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恐ろしい自爆営業。元国税が明かす、かんぽより酷い税務署の実態
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2019.12.03 大村大次郎『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』 まぐまぐニュース
過酷なノルマに追われた職員による不正販売が社会的問題となったかんぽ生命ですが、税務署員にも信じ難いノルマが課せられているようです。元国税調査官で作家の大村大次郎さんは今回、メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、自身もかつて苦しめられたという「税務調査での追徴税のノルマ」の実態を暴露するとともに、実績稼ぎのため中小企業に対して重箱の隅をつつくかのような「せこい税務調査」を繰り返す一方で、富裕層にはあくまで甘い国税の姿勢を厳しく批判しています。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年12月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
かんぽよりもひどい!税務署員のノルマ
最近、かんぽの無茶な販売ノルマが社会問題になりましたが、実は税務署でも昔からノルマが存在します。しかも、かんぽなどよりよほどひどいノルマです。
そのノルマというのは、税務調査での追徴税のノルマです。
これを一般の人に説明するには、ちょっと手間を要します。というのも、税務署というのは、一般社会では考えられないような異常な価値観があるからです。
まず税務調査というのは、どういう目的でおこなわれているかについて、説明しましょう。税務調査というのは、納税者の出した申告書に不審な点があるときに、それを確認するために行われる、というのが表向きの目的となっています。もちろん、それも税務調査の目的の一つではあります。
でも、税務調査の本当の目的はそうではありません。本当の目的は、「追徴税を稼ぐこと」です。実は税務署の調査官というのは、追徴税をどれだけ稼ぐかで、仕事が評価されます。だから、必然的に追徴税を取ることが目的とされるのです。
私が税務署員だったころは、各人の調査実績(追徴税の額など)を表にして、職員全員が回覧していました。よく保険の営業所などで、営業社員たちの契約獲得者数が棒グラフにされていたりしますが、あれと同じようなものです。だから税務調査というのは、「追徴税を稼ぐ」という方向で進められていると思った方がいいのです。
ノルマに追われる調査官たち
税務署の仕事は「公平で円滑な税務行政を行う事」などという建前はあります。しかし、現場の人間が実際に求められるのは、前項でも述べたように「税金をどれだけ稼ぐか」ということなのです。税務調査に行って、課税漏れを見つけると、つまりは追徴で課税をします。この追徴税をどれだけとってくるかが、調査官の評価を決めるものでもあります。
もし追徴税が少ない場合は、上司に怒られたり、先輩に厳しく指導されたりします。自分の給料より、とってきた追徴税が少ない場合は、「給料泥棒」だとか「お前は国家に損失を与えている」などと言われたりもします。
追徴税の獲得は、個人個人に課せられているだけではなく、部門や税務署同士でも、競い合わされてもいます。税務署内では、各部門が追徴税の多寡で競争しています。また各税務署同士も追徴税の多寡で競争しています。そして、大きな追徴税を取った調査官たちは、「優秀事績」として発表され、表彰されます。
ここまでされれば、調査官たちは嫌でもノルマ達成、追徴税稼ぎに没頭しなければならなくなります。私が現場にいたのは十数年前なので、今は変わっているかもしれないとも思ったのですが、後輩の調査官に聞くと今も昔もまったく変わらないようです。
国税庁は、公式には「税務職員にはノルマなど課していない」と言っていますが、追徴税をたくさんとってきたものが出世しているという現実がありますから、事実上ノルマはあるといえるのです。
調査官の「自爆営業」
このノルマが、どれほど厳しいものであるのか、わかりやすい例を示したいと思います。
10年前の話ではありますが、2008年5月に国税職員に関するこういうニュースが、新聞各紙で報じられました。広島国税局の若手調査官が、企業が脱税行為などをしたように装った文書を捏造(ねつぞう)し、必要のない課税をしたとして、虚偽公文書作成・行使の疑いで広島地検に書類送検されたのです。
そして広島国税局はこの調査官を即刻懲戒免職にしています。この調査官の行為とは、次のようなことです。
企業3社に税務調査に行いましたが、脱税(悪質な所得隠し)は見つかりませんでした。しかし脱税(悪質な所得隠し)があったように上司に報告、調査書を作成しました。悪質な所得隠しの場合、重加算税という罰金的な税金がかかります。この調査官は、通常の手続き通り、相手先には重加算税を求める通知書を送付しました。しかし、この送付書は、送付した直後に「誤送付だった」として自分で回収していました。そして偽の重加算税約33万円は自腹を切って納付していたのです。
公務員の給料はそれほど高いものではありませんので、30万円というのはけっこう大きいはずです。おそらく、この調査官の月給を超えていたはずです。それほど高い重加算税を、「自爆営業」したわけです。この調査官は、そうせざるを得ないほど追い込まれていたわけです。
これは、この調査官の個人的な問題ではありません。この手の事件は、国税では何度も繰り返し起きてきました。国税という組織は、不正などをもみ消す能力は非常に高いのですが、それでも、こうしてニュースで報じられるようなことが時々あるのです。
精神疾患になったり自殺する調査官も
税務署(国税)の中では、税務調査に行って追徴課税や指摘事項がまったくないことを「申告是認」といいます。「申告是認」というのは、納税者の申告に誤りがまったくないことを示し、税務行政的に見ればおめでたいことのはずです。
しかし、調査官にとって「申告是認」というのは、もっとも忌み嫌われるものです。申告是認になると、調査官は何も仕事をしていないかのような扱いを受けます。上司や先輩から叱責、嫌味を受けるのです。
申告是認が続いたために、ノイローゼになったり出勤できなくなった調査官も多いのです。筆者の同僚も、明らかに税務署のノルマのプレッシャーが原因で、精神疾患になり、長期入院を余儀なくされました。また筆者の同期の中には自殺をした人もいます。
件数消化にも追われる
調査官は、追徴税のほかに調査件数を稼がなくてはなりません。国税庁の事務計画でそう決められているのです。どれだけの調査件数を行なったのか、というのは昔から国税庁の世間に対する「仕事をやってますアピール」の一つでした。だから、国税庁は、全体で毎年、一定の調査件数をこなさなくてはならないのです。
だから、末端の税務署の調査官は、だいたい週に一件は税務調査をこなさなくてはならないのです。週に一件というのは、実はけっこう大変です。実際の調査だけではなく、調査先の選定、調査の下調べ、納税者との追徴税の交渉、調査後の調書の作成まで、すべて含めて1週間で済まさなければならないのですから。となると、実際の調査(納税者宅に赴く)を行う日程というのは、せいぜい2〜3日しかとることができません。2〜3日で納税者の事を調査しなければならないとなると、よほど要領よくしないとできません。会社の帳簿にしろ、2〜3日で全部を見ることはできません。税務調査では帳簿だけじゃなく、会社の概況やら、従業員の聞き取りなどもしなくてはならないのです。それはそれは大変です。
重箱の隅をつつく
となると、調査官たちはどういう行動にでるか?重箱の隅をつつくようなせこい税務調査を繰り返すようになるのです。その結果、本当に悪質な脱税を解明することはできず、それほど悪質ではない納税者をいたずらに虐めることになっているのです。
調査官たちは、納税者が不正を行っていないかどうか時間をかけて念入りに調査をするよりも、どうでもいいような些細な間違いを素早く見つける「重箱の隅つつき」にまい進するのです。
国税庁が税務調査で追徴税を課した事績のほとんどは、「期間損益」の経理ミスです。これは、簡単に言えば、「期末の売上が翌期にずれこんでいたもの」です。決算期末の売上というのは、なかなか正確に計上しづらいものです。期中に商品を納品していたとしても、請求書の発行が、期末後にずれ込んだりすれば、翌期の売上として計上するようなことも多々あります。
調査官たちは、そういうものを見つけ出して「これは期中で処理するべき」として、追徴税を課すのです。期中の売上からは漏れていても、翌期の売上には計上されているので、長い目で見れば、課税漏れにはなっていないにも関わらずです。そういう「重箱の隅つつき」ばかりをしていて、納税者の信頼を得られるわけはないのです。
国税が毎年発表する「脱税白書」というのは、こういうノルマ稼ぎ、重箱の隅つつきがほとんどなのです。そして、課税漏れ事績の金額が、毎年、同じ水準になるのも、こういうノルマのためなのです。
国税は仕事をしているアピールをしたいので、なるべく多くの金額の事績をあげたい、しかし、ある年だけ突出して金額が多くなると翌年以降が大変になる、そのために毎年、同じ水準の事績となっているのです。そして、毎年、同じ水準の事績をあげるために、調査官たちは、過酷なノルマを課せられているのです。
こういう「足で稼ぐ昔ながらの営業」のような税務調査を、戦後からずっと国税庁は行っているのです。もちろん、時代に対応できているはずがありません。
現代では、昔のような「あからさまな脱税」は少なくなった一方で、海外取引やネット取引などを使った巧妙な脱税が増えています。
国税としては、全体の調査件数を減らしても、ちゃんと情報を収集し悪質と思われる納税者を絞り込み、準備をした上で徹底的な調査をするべきでしょう。その代わり、ちょっとした間違いや、勘違いによる課税漏れは指導にとどめる、そういう調査が、国民から求められているはずです。そのためには、海外取引やネット取引の人員を増やし、育成していかなければならないはずです。
そういうことは、普通の民間企業であれば何十年も前から行っていることです。しかし、現在の税務当局は、戦後からずっとほぼ同じようなやり方をしてきたのです。
組織としての近代化をおざなりにし、巨額に膨れ上がった富裕層の資産はスルーし、苦しくなっていくばかりの中小企業の重箱の隅をつついて、形ばかりの実績を残す…。それが、国税の本当の姿なのです。そして、この国税の姿は、日本の政府を象徴しているものでもあると筆者は思います。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より一部抜粋)
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※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年12月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
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