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ZOZO、“増収増益”に隠れる憂慮すべき事態…セール依存で副作用、前澤氏の負の遺産
https://biz-journal.jp/2019/11/post_127076.html
2019.11.09 文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント Business Journal
ヤフーへのZOZO売却を発表した前澤友作氏(写真:日刊現代/アフロ)
衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOの成長鈍化が鮮明だ。10月31日発表の2019年4〜9月期の連結売上高は、前年同期比6.5%増の572億円と1桁の増収率にとどまった。18年4〜9月期の増収率が25.9%だったので、伸びが大きく鈍化したことがわかる。以前は2桁の増収率が当たり前で、16年4〜9月期には40%超を叩き出していた。しかし、今はそうした面影はない。ZOZOは明らかに失速している。
商品取扱高は11.8%増の1579億円、営業利益は31.8%増の132億円、純利益は25.9%増の79億円だった。このように、利益は大きく伸びた。ただ、それは18年4〜9月期が極端に悪かったため、その反動で伸びたにすぎない。18年4〜9月期は、同年1月から販売を始めたプライベートブランド(PB)商品「ゾゾ」の販売が伸び悩んだ一方で、PBにかかる費用がかさんだためだ。
こうした事情があるため、19年4〜9月期が大幅増益だったことを手放しで歓迎することはできない。PB発売前の17年4〜9月期と比べると営業利益は5億円少なく、純利益は16億円少ない水準だ。また、営業利益が商品取扱高に占める割合は8%。PBの失敗が直撃した18年4〜9月期を除けば、それまで4〜9月期ベースでは10%超えが続いていたので、収益性が大きく悪化していることがわかる。
こうしたつまずきは、PBの失敗から始まった。ZOZOは当初、PBの注文で使う採寸用ボディースーツ「ゾゾスーツ」を無料で大量配布し、大きな話題を集めた。そうした状況からか、19年3月期にPB事業で200億円の売上高を実現するという大きな目標を掲げていた。しかし、蓋を開けてみれば売り上げは伸び悩み、19年3月期は27億円にとどまっている。配送に遅延が生じるなどトラブルに見舞われたほか、「着るのが面倒」といった理由でゾゾスーツを取り寄せるだけ取り寄せて実際には利用しない人が続出したためだ。
PB事業の失敗が響き、19年3月期の連結純利益は前期比21%減と大きく減った。減益は07年の上場以来初となる。
■ZOZOに立ちはだかる懸念材料
こうしたゴタゴタが続くなか、今年9月に大きな動きを見せた。ポータルサイト大手のヤフー(現Zホールディングス)がZOZOを株式公開買い付け(TOB)で子会社化すると発表。これを機に、ZOZO創業者で同社株式の36.8%を保有する筆頭株主だった前澤友作氏が社長を退いた。前澤氏はTOBに応じて、大半の株式を売却する見込みだ。
ZOZOは、ZHDの傘下に入れば「Yahoo!(ヤフー)」からの送客が見込める。これはZOZOの経営にプラスに働くだろう。ただ、その一方で懸念材料もあり、ZOZOには暗雲が立ち込めている。
懸念材料とは「年間購入者数の伸びの鈍化」だ。少し前までは年間購入者数は右肩上がりで伸びていた。しかし、19年4〜6月期に17四半期ぶりに減少に転じた。続く7〜9月期の購入者数は4〜6月期から10万人増え822万人となったが、伸び率はわずか1.3%にとどまっている。
19年7〜9月期の購入者数が増えたのは、10月の消費増税前に実施したセールが集客に寄与した面がある。ただ、セール販売の比率が上昇したことで平均商品単価が大きく低下するという副作用も生んでいる。平均商品単価の低下は収益性の低下につながるため、喜ばしいことではない。
19年7〜9月期の平均商品単価は前年同期から5%低下し、3463円となってしまった。それでも1注文当たりの購入点数が伸びれば、それほど問題ではない。だが、1注文当たりの購入点数は、前年同期から横ばいの2.14にとどまっている。購入点数が増えなくても、購入者数が大きく伸びれば売り上げは増えるが、前述した通り年間購入者数の伸び率は1.3%にとどまっているうえ、セールで得られた果実が少なく、憂慮すべき事態といえるだろう。
さらに、セールを実施することで安売りによるイメージ低下リスクが高まるという問題も生じる。特に高価格品を扱うブランドにとっては憂慮すべきことだろう。それならばセールに参加しなければいいだけとも思えるが、たとえ当該ブランドがセールに参加しなくても、他のブランドがセールを行うことでモール自体のブランドイメージが低下し、当該ブランドのイメージも低下してしまうリスクがあるといえる。
実際に、セールによるブランドイメージの低下を懸念してゾゾタウンから撤退したブランドもある。「23区」などを運営するオンワードホールディングスがそのひとつだ。同社は、ZOZOが18年12月から始めたゾゾタウンの有料会員向けの割引サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」(現在は終了)によってブランドイメージが低下することを嫌い、ゾゾタウンから撤退した。
同サービスをめぐっては、子ども服ブランド「ミキハウス」を展開する三起商行や宝飾品ブランドを展開するヨンドシーホールディングスなどがブランドイメージの低下を懸念してゾゾタウンへの出品を停止するといったトラブルが過去に起きている。
こういった割引やセールは、購入者数を増やせるというメリットがある一方で、ブランドの離反が起きかねないというデメリットも存在する。一長一短があり、抜本的な事態打開策にはなり得ないだろう。
■自社サイト販売を強化するアパレル各社
こうした状況のなかでZOZOは、ZHDの傘下に入る。それにより、ヤフーからの送客が見込めるため、購入者数の増加が期待できる。また、両者の顧客層は大きく異なるので、新たな顧客層の開拓も期待できる。ZOZOの顧客は20〜30歳代が中心で女性の割合が7割と高い一方、男性は3割にとどまる。他方、ヤフーの利用者は30〜40歳代が中心で女性の割合が4割にとどまる一方、男性が6割と高い。それぞれ強みとする顧客層が異なっている。
ZOZOはZHDの傘下入りにより、これまで手薄だった30〜40歳代の男性を取り込むチャンスが到来する。もっとも、そういった新たな顧客層を開拓するためには、対応したブランドのラインアップを充実させることが必要となる。ただ、ゾゾタウンは30〜40歳代の男性向けのブランドが充実しているとは言いがたい。そのため、今後はこうした層に対応した有力なブランドの誘致が必要になってくるだろう。
いずれにせよ、ZOZOがさらなる成長を果たすには、出店ブランドの充実化が欠かせない。ただ、アパレル各社は自社サイトでの販売を強化する動きを強めており、状況は簡単ではない。
たとえば、ユナイテッドアローズが代表的だろう。同社の19年4〜6月期の自社サイト経由売上高は前期比19.2%増と大きく伸び、構成比は1ポイント増の27.0%に上昇した。一方、ゾゾタウン経由の売上高は9.6%増と伸びてはいるが、構成比は2.2ポイント減の50.8%に低下している。自社サイトの存在感が高まっていることがわかる。
こうした流れは、今後さらに強まっていくだろう。そうしたなか、ZOZOがさらなる成長を果たすためには斬新な一手が必要になりそうだ。どのような手を繰り出していくのかに注目していきたい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
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