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アマゾン、燻る西友買収の観測…“アマゾン・エフェクト”、日本の経済構造の脅威に
https://biz-journal.jp/2019/11/post_126639.html
2019.11.09 文=編集部 Business Journal
サイト「Amazon」より
「一つの妖怪が世界にあらわれた――アマゾン・エフェクトという妖怪が」。マルクス・エンゲルスの『共産党宣言』の有名な書き出しをもじれば、こうなる。
アマゾン・エフェクトとは米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムが進出する業界で進行している変化や混乱を指す。影響は百貨店やスーパー、衣料品といった伝統的な小売業だけではなく、コンテンツなど幅広い業界に及ぶ。玩具大手トイザラスや百貨店大手シアーズ・ホールディングスなどの名門企業の行き詰まりが相次いだ。
米国のファストファッション大手フォーエバー21は9月、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻した。フォーエバー21を追い詰めたのも、やはりアマゾンだった。
1984年創業のフォーエバー21は、売り切ったら追加発注せず新しい商品を仕入れる「ファストファッション」と呼ばれるビジネスモデルで成長してきた。日本には2009年に初上陸。東京・原宿に1号店をオープンして話題となった。その後、銀座松坂屋にテナントとして入居したのをはじめ、北海道から沖縄まで最盛期には25店舗を構えていた。銀座店は13年、原宿店も17年にクローズするなど、規模を縮小してきた。
経営破綻に伴い、日本国内の全店舗14店を10月末までに閉店した。カナダからも撤退し、欧州の大半の店を閉じる。米国内では200店近くを閉鎖。グローバルな店舗数は800店からほぼ半減する見通しだ。
ユニクロが“勝ち組”の時代にも変化か
ファストファッションは、フォーエバー21同様、どこも苦戦している。「ZARA(ザラ)」などを運営する衣料品の世界最大手、スペインのインディテックスは、銀座マロニエ通り店を閉じた。スウェーデンの「H&M(エイチ・アンド・エム)」は銀座店をクローズ。米国の「GAP(ギャップ)」は渋谷店、原宿店を閉めた。アマゾン・エフェクトの猛威に抗する術(すべ)がなかった。
ネット通販の普及によって消費構造は劇的に変化した。とりわけ、2000年前後に生まれた世代は、スマホを通じてネット空間の店と常につながっている。そこには開店時間も閉店時間もない。スマホの画面には、過去の購買履歴をもとに、次々と「あなただけへのお薦め商品」の情報が溢れ返っている。わざわざ店に足を運んで衣料品を買う必要がなくなった。
ユニクロのファーストリテイリングは小売業の“勝ち組”といわれている。ユニクロはショッピングセンターの中核テナントとして引く手あまただが、ネット通販が米国並みに拡大すれば、ユニクロも今の競争力を保つことが難しくなる。
百貨店を直撃
アマゾン・エフェクトの直撃を受け、日本の小売業は大きな曲がり角に差しかかった。日本の小売業を引っ張ってきたセブン&アイ・ホールディングスは、大規模なリストラ策を打ち出した。傘下のコンビニ最大手セブン-イレブンの不採算店約1000店を閉鎖・移転。不振が続く総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂は33店を閉店。百貨店のそごう・西武では5店(西武岡ア店、西武大津店、そごう西神店、そごう徳島店、そごう川口店)の営業をやめ、2店(西武秋田店、西武福井店)の売り場面積を削減。18年度末と比べた22年度末の従業員数はヨーカ堂で1700人、そごう・西武で1300人減らす。
百貨店を主要販路としてきた女性向けファッションブランド「23区」を展開するオンワードホールディングスは、国内外の約2割に相当する600店舗を閉鎖する。百貨店での販売不振や電子商取引(EC)の急拡大に対応するため構造改革に踏み切る。
ショッピングセンターは「廃墟モール」と化すのか
ネット通販に駆逐されるのは百貨店やGMSだけではない。ショッピングセンター(SC)も淘汰される。小売店や外食店などを施設内に抱え、主に賃料で収益を上げるのがSCのビジネスモデル。イオン傘下のイオンモールや三井不動産の「ららぽーと」は、これまではSCの勝ち組だった。
ところが、SCの閉鎖が相次ぐ。つくばエクスプレス(TX)のつくば駅前にある「クレオ」が18年に全面閉鎖した。中核テナントだったそごう・西武やイオンの総合スーパーが相次いで撤退したためだ。こうした動きは全国に広がる。両備グループ(岡山市)が運営する「ジョイフルタウン岡山」はアネックス棟を18年に閉めた。今年2月、北九州市では地元百貨店・井筒屋が運営するSC「コレット」が店を閉じた。駅前や市内の一等地であっても生き残れなくなってきている。
米国では猛烈な勢いでSCが消えている。米国には11万6000のSCがあったが、2017年の1年間に8640のモールが閉鎖に追い込まれた。さらに、22年までに25%(2万9000カ所)のモールがなくなると予想されている。米国で起こることは、早晩、日本でも必ず起こる。日本でも消費の場がリアルからネットにシフトしてきているからだ。ネットでも買える安価な衣料品を扱う実店舗は姿を消す。「廃墟モール」はアマゾンが物流拠点として活用することになるかもしれない。
次は食料品のネット通販
アマゾンが次に本格進出するのが食料品のネット通販だ。最近では米高級食品店「ディーン&デル―カ」が、発祥の地ニューヨークなどで大量閉店。存続が危ぶまれている。日本では03年、東京・丸の内に初出店。ロゴをプリントしたトートバックが若い女性の間で流行した。
アマゾンは高級食品スーパー、ホールフーズマーケットを17年に1兆4800億円で買収した。アマゾンの会員制通販「プライム・ナウ」を活用して、午前8時から午前10時までに注文した場合、2時間以内に食料品を届けるサービスをホールフーズの顧客に始めた。日本では食料品のネット通販は今は低調だが、やがて、米国並みに普及するといわれている。アマゾンが米ウォルマート・ストアーズ傘下の西友を買収して、食料品のネット通販の拠点にするのではないかとの観測が流れている。
(文=編集部)
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