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「PFAS汚染源」はどこだ 米軍内部文書から見つかった事実…疑念呼ぶ「横田の3000リットル」(東京新聞)
http://www.asyura2.com/19/ishihara14/msg/138.html
投稿者 蒲田の富士山 日時 2023 年 6 月 12 日 03:01:33: OoIP2Z8mrhxx6 ipeTY4LMlXiObY5S
 

2023年6月11日 06時00分

https://www.tokyo-np.co.jp/article/255950

<連載 汚れた水 PFASを追う>@

 「PFAS(ピーファス)」。発がん性などが指摘され、自然界に存在しないはずのこの化学物質が全国で相次いで見つかり、大きな問題となっている。東京の多摩地域では、水道水源の井戸水から高濃度で検出。市民団体の血液検査では、半数以上の住民の血中濃度が「健康被害の恐れがある水準」を上回った。自然界で分解されにくく「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFAS汚染は、なぜ広がったのか。「汚れた水」の源流を探った。(文中敬称略。この連載は、松島京太、岡本太、昆野夏子、渡辺真由子が担当します)


 PFAS(ピーファス) 泡消火剤やフライパンの表面加工などに使われてきた有機フッ素化合物の総称。約4700種類あるとされ、PFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)などは人体や環境への残留性が高く、腎臓がん発症や胎児・乳児の成長阻害、コレステロール値の上昇、抗体反応の低下などの健康リスクがあるとされ、国際的に規制が進む。国内では、水道水の暫定目標値をPFOSとPFOAの合計で1リットル当たり50ナノグラム以下と設定。東京・多摩地域の水道水源の井戸40カ所が、汚染の影響で取水を停止している。


◆2012年に3000リットル漏出「泡消火剤、気づけば空っぽ」
 「この資料に、800ガロン(約3000リットル)の漏出の事実がはっきり書いてある。これを見れば、横田基地が汚染源の一つになっていると考えないわけにはいかない」。5月中旬、川崎市内で取材に応じた英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル(48)は、米国政府への情報公開請求で2018年に入手した米軍の内部文書を示し、そう説明した。
 文書は「USFJ SPILL REPORT(在日米軍漏出報告書)」と題され、A4サイズで750ページにも及ぶ。多摩地域にある米軍横田基地(福生市など)で発生した燃料漏れなどの事故が記されている。膨大な報告書を読み込んでいくと、そのうちの2ページで、3000リットル漏出の経緯や原因、周辺への影響などが記録されていた。
 日付は、2012年11月29日。場所は、横田基地内の530ビル・横田消防署とある。ちょうど基地の中央、滑走路沿いにある施設だ。
 報告書は「泡消火剤の貯蔵タンクの中身が空になっているのを消防隊員が発見した。ゆっくりとタンクから漏れ出し、床の接ぎ目から土壌に浸透したようだ」と説明していた。
 PFASを含む泡消火剤は、航空燃料による火災などに効果があり、1967年の米軍空母火災をきっかけに、空軍施設や全国の空港施設などで導入された。
 通常は水で薄めて約3%の濃度で使うが、横田基地の漏出事故では、消火剤の原液3000リットル超がそのまま流れ出たとみられる。

◆気付かず1年…基地外流出否定できず
 報告書はこう続く。「漏出は1年以上かけてゆっくりと進んだ」。記述通りなら、米軍は漏出に1年以上も気付かず、その間、PFASを含む泡消火剤は建物下の土壌に染み込み続けていたことになる。
 土壌に浸透したPFASは、基地外に流れたのではないか。米軍は報告書で、泡消火剤について「新たな環境汚染物質を含む」との認識を示しながら、基地外への影響は「ない」と記述。漏出事故について日本側に報告した痕跡はない。
 ただ、米軍は2015年に作成した環境レビューでは、基地から流出した物質は「最終的に深さ約75メートルの地下水の層に行き着く」と言及。その地下水は、南南東の方角に流れているとしており、PFASがそのまま基地の外に流れ出た可能性は否定できない。
 東京都は2018年度、基地から約1キロ南東の井戸(立川市)で、都内最高値となる1リットル当たり1340ナノグラムの高濃度のPFASを検出している。
 ミッチェルは、報告書で3000リットルの漏出の記述を見つけた時の心境をこう振り返る。「正直、驚きはなかった。やっぱりな、というぐらいだ。米軍の隊員らは10代や20代前半と若く、よくミスもするし、化学物質の危険性も分かっていない。こういう事故はあるだろうと入手前から思っていた」

   ◇   ◇

 米軍横田基地(東京都福生市など)では、2012年11月に発覚した3000リットルに上るPFASを含む泡消火剤の漏出のほかにも、事故は相次いでいる。
 英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェルが入手した在日米軍漏出報告書には、2010年1月に格納庫から38リットル、2012年10月にドラム缶から最大95リットルがそれぞれ漏れたとの記録がある。
 「実は昨年、さらに新しい資料を(米国政府への情報公開請求で)手に入れた」。ミッチェルは説明を続ける。その文書によると、基地では2020年、消防車から泡消火剤を漏出する事故が3度起きていた。漏出量は合わせて100リットル超に達した。

◆漏出事故計6件と報告「本当にすべてか」
 内部文書で確認できた基地内の漏出事故は、2010〜12年の3件と、2020年の3件の計6件。2013年から2019年にかけては1件も漏出事故の記録がない。「この期間の資料を情報公開請求したが、米側はこれがすべてと言う。そもそもPFASの漏出事故は、報告書に残すと決められていなかった。本当にすべてなのか確信はもてない」と首をかしげる。
 東京・多摩地域のPFAS問題を調べてきた京都大准教授の原田浩二(43)は、基地東側の地下水で高濃度の検出が相次ぐことに「横田基地が汚染源になっていること以外、原因の説明がつかない」と指摘する。その上で、多摩地域に広がる汚染の規模を考えると「米軍の消火訓練の影響や、3000リットルの漏出以外にも事故があった可能性は考えられる」とみる。


 東京・多摩地域のPFAS血液検査 市民団体が実施した血液検査では、多摩地域に住む650人中の51.5%が米国で「健康被害の恐れがある」と定められる血中のPFAS濃度を上回った。国分寺や立川市など米軍横田基地東側に高濃度の住民が集中しており、専門家は「基地が大きな汚染源となっている」と分析する。


◆米軍「何千もの製品にPFASが含まれていると理解を」
 米軍の泡消火剤が多摩地域の汚染原因ではないのか。米軍は本紙の質問に対し、メールで「世界中で生産される何千もの製品にPFASが含まれていることを理解することが重要だ」と言及。「真の発生源を評価するのは困難」として基地との関連を認めていない。
 ただ、基地内のPFASは、基地自体にも影響を与えている。米軍の報告書によると、基地内の地下水を浄化して利用する飲料水からは2020年、1リットル当たり29ナノグラムのPFASを検出。泡消火剤が主な原因としている。
 ミッチェルは「基地の中の地下水には泡消火剤の影響があると認めていながら、周辺への汚染は認めないのはダブルスタンダードだ」と批判。米軍から日本側に報告がないとはいえ、日本側の姿勢も問題視する。
 「政府や都が強く求めないから、米軍が情報を出す必要はないという判断になる。日本側は基地周辺の水や土壌、大気をもっと詳しく調べ、基地内での調査を求めるべきだ。汚染源が分からなければ、住民の健康は守れない」

【関連記事】<Q&A>東京・多摩地域で広がるPFAS汚染 健康にどう影響?
【関連記事】血液中のPFAS濃度が全国平均の3.4倍 東京・多摩7市の住民、水道水から摂取か  

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コメント
1. 蒲田の富士山[1729] ipeTY4LMlXiObY5S 2023年6月13日 07:29:59 : 8cF1Gy8wQ2 : L1JDbi9uYTlGMUU=[24] 報告
<■67行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
東京都はずっと知っていた・・・PFAS汚染、15年前に検出した「飛行場排水B」とは(東京新聞)
2023年6月13日 06時00分

https://www.tokyo-np.co.jp/article/256194

<連載 汚れた水 PFASを追う>A
 東京・多摩地域のPFAS(ピーファス)汚染で、住民の血液検査が進められていた3月下旬、都庁第2本庁舎10階の会議室で取材に応じた都環境科学研究所(都環研)の主任研究員の西野貴裕(50)が、ある論文の記述を見つめた。
 「飛行場排水B 67〜410ナノグラム/リットル」
 論文は、自身が2008年に執筆した。西野らは当時、多摩地域を流れる多摩川のPFAS濃度が高いことに着目し、汚染源を突き止めるため04年から調査をしていた。
 「飛行場」とは一体、何を指すのか。西野は詳細を明かさなかったが、都関係者によると、米軍横田基地(福生市など)のことだったという。
 つまり、横田基地の排水から高濃度のPFASを検出したということだ。都環研は、都の出資を受ける監理団体(当時)の一組織。既に15年前、横田基地がPFASの汚染源になっている可能性を把握していたことになる。

◆東京都水道局は05年から調査
 結果的に汚染源は特定できたのか。そう尋ねると、西野は答えた。「地下の水脈はすごい複雑で…。情報をいろいろ収集したんですが、汚染源は結局分からなかった」
 実は、都庁内で早くからPFASに注目し、調べてきたのは西野らだけではない。都水道局は05年から、水道水の取水源としていた井戸を対象に、PFAS濃度を調査。07年には、都福祉保健局も飲用井戸で調査を始めている。いずれも調査開始当初から高濃度のPFASが検出されている。
 きっかけは2000年。PFAS生みの親の米化学メーカー「3M(スリーエム)」が、環境や生物への残留性が高い恐れがあることから、一部製造からの撤退を宣言した。米環境保護局は05年、「ヒトで発がん性がある可能性が高い」と報告した。

◆「毎日飲む水、何かあってからでは遅い」のはずが
 PFASは泡消火剤だけでなく、調理器具や衣類を含め撥水はっすい加工の製品に使われ、日常生活に欠かせなくなっていた。当時の都の関係者は「毎日飲む水に、何かあってからでは遅い。データを取っていくべきだと考えた」と振り返る。
 だが、危機感は長く続かなかった。国が10年にPFASの一部について国内での製造・販売を禁止すると、都福祉保健局は「今後減少していく傾向がある」と14年に調査を中断。15年には、西野らの研究も終了した。都水道局はその間も調査を続けたが、当時の都幹部の多くは「話題になることはほとんどなかった」と話す。

◆急展開、大量漏出が判明
 数年後、事態は急転する。沖縄県内の米軍施設周辺で、PFAS汚染が深刻化していることが発覚。18年には、英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェル(48)の報道で、横田基地でもPFASを含む泡消火剤が大量に漏出したことが明らかになった。
 調査を再開した都福祉保健局は18年度、横田基地近くの「横田基地モニタリング井戸」で、都内最高値のPFASを検出。国が水道水の水質基準の議論を始めたことを受け、都水道局は19年以降、高濃度のPFASを検出した多摩地域の井戸40カ所を順次、取水停止にした。
 「国の対応からしても、都が遅れたということはない。ただ、あえて言うなら…」。元都幹部の一人が、声を潜めた。「PFASの話をすると必ず『横田基地は』となる。扱いづらいな、という意識はあったと思う」 =敬称略

<連載 汚れた水 PFASを追う>

【第1回】「PFAS汚染源」はどこだ 米軍内部文書から見つかった事実…疑念呼ぶ「横田の3000リットル」
 「PFAS(ピーファス)」。発がん性などが指摘され、自然界に存在しないはずのこの化学物質が全国で相次いで見つかり、大きな問題となっている。
 東京の多摩地域では、水道水源の井戸水から高濃度で検出。市民団体の血液検査では、半数以上の住民の血中濃度が「健康被害の恐れがある水準」を上回った。自然界で分解されにくく「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFAS汚染は、なぜ広がったのか。「汚れた水」の源流を探った。(この連載は、松島京太、岡本太、昆野夏子、渡辺真由子が担当します)


 PFAS(ピーファス) 泡消火剤やフライパンの表面加工などに使われてきた有機フッ素化合物の総称。約4700種類あるとされ、PFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)などは人体や環境への残留性が高く、腎臓がん発症や胎児・乳児の成長阻害、コレステロール値の上昇、抗体反応の低下などの健康リスクがあるとされ、国際的に規制が進む。国内では、水道水の暫定目標値をPFOSとPFOAの合計で1リットル当たり50ナノグラム以下と設定。東京・多摩地域の水道水源の井戸40カ所が、汚染の影響で取水を停止している。

2. 蒲田の富士山[1736] ipeTY4LMlXiObY5S 2023年6月14日 08:43:34 : Ah0egeUIxc : ZXhGcHpkdk9zaEk=[19] 報告
<▽49行くらい>
「頭にきた」・・・医師は自費で大規模検査をやると決断した 行政はPFAS汚染に知らんぷり(東京新聞)
2023年6月14日 06時00分

https://www.tokyo-np.co.jp/article/256423?rct=national

<連載 汚れた水 PFASを追う>B

 東京都国分寺市の雑居ビル2階、整形外科・内科「本町クリニック」。待合室では、採血を待つ20人以上の人たちが不安げな表情をしていた。院長の杉井吉彦(72)はその様子から、事態の重大さを感じた。「こんなに人が来るなんて」
 住民の血液の中にPFAS(ピーファス)はどれぐらい含まれているのか—。東京・多摩地域で水道水に使われる井戸水のPFAS汚染が判明し、市民団体は22年11月23日から、杉井のクリニックを皮切りに血液検査を始めた。汚染の広がりと健康への影響を調べるため、600人を目標にした。
 杉井がこの検査に加わった理由は「怒り」だった。

◆国も、都も、市も動かない
 20年の先行調査に協力し、国分寺市と府中市の住民22人の血中PFAS濃度が全国平均より高いことが判明。検査を実施したNPO法人は、国や都に大規模な健康調査を求め、杉井も国分寺市議会に働きかけた。
 ところが、国も、都も、市も動かない。住民の体には確実にPFASが入り込んでいるのに、汚染はないかのような対応が続いた。
 「頭にきた。それなら、ここで自費で検査する」
 新型コロナウイルスへの対応で多忙の中、自力で血液検査を始めると決断した。「300人ぐらい調べるとなると…、180万〜300万円ぐらいか」。検査会社に問い合わせ、費用を算出。少しずつ資金をためた。

◆「先生、一緒にやりませんか」
 22年夏、杉井の元を一人の男性が訪れた。「京都大の先生が研究費で調査をしてくれるらしい。杉井先生、一緒にやりませんか」。後に市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」の事務局長を担う根木山ねぎやま幸夫(76)だった。杉井は快諾し、根木山と共に会の共同代表に就任した。
 杉井は、研究費で賄えない採血スタッフの手当や事務局の運営費として30万円を寄付。住民の健康問題に対し「医者として責任を感じていた」と振り返る。

◆「PFASは公害問題。今度こそ行政が動く番だ」
 血液検査に参加した住民は、目標を上回る650人に到達した。今月8日に発表された結果によると、半数以上の住民の血中濃度が米国の健康被害の恐れがある」と定められる指標を上回った。
 高木比佐子(75)は杉井のクリニックで検査を受けた一人。8年前、PFASの健康影響と疑われる脂質異常症と診断された。今回、自身の血液に含まれる4種類のPFAS合計値が米国指標の約3倍だと知った。「私の体に蓄積されてしまったんだ。本当に怖い」
 杉井の元には毎日のように、PFASに関する相談の電話がかかってくる。検査体制が整っておらず、十分に応じられない。「答えられないんだよ、自分の患者に対して」。杉井の言葉には、悔しさといら立ちがにじむ。「PFASは公害問題。もっと大きな規模で検査や健康調査をする体制が必要。今度こそ行政が動く番だ」=敬称略

<連載 汚れた水 PFASを追う>

【第1回】「PFAS汚染源」はどこだ 米軍内部文書から見つかった事実…疑念呼ぶ「横田の3000リットル」
【第2回】東京都はずっと知っていた・・・PFAS汚染、15年前に検出した「飛行場排水B」とは

ーーー以上引用

記事末尾の重複部分を省略しました。

3. 蒲田の富士山[1741] ipeTY4LMlXiObY5S 2023年6月15日 11:28:33 : 9HFTkLQnvA : aEF1OU1yTU84c2s=[14] 報告
<■51行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
PFASの知見蓄積を怠った日本 分からないことだらけで「Q&Aすら作れない」…水質基準は米国のコピー(東京新聞)
2023年6月15日 06時00分

https://www.tokyo-np.co.jp/article/256681

<連載 汚れた水 PFASを追う>C

 「日本は出遅れている」
 2019年7月、東京都新宿区の国立感染症研究所で開かれた会合に出席した化学物質評価研究機構の技術顧問の広瀬明彦(61)は、そう発言した。集まったのは、化学物質や水道の専門家ら。この日、国内の水道水のPFAS(ピーファス)規制に向けた議論がようやく始まった。

◆米欧は2010年代半ばには基準設定
 厚生労働省の水質基準逐次改正検討会。米欧などは、すでに10年代半ばには水道水の水質基準を設定していた。会議の約1カ月前には、都水道局が、独自にPFAS濃度が高い多摩地域の水源井戸5カ所の取水を停止。国内での基準値設定は喫緊の課題だった。
 どの程度を摂取すればどのような健康被害が出るのか。国の機関が研究をリードしていた海外に比べ、日本では「毒性」の科学的知見が圧倒的に足りていなかった。広瀬がこう振り返る。「(議論のスタートは)海外での知見を集めることだった。いろんな化学物質がある中で国にとってPFASの優先順位は高くなかったのだろう」

◆「一番低い評価をとりあえず採用」
 議論開始から7カ月後、国が基準値案を示し、PFASの一種PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)の合計値で水道水1リットル当たり50ナノグラム以下を暫定目標値とした。根拠は、米国が16年に定めた生涯健康勧告値の同70ナノグラム。基本的なデータは米国の評価をそのままに、日本国民の平均的な体重50キロで換算し直した。広瀬は国の案を了承するに当たり「(海外の)一番低い評価をとりあえず採用したということだ」と総括した。
 国内の知見不足は、今も続く。今年1月の検討会では委員の一人が「目標値が『暫定』である限り、(水道事業者が守る)水質基準項目にはならない」と指摘。毒性評価の研究を早急に進めるよう求めた。
 暫定値の影響で、調査や運用は自治体に丸投げ。現状では、PFAS濃度の測定や対策は義務付けられていない。
 本紙の情報公開請求によると、都水道局は21年時点で、同50ナノグラムを上回っていた10カ所以上の水源井戸の取水を続けていた。別の井戸や河川の水を混ぜて低濃度に薄めてから各家庭に配水している。この対応に、都水道局の担当者は「問題ない」としている。

◆科学者は報告した…国は動かなかった
 「50ナノグラムは米国のコピーでしかない。科学的知見を集めてこなかったのは明らかに行政の不作為だ」。PFASの調査を全国に先駆けて取り組んできた京都大名誉教授(環境衛生学)の小泉昭夫(70)がそう批判する。
 小泉らは、米化学メーカー「3M(スリーエム)」がPFAS製造の中止を宣言したのを受けて02年、全国で汚染調査を開始。東京・多摩地域の多摩川や大阪府の工場周辺などで汚染の実態を突き止め、国に研究報告した。それでも国の動きは鈍く、疫学調査や対策は進まなかった。小泉は「なかなか火がつかず、もどかしかった」と悔しさをにじませる。
 その後、沖縄や東京でPFAS汚染が相次いで判明。海外で規制強化の動きもあり、環境省は今年1月、「PFAS総合戦略検討専門家会議」の看板を掲げ、議論を始めた。ただ、会議で現在取り組むのは、PFASについての国民向け「Q&A集」の作成で、知見の蓄積には程遠いのが実情だ。
 ある環境省関係者はこう嘆く。「Q&Aですら、期待できるようなものはきっと作れない。分かっていないことが多すぎる」=敬称略

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