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日本株暴落を予言する伝説の投資家ジム・ロジャーズ氏に聞く「今の買い」
https://diamond.jp/articles/-/215875
2019.9.27 5:25 ダイヤモンド編集部 重石岳史:記者
近著『日本への警告』(講談社)で「黒田日銀は人の生活を破壊する」「東京五輪は日本の衰退を早める」などと指摘するジム・ロジャーズ氏 Photo by Masato Kato
ヘッジファンドの先駆けとなるクォンタム・ファンドを著名投資家のジョージ・ソロス氏と1973年に設立し、10年で4200%という驚異的なリターンをたたき出した“伝説の投資家” ジム・ロジャーズ氏(76歳)が来日。富士山のロゴが入った、トレードマークの蝶ネクタイ姿で現れたロジャーズ氏は日本好きを公言するが、インタビューでは日本株の暴落を予言し、日本銀行の量的金融緩和政策を「狂気の沙汰」と断じるなど辛辣な警告を発した。そのロジャーズ氏が挙げた意外な投資先とは――。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
量的緩和政策の効果は
「人工的」で必ず止まる
――あなたは今、どんな株式や債券を買っているのでしょう。
私の保有資産は日々変わっているが、今は中国とロシアの関連株を中心に保有している。日本株は持っていない。
――日本株は外国人投資家にとって割安との指摘もあるが、なぜ日本に投資をしないのですか。
割安感はあるかもしれない。ただ私が2018年に日本株を全て売却した理由は、日本株はもう上がらないと考えたからだ。
日本銀行はジャブジャブと紙幣を刷り続け、株価を支えている。この効果は当面維持されるかもしれないが、いずれ必ず止まる。さらに消費増税は日本経済に深刻なダメージを与えるだろう。このままでは、いつか日本株は暴落するとみている。
ちなみに私は米国株も一切持っていない。今は史上最高水準の高値だが、私はこのバブルに賛同する気はない。
――日本に今後、どのような変化が起きれば日本株を買いますか。
まず消費税廃止などのドラスティックな減税が行われること。そして日銀が量的緩和をやめることだ。
安倍晋三首相が「無制限の金融緩和」を掲げ、日銀はこれを実行するためにETF(上場投資信託)や国債を大量に買い入れているが、私からすれば狂気の沙汰としか言いようがない。
このことが続く限り、私が日本に投資することはない。なぜなら今の日本の株式市場は、人工的につくられた架空のものであるからだ。紙幣を大量に刷って物価を上げようとしたり、金利水準がこれだけ低かったりするのは人工的で現実離れしている。そうした非現実的なものに私は投資をしたくない。
破綻へのプロセスは
すでに始まっている
――米IT大手のフェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字を並べたFANGが米国株高を牽引していますが、米国株を持っていない理由はなんでしょう。
FANGの事業は継続するだろうが、今の株価は明らかに割高だ。これまでずっと上昇を続けてきたが、2カ月ほど前から下落の兆候が見受けられる。
歴史を振り返れば、ベアマーケット(下落相場)は誰も気付かないところから始まる。
例えば08年に表面化したアイスランドやアイルランドの金融危機は誰も気付かないところで進行していた。(米投資銀行の)ベア・スターンズが破綻した頃から気付き始める人が増え、リーマン・ブラザーズの破綻により全世界の人々がようやく危機を知った。
当時と同じように破綻へのプロセスは今、既に始まっている。
国別で見れば、ラトビアが非常に深刻な事態になっていて、アルゼンチン、インドネシア、トルコもそれに続くだろうが多くの人にあまり気付かれていない。あるいは気付いているかもしれないが、ささいなことと受け止められている。ドイツの株式も下落が続いているし、FANG株はディストリビューション(売り抜け)が起きている。
これらは全てつながっており、繰り返すが破綻へのプロセスは既に始まっている。
――中国株を保有しているとのことですが、米中貿易戦争の影響をどうみますか。
確かに中国株は最高値から約6割も下がっている。米中貿易戦争により、中国だけでなく韓国などアジア経済は深刻な影響を被っている。要するに貿易戦争で得をする者は誰もいないということだ。
――中国やロシアで保有する株式の銘柄は。
農業関連株だ。農業は世界的にずっと低迷し、割安だ。具体的には肥料や農機材メーカー、農園関連に投資している。
――なぜ農業に着目しているのですか。
例えば砂糖の国際価格は史上最高値から大幅に下落している。世界的に農業従事者の平均年齢は高く、英国やインドでは多くの自殺者も出ている。
私の投資の哲学は、「安く買って高く売る」ということだ。農業は今、世界的に壊滅的な状況にある。
――今後成長するとみているのでしょうか。
特にロシアは農業関連で恩恵を受けるだろう。その理由は、米国の経済制裁により、逆にロシア国内で競合がなくなったからだ。トランプ米大統領にはむしろ感謝したいぐらいだ。
そして中国政府は過去4年間、都市と地方の経済格差を解消するため、地方での農業従事にインセンティブを与えている。
大惨事の国に投資すれば
大金持ちになれる
――他に投資先として注目している国やアセットはありますか。
もし今、投資先として見るべき価値があるとすれば、私はベネズエラを挙げる。
ご存じのように、ベネズエラ経済は崩壊して壊滅的な状況だ。だが私自身の経験から言えるのは、大惨事が起きた国に投資をすれば、5年後には大金持ちになれることだ。
国が壊滅するなど、歴史上そう何度もあることではない。私はベネズエラを訪れ、副大統領や財務大臣に会った。投資をしたいが、残念ながら米国人によるベネズエラへの投資は米政府により禁じられている。
もしも法的に投資が許されるなら、絶対にベネズエラに目を向けるべきだ。私なら日本株のようなものではなく、世界で最も底値にあるベネズエラに着目する。
――金など商品相場の動向はどうみていますか。
金は保有しているが、今は相場が上がっているので買い増してはいない。
――今後注目する国際政治イベントは。
特にない。トランプ大統領が戦争を始めるかもしれないし、平和を志向するかもしれない。どんなことでも起こり得るので特定の政治イベントを見ているわけではないが、世界で何が起こっているかは常に注視している。
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