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ソフトバンク、経営不安広まる…巨額投資先のウィーワークが資金繰り悪化、崩れる投資戦略
https://biz-journal.jp/2019/10/post_125108.html
2019.10.26 文=真壁昭夫/法政大学大学院教授 Business Journal
孫正義氏(写真:日刊スポーツ/アフロ)
これまで、ソフトバンクグループは孫正義会長兼社長の指揮の下、IT先端企業などに出資し新しいテクノロジーが生み出す需要を取り込んできた。ただ、今回のウィーカンパニーの新規株式公開(IPO)の延期をきっかけに、同社の経営体制に対する不安が徐々に高まってくる可能性もありそうだ。
その背景の一つとして、米国のオフィスシェア大手ウィーワークを運営するウィーカンパニーの資金繰り悪化などが顕在化してしまったことがある。今年9月、ウィーカンパニーは米ナスダック市場へのIPOを目指していた。しかし、同社の企業統治(コーポレート・ガバナンス)体制や、赤字が累積する収益状況などへの懸念が高まり、IPOは延期されることになった。それに伴い、米国の債券市場でウィーカンパニーの社債価格は大きく下落し企業価値も棄損している。同社の経営が一段と悪化すると警戒する市場参加者も多い。
ソフトバンクは、今後もウィーカンパニーの経営改善を主導しIPOの実現を目指すだろう。また、ソフトバンクには孫氏の後継者発掘という体制面の課題もある。この2つが、これからどう進むかはソフトバンクの持続的な経営に無視できない影響を与えるはずだ。
■生粋の企業家・孫氏の壮大なビジョン
ソフトバンクという社名には、孫氏の壮大なビジョンが込められている。それは、今後の人々の生き方を大きく変えうるテクノロジーやソフトウェアの貯蔵(バンク)、創出、発信において主導的な役割を果たすことだ。孫氏は最先端のテクノロジーや、新しいエコシステムを生み出す企業、あるいは個人を発掘し、資金の提供(出資)を通してその成長を実現し、利得につなげようとしている。
よい例が、中国のネット大手アリババ・ドット・コムへの出資だ。2000年に孫氏はアリババの創業者であるジャック・マー(馬雲)氏と面会した。孫氏はマー氏と会って5分で20億円の出資を決めたという。その後、アリババは急成長を遂げ、株式の上場とともにソフトバンクは大きな利得を手に入れた。今なおソフトバンクの業績は、アリババの成長に大きく支えられている。
このように、孫氏は自らの経験をもとに、成長を目指し、実現に邁進し続けることのできる企業家の資質を即座に見抜き、出資を行ってきた。そのために、ソフトバンクは10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンドを設定した。ビジョン・ファンドは、米ライドシェアのUber、オフィスシェア大手のウィーワーク(ウィーカンパニー傘下)など、成長期待を集めてきた数々のスタートアップ企業に投資してきた。
また、ビジョン・ファンドは、スタートアップ企業に加え、世界のネットワークテクノロジー開発と利用に欠かせないソフトウェア企業にも投資を行っている。
その代表例に、英アーム社の買収がある。アーム社の半導体設計ソフトウェアは世界の標準になっている。世界のスマートフォンに搭載されるICチップの90%程度が、アーム社のソフトウェアによって設計されているといわれるほど、その影響力は大きい。さらに孫氏は第2のビジョン・ファンドの設定にも取り組み、成長期待を集めるITスタートアップ企業や、高いシェアと競争力を持つIT先端企業に投資を行い、自らのビジョン実現にコミットしている。
■ソフトバンクのアニマルスピリットは行き過ぎか?
ただ、ウィーカンパニーのIPOは延期された。それは、成長の実現にこだわるソフトバンクの血気(アニマルスピリット)にやや行き過ぎの部分がある可能性を示唆している。
2017年、ソフトバンクはウィーカンパニーに出資した。この時も孫氏は共同創業者であるアダム・ニューマンCEO(最高経営責任者)と短時間の面談を行い、出資を決めたと報じられている。ウィーカンパニーはニューヨークのマンハッタンや東京など、賃料が高騰する大都市でオフィスを借り、シェアオフィスを提供して会費を徴収してきた。その上で同社は会員が所属企業や業種の垣根を越えてつながり、イノベーションを生み出す空間を創出しようとしてきた。同社は、ユーザー同士をつなぐアプリ開発などにも取り組み、会員がウィーワークのエコシステムから抜け出しづらい環境の整備を目指した。
しかし、ウィーカンパニーは最終赤字が続いている。今のところ、同社のビジネスモデルは想定された成果をあげられていない。さらに、8月にウィーカンパニーがIPOに関する目論見書を提出すると、共同創業者であるアダム・ニューマンCEOが普通株の20倍の議決権を持つ株を手に入れ、経営支配権の強化を目指していることなどが明らかになった。ニューマン氏が身内の利益を優先していると、同社のコーポレート・ガバナンス体制を危惧する市場参加者は一気に増えた。
この展開を受け、ソフトバンクはニューマンCEOの退任やIPO延期も求めたようだ。ソフトバンクはウィーカンパニーに100億ドル超を投資してきた。ウィーカンパニーの企業価値が低下する中でIPOを強行すれば、ソフトバンクは多額の評価損に直面し、業績が大幅に悪化しかねない。
ソフトバンクには、IT先端企業を傘下に収めてそのIPOを通して収益を得ることに、過度にこだわってしまった部分があるといえそうだ。カネ余りの影響から世界的に株価が高値圏で推移する中、ソフトバンクには競合相手よりも有望な企業にいち早く投資し、成果を実現しようとやや前のめりになってしまった部分もあるだろう。
■重要な局面を迎えつつあるソフトバンク
今後、ソフトバンクの経営に対する利害関係者の目線は厳しさを増す可能性がある。同社はウィーカンパニーの経営改善を実現し、業績懸念を払しょくしなければならない。ソフトバンクの成長は孫氏の企業家を見極める力に依存してきた。人を見抜く孫氏の能力は突出している。同時に、環境の変化への対応という点においても、孫氏の役割は大きい。ウィーワークに対して、孫氏は迅速に従来の方針を改め、厳正な対応を求めた。
そして23日には、ソフトバンクはウィーカンパニー株の追加取得や融資などを通じて最大95億ドルを出資すると発表した。
ただ、孫氏一人がこうした決定を下す体制が続くことは、企業経営の持続性を高めるうえで適切と言えない。ソフトバンクには、投資戦略の修正などを含め、孫氏と同等の目線から必要な意思決定を下すことのできる人材が求められる。将来の展開は不確実だ。常に、孫氏の決断が成長につながる保証はない。孫氏がすべての投資先企業の経営をしらみつぶしに調べ、必要な対策を講じることにも限界がある。ソフトバンクは、孫氏の感覚とリスク管理のバランス感覚を持つ後継者候補を見いださなければならない。これまでにもソフトバンクは国内外から優秀な実績あるプロを呼び、孫氏の後継者を見いだそうとしてきた。
すでに米国ではGAFAをはじめとするIT先端企業への成長期待が陰り始めた。景気後退への懸念も高まっている。投資の極意は、いかに安値で買うかに尽きるといっても過言ではない。テクノロジー企業への投資によって成長を目指すソフトバンクの真価が問われる環境が近づいているともいえる。
今後、ソフトバンクは、ウィーワークの経営改善と自社の経営体制の整備に取り組むこととなるだろう。この2つがどう進むかによって、利害関係者のソフトバンクの経営に対する信頼感は大きく変わるだろう。後継者の発掘を含め、どのようにして利害関係者の安心と納得を得られる経営体制を整備するか、ソフトバンクは重要な局面を迎えつつある。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
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