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ユニクロの世界戦略、インド進出は何を意味するか?
https://wezz-y.com/archives/69823
2019.10.14 wezzy
「Getty Images」より
ユニクロが、インドの首都ニューデリーに1号店をオープンした。アンビエンスモール内の1階から3階に出店し、売り場面積は約1000坪、レディース、メンズ、キッズ、ベビー製品を扱う。
アンビエンスモールはインドの中間層から富裕層に人気の大型ショッピングモールで、高級店の出店も多く、インド在留日本人や外国人の利用も多い。
10月4日のオープン当日は、先着500名にTシャツがプレゼントされるとあり、多くの人たちが開店前から並んだ。列の先頭の男性は朝5時に来たという。オープン日の金曜日から日曜日までは、4500ルピー(約6790円)以上の購入でオリジナルトートバッグのプレゼントや、ユニクロアプリをダウンロードすると200ルピー(約300円)のウェルカムクーポンの配布サービスもあった。
オープニングセレモニーは、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長をはじめ、ユニクロ・インディアのCEO清智彦氏、在インド日本国大使館の平松賢司大使、インドの繊維省のスムリティ・イラニ大臣などにより執り行われた。入り口では、ユニクロのはっぴを着た7名の日本人が和太鼓を叩いて出迎えた。
■機能性に富みモダンでエレガントなユニクロインドのクルタ
ユニクロのインド初出店に合わせて、インド人デザイナーのリナ・シン氏とのコラボによる「クルタ・コレクション」が、発売された。
クルタはインドの伝統的な日常着で、トップスを表す。クルタは、実用的な美しさを兼ね備えた服を作るというユニクロのLifeWearのコンセプトと合致していて、リナ・シン氏とのコラボにより、機能性に富みモダンでエレガントなクルタが完成した。
クルタドレスと呼ばれる丈が長めのクルタは、インドではボトムスにジーンズやワイドパンツなどを合わせるのが主流だが、ワンピースとして一枚でも着用できるよう工夫されている。クルタは、通常長めのサイドスリットが入っているが、「クルタ・コレクション」は、スリットをなくしポケットをつけて、より機能性を充実させた。インドのクルタを知らなければ、おしゃれなワンピースだと思うだろう。
「クルタ・コレクション」は、丈が短めのクルタチュニックとクルタドレス、パンツ、ストールの4つのカテゴリーだ。素材は、プレミアムリネン、コットン、ユニクロと東レが共同開発したレーヨンを用い、カラーは、チャコール、インディゴ、マスタード、ボルドーなど落ち着いた色が多い。価格は、クルタチュニックが2490ルピー(約3758円)から、クルタドレスは2990ルピー(約4512円)から、パンツは2490ルピー(約3758円)、ストールは1290ルピー(約1946円)だ。
「クルタ・コレクション」は、インド発売と同時に日本でも発売されている。価格はインド店よりも少し安く、クルタチュニックが2990円から、クルタドレスは3990円から、パンツは2990円、ストールは1500円だ。ユニクロ公式オンラインでは、デザインとサイズによっては、すでに売り切れのアイテムも出ている。
「クルタ・コレクション」は順次、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシアでも発売される。
■年代を問わないユニクロインドのアプローチ
多国籍なモデルを起用しているユニクロだが、今回はモデルの一人にシク教徒の人気ラッパーPrabh Deep(プラブ ディープ)氏を起用するなどモデルの多様性が光る。インド人といえば、ターバンをイメージする人も多いと思うが、実際にターバンを巻いているシク教徒のインド人は、人口比では少ない。
ピッタリとしたタイプの黒のターバンを巻き、長い髭を生やしたPrabh Deep氏に、意外なほどユニクロのシャツとパンツが似合う。その他、グレイヘアの男女をモデルに起用するなど、年代を問わないアプローチがうかがえる。
■中間層インド人の給料の目標は10万ルピー
インドでの記者会見で柳井正会長兼社長は、人口約13億人、平均年齢27歳というインド市場への期待感を語った。急成長を続けるインドでは、中間層の台頭が目ざましい。
筆者がインドに在住していた数年前、インド人に「月に10万ルピー(約15万円)稼いでいるか?」と、ときどき聞かれたものだ。中間層のインド人の給料の目標は、まずは10万ルピーであるようだ。
給料が10万ルピーでも、生活コストの安さから自由に使えるお金は日本よりも多く、日本よりも価格の高いユニクロの製品の購買は可能だ。中間層のインド人はユニクロの価格を安いとは思わないが、ちょっとした高級ブランドとして捉えているだろう。
インドの生活のコストが日本と比べて安価なものは、たとえば携帯電話の料金で、1日1GBほど使える契約で1カ月300円程度。インドのミルクティーであるチャイは、地元の茶店で1杯15円ほどだ。インド人は、総じて服にお金をかける傾向があり、お祭りのたびに服を新調する人も多く、そういった面からも有望な市場であるといえるだろう。
同じアンビエンスモール内に出店しているちょっとした高級ブランドでのメンズのシャツの価格は、1990ルピー(約2985円)くらいからスタートしているものが多い。ユニクロのメンズシャツも同額からスタートしており、ユニクロはアンビエンスモールを訪れるインド人にとって新たな選択肢のひとつになるであろう。
■冬服のラインアップが少ないインド
インドといえば暑いイメージだが、ニューデリーの冬は寒い。12月中旬から2月下旬にかけては、冬の風物詩ともいえる霧が出て、昼にならないと太陽が出てこない時期も続き、最低気温が7度前後になる日もある。
しかし、冬の期間が比較的短いのと昼間の最高気温が冬でも20度を超える日もあるせいか、ニューデリーでは冬服のラインアップが少ない。ジャケットやコートなど、品質と価格が見合ったものを見つけるのは、なかなか難しいのが現状だ。
筆者がインドに在住していた際、一時帰国でユニクロのウルトラダウン、ダウンジャケット、フリースジャケット、ヒートテックを購入し、インドでよく着用していた。ダウンジャケットやフリースジャケットはインド人にも好評で、一時帰国の際、購入してお土産にしたこともあるが、非常に喜ばれた。
ニューデリーではバイク通勤する人も多く、ヒートテックやダウンジャケットは、インド人の冬の救世主になるであろう。
■外資企業がインドで商売する難しさ
2018年1月、ユニクロは単独ブランド企業として事業を始めるため、インド政府に申請を出し、1号店のオープンまでに約20カ月かかった。政策提言機関であるNiti Aayog(ニティアヨグ) のCEOであるアミタ−ブ・カント氏は、自身のツイッターで「Make in India, Make for India, Make with Indiaの精神で、ユニクロでインドの伝統服であるクルタが発売されるのを嬉しく思う」とツイートしていた。
インドでは、スペインのZARA、スウェーデンのH&Mなど外資の小売業が進出しているが、国内企業保護のため、外資の小売業進出への規制は多い。Make in Indiaとは、インドでの製造業を振興するための政策で、インドの外資企業に、ある一定の割合でインド国内での製造を促す。クルタ・コレクションも、デリーの隣の州のハリヤナ州グルガオン地区の工場に委託して生産されている。
その他にも、インドでの外資の会社設立には複雑な手続きが多く、急に変わる制度や時間がかかる役所とのやりとりなどに根気強く対応しなければならない。オープン前日に行われたプレオープニングセレモニーの鏡割りの際、柳井正会長兼社長がやっとこの日が来たというような感慨深い表情をしたのが、印象的だった。
1号店を皮切りに、ユニクロは、年内にデリー首都圏に2号店、3号店を出店する。柳井正会長兼社長は、「インド特有の文化と伝統を取り入れたより革新的な商品をお客様に提供し、今後インドの経済発展に貢献していきたいと考えている」とコメントを出した。
インド政府の方針であるMake in India, Make for India, Make with Indiaの精神を取り入れ、これからもユニクロのさまざまな商品の展開が期待できそうだ。
■ユニクロは「日本から来たちょっといいブランド」
ユニクロのLifeWearのコンセプトは、“あらゆる人の生活を、より豊かにするための服。美意識のある合理性を持ち、シンプルで上質、そして細部への工夫に満ちている。生活ニーズから考え抜かれ、進化し続ける普段着”である。このLifeWearのコンセプトは、世界各地で広まり、支持されている。
国によっては、物価や給料の違いでちょっとした高級ブランドのイメージになるが、ユニクロの基本的なターゲットは「MADE FOR ALL」で、ありとあらゆる人たちだ。
たとえば、タイでは首都バンコクの中間層の人たちでも、ちょっと頑張ればユニクロの服を買える。立ち位置は、日本から来たちょっといいブランドというイメージだ。
バンコクの中間層の給料は、10万円から15万円ほどだ。バンコクでの販売価格も日本より高いが、インド同様生活コストが安く済む部分もあり、中間層でも購入する人が多いという。
対してヨーロッパでは、物価が高いこともあり、ユニクロはリーズナブルな値段に感じる。以前、筆者がパリのユニクロをフランス人の友人と訪れた際、日本より割高ではあるが、その他の店の商品の価格に比べて割安感があった。「この品質でこの価格は、フランス人にとっても、安く感じる」と友人は言っていた。
ユニクロは、2019年5月末時点で、世界21カ国で1351店舗を展開している。服を変え、常識を変え、世界を変えていくというユニクロのステートメントは、世界各地で現地の個人や企業とコラボレーションし、新しい流れを生み出している。
人々の暮らしをもっと楽しく、快適で便利なものにし、あらゆる人の生活をより豊かにするというユニクロのコンセプトは、世界各地に広がり、進化し続けていく。
溝内美菜
ライター。中央大学文学部卒。30代から約15年間ネパールとインドに滞在し、現地の文化、教育、祭りなど多岐に渡り執筆。インドではアパレル生産管理の会社を経営。インド北西部プシュカルにある女子校の日本支部「フィオール・ディ・ロト・ジャパン」代表。現在は日本在住で、社会問題、経済、医療、環境問題、食など幅広い分野に執筆する。
twitter:@MinaMizouchi
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