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「金ピカ先生」年収2億でも「老後破綻」してしまったワケ 誰にとっても他人事じゃない
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67545
2019.10.02 加谷 珪一 現代ビジネス
かつてカリスマ予備校講師として一世を風靡した「金ピカ先生」こと、佐藤忠志氏が亡くなった。地域包括支援センターのスタッフが訪問したが返事がなく、遺体で発見されたという。
一時は年収が2億円にも達していたという佐藤氏だが、どのような経緯で孤独死を迎えることになったのか、故人の過去をあれこれ詮索するのは一般的には失礼にあたるだろう。だが、佐藤氏はカリスマ予備校講師であり、亡くなる直前にも、あえて写真撮影を許可する形でメディアの取材に応じている。
佐藤氏は生涯、根っからの教育者であり、孤独死という自身の末路も含めて、若い世代の人に何かを伝えようとしていたに違いない。そうであるならば、佐藤氏の孤独死を引き合いに、長寿社会においてお金とどう付き合えばよいのか議論することは失礼にあたらないし、むしろ敬意を表する行為だと思っている。
■年収が増えた分だけ消費を増やしてはいけない
佐藤氏は全盛期には1コマの授業で200万円を受け取り、年収は2億円を超えていたという。だが、カリスマ講師という「役回り」だけでなく、実際の私生活もかなり派手だったようである。何台ものクラシックカーを乗り回し、8億円の豪邸を建てたという話もあった。だが、こうした浪費をやめることができず、最終的にはまったくお金がなくなってしまった。
一般的には年収2億と聞くと、それだけで一生暮らせると思ってしまうかもしれないが、ひとたび散財を始めてしまうと、2億円のお金などすぐに消えてしまう。
年収が増えると、それ以上に支出がかさみ、あっという間に生活が困窮するというのはよくある話だが、これは、フローでお金を稼ぐ人全員に関係する話といってよい。金額が佐藤氏と比べて極端に少ないとはいえ、フロー収入(いわゆる給与などの収入)がメインの一般的なサラリーマンにとってもそれは同じことである。
フローでの収入が増えると、何割かの人は、自身の経済的状況について間違った見通しを持ってしまう。
日本の所得税はかなり厳しい累進課税となっており、分かりやすく言えば、金持ちからむしり取る仕組みである。したがって、年収が増えた分だけ、税負担率が高くなる。多くの人は知識としてこの話を知っているが、現実の生活になると、それを忘れてしまうのだ。
所得税には一定の控除があり、名目上の税率よりも、実際に徴収される税率はかなり低い。年収400万円から500万円の人の平均的な所得税率はわずか1.8%程度しかなく、日本における中間層は、所得税に関しては実質的に無税といってよい状況だ(海外の場合にはしっかり税金が徴収される)。
ところが年収800万円を超えたあたりから税率は大きく上昇し、1500万円では控除を加えても14%以上、2500万円以上では40%近くが税金で持って行かれてしまう。つまり年収が増えた分だけ可処分所得が増えるわけではなく、使えるお金の割合は年収の上昇とともに減ってくる。
ところが、多くの人は年収が増えた分だけ消費を増やしてしまうのだ。年収が1000万円もあるのに貯金がゼロで、生活が苦しいという話をよく耳にするが、これは典型的なパターンといってよいだろう。
■自分を「堅実」だと思っている人ほど危ない
困ったことに、年収が上がると、将来はさらに年収が上がると楽観的に考える人が多く、多少、出費が増えても、将来、取り返せると考えてしまう。佐藤氏も、おそらく、派手に消費しても何とかなると考えていたに違いない。
自分はそんなことはないとは考えない方がよい。過度な楽観論は、私生活が派手な佐藤氏のような人物だけにあてはまるものではなく、自分を堅実だと思っている人でも、陥りやすいという現実があるのだ。
例えば年収が500万円だった人が600万円になると、その先は700万円、800万円になると考える人は多い。だが、それは単なる楽観論でそう感じているのではない。
人間のマインドというのはやっかいなもので、年収が上がるという甘い見通しを正当化するために、自分はこんなにがんばっているのだから800万円くらいもらって当然だといった形に、徐々に思考回路を変えてしまうのだ。だが、年収を決定するのは自分ではなく、あくまでも会社側であるという現実を考えると、こうした思考回路も、過度な楽観論の一種と言わざるを得ない。
年収が上がると、税金を考慮せずに支出を増やし、今後もさらに年収が上がるという思考バイアスによって、消費に拍車をかけてしまう。支出の中身は豪邸やクラシックカーではないかもしれないが、ちょっとした高級車や、子どもの習い事、見栄えのよいマンションなど、正当化しやすい項目であれば結果は同じである。こうした消費先行型のライフスタイルは、最終的には老後の生活を直撃することになる。
報道によると、佐藤氏は今年の5月から生活保護を受けていたという。生活保護の金額は、受給者の状況に応じて変わってくるので、いくらの扶助が受けられるのかはケースバイケースである。
基本的には地域や家族構成ごとに算出される「最低生活費」を基準に、収入があれば、そこから収入分を差し引いた金額が給付される。例えば最低生活費が月10万円で、年金収入が6万5000円だった場合には、生活保護として受け取れるのは3万5000円となる。
佐藤氏の場合、無収入で電気やガスも止められていたという報道があるので、無年金状態か、年金があっても、満額を支払っていなかったため、金額が少なかったと考えられる。
■これからは厚生年金でも生活が困窮する人が増える
高齢者が貧困に陥る最大の原因はもらえる年金額が少ないことである。年収が下がっても、働けるうちは、それなりの生活費を稼げるので、何とかなるケースが多い。だが体力の低下や転倒によるケガなどが原因で、継続的に勤務することが難しくなると、一気に資金繰りが苦しくなる。
日本の公的年金制度は、子どもが親を扶養するという世代間扶養を社会全体に拡張したものであり、公的年金だけで老後の生活を完全にカバーできるものではない。サラリーマンが加入する厚生年金は、掛け金も多く、その分だけ受け取れる年金額も多いが、国民年金だけという場合には、年金収入だけでは暮らせないのが現実である。
現在、国民年金の月額の給付金額は約6万5000円である。だが、この金額を受給するには、毎月の保険料である約1万6500円を40年間払い続ける必要がある。支払い期間や金額が足りない場合には、その分だけ年金の額は減らされてしまう。
ちなみに現在の年金受給者のうち、年間100万円以下しか年金をもらっていない人は全体の4割、150万円以下しかもらっていない人は全体の6割に達する。つまり現時点においても、十分な年金をもらっていない人が多数を占めているのが実状である。
これまでは、掛け金も少ない代わりに年金額も小さい国民年金の人が困窮しやすいというのが一般的なイメージだったが、現役世代の賃金低下が著しく、年金財政の悪化が予想されるこれからの時代は、所得が高くないサラリーマン(厚生年金加入者)でも同様の問題が発生すると考えられる。
年金に入っているだけでは不十分であり、働けなくなった時に生活費を捻出できるだけの資産がどうしても必要ということになる。
■カギを握る配偶者の存在
佐藤氏も該当すると思われるが、高齢者が困窮するもうひとつの理由は配偶者の死亡や離別である。
もし夫婦が国民年金で40年間、満額、保険料を収めていれば、それぞれ国民年金を受給できるので世帯月収は13万円になる。だがここで配偶者と離婚したり、配偶者が死亡してしまうと、年金額が半分になるので、生活に困窮する確率が一気に高まる。
現在、生活保護を受けている人は約210万人だが、このうち55%が高齢者世帯となっており、しかも、高齢受給者の9割以上が単身世帯である。統計データには個別の情報はないが、配偶者との死別や離婚などで年金額が半減し、生活が破綻したことを如実に物語っている(あるいはもともと単身者ということもあり得る)。
夫婦の生活には個人的な事情があるので、他人が口を挟むことではないが、もし年金以外に頼れる資金源がない人は、よほどなことがない限り離婚はしない方がよい。また、死別などで孤独になった場合、子どもや兄弟など、頼れる親族がいるのかが重要なポイントとなる。単身者や親類縁者が少ない人、関係が希薄という人は、そうでない人以上に、自身の資産を積極的に構築しておく必要があるだろう。
先ほども説明したように、今後は国民年金だけでなく厚生年金でも、生活が困窮する人が増えてくる。厳しいようだが、40歳前後の年収を基準に、そこから昇給を実現できた場合には、全額を資産形成に振り向けるくらいの覚悟を持っていないと、高齢化時代を生き延びるのは難しいだろう。
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