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厚生年金は長く働けば増える 実は支え手も増えている
どうなる年金(2)
2019/11/11
人生を変えるマネーハック
今月のマネーハックのテーマは「年金」です。国による年金の財政検証結果(年金制度の将来見通し)から、年金に関する最新の「読み方」「つきあい方」を考えています。
いまだに年金破綻論が幅を利かせています。しかし、現実的に破綻は考えにくいというのが最新の財政検証結果の読み方である、と先週の「年金破綻リスクあるか 『5年前より悪くなっていない』」で解説しました。
今週は「支え手を増やす」というよく聞くフレーズについて、マネーハックの視点で考えてみましょう。
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支え手とは「負担はするが年金はもらえない人」ではない
年金の財政検証結果で徐々にその重要性が高まっているのは、オプション試算と呼ばれる追加シミュレーションの数字です。
5年前も同様の試算が行われていますが、今回はより情報量が増えています。現在行われている制度改正に向けた議論の論拠としても用いられています。
議論の中に、「支え手を増やす」というテーマがあります。公的年金財政は保険料収入と年金給付のバランスを長期的に取ることを目指しています。ですから、現役世代がよりたくさん保険料を納める立場になることや、60代でも保険料を納める立場であり続けてもらえることは、年金財政的に重要です。
ただ、この議論は「負担させられる」というイメージで誤解されているようにも思います。「死ぬまで働けというのか」「保険料は納めてもどうせもらえないに違いない」と批判する人がいますが、これはおそらく「支え手を増やす」という言葉が一人歩きしてしまった結果なのでしょう。
保険料を納めることは確かに年金制度の支え手になることですが、実は「将来はもらい手になる」こととセットでもあります。
年金加入者の増加は給付水準の向上につながる
私たちの年金の給付水準(給付額)は何もしなくても上がるわけではありません。現状の制度では「給付額の計算式を書き換えて全国民の年金額を増やす」ことはできません。それは保険料収入と年金給付のバランスを取るという方針に反するからです。
しかし、保険料を納める立場になることで、私たちは「自分の年金」の給付額を上げることができます。
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団塊の世代が引退しても厚生年金の加入者は増加
なぜなら、今、保険料を納めている納付履歴は受給権となり、「将来は年金をもらえる」立場に変わります。つまり、年金制度の支え手のまま人生を終えるのではなく、老後にはもらい手になれるわけです。
年金の財政検証結果でも、多くの国民が厚生年金制度に加入し保険料を納付する立場になれば、ひいては国民全体の所得代替率(現役男性の平均手取り収入額に対する公的年金の給付額の割合)を引き上げることになると示されています。
厚生労働省が示している例でいえば、現在の国民年金は1人当たり月6.5万円程度(国民年金に40年間加入したケース)にすぎません。一方、厚生年金を上乗せできると、合計で月15.6万円くらいまでアップします(平均的年収で厚生年金に40年間加入したケース)。年間100万円も年金収入が変わってきます。そしてその差が人生100年時代といわれる老後の間、一生続くことになります。
厚生年金保険料率は18.3%ですから、本人は給与や賞与からその半分である9.15%を納めます。大きな負担ですが、実はこれ、保険料をたくさん給料から引かれるという「支え手」の面と、年金を多くもらえるという「もらい手」の面の2つに影響してくるわけです。
団塊の世代が引退しても厚生年金の加入者は増加
団塊の世代の引退により、労働力人口は減少したといわれています。日本の総人口は2011年以降、継続して減少しています。また、この30年ほどで非正規雇用が増えたことが問題となってきました。
これらを考えれば、厚生年金に入っている人、つまり正社員の数は平成の30年間を通じて減少したのではないかと思われるかもしれません。
しかし、現在の方が厚生年金の加入者数は多いとしたらどうでしょうか。意外に思われるかもしれませんが、着実に増えているのです。
1990年(平成2年)3月末で厚生年金の被保険者(加入者)は2988万人でした。つまり3000万人いなかったことになります。
その後、98年3月末は3346万人、2008年3月末は3457万人、と順調に伸び、18年(平成30年)3月末ではなんと3911万人まで増えています(現在では公務員も厚生年金だが、ここでは除いている)。
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「支え手」より「もらい手」を意識しよう
この30年ほどで、女性の厚生年金加入者は約500万人増えています。平成を通じて女性の多くが働くようになりましたし、そのための職場環境が整えられたことがきちんと数字に表れています。
最近では短時間勤務の労働者も、会社に厚生年金加入を求める政策が取られており、これも加入者数の増加に寄与しました。
厚生年金が適用される対象者層を広げると、国民の所得代替率を高める可能性が財政検証結果のオプション試算で報告されており、現在の制度改正では適用拡大についての議論が続いています。
また、本来は加入義務がありながら、社員の厚生年金保険料を納めていない企業も少なからずあるとみられ、こうした会社をどう加入させていくかも検討されています。
「支え手」より「もらい手」を意識しよう
今まで私たちは「支え手を増やす」という言葉にとらわれるあまり、「将来の自分の年金が増える」という視点がなかったように思います。だからこそ、「扶養に入って社会保険料を払わない(パートなどの)働き方をしよう」と考えてしまうわけです。
しかし、厚生年金に入るかどうかは「制度としての支え手を増やす」問題を解消するだけでなく、「個人としてもらえる額を増やす」問題も同時に解消する有力な選択肢であることに間違いありません。
今は、正規雇用で働き続けるには絶好のチャンスです。全国的に人材不足は続いており、正社員の有効求人倍率は1.0倍を超えています。
働き方の多様化への企業の対応も進んでいるため、短時間勤務などの選択肢も増えています。産休や育休から職場復帰するのはもはや当たり前の働き方になりました。
正社員で働いている人はなるべく長く働き続けること(なお、家事育児を男性も担当することが、女性の働きやすさにつながることも大事な論点です)、これから働く人は正社員をできるだけ選ぶことを考えてみてください。
それはきっと、「年金制度の安心」だけではなく「あなたの老後の安心」につながっていくことでしょう。
山崎俊輔
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「スマホ1台で1000万円得する! マネーアプリ超活用術」(PHP研究所)など。http://financialwisdom.jp
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO51898500X01C19A1000000
5年前の想定より改善する年金財政
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永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
2019/09/15 08:24
年金「大幅減」に潜む誤解 実質額、代替率ほど減らず|
マネー研究所|NIKKEI STYLE
公的年金の財政検証では現役男性の平均手取り賃金に対する年金額の比率である「所得代替率」が低下を続ける傾向が明らかになった。
先日、政府から5年に一度公表される財政検証が示されましたが、メディアの不安をあおる報道ばかりで、きちんと理解されている国民は極めて少ないのではないでしょうか。
実際、今回6つの経済前提の下で試算されていますが、経済前提が前回よりかなり慎重化しているにもかかわらず、所得代替率(=年金額/現役世代賃金)は前回から上昇しています。
背景には、前回公表以降の女性や高齢者の就労増等により、前回の想定よりも年金財政が改善していることがあります。
ただ、記事にもある通り、実質額は代替率ほど減らない結果となってますが、この背景には、財政検証が物価上昇率より賃金上昇率が高くなることが前提になっていることがあります。
しかし近年、賃金上昇率が物価上昇率を上回ることがほとんどなく、今後もこの状況が変わらなければ、実質年金の目減りを意味します。
こうした点に留意しつつ、給付調整圧力を緩和すべく、高齢者の就労長期化を中心とした前向きな政策を進めていただきたいものです。
#年金
#社会保障
#財政検証
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永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。あしぎん総合研究所客員研究員、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事。専門は経済統計、マクロ経済分析。
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年金財政は「専業主婦の優遇」を廃止すれば抜本的に改善する
塚崎公義:久留米大学商学部教授
経済・政治 重要ニュース解説「今を読む」
2019.9.6 5:20
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専業主婦の年金見直し
年金財政の見直しをするなら「専業主婦の優遇」は避けては通れない問題です Photo:PIXTA
先日、厚生労働省が行った年金の財政検証では、改革案を考える上で参考になるオプションが提示された。しかし、最も重要な「専業主婦優遇の廃止」に触れていないのは非常に残念である。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
財政検証が示した改革のオプション
厚生労働省が先月発表した年金の財政検証は、「年金が2割減る」などのミスリーディングな報道もあり、話題となった。この点については前回の拙稿「『年金が2割減る』報道は誤り、ミスリードを招いた数字の罠」に示した通り、年金額が減るわけではないので、過度な心配は不要である。
しかし、少子高齢化が進む以上、年金制度の改革は避けて通れない。そこで、財政検証はさまざまなオプションを示し、改革の議論の参考に供している。
その大枠の1つは、「被用者保険のさらなる適用拡大」である。零細企業に勤めている短時間労働者等々も幅広く厚生年金に加入させたらどうなるか、という試算である。
もう1つは、「保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択」である。「75歳まで働いて厚生年金保険料を払い、75歳から年金を受け取り始める」といった選択肢を労働者に与えたらどうなるか、という試算だ。
各オプションとも一時しのぎ
根本的な解決にはならず
零細企業の短時間労働者を厚生年金に加入させれば、現役世代の払う年金保険料が今より増えるので、高齢者の受け取る年金が増える。現在の年金制度が賦課方式(現役世代が高齢者を支える制度)であるのだから、当然である。
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抜本的な対策は年金の減額が有効
しかし、この効果は一時的である。新しく厚生年金保険料を払い始めた現在の現役世代が高齢者になったときには、今より多くの高齢者が年金を受け取るようになるからである。
それまでの間に少子化が劇的に止まり、将来の現役世代の人数が大幅に増えていればともかく、そうでない限り、厚生年金保険料を払う現役世代と厚生年金を受け取る高齢者の比率が変わらないので、今と同じ状態に戻るだろう。
「75歳まで働いて厚生年金保険料を払い、75歳から年金を受け取り始める」といった選択肢も、同様だ。それを選択した高齢者が75歳になったときに受け取る年金額が、今の高齢者より多くなるからである。
抜本的な対策としては
年金の減額が有効
年金財政を抜本的に改善する1つ目の選択肢は、年金支給額の大幅な引き下げである。少子高齢化で、現役世代と高齢者の比率が変化するのに伴い、高齢者への年金支給額を引き下げるのだ。
2つ目の選択肢は、年金保険料を長く払い込ませ、年金受給開始年齢を遅らせることである。つまり、高齢者の定義を65歳以上ではなく75歳以上に変更する。
報告書は、「75歳まで受け取りを待てば年金額が増える制度」を想定しているが、これと1つ目の選択肢を組み合わせれば、事実上、2つ目の選択肢と似たような結果となろう。
すなわち、年金支給額を「このままでは年金だけでは暮らせない」というところまで大幅に引き下げ、「でも、75歳まで働いて年金保険料を払えば、75歳からは年金だけで生活できる」という方向に人々を誘導するのである。
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もっと抜本的な対策は専業主婦の優遇廃止
人生100年時代であるから、20歳から60歳まで40年働いただけで、その後の40年間を年金生活でエンジョイしよう、と考えるのは虫が良すぎるだろう。75歳まで働くことが自然な時代が遠からずくるだろうから、年金制度もその方向に誘導していくのは悪くない話だ。
これを年金制度の改悪だ、として政府を批判することは避けたい。少子高齢化の世の中では、誰が総理大臣をやっても、誰かからの徴収を増やすか誰かへの支払いを減らすか、あるいは両方をせざるを得ないからだ。
さらに抜本的な対策は
専業主婦の優遇をやめること
しかし、それ以上に抜本的な対策がある。現在はサラリーマンの妻が専業主婦だと年金保険料を支払わなくてよいことになっているが、この制度を廃止すればよい。
現在、900万人以上の専業主婦が国民年金の第3号被保険者という身分であり、彼らは国民年金保険料を支払わなくてよいことになっている。夫が厚生年金保険料を支払うことで、妻の分の国民年金も払ったことになるからだ。
この制度を廃止すれば、1人あたり20万円の国民年金保険料が徴収できる。年金保険料を払う人数が16%も増えるのである。しかも、夫の給料から天引きすれば徴収漏れもない。しかも将来の年金支給額が増えることもないから、一時しのぎではない抜本的な対策である。
これは、年金財政の健全化に大きく資するのみならず、公平の観点からも女性の労働参加という観点からも、望ましい改革となろう。
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自営業者や共働き家庭との公平のために
自営業者や共働き家庭との
公平のために
自営業者の妻は、たとえ働いていなくても国民年金保険料を払わされる。サラリーマンが共働きだと、妻が自営業者だろうとサラリーウーマンだろうと年金保険料を払わされる。
失業者の妻も、支払う義務が一応ある。免除等が受けられる場合もあるが、払ったことにしてもらえるわけではないので、払わなければ老後に受け取る年金が減る。その分だけサラリーマンの専業主婦より不利であることに変わりはないのである。
それなのに、なぜサラリーマンの妻だけが優遇されているのか、合理的な理由が筆者には思いつかない。
もう1つ、この制度が「130万円の壁」として、サラリーマンの妻のパート時間を制限しているという問題がある。
ちなみに本稿における専業主婦は、パートで働いている主婦も含んでいる。パート等の収入が130万円未満である、といった条件を満たすサラリーマンの配偶者のことである。
サラリーマンの妻がパートで働いて年収が130万円に達すると、年金上は専業主婦と見なしてもらえないので、年金保険料の支払い義務が生じる。それを避けるために、年収が130万円に達しない範囲に労働時間を抑えている専業主婦が多いのだ。
これは、せっかくの妻の労働力を十分に生かせていないわけであるから、大変もったいない。特に、今後は少子高齢化による労働力不足の時代になるのだから、この制度を廃止して主婦にも130万円の壁を気にせず思い切り働いてもらうべきであろう。
https://diamond.jp/articles/-/213964
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