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政府がNISA恒久化を断念 今後は積み立てNISAが中心か
https://wezz-y.com/archives/70160
2019.10.29 wezzy
「Getty Images」より
政府は、期限付きで導入された少額投資非課税制度(NISA)について、恒久化を見送る方針を固めた。時限措置のまま存続させる方法を模索するとしているが、先行きは不透明だ。一方、長期の積み立て投資を想定した「つみたてNISA」に関しては、期限の延長を行う方向で調整を行っている。長期投資を目指す個人投資家にとっては、積み立てNISAを中心に検討した方がよいだろう。
進まない資産形成の株式シフト
NISAは、投資元本が年間120万円までならば、株や株式投信の値上がり益、配当・分配金にかかる税金が5年間非課税になる制度である。2014年に上限100万円でスタートしたが、16年に120万円に拡大された。
政府は「貯蓄から投資へ」という掛け声のもと、銀行預金に過度に偏っている日本人の資産形成を株式にシフトさせる政策を進めており、NISAもその手段の一つとして位置付けられている。だが、政府の掛け声とは裏腹に、国民の株式シフトはあまり進んでいない。
2019年6月時点における個人金融資産は約1860兆円だったが、このうち現預金は過半数の53%を占めている。7年前の2012年時点における現預金の比率は約56%だったので、比率は多少下がっているが、十分な水準とはいえない。
かつての日本では、株式投資は危険でいかがわしいものというイメージがあり、一般的なサラリーマン層が積極的に株式投資をするケースは少なかった。リスクを取って一攫千金を狙うタイプの人か、高いリテラシーと十分な資金力を持つ富裕層が証券会社の顧客という時代が長く続いた。
日本の株式市場は、米国など先進諸外国と比較するとボラティリティ(価格変動)が高く、企業の情報開示も不十分など、多少、不健全な面があるのは確かだが、株式投資が資産形成の中核であるというのもまた事実である。株式投資が富裕層に偏っていたことから、株式投資の有無は中間層と富裕層の格差拡大の原因にもなってきた。
近年は、政府や市場関係者の啓蒙活動の成果もあり、株式投資に対する意識は徐々に変わりつつある。特に若い世代にとっては、年金がアテにならないということもあり、株式投資で長期の資産形成を行うことへの関心は高まっている。
富裕層優遇という批判はタテマエにすぎない
だが困ったことに、日本経済の貧困化が進んだことで、若い世代を中心に可処分所得が大幅に減少しており、投資資金を捻出できない人が増えている。せっかく若年層が投資に興味を持っているのに、肝心のお金がないというのが実状なのだ。
こうした事態を受けて、主に若年層を対象に長期の資産形成を促すために作られた制度が「つみたてNISA」である。つみたてNISAは、年間の投資金額40万円を上限として、20年間非課税となる制度であり、NISAと比較して投資期間が大幅に長い。一方で、投資対象には制約があり、一定の条件を満たした投資信託などに限定される。
NISAの口座数は6月末で1161万口座となっており、一方、つみたてNISAの口座数は147万口座である。一般的なNISAは60代と70代が多く、逆につみたてNISAは30代と40代が多い。一般論として、高齢者のほうが資産額が多いので、NISAは比較的資金力のある高齢者が、つみたてNISAは資金力に乏しい若年層が利用しているという図式であり、これは政府の想定通りということでもある。
NISAは時限的な措置としてスタートしており、2023年が期限となっている。2023年中までなら商品を購入することは可能だが、今の状況では2024年から商品の買い付けができなくなる(5年間の非課税枠については、2023年に購入した商品にも適用されるが、新規の買い付けは不可)。
いつ制度が終了するのか分からないという状態では、投資家が不安を感じることから、本来こうした施策に時限措置はあまり馴染まない。金融庁は制度の恒久化を求めてきたが、政府・与党内部の議論において、富裕層優遇という批判が出たことから、恒久化を断念することになったという。
だが、富裕層の優遇につながるという政府内部の議論については、額面通りには受け取らないほうがよいだろう。確かにNISAの利用者は高齢者が多く、若年層と比較すれば経済的に余裕のある投資家が多いのは事実だが、非課税額の上限は毎年120万円でしかない。本当の意味での富裕層にとっては誤差の範囲であり、この制度の存在によって富裕層が大きな利益を得るわけではない。
つみたてNISAは存続へ
NISAが恒久措置にならなかったのは、やはり税収減に対する懸念が大きかったということであり、貯蓄から投資へという政府の姿勢は中途半端であったことを如実に物語っている。政府・与党では、制度を見直した上で、時限措置として存続させる方法を模索するとしているが、先行きが不透明なままでは、利用者数の拡大には限度があるだろう。
一方、若年層向けのつみたてNISAについては、期限を延長する方向で調整するとしている。
つみたてNISAは、長期投資を念頭に置いていることから、投資期間はNISAより長く20年と定められているが、やはり暫定的な制度であることから、このままでは2037年に終了する。
2037年までは買い付けができるが、今年、つみたてNISAをスタートした場合、2037年から逆算して19年間しか投資できないことになる。つまり、2019年以降は、つみたてNISAの魅力のひとつである20年間という投資期間が徐々に有名無実化してしまうのだ。
商品を買うことはできなくても、20年間の非課税期間は確保されるが、積み立て投資の場合には、毎年、同じ金額だけ商品を購入することに意味があるため、投資期間が制限されてしまうと魅力も半減する。開始時期にかかわらず20年間の投資期間を確保できる方向性で議論を進めるとのことなので、投資家としてはこれに期待するしかないだろう。
つみたてNISAは商品選択がすべて
株式による資産形成については、NISAとつみたてNISAのどちらが有利かという議論があったが、恒久化が見送られたことで、NISAを選択する積極的な理由がなくなってしまった。株式投資による資産形成を考えている人は、基本的につみたてNISAの是非について検討する必要があるだろう。
つみたてNISAは20年間の投資が可能だが、商品が限定されており、指定されたもの中から選ぶ必要がある。中には手数料が高い商品もあるので、商品内容についてはよく吟味した方がよい。
どの金融機関で申し込んでも条件は同じなので、証券会社で買っても銀行で買っても大きな違いはない。ただ、金融機関によって取り揃えている商品数には差があるというのが実状であり、商品選択が重要という、つみたてNISAの特長を考えた場合、商品数で金融機関を選んだほうが無難だ。
現時点においては、大手証券会社が商品数という点では突出している。ただ、つみたてNISAはひとつの口座しか開くことができず、後で金融機関を変更する場合でも1年単位での手続きとなるので、最初の選択は慎重に行ったほうがよい。
加谷珪一
経済評論家。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社などを経て独立。経済、金融、ビジネスなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
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