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2019年人身取引報告書(日本に関する部分)
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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。
国務省人身取引監視対策部
2019年6月20日
日本(第1階層)
日本政府は、人身取引撲滅のための最低基準を十分に満たしている。当局は、本報告書の対象期間中、引き続き真剣かつ持続的な取り組みを示した。ゆえに、日本は引き続き第1階層となった。こうした取り組みの中には、技能実習制度における労働検査の増加や、有罪判決を受け、刑務所に収容された人身取引犯が前年の報告書対象期間よりも増えたことなどが含まれた。日本は最低基準を満たしてはいる。しかし、技能実習制度の下での国内の移住労働者の強制労働が幾つも報告されたにもかかわらず、当局は技能実習制度における人身取引事案を今回も1件も認知しなかった。技能実習生を借金で束縛する主な要因の1つは、外国に拠点を持つ募集機関による過剰な金銭徴収であるが、その徴収の阻止を目指した「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習制度改革法)の規定を政府は十分に執行できていなかった。当局は引き続き、より軽微な刑の法律に基づいて人身取引犯を訴追し、裁判所は、多くの場合、刑務所に収容せずに刑の執行を猶予した。当局は引き続き有罪判決を受けた人身取引犯の大多数に対して刑の執行を猶予した。罰金刑のみを受けた人身取引犯もいた。関係府省庁の関係従事者は、異なる審査や照会手順に頼り、その結果、適切な被害者認知と保護に問題が生じた。法執行機関は引き続き、商業的性的搾取を受けた何百人もの児童を、公式に人身取引被害者として認知することないまま特定した。当局は引き続き、性的搾取目的の児童の人身取引や強制労働が疑われる多くの事案を、刑事捜査や刑事訴訟によるのではなく、行政処分や営業許可の取り消しにより処理した。
優先すべき勧告
性的および労働搾取目的の人身取引事案を精力的に捜査、訴追し、有罪判決が下された人身取引犯に重い刑を科して責任を課す。実刑の代替として罰金刑を認める量刑規定を削除し、最長で4年もの実刑を含め、人身取引犯罪に適用される処罰を強化するため、人身取引対策関連法を改正する。人身取引被害者専用シェルターなど、人身取引の被害者に専門のケアと支援を提供する資源を拡充し、これらの支援サービスが外国人被害者と男性被害者の双方にも利用できるようにする。外国人技能実習機構の職員および入国管理当局者を対象とした被害者認知の研修、外国人技能実習機構と非政府組織(NGO)との連携の向上、雇用主に対する調査の増加、および過剰な手数料やその他金銭を課す外国の募集機関との契約解除などにより、技能実習制度改革法の監督および執行措置の実施を強化する。第三者のあっせんを介すことなく商業的な性的搾取を受けた児童、技能実習制度の下での移住労働者、新たなビザ制度で日本に入国する移住労働者などの被害者が、適切に認知され、かつ支援サービスを受けられるようにし、また人身取引犯に強要されて犯した違法行為によって、拘束または強制送還されることがないよう、被害者の審査を強化する。全ての労働者に支払いが課される募集費用およびサービス料を廃止するための関連政策を改定することにより、移住労働者が借金による強制の被害に陥りやすい状況を減らす。強制労働の一因となる組織や雇用主による「処罰」合意、パスポートの取り上げ、その他の行為の禁止の実施を強化する。海外で児童買春旅行に参加する日本人の捜査、訴追、有罪判決、処罰を積極的に行う。
訴追
政府は、法執行の取り組みを一定部分強化した。日本には、国際的な基準に沿った定義を含む、包括的な人身取引対策法がなかった。しかし、日本は、成人および児童の売買春、児童福祉、入国管理、雇用基準に関する異なる法律を通して、性的搾取目的および労働搾取目的の人身取引を犯罪とした。売春防止法第7条は、人に売春させることを犯罪としており、詐欺的または威圧的な手段を用いた場合には最長3年の懲役、もしくは最高10万円(910ドル)の罰金を規定しており、暴行または脅迫が用いられた場合には最長3年の懲役および最高10万円(910ドル)の罰金に処した。同法第8条は、被告が第7条に規定された犯罪の対償を収受し、もしくは収受する契約を結び、または同対償を要求した場合には、最長5年の懲役および最高20万円(1820ドル)の罰金を科して処罰を強化した。「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」は、児童を商業的に性的搾取する行為、周旋、および勧誘を犯罪とし、最長5年の懲役もしくは罰金、またはその両方の処罰を規定していた。同法はまた、買春や児童ポルノ製造による児童の搾取を目的とした児童の売買を犯罪とし、最長10年の懲役を規定した。報告によると、政府はまた、児童福祉法を用いて人身取引関連犯罪を訴追した。同法は、児童にわいせつもしくは有害な行為をさせる目的での児童の移送、または隠匿を幅広く犯罪とし、最長10年の懲役もしくは最高300万円(27310ドル)の罰金、またはその両方の処罰を規定していた。職業安定法および労働基準法はいずれも、強制労働を犯罪とし、最長10年の懲役もしくは300万円(27310ドル)以下の罰金を規定していた。最高検察庁は、2018年3月、児童福祉法に違反した人身取引犯罪の有罪判決で実刑を求刑するよう検察官を導くと伝えられている量刑に関する指針を発表した。本報告書の対象期間中、有罪判決を受けた人身取引犯の大多数は、依然として、刑務所への収容を免除される判決を受けた。複数の市民社会団体は、こうした一連の重複する法律に頼っていることが、人身取引犯罪、特に、心理的威圧の要素を持つ強制労働を伴う事案を認知や訴追する上での政府の能力を引き続き妨げていると報告した。
政府は、2018年に人身取引関連犯罪で39件の捜査に着手したと報告し(2017年は報告なし、2016年は44件)、裁判所は34人を新たに起訴し(2017年は26人)、そのうち27人に有罪判決を下した(2017年は23人)。当局は、人身取引の形態別に訴追データを分類しなかった。有罪判決を受けた27人の人身取引犯のうち2人は罰金刑のみを受け、16人は執行猶予付判決を受け実刑を免れた(2017年は12人に対して刑の執行猶予)。執行猶予付判決を受けた者のうち6人は、5万円から100万円(455ドル〜9100ドル)の範囲内の罰金刑も受けた。当局は、残り9人の人身取引犯に1年から7年の刑期を(2017年は、17人に対して2年から4年の刑期)言い渡し、9人全員を実刑とした(2017年は5人のみが実刑)。政府は、「児童買春」に関わる事案(2017年は956件)で、公式に人身取引犯罪と認知せずに700人超の成人を捜査したと報告した。当局は、このうち600人近くを起訴し、有罪判決を下したが、量刑や刑務所への収容データは報告しなかった。過去、当局は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」の「児童買春」規定に基づき少人数の者を有罪としたと報告したが、この数字は、政府が人身取引として公式に認知した「児童買春」事案の有罪判決のみの場合が多かった。つまり、「児童買春」規定に基づく有罪判決の本来の数は大幅に多かったものとみられる。訴追の取り組みの効率化をはかるため、中央政府は、全国の検察庁に対して、人身取引を専門とする職員を法執行連絡担当官として任命するよう指示した。警察庁もまた、緊急連絡先情報を9カ国語で提供し、被害者に虐待を報告するよう呼びかけるウェブサイトへ誘導するQRコードを記載した新たなリーフレットを作成、配布した。当局はまた、この内容を関係府省庁の啓発資料の中で際立たせた。2017年、日本は、証人の買収を犯罪とする規定を含む法律を可決した。同法律により、当局は、司法妨害罪で一定の人身取引犯を容疑者として立件するための新たな根拠を得る。しかし、政府からは、本報告書の対象期間中に、政府が人身取引事案でこの法律をどの程度適用したかという報告はなかった。
外国人技能実習機構による検査の増加により特定された強制労働の兆候が横行したにもかかわらず、政府は、技能実習生の強制労働に関与した者を訴追、あるいは有罪判決に下したという報告はなかった。労働基準監督署と各地の入国管理当局は、技能実習生への虐待が疑われる7300カ所超の実習実施機関に立入検査を行った。うち5160カ所の実習実施機関に何らかの労働法違反があったと判明し、是正勧告を行った。このうち19件を「重大な虐待」としてさらなる刑事捜査を行うため、検察庁に送検したと報告した(2017年の送検数は40件。2016年は、より軽微な違反事案で40件を送検)。NGOは、外国人被害者を巻き込んだ強制労働の事案に対して、裁判所が極端に高い証拠基準を設定しているため、適切な法執行措置を妨げていると主張した。報告によれば、地方の法執行当局の中には、NGOによる強制労働の被害者救出や支援を妨げるため、技能実習生を虐待する雇用主を手助けする当局もあった。
当局は、「JK」ビジネスやポルノ出演強要における性的搾取目的の児童の人身取引に対する法執行措置を引き続き行ったが、過去の報告書の対象期間の場合と異なり、データや事案の詳細を提供しなかった。7つの主要都道府県は、「JK」ビジネスを禁止し、18歳未満の少女が「援助交際」業で働くことを禁じるか、または「JK」ビジネスの営業者に対し、各地の公安委員会に従業員名簿を登録することを義務付ける条例を可決した。本報告書の対象期間中、当局が全国で認知したこれらの営業所の数は137カ所だった(2017年は114カ所)。当局から、条例違反で閉鎖となった営業所の報告はなかった(2017年は14カ所)。しかし、当局はJKビジネスを取り巻く何らかの犯罪行為に関与した疑いで69人を逮捕した。報告によれば、当局の中にはは、犯罪に気づかなかった、あるいは訴追の方法に確信がなかったという所もあり、多くの場合、極端に高い証拠基準を理由に挙げた。政府は、警察官、検察官、裁判官、入国管理局職員を対象に、捜査方法と被害者認知に関する研修を引き続き行った。このような取り組みにもかかわらず、関係筋は、主要な司法関係従事者内での認識不足に対応するために、一層の研修を行う重大な必要性があると述べた。
保護
被害者を保護する政府の取り組みは依然不十分なままであり、政府は、技能実習制度および商業的性的搾取を受ける何百人もの児童の中から、人身取引被害者を公的に認知することは今回もできなかった。当局は、人身取引対策関係省庁連絡会議が2010年に導入し政府機関に人身取引被害者に対する幅広い保護措置を展開するための公式な手引書に頼った。警察庁は、被害者を認知し、利用可能な保護支援サービスを紹介するため、国際移住機関(IOM)作成のハンドブックを参考にしたとも報告した。実際、関係府省庁の関係従事者は、特に性的搾取目的の児童の人身取引被害者や移住労働者の被害者認知において、全く異なる手続きに従い、多くの場合その手続きは不十分であった。
当局が人身取引被害者と認知したのはわずか25人だった。2017年の人身取引被害者は46人、2016年は50人だった。認知した25人の被害者のうち、政府は未成年男性1人を強制労働被害者として認知した(2017年の男性被害者は1人)。3人の女性は、「ホステス」として働くことを強制され、中には、性的搾取目的の人身取引被害を受けた可能性がある者もいた。性的搾取目的の人身取引の女性被害者は少なくとも20人(2017年は31人、2016年は37人)おり、その中には4人の児童が含まれた。2018年に認知された男性の被害者は1人のみだった。人身取引の兆候という実質的証拠があるにもかかわらず、政府は技能実習制度における強制労働の被害者をこれまで1人も認知していない。当局は、契約している機関による強制労働やその他の虐待的環境から逃れてきた技能実習生、特にベトナムからの実習生、を引き続き逮捕し、強制送還した。政府は、技能実習生の強制送還に関する全国統計を報告しなかった。しかし、ある1都市の入国管理当局は、雇用主による不正な強制送還の確認審査のためみ、契約終了前に日本を去る技能実習生の少なくとも8000人に面談を行ったと報告した。このうち、9件の強制送還未遂を見つけ出し、うち5件については介入に成功し、うち2人の技能実習生の雇用を復活させた。
当局は、本報告書の対象期間内の827件の犯罪のうち、性的搾取目的の人身取引の一形態である「児童買春」に関わった544人の児童を新たに特定し、何らかの保護支援サービスを提供したが、警察はこの児童たちを性的搾取目的の人身取引被害者として1人も認知しなかった(2017年は654件のうち6人、2016年は518件のうち10人を認知)。当局は、自らが固執する定義上の違いに基づいて、児童買春の統計と性的搾取目的の人身取引の統計の間に引き続き線引きをしたが、これにより、支援の提供や適切な法執行措置に影響を及ぼした可能性があった。2000年に採択された国連人身取引議定書の定義上の基準に反して、当局は、性行為が第三者により仲介されたのでない限り、児童を性的搾取目的の人身取引被害者と見なさず、これにより、何百人もの児童が人身取引被害者として公的に認知されなかった。警察は、性的搾取目的の人身取引被害者の可能性のある児童の一部、特にレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、インターセックス(LGBTI)の児童を、引き続き非行少年として扱い、被害者の立場であるか否かの確認審査も、これら児童の事案の捜査も、または専用の支援サービスへの紹介も行わず、代わりに、こうした児童に対して素行に関する助言を行った。当局は、児童が置かれていた人身取引の状況との関連で、一部の被害児童を逮捕した。
ここ数年間と同様、政府は、人身取引被害者に特化したシェルターへ資金提供を行わなかったが、婦人相談所が運営するシェルターや家庭内暴力の被害者のためのシェルターには引き続き資金を提供した。当局は、2018年に認知された27人の人身取引被害者のうち、16人を支援したと報告した(2017年は46人中16人を支援)。数は不明だが、NGOのシェルターで支援サービスを受けた被害者もさらにいた。NGOのシェルターでは、政府が助成する医療を利用することは可能であった。婦人相談所のシェルターは、被害者に食料、その他の生活必需品、精神的ケアおよび医療費を提供し、婦人相談所職員が同行すれば被害者は自由に外出することができた。政府は、シェルターでの人身取引被害者の保護に対して340万円超(30950ドル)を割り当てたと報告した(2017年は男性の人身取引被害者の保護だけで350万円(31860ドル)を充当)。各都道府県の担当者が人身取引事案を扱った経験の度合いによって、被害者が利用できる支援サービスとその質は異なった。
厚生労働省は、NGOが運営する外国人労働者向けの一般的な相談ホットラインに、引き続き一部資金を提供した。しかし、このホットラインは人身取引に特化したものではなかった。同省は、技能実習生からの2197件の電話相談を処理したと報告したが、人身取引の疑いのある事案がどれほどあったかは不明であった。入国管理局は、同様のホットラインを運営したが、このホットラインを通しての人身取引被害者の認知はなかった(2017年は2人を認知)。警察もまた民間団体を通して一般的なホットラインを運営し、1万4500件超の電話を受けた。警察庁は、そのうち295件を、人身取引事案の可能性があると特定した(2017年は、1万9078件中433件)。このホットラインは日本語のみでの利用が可能であり、当局は寄せられた電話が確実な被害者認知につながった否か、あるいはその後の捜査へとつながったか否かについては報告しなかった。政府は、国際機関を通じて、人身取引被害者にカウンセリング、一時避難、社会統合および帰国支援を提供する事業への資金拠出を継続した。この事業を通して、5人の外国人被害者が帰国支援を受けた(2017年は7人、2016年は23人)。こうした支援サービスが存在するにもかかわらず、国際機関およびNGOの報告によると、合法的に日本に居住する被害者であれば受けることのできるその他の政府提供の社会支援サービスについては、ほとんどの外国人人身取引被害者が利用を限定されていたか、全く利用できなかった。NGOは、言語通訳サービスの不備は、外国人被害者の保護にとって特に課題となっている事の1つであると強調した。
法律は、表向きには、人身取引被害者を日本への入国拒否や日本からの強制送還から保護した。しかし、報告によると、被害を受けやすい人々に対する審査が不十分であったために、性的搾取を目的とした人身取引被害や強制労働被害に起因して犯した出入国管理法違反やその他の罪を理由として、一部の被害者が逮捕され、強制送還された。NGOの指摘によれば、在留資格認定証明書を得て日本へ入国する日本人とフィリピン人の間に生まれた子どもが被害者でないかどうかの確認審査を厳格化すべく、外務省と法務省との協力が強化された。しかし、当局より、こうした協力強化が確実な被害者認知につながった否かの報告はなかった。出身国へ帰国することに伴う影響を恐れる外国人被害者は、一時的、長期的、または定住者として在留する便益を受けることが可能であった。政府は、このような状況の中、1人に長期在留資格を、8人に短期の在留許可または資格を付与したと報告した(2017年は、2人に長期在留資格、16人に短期の在留許可を付与した)。2018年に認知された被害者の中には、被害者として認知された時にはすでに在留資格を受けていた者もいた。被害者は人身取引犯に対して損害賠償を求める民事訴訟を起こす権利を有した。2018年には、人身取引被害者として未認知の可能性のある者を含む一部の外国人労働者と性的搾取目的の人身取引被害者が、賃金不払いに対して民事訴訟を起こした。しかし、技能実習制度の雇用主などの賠償金の支払いを命じられた会社は破産申し立てをすることが多かったため、賠償金の受け取りをほぼ不可能とした。複数の社会市民団体は、ポルノ出演強要の被害者の中には、人身取引犯に対する訴訟への参加によって汚名を着せられ、社会統合や社会復帰の障害になることへの恐れを理由に、訴訟に参加しない選択をした被害者もいたと報告した。
防止
政府は人身取引を防止する取り組みを維持した。しかし、被害を受ける危険の高い移住労働者に対しては適切に被害を防止しようとする政治的意思は欠如していた。政府は、政府による人身取引対策のための行動について第4次年次報告書を作成し、人身取引対策行動計画で表明した目標に照らして、施策の取り組み状況を追跡調査した。当局は、インターネット、ラジオ番組、ポスター、冊子を通じた情報発信と、NGO、入国管理事務所、労働基準監督署、日本内外の外国公館へのリーフレット配布を通して、人身取引に対する啓発活動を行った。政府は引き続き、交通拠点などでポスターや冊子を配るとともに、海外での児童買春旅行への参加が疑われる場合、日本国民は訴追され得ることを旅行者に警告した。当局は、引き続き、多言語対応の緊急時連絡ホットラインの電話番号を、各地の警察や入国管理事務所において公示し、また、NGOを通して送り出し国政府との協議中にも告知した。
政府は、監督機構である外国人技能実習機構により多くの人的・財政的資源を割り当て、技能実習制度の管理団体および職場への立入調査回数を増やし、立入調査時に労働違反が見つかった場合には是正勧告を引き続き行うことで、2016年成立の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習制度改革法)の施行を継続した。技能実習制度改革法は、新規の技能実習生と雇用主が共同で作成する、生活環境、労働時間、その他の要素の概要である労働計画を、厚生労働省が承認するよう義務付けた。当局は、2018年12月時点で、同法制定以降、38万3240件の計画を承認したと報告した。この新法の施行をもって、執行権限は、出入国在留管理庁から厚生労働省所管の労働基準監督署へと本報告書の対象期間中に移行した。労働基準監督署と各地の入国管理事務所は、7339件(2017年は5966件)の技能実習制度の現場の立入調査を行い、そのうち5160機関(2017年は4226件)に対する「是正勧告」と19件の「重大な虐待」の送検へとつながった。2018年、出入国在留管理庁は、技能実習制度下の100カ所超の機関に不正行為があったと通知し、約170の是正勧告を出した(2017年は210)。この中には、福島の原発事故の被災地で実習生を除染作業に無給で従事させた2社が含まれた。法務省の報告によると、当局は、2018年に100カ所超の機関に対して技能実習生の受け入れを禁止した。
複数の市民社会団体は、技能実習生受け入れ工場で労働条件の監視を強化した外国人技能実習機構の取り組みを称賛した。しかし、外国人技能実習機構は、特に技能実習生の数が増え続けるなか、職員数の相当な不足により、こうした大規模な事業における強制労働などの虐待の申し立てを十分に調査できていなかったと、市民社会団体は引き続き懸念を示した。厚生労働省承認済みの労働計画のうち、当局が2018年に何らかの違反があったとして無効にしたのはわずか8件であった。専門家の中には、技能実習制度の雇用主と実習生の数が調査官と比較して多いために、労働計画には執行力が欠如していたと述べる者もいた。技能実習制度改革法は、表向きには、技能実習生が一旦日本へ入国すれば、その後は自分の意志で雇用主を変更できる権利を拡大したが、専門家は、ほとんどの技能実習生が未だに雇用主の変更を阻止されていると述べた。報告によれば、技能実習生の中には、契約した職場での虐待的環境から逃れたことにより、在留資格の条件違反となり、失業中の身で人身取引の被害者となる危険が増す者もいた。入国管理当局者は、ホットラインおよび連絡先情報を記載したオリエンテーション冊子を、入国する全ての技能実習生に配布したが、冊子の中には、好ましくない労働条件を理由に雇用主の変更を試みようとしても、それを思いとどまらせることを意図した内容に見えるものもあった。技能実習制度の雇用主は、技能実習生に対して、辞めようと試みた場合、懲罰的罰金を科すと引き続き脅迫した。実習生の中には、外国人技能実習機構は雇用主による突然の契約変更や終了に関する仲裁を求めても無反応だったと報告した者もいた。
技能実習生が母国の送り出し国で多額の借金を負うことを防ぐ試みとして、政府は、バングラデシュ、ブータン、ビルマ、カンボジア、インド、ラオス、モンゴル、パキスタン、フィリピン、スリランカ、タイ、ウズベキスタンおよびベトナムとの間で協力覚書を維持し、技能実習生から過剰な金銭を徴収することのない各国政府が認定する機関からのみ、実習生を受け入れることを確認した。しかし、こうした国の送り出し機関の中には、金銭の代わりに高額の「手数料」を課すことで、金銭の徴収制限を回避し、かつ自国政府の認定を受けることができた機関もあった。ゆえに、これらの国から来日する実習生は、一旦日本に入国すると、これまで通り借金による束縛を被りやすくなった。これは、特に、技能実習生の中で最多となるベトナムの技能実習生に当てはまった。外国人技能実習機構は、送り出し国に対して、募集費用徴収違反の申し立てへの調査を要求することが可能だが、送り出し機関を処罰し、あるいはこのような行為のために送り出し機関を締め出す決定は、送り出し国の当局の裁量に委ねられた。少なくとも、技能実習制度下の1つの主要地域にある外国人技能実習機構事務所から、このような調査を依頼したとの報告はなかった。日本の当局は、実習生を送り出す「疑わしい」機関の名前をウェブサイトで公表したが、新規の実習生がこのような機関を回避できる措置の報告はなかった。
2018年12月、政府は、今後5年間で新たに34万5000人の移住労働者が来日し、人材不足で知られている建設、造船、介護、その他10産業分野の人材の補充を可能とする、新たなビザ制度の法律を可決した。この新制度により、既に技能実習生である適格者は、現在の自分ビザを新設のビザへと切り替えることができ、日本での滞在期間の延長や同産業部門内での転職が可能となる。しかし、専門家は、新設の在留資格は、技能実習制度に備わる脆弱性と同様、強制労働を含む労働者への虐待へ脆弱性を高める可能性があるとの懸念を示した。法務省は、このような移住労働者に対して、日本の最低賃金と同額、もしくはそれを上回る報酬を支払うことを雇用主に義務付ける法規を定めた。しかし、同法によりまた、営利目的の人材あっせん機関や個人が、免許要件のない「登録支援機関」となり、労働者を募集するブローカーと雇用主との間を有料で仲介することが可能となった。専門家は、このような業務料は、新制度下で入国する移住労働者に対して、借金による強制への脆弱性を生み出すこととなり、また当局が、喫緊の労働者不足を緩和する処理の迅速化を支える十分な予防策を講じてこなかったことを懸念した。
政府は、海外で児童の性的搾取に関与した日本国民を訴追する域外管轄権を有するが、本報告書の対象期間中に、当局より、そのような管轄権の行使の報告はなかった。政府は、ポルノへの出演強要を防ぐため、アダルトビデオ業界関連企業の数百社を対象に、厚生労働省と警察庁による法制度に関する合同説明会を開催した。政府はまた、ポルノ出演強要や「JK」ビジネスを通して行われた児童への暴力に対処するために、内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)が議長を務め、政府高官で構成された関係府省庁連絡会議を引き続き開催した。政府は、商業的性行為の需要削減に十分な努力を払わなかった。また、JKビジネスへの啓発活動の内容の多くは、需要者側を対象にしているのではなく、被害者を対象したものと見受けられた。当局は、強制労働への需要削減のために著しい努力を行わなかった。
人身取引の概説
過去5年間に報告されたように、人身取引犯は、日本人および外国人の男女を強制労働および性的搾取目的の人身取引の被害にさらし、日本人児童を性的搾取目的の人身取引の被害にさらしている。人身取引犯は、主にアジア出身の移住労働者の男女を、日本政府による運営事業も含めた強制労働の環境にさらしている。北東アジア、東南アジア、南アジア、中南米およびアフリカからの男性、女性および児童は、雇用または偽装結婚のために来日し、性的搾取目的の人身取引の被害にさらされる。日本で急速に増加する外国人留学生もまた、単純労働の分野において人身取引の被害者になる危険にさらされている。人身取引犯は、バー、クラブ、売春宿およびマッサージ店での性的搾取を目的とした人身取引のために外国人女性を日本へ入国させやすくしようと、外国人女性と日本人男性との偽装結婚を利用する。人身取引犯は、借金による強制、暴力または強制送還の脅迫、恐喝、パスポートの取り上げ、その他の精神的な威圧手段を用い、被害者を強制労働や強制売春の状態にとどめる。雇用主は、多くの移住労働者に、生活費、医療費、その他の必要経費を支払うよう要求し、労働者を債務による強制にさらしている。売春宿の運営者は、被害者が借金を負っている期間を引き延ばす1つの手段として、素行が悪いとして恣意的に被害者に「罰金」を科すことがある。報告によると、人身取引犯は、被害者を域内の別の場所から日本経由で移動させ、東アジアや北米等、日本を越えた送り先で搾取している。
人身取引犯はまた、日本人、特に、家出した十代の少女を、性的搾取を目的とした人身取引の被害にさらしている。「援助交際サービス」やさまざまな形態の「JK」ビジネスが、性的搾取を目的とした日本人児童の人身取引を依然として助長している。高度に組織化された売春ネットワークが、地下鉄、若者のたまり場、学校、インターネット上などの公共の場で、被害を受けやすい日本人女性や少女を標的として、商業的性的行為を目的とした施設、小売店舗内、リフレクソロジー店にて性的搾取を目的とした人身取引の被害者とする。こうした女性や少女は貧困状態で生活しているか、または認知障害がある場合が多い。モデルや芸能事務所に見せかけた団体の中には、詐欺的な募集手段を用いて、日本人男性、女性および少女に不明瞭な契約書に署名するよう強要し、その後、法的手段を取る、あるいは不名誉な写真を公表すると言って脅し、ポルノ映画への出演を強要する団体もある。入国を仲介する日本の民間業者は、日本人とフィリピン人との間に生まれた児童とそのフィリピン人の母親が日本に移住し、日本国籍を取得することを、多額の手数料を取って支援するが、これにより母親は多額の借金を負うことが多い。日本到着直後、借金を返済するため、性的搾取目的の人身取引の被害者となる母親や児童もいる。入国仲介業者に見せかけた組織犯罪集団もまた、仕事があると偽って、このような家族を日本に誘い、女性を歓楽街で強制労働に従事させる。日本人男性は依然として、タイやその他のアジアの国々における児童買春旅行への需要の源泉の一部である。
強制労働の事案は、政府が運営する技能実習制度において発生している。この制度は本来、外国人労働者の基本的な専門的技能を育成することを目的としていたが、事実上の臨時労働者事業となった。過剰な金銭徴収の慣行を抑制することを目的とした国際合意があるにもかかわらず、ビルマ、中国、カンボジア、フィリピン、ベトナムからの技能実習生は、漁業、建設業、製造業で職を得るために、最高で1万ドルという過剰な金銭、保証金または不明瞭な「手数料」を母国の送り出し機関に支払っている。技能実習制度の雇用主は、技能実習制度の本来の目的に反して、多くの実習生を技能の教授や育成が実施されない仕事に従事させている。事前に合意した職務と一致しない仕事に就かされている技能実習生もいる。これらの労働者の中には、移動の自由を制限され、パスポートを没収され、強制送還の脅しを受け、強制労働を示唆するようなその他の状態に置かれた者もいた。技能実習生に「処罰合意」への署名を義務付け、労働契約を履行できない場合、何千ドルもの違約金を科す送り出し機関もあった。報告によると、契約を結んだ技能実習の仕事から逃れた実習生の中には、性的搾取目的の人身取引の被害者になる者もいる。
By U.S. Mission Japan | 2019年7月19日 | トピックス: ニュース, 主要文書
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