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物価水準、都道府県間で大きな格差判明…首都圏住民、消費増税の「痛税感」大きく不公平
https://biz-journal.jp/2019/11/post_126094.html
2019.11.05 文=山田稔/ジャーナリスト Business Journal
東京五輪開催で東京の物価はますます高騰?(建設が進む新国立競技場)
消費増税に伴う軽減税率の導入などで、小売り・サービス業界は対応に追われた。メディアも業界の混乱ぶりや税体系のわかりにくさを繰り返し報じてきた。もっとも、景気がパッとしないこの時期になぜ増税するのかという理由や、増税分の使途など根幹的なテーマに直接言及する報道は少なかった。
消費増税に伴う最大5%のポイント還元の原資として政府は2798億円を2019年度予算に計上しているが、これで景気を下支えできる保証はない。今後、物価にどのような影響が出るのかも気がかりだ。そこで全国の物価水準を改めてチェックしてみた。データは総務省の小売物価統計調査(構造編)の2018年結果だ。
まずは都道府県別の物価水準(物価地域差指数=総合)をみてみよう。上位5都府県は次の通り。全国の物価水準=100である。
(1)東京都 104.4
(2)神奈川県 104.3
(3)埼玉県 101.1
(4)京都府 100.7
(5)千葉県 100.5
下位の5県は次の通り。
(47)宮崎県 96.0
(46)鹿児島県 96.1
(45)群馬県 96.3
(44)福岡県 96.6
(43)長野県 97.1
(42)奈良県 97.1
京都府を除き、人口の一極集中が止まらない首都圏4都県が上位に入った。東京都と神奈川県は、物価の10大費目(食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、諸雑費)のうち、「住居」の寄与度(押し上げ要因)がそれぞれ2.21、1.56と高いのが特徴だ。
物価水準がもっとも高い東京都は、もっとも低い宮崎県に比べて8.8%も高い。上位10まで対象を広げると、8位に山形県、9位に長崎県、10位に北海道が入ってくる。この3道県は「光熱・水道」が物価を押し上げている。一方、下位グループの宮崎県、福岡県は「食料」が、鹿児島県、群馬県では「住居」が、それぞれ水準を下げる要因となっている。
10大費目別で物価水準の高低差がもっとも大きいのは「住居」だ。もっとも高い東京都の133.0に対し、もっとも低い愛媛県は82.7。東京都の水準は愛媛県の1.61倍となっている。消費税の税率は全国一律で2%アップだが物価水準にはずいぶんと格差がある。首都圏住民は痛税感も大きい。
■「食料」の物価水準が高いのは石川県と福井県
10大費目の物価の高低を都道府県別でチェックしてみよう。
「食料」は意外なことに石川県、福井県がトップで103.4。「住居」は東京都の133.0。「光熱・水道」は冬場の燃料代がかかる北海道で114.9。「家具・家事用品」は宮城県が105.2。「被服及び履物」は栃木県で117.4。「保健医療」は富山県の102.2。越中富山は薬の県。物価との因果関係を知りたいところだ。「交通・通信」は東京で104.7。「教育」は京都府で116.0。大学の街・京都市を抱えていることも影響しているのだろうか。「教養娯楽」は神奈川県で105.5。「諸雑費」(身の回り品など)は香川県の102.8となっている。
もっとも安い県は次の通り。
・食料:長野県 94.4
・住居:愛媛県 82.7
・光熱・水道:群馬県 91.3
・家具・家事用品:山形県 93.4
・被服及び履物:鹿児島県 89.9
・保健医療:大分県 96.5
・交通・通信:岡山県 96.2
・教育 群馬県 84.5
・教養娯楽 佐賀県 91.8
・諸雑費 鹿児島県 93.5
10大費目の最安水準は6費目が西日本の県となった。総合最下位のの宮崎県を合わせると、物価は「東高西低」の傾向となっている。
■前回の消費増税前と比べ、地域差はどう変化したのか
消費税が5%から8%に引き上げられたのは、第2次安倍内閣時代の2014年4月だった。13年の小売物価統計調査と18年の結果を比べてみると、いくつか興味深い結果が出た。
13年の物価水準の高いのは東京都、神奈川県、埼玉県、兵庫県、京都府の順。兵庫県以外の4都府県は、18年と同じ顔触れだ。なお、兵庫県は18年は6位だ。注目は千葉県で、13年は11位だったが、18年は5位。ベスト10圏外から一気に物価上位県になってしまった。大幅な上昇という点では、13年の40位から19位へと21も順位を上げた富山県が変動幅で最大となる。徳島県も23位から12位へと大幅にアップした。逆に大きく順位を下げたのは愛知県(19位から37位)、岡山県(17位から33位)、茨城県(23位から38位)、栃木県(20位から35位)である。
大きな傾向として、物価と人口には正の相関関係がある(18年は相関係数が0.60)。人口が多い地域ほど物価水準が高めということだ。人口減少で市場が縮小するなか、この先、生涯賃金が増えるとはとても思えない。年金給付額は間違いなく減っていくだろう。消費税は今後も増税される可能性が高い。
それでも物価の高い大都市にしがみつくのか。それとも、年収は多少減っても物価の安い地方に移住するのか。もちろん、物価だけでは決められない話だが、そんな選択を迫られる時が近づいているのかもしれない。
(文=山田稔/ジャーナリスト)
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