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(回答先: 消費税の呪われたジンクスとMMTの信憑性 投稿者 鰤 日時 2019 年 10 月 01 日 12:45:36)
消費増税が直撃する生活保護の暮らし、バスに乗れない・牛乳も買えない…
みわよしこ:フリーランス・ライター
ライフ・社会 生活保護のリアル〜私たちの明日は? みわよしこ
2019.9.28 5:12
生活保護の暮らしに、消費増税はどのような影響を与えるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA
生活保護女性の「駆け込み消費」は
トイレットペーパーだけ
2019年10月1日から、消費税率は現在の8%から10%へと引き上げられる。生活保護の暮らしに、消費増税はどのような影響を与えるだろうか。
北海道の小都市に住み、生活保護で暮らすアキコさん(仮名・50歳)には、消費増税までに購入しておきたいものがある。北海道のコンビニチェーン「セイコーマート」、通称「セコマ」のトイレットペーパーだ。近隣のどのスーパーや商店よりも安価なのだという。
2018年冬から、トイレットペーパーなどの家庭紙の価格はジワジワと上昇している。原材料や物流の費用上昇により、メーカーの出荷価格が上昇したからだ。当初の影響は、「店頭での安売りが減る」という形で現れたが、今年春過ぎからは、店頭価格の値上げが目に見えてきた。「セコマ」の12ロール入りトイレットペーパーも、298円から340円へと値上がりしたという。
しかも10月1日からは、消費税率が10%になる。トイレットペーパーは、紙おむつや生理用品と同様に、どう考えても生活必需品であろう。しかし、消費税率を8%に留める「軽減税率」の対象にはなっていない。
なお、筆者がふだん使用しているトイレットペーパーは、12ロールで198円だ。住まいがあるのは、東京都内の住宅地で、年金生活の高齢者が多い。徒歩10分の範囲に、スーパー4軒・コンビニ10軒以上があり、過当競争状態となっている。オーナーや従業員の生活に少しだけ心を痛めつつ、結局は、最も安価なトイレットペーパーを購入している。
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痛手は交通費、バスはひかえるしかないのか
もちろん、アキコさんの住む地域にも、遠く離れたショッピングモールやドラッグストアに車で買い物に行けば、より安価な選択肢が存在する。しかし現在の生活保護は、原則として、車の所有と運転を認めていない。アキコさんにとって最も安価なトイレットペーパーは、「セコマ」の12ロール入りの商品だ。それが、アキコさんの唯一の「駆け込み消費」になる。
痛手は交通費
バスはひかえるしかないのか
さらに痛手となるのは、鉄道やバスの運賃値上げだ。JR北海道は、3kmまでが170円から200円へ、約18%の値上げとなる。「便乗値上げ」どころではないのだが、過去に見送られてきた値上げが積もりに積もった末の、止むを得ない値上げである。鉄道に比べるとバスの値上がり幅は小さいため、鉄道よりバスを選択する地域住民が増えそうだ。それは、鉄道の赤字路線がさらに赤字化することにつながりかねない。もともとアキコさんが住む地域では、車社会化が進んでいる。それは、大都市部以外の日本の「ふつう」の光景だ。
「交通費が痛いから、極力、歩いています。雨や雪が激しいときはバスに乗りますが、ちょっとくらいなら傘をさして」(アキコさん)
中心街まで片道3キロメートル、往復6キロメートルの距離を、アキコさんは毎日のように、数年前に手術を受けた脚で歩いている。バス料金が値上がりすると、荒天の日には「出かけない」という選択が増えるかもしれない。もともと、身体や精神の疾患を抱えている人は、さらに出かけにくくなりそうだ。
そしてアキコさんは、精神疾患の治療を受け続けている精神障害者でもある。もともと学校の養護教員、いわゆる「保健室の先生」だったけれども、結婚による離職、そして夫によるDVから心を病み、生活保護以外の選択肢がなくなる成り行きをたどった。けれども今、アキコさんには「障害者作業所に通う」という日課がある。
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牛乳からコーヒーへ、値上がりが変えた生活習慣
アキコさんの「就労したい」という意欲は強い。就労を試みたことは数回あったけれども、短期間のうちに心身の調子を崩し、勤務を継続できなくなったりした。
現在、通っている障害者作業所は、居場所機能を中心としたB型。作業内容は、木彫りの土産物製作の下請けで、工賃は1時間あたり200円。午前9時から午後3時まで、1時間の休憩をはさんで5時間の勤務だ。昼食代の実費が差し引かれるため、1カ月あたりの手取り収入は、1万円を超えるか超えないかだという。それはほぼ、召し上げられずに可処分所得の増加となるが、「小遣いが増える」程度だそうだ。
アキコさんが作業所に通っている目的は、主に生活のリズムをつくることである。また、夏の暑い日には、作業所の扇風機で涼むこともできる。というよりも、その工賃では、収入のために働くこと自体が無理だ。
今回の消費増税が、「出費が増えて暮らせなくなった」という理由で、社会とのつながりや生きがいとなっている活動を、生活保護で暮らす人々から奪うことは、十分に予想される。消費増税によって「ただちに」ではないとしても、厚労省が想定している消費増税対策ではカバーできない出費が、ジワジワと生活を締め付け、「諦める」という選択を強いる可能性がある。しかも、直後には現れにくいだけに、実態把握は困難だろう。
牛乳からコーヒーへ
値上がりが変えた生活習慣
アキコさんは、消費増税の数ヵ月前に買い控えするようになったものがある。牛乳だ。
牛乳が好きなアキコさんは、おおむね週に2本、1リットル入りのパックを購入していた。しかし、今年春の乳製品の値上がりで、牛乳を毎朝飲むことを断念した。現在、朝の飲み物はコーヒーだ。コーヒー豆を挽いた粉を購入し、毎朝、自分で1杯だけ淹れるという。
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消費増税対策も生活保護受給者には無関係
言われてみると、確かにコーヒーの方が安価だ。350円程度の1袋が、おおむね30杯程度のコーヒーに相当する。1本約200円の牛乳は、1カ月あたり8本購入すると、1600円になる。
アキコさんが牛乳をコーヒーに切り替えた話を聞いて思い出したのは、インドネシアの最近の話題だ。貧しい両親が、1歳2ヶ月の我が子のために十分な量のミルクを購入できないため、砂糖を入れた薄いコーヒーを飲ませていた。その乳児の身体には目立った問題はないが、夜眠りにくくなるなど、カフェインの影響は現れているという。SNSでは両親への非難が殺到した。行政も、ミルクなどの物資を携えて両親のもとを訪れ、育児指導を行ったと報道されている。
アキコさんは成人だが、健康に対して好ましいのは、コーヒーよりも牛乳の方だろう。しかし今、コーヒーが日常の飲み物となり、牛乳は嗜好品の位置に追いやられてしまった。
もちろん、元養護教員のアキコさんは、乳製品の重要性を認識している。牛乳に代わって朝食に登場するようになったのは、1食分ずつパックされたヨーグルトだ。4食120円程度で購入できるヨーグルトが、牛乳の不在を不完全に埋め合わせている。
数々の消費増税対策も
生活保護受給者には無関係
消費増税の前に、値上がりが生活を圧迫している。しかし、食料品には軽減税率がある。低所得層には「プレミアム商品券」、年金生活者には「年金生活者支援給付金」がある。クレジットカード利用者には、ポイント還元もある。
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北海道の灯油価格はさらに上昇
政府が準備している対策は、消費増税そのものや便乗値上げに対して、十分な手当てにはならないかもしれない。しかし一般低所得層の人々は、それらを並べて「まあ、これで、なんとかしなくては」と考えることができる。
生活保護で暮らす人々には、そのすべてが無縁だ。もしも、2万円で2万5000円の商品券が購入できる「プレミアム商品券」を購入したら、差額の5000円が召し上げられる。年金生活者支援給付金を得たら、その分が生活保護費から減額される。クレジットカードの使用は禁止されているため、ポイント還元の恩恵もない。
理由は、生活保護費が「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しており、生活保護で暮らす以上、その「最低限度」の範囲で生活することが求められていることにある。
北海道の灯油価格は
中東情勢の悪化でさらに上昇
本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
その生活保護費は、もちろん消費増税を考慮して増額される。消費税が8%から10%へと引き上げられることを考慮すると、1.9%の増額が必要なはずだ。しかし、今回の増額幅は1.4%に過ぎない。厚労省が理由としているのは、軽減税率の対象となる食料品などの消費も含まれることである。とはいえ、やりくりが厳しくなった時、生活保護で暮らす人々が最初に削るのは、その食料品なのだ。さらに便乗値上げ、消費増税を見越した値上げ、気候不順による食料品価格上昇が重なると、食料品の買い控えや内容の劣化が起こることは、容易に予想できる。
間もなく、冬がやってくる。北海道の灯油価格は、もともと本州以南より高い。アキコさんの住む地域では、すでに明け方の気温が5℃前後まで下がっている。生活保護の暖房費補助(冬季加算)は10月からだが、9月にすでに灯油ストーブを使用する日が数日あったという。
中東の不安定な政治状況は、すでに原油価格を上昇させている。そこに、消費増税が重なる。
(フリーランス・ライター みわよしこ)
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荻原博子氏が伝授!消費増税で始まる「大不安時代」の生活防衛術
ダイヤモンド編集部 小尾拓也:副編集長
ライフ・社会 DOL特別レポート
2019.10.1 5:20
いよいよ消費税率が10%へと引き上げられた。景気後退懸念のなかでの増税が、国民生活にもたらす影響は小さくなかろう。ただでさえ将来の不透明要因が多い時代に、私たちはどのような生活防衛策を考えればいいのか。経済ジャーナリストの荻原博子氏が徹底解説する。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 小尾拓也)
消費者の不安が前回より
高まりそうな2つの理由
荻原博子氏が伝授、消費増税で始まる「大不安時代」の生活防衛術
経済ジャーナリストの荻原博子さん。増税後の生活防衛術を教えてくれた
――10月1日から消費税率が10%へと引き上げられました。今回は増税幅が2%であることに加え、軽減税率やキャッシュレス決済時のポイント還元といった対策が実施されるため、2014年の増税時と比べて消費者の不安は小さいのではないかという見立てもあります。
確かにそのような報道もあるようですが、ちょっと違うと思います。結果的に見れば、今回の消費増税が国民心理に与える影響は前回より大きく、景気悪化は避けられないと見ています。本当に、最悪のタイミングでの増税といえます。
その理由の1つは「税率の違い」です。10%への消費増税は過去2回も延期され、その過程で増税をめぐる議論もたくさん行われたため、国民の多くは増税という言葉に慣れてしまい、危機感が薄れているように感じます。なかには、「前回は3%の増税だったけれど今回は2%だから、まあいいや」と諦めに近い気持ちを持っている人もいるでしょう。
ところが消費税率が10%になると、8%のときと比べて「いくら負担が増えたか」という実感がわきやすいのです。たとえば、1万9800円の商品に8%の消費税がかかると言われても、それがいくらかすぐには計算できない人が多かった。ところが10%と言われると、「1万9800円の1割だから1980円……。え?2000円近くも税金でとられるの!?」とすぐに暗算できる。このインパクトの違いは大きいと思います。
こうして「税金をたくさんとられる」という意識が格段に強まる結果、家電1つとっても「大事に使って何年も持たせよう」と節約志向を強め、財布の紐をきつく締めてしまう人が続出すると思います。
2つ目の理由は「景況感の違い」。前回の増税時は、「これから景気がよくなり、給料が上がっていくかもしれない」という期待が、何となく世の中にあった。しかし、今回は全くそれがありません。
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安倍政権は直前まで増税延期を模索していた?
今年春先に「日本はすでに景気後退局面にあるのではないか」という観測が広がりましたが、それに加えて直近では、日韓問題の経済への打撃が懸念されています。また、米中貿易摩擦の影響が深刻視され、世界的に見ても景気は下り坂に向かっています。そんななか、日銀短観などを見ても企業経営者のマインドは悪化傾向にあり、へたをするとビジネスパーソンの給料は、これから増えないどころか減っていく可能性だってある。いざ増税が始まると、人々は改めてそうした現状を再確認し、不安を募らせることでしょう。
――増税が始まるまでは、国民にとってある意味「自分事」ではない。増税が始まって、初めて「自分事」になるということですね。
そう、実際に増税が始まると、みんな事の重大さに気づくのです。実は、前回もそうでした。2014年4月1日から始まった8%への消費増税では、5月過ぎまでほとんど「買い控え」が見られませんでした。消費者の財布の紐が猛烈に締まり始めたのは、7月に入ってからのことです。
今回は、参院選前に「老後資金2000万円問題」が噴出したこともあり、駆け込み需要は前回の増税時と比べて盛り上がりに欠けています。それを見ても、国民の潜在的な危機感はむしろ大きいかもしれません。
安倍政権が直前まで
増税延期を模索していた可能性
――そもそも政府が、こうした時期に増税に踏み切った背景には、どういう考えがあったと思いますか。
過去、消費税率引き上げに関与した内閣は、選挙で大敗するのが普通でした。だから政権にとって、増税は本来やりたいものでない。それを必要に迫られてやらなくてはいけないとき、最も重視するのは、自分たちにとって一番都合の良いタイミングを見極めることです。
安倍政権にとって、それは選挙のタイミングです。彼らは過去2回の選挙で「増税延期」を表明して大勝しました。政権にとって鬼門である消費増税を先送りすることによって、政権基盤を強めてきたのです。だから今回も、7月の参院選に影響が出ないよう、つい最近まで消費増税の延期ができないかを探っていたフシがあります。
今年4月、萩生田光一氏(元自民党幹事長代行)が増税延期をほのめかす発言をしたのが、よい例です。あれは実のところ、安倍首相の意を汲んだ観測気球で、国民が増税延期発言にどう反応するかを見たかったのでしょう。そうした観測も通じて、最終的に「このままもっていけそうだ」という考えに至り、増税に踏み切ったのだと思います。
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軽減税率もポイント還元も効果は限定的
――選挙といえば、年金財政検証の公表が遅れ、参院選後になったことも、「老後2000万円問題」が燻るなかで選挙に影響が出ることを恐れたためではないか、と言われましたね。
財政検証で行われる試算はこれまでも「厚化粧」のようなものばかりでしたが、今回はそれを通り越して、「プチ整形」の域に入ったと思います。たとえば、「パートやアルバイトであっても月収が5万8000円以上ある人を厚生年金保険に加入させ、さらに支払い期間を延長すれば、将来的に所得代替率が最大で10%以上上乗せされる」といったオプション試算です。ここでは、パートやアルバイトの給料から保険料が天引きされた場合、どれくらい手取りが減って苦しくなるかは言及されず、楽観的な見通ししか述べられていない。老後どころか、手元のお金が心配になってしまうような内容です。
こうした「プチ整形」のような財政検証を参院選前に公表することは、さすがにできなかったのでしょう。安倍政権の政策運営は、「何だかおかしいな」と思うと、みんな選挙対策に紐づけて考えれば合点がいきます。彼らは、選挙のことしか考えていないのですから。
軽減税率もポイント還元も
あまり負担軽減にならない
――では、軽減税率やキャッシュレス決済時のポイント還元は、どれくらい増税のインパクトを埋めることができるでしょうか。
正直言って、生活の負担軽減効果は限定的だと思います。
まず軽減税率ですが、飲食料品はイートインなら10%、テイクアウトなら8%と、とにかくわかりづらい。それに、せいぜい「調理の際にみりんを買うか、みりん風調味料を買うか」くらいの問題であり、普段の生活にそれほど影響はないでしょう。そのうちどこの業者も「安売り」を始めるだろうから、そうした機会に安くまとめ買いするほうがお得なのでは、と思ってしまいます。
欧州のようにインボイス制度(適格請求書等保存方式)が整っているならいいですが、まだ制度が整っていない日本では、事業者側も税務の際に税率が違う物品の仕分けで混乱すると思います。政局絡みとはいえ、安倍内閣はよくもこんな制度を導入したものです。
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結局、最も有効な生活防衛策とは
また、キャッシュレス決済時のポイント還元は、加盟する中小商店を中心に最高5%の還元が行われますが、2019年10月1日から2020年6月いっぱいまでの期間限定となります。「PayPay」「LINE Pay」などのスマホQRコード決済を使えばさらにポイントが上乗せされますが、やはり時期が限定されている。そうなると消費者は、「期限までにポイントを使い切らなくては」と焦り、本来必要のないものまで買って、逆に支出が増えてしまうことになりかねないため、注意が必要です。
さらに、キャッシュレス決済のためだけに新しくクレジットカードをつくったりすると、ポイントは貯まってもカードの年会費をとられたりして、いつの間にか差し引きで損をしているケースも出てきそうです。このように、ポイントは損得を正確に判断することが難しいものだということを、覚えておくほうがよいでしょう。
不透明要因が多いこの時代、
最も有効な生活防衛策とは
――軽減税率やポイント還元も効果は限定的のようですが、そもそもの増税が家計に与えるマイナスの影響は大きいと見られます。ただでさえ将来が不透明な時代、これから私たちは、どのような生活防衛策を考えていけばよいでしょうか。
景気後退懸念により、これから給料は増えないか、減っていく可能性もある。また、働き方改革の名の下に残業代がどんどん減らされていくという、社会構造面での向かい風もあります。そこに、今回の増税です。こうした不透明な時代の生活防衛策としては、とにかく「お金を使わないこと」が一番。私はそれをバブル崩壊以降、ずっと唱え続けているのです。
なぜかというと、日本はいまだにデフレから脱却し切れていないからです。デフレ下ではお金の価値が上がるため、事実上、借金が増えていきます。だからできるだけ借金をせず、お金も使わず、とにかく現金を貯めていくことが肝要です。
日本企業の多くは、幾多の不況に見舞われるなかで内部留保を厚くしていき、そのお陰で今、財務がピカピカになっています。家庭の防衛もそれと同じ理屈なのですが、多くの人がそれに気づいていないことは、危機的な状況といえます。
――貯めるだけでなく、お金を増やすために株式投資などをしてはいけないのでしょうか。
投資も無理にやる必要はありません。実は私も株式投資が好きなのですが、今までの経験から言えることは、「個別株も投資信託も、一般人がやるべきものではない」ということです。
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株式投資も不動産投資もお勧めできない理由
投資には「長期投資神話」があります。短期で企業・業界を判断せず、長期でじっくり将来性を吟味しようというものですが、リーマンショック到来、英国のブレグジット騒動、米国でのトランプ大統領の登場といった世界的なリスクを、たとえば30年前から見通していた人など、いるでしょうか。
株式投資も不動産投資も
お勧めできない理由
また、「分散投資神話」というものもある。リスク回避のために投資先を1つに限定せず、複数の投資先にお金を入れるという考え方ですが、これもリーマンショックのような経済危機が10年に1回程度の割合でやってくるご時世では、無意味です。ひとたび大きな危機が襲ってきたら、バスケットの中に入れた卵は、種類が違っていても全て割れてしまうのだから。
そんなリスクの高い投資を、家庭を守るべき主婦や、PCの使い方がよくわからない高齢者がやって、どうするのでしょうか。
また、今の金融機関は本当にあくどいです。銀行はマイナス金利などによる収益悪化に際し、様々な金融商品を少しでも多くのお客に買わせ、高い手数料を手にしようとしています。最近、さかんに宣伝しているNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)も、十分注意が必要です。
――借金がダメということは、住宅ローンもダメということですか。
純粋に「この家に住みたい」という目的で、将来の返済計画をきっちり考えた上で住宅ローンを組むならいいと思いますが、実際は自分が住む不動産物件への「投資」と同じことです。不動産投資こそ、素人が絶対に手を出してはいけないもの。その意味では、資産形成の目的で自宅を購入し、住宅ローンを組むような考えは、持つべきではありません。
ちなみに、素人がやってはいけない不動産投資の最たるものが、自分が住むわけでもない物件をローンで購入し、入居者を募って賃料を得ようとするマンション投資です。私も以前、自分でやって失敗したことがありますが、賃料収入が安定しないことが多く、ローンを自腹で返済していく状態が続きました。そして、ようやくローンを完済して自分のものになったときには、建物が劣化して何の資産価値もなくなっていた。自分で実際にやってみて、「儲かる理由がない」ということがわかったのです。
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実は老後資金は2000万円も要らない
老後資金が2000万円なくても
十分暮らしていける
――そうなると、手元のお金をできるだけムダ遣いせずに暮らすしかありませんね。「老後資金2000万円問題」が噴出したときには、「実際には2000万円どころでは足りない」と唱える専門家もいました。いったい、いくら貯めておけば安心なのでしょうか。
「老後資金2000万円問題」で、一気に生活不安に火が付きましたが、あれは杞憂です。もともと金融庁が投資を促すために吹聴しているだけなので、信じてはいけません。世間を見渡すと、月20万円くらいで生活している家庭はたくさんある。本当は、その程度の生活費でやっていけるのです。
たとえば、元会社員と専業主婦の高齢夫婦2人の家庭をイメージしてみます。夫の退職金が世間一般の水準でおおむね1500万円とすると、それを老後資金と考え、普段は生活費に充てず、貯金しておきます。いざというときに使うお金の内訳は、夫婦の介護に1000万円、医療費に200万円、葬式代やその他雑費に残り300万円、といった具合です。
一方で、日々の生活には年金を充てるようにします。夫婦2人の平均的な年金受給総額を20〜30万円と考えても、それで十分暮らしていけるでしょう。
――節約のための最も重要な心得とは何でしょうか。
生活防衛のためのキーワードは、「夫婦仲良く」。夫婦が普段から色々なことを相談できる状況にあれば、節約がスムーズにいくからです。同じ場所で過ごし、同じ食卓で食事をし、一緒にお風呂に入れば、さまざまな生活費を節約できることでしょう。
また、男性は光熱費や通信費などを「高い目線」から見直すことが得意なのに対し、女性は買い物のときに10円でも安いものを選ぶといった「生活目線」からの節約が得意。それぞれ異なる目線を持った夫婦が協力すれば、家計の見直しは万全です。
とにかく節約は、夫婦仲が良くないとうまくいかない。万一熟年離婚なんかして年金分割をしようものなら、その後の人生は真っ暗です。
荻原博子(おぎわら・ひろこ)
1954年生まれ。長野県出身。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌『hanako』(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説。ビジネスマンから主婦に至るまで、幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌などの連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。著書多数
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