りを掲載日の早朝に指摘下さった方がおられます。慌てて直したものです。匿名の恩人の方々にもこの場を借りて深くお礼を申し上げます。
今回の記事で紹介したAさんの指摘通り、2019年の朝鮮半島は劇的な展開が予想されます。その際、日本も何らかの形で巻き込まれるのは確実です。覚悟を固める時が来ました。
【著者最新刊】『米韓同盟消滅』
米朝首脳会談だけでなく、南北朝鮮の首脳が会談を重ねるなど、東アジア情勢は現在、大きく動きつつある。著者はこうした動きの本質を、「米韓同盟が破棄され、朝鮮半島全体が中立化することによって実質的に中国の属国へと『回帰』していく過程」と読み解く。韓国が中国の属国へと回帰すれば、日本は日清戦争以前の「大陸と直接対峙する」国際環境に身を置くことになる。朝鮮半島情勢「先読みのプロ」が描き出す冷徹な現実。
第1章 離婚する米韓
第2章 「外交自爆」は朴槿恵政権から始まった
第3章 中二病にかかった韓国人
第4章 「妄想外交」は止まらない
2018年10月17日発売 新潮社刊
このコラムについて
早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は、朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/010700211/
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