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オンワード、600店閉鎖・赤字転落の英断…アパレル業界の旧態依然たる経営と決別
https://biz-journal.jp/2019/11/post_128999.html
2019.11.22 文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師 Business Journal
オンワードのHPより
■1.全店舗の2割にあたる約600店舗を閉鎖
10月4日にオンワードホールディングス(HD)が、グループ全体の約3000店舗の2割閉鎖を柱とした構造改革を進め収益性を高めると発表して、約1カ月半が過ぎた。2020年2月期の業績予想を下方修正し、最終損益は従来の55億円の黒字から240億円の赤字へ引き下げた。売上高は据え置きながらも、営業利益は12億円の黒字に下方修正。一時大きく下げた株価は回復し、11月の初週には20%も戻した。構造改革案は支持されたともみえるが、同社の課題をいくつか検証してみたい。
まず大きな課題は、現状の百貨店をメインとするビジネスモデルである。子会社のオンワード樫山の百貨店売上比率は66%といわれており、14年2月期から5年連続で売上は減少し、この間で22.8%減となっている。百貨店売上の減少も当然、一因であるが、これは1990年代から続く傾向であり、今さら言い訳にはならない。
同業の山陽商会、レナウンも売上減と赤字決算に沈んでいる。黒字決算を続けるオンワードは、百貨店側からの依存度もより高くなっていた。大量店舗閉鎖にもっとも衝撃を受けたのは、都心以外の百貨店であろう。ファッションは百貨店にとって、食料品などと違い利益率が高くリスクも少ない“おいしい商品”である。閉鎖が続く地方百貨店にすれば、この商品供給は命綱である。
元来、アパレル企業が売上が低い地方百貨店へ出店する際は、都心にある同じ百貨店グループの旗艦店で売上が高い売場を確保してくれるという暗黙の了解がなされてきた。セット販売みたいな取引形態だが、1990年初頭から始まったこうした形態が、百貨店全体の売上減が続いてもなぜ変化・進化しなかったのだろうか。値入率(店頭の販売価格と仕入価格の差額の販売価格に対する比率)が10ポイント前後まで下がっており、百貨店側が己の努力を放棄して仕入れ側に一方的な条件変更を受け入れさせたとみられても仕方がない。
一方、供給側はコスト率を下げて利益率の確保を試みる。新商品はますます価格と商品の質が乖離し、魅力がなくなるという悪いスパイラルに落ち込んでいた。そうしたなか、今回オンワードHDは百貨店売上比率を将来50%まで下げると発表した。
■2.廣内会長退任と保元社長の決断
1997年から22年間も代表取締役の座につき、19年4月2日にオープンした「カシヤマ ダイカンヤマ」のプロジェクトリーダーも精力的に務めていた廣内武会長は、19年5月23日付で退任した。良い意味での世代交代であり、同社を取り巻く環境も変わるだろう。
今回の大英断を発表した保元道宣社長は、2006年に入社している。東大法学部から官僚となり、その後にNTTのインターネット販売会社に転職。業界が弱いECについての知見は素晴らしく、2020年2月期上半期も「オンワード・クローゼット」のEC売上高は153億円(前年同期比34%増)、通年では350億円を予想する。21年度計画で500億円、将来的には1000憶円を目指している。従来から「体育会系体質」で有名な同社、そしてファッション業界にあっては異質な存在である。
オンワードHD は20年2月期からの3カ年中期計画で、3つの成長戦略を掲げた。
(1)クリエーション・ファースト事業の展開
多様化するマーケットの中では、従来の売れ筋追及の短期納品ではなく、クリエーションが生み出す差別化商品でないといけない。米国での新店オープンに続き、10月19日に東京・青山に路面で初コンセプトストア「J・プレス&サンズアオヤマ」をオープンした。新ラインは若い新規顧客開拓を目指した試験的なMDである。カタログを見る限り「J・プレス」の本来の普遍性はまったく生かされておらず、モードに振れ過ぎ、従来の顧客には残念なラインであった。大きく戻ってきているアメリカントラッドのコア・ヴァリューを生かすべきではなかったかと疑問が残る。
(2)ファクトリー・トゥ・カスタマー事業の加速
17年からスタートした「カシヤマ・ザ・スマートテーラー」のオーダーメードスーツ事業は、店頭在庫が不要でロスがほとんどないビジネスモデルである。テレビCMをはじめ認知拡大に大掛かりなメディア作戦が展開され、女性専門店のオープンをはじめ強気な店舗展開が進められている。
また、生産部門でもメンズは大連(中国)、レディスも上海(中国)近郊で基盤は確立されている。それに加えて、四半世紀ぶりに国内の多品種小ロット、QR(クイックレスポンス)対応のために国内自社工場の稼働を開始した。元ゼネラルクロージングの株式100%を取得し、旧生産設備をベースに新工場に10億5000万円を投資し「カシヤマ・サガ」とした最新工場に生まれ変わり稼働している。
(3)ハイクオリティ・ライフスタイル事業開発
ビューティー事業の強化に加えて、非アパレル領域への事業拡大を続ける。親和性のある事業であれば、積極的なM&A(合併・買収)を進め、構造改革を進めながら売上を維持するためには必要な手段であろう。
成長への布石とともに進められる不採算事業からの撤退として、国内百貨店のみならず韓国市場からは完全撤退し、米国からも主力ブランド「ジョゼフ」が撤退。欧州では不採算店を閉店させる。中国市場では、販売事業について中国の現地企業と提携し、新たな可能性を探る。海外事業の赤字を国内事業の黒字で埋める悪しき慣習から、早く脱皮する必要がある。オンワードの鬼門であり続けた海外事業の本質的改革は必須である。
■4.まとめ
オンワードHDは、従来の時代遅れのビジネスモデルとの決別を宣言した。各メディアや拙著でも指摘しているが、アパレル業界全体は旧態依然のままである。しかし、オンワードHDは大きな転換期を迎えた。21年2月期まで不採算店舗の閉店、海外事業の清算とマイナス要因が続き、特別損失として約250億円(事業整理損約30億円、減損損失約220億円)を計上した。遅いとはいえ、この大英断を下した保元社長と役員の方々に敬意を表し、熱いエールを送りたい。3年後の新生オンワードHDに大きな期待を寄せるものである。
(文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師)
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