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「ゾンビ銀行」退治に国と金融庁が本気になった理由
https://diamond.jp/articles/-/207082
2019.7.1 5:05 ダイヤモンド編集部 鈴木崇久:副編集長
週刊ダイヤモンド7月6日号の第1特集は「銀行危険度ランキング」。国が成長戦略に地方銀行の再編に関する特例法の制定を盛り込み、銀行の監督官庁である金融庁は、銀行の「将来の収益力」という観点から「伝家の宝刀」である行政処分を繰り出せるように制度の見直しを施しました。なぜ今、銀行包囲網は急速に狭まっているのかに迫りました。
国の「成長戦略実行計画案」に
地銀の特例法が盛り込まれた理由
国や地方の成長戦略の司令塔である「未来投資会議」(議長・安倍晋三首相)は6月5日、「成長戦略実行計画案」を発表した。
「デジタル市場のルール整備」「フィンテック/金融分野」「次世代インフラ」といった項目が並ぶその計画案の中には、地方銀行のために割いたページもあった。そして、そこには地銀に「特例法を設ける」と書かれていた。
しかし、それは銀行業界の「成長戦略」を描いたものではなかった。むしろその逆だ。計画案の中で地銀は、同じ境遇にある乗り合いバスと共にこう語られた。
「現在、少子化、人口減少の中で、地域において、その経営が急速に悪化しており、(略)その経営力強化が喫緊の課題である中、その選択肢として、経営統合や共同経営の実施が見込まれる」
実は特例法制定とは、地銀を他行との経営統合や合併に突き動かす国の方針にほかならない。
銀行の業績が悪化して地元地域の資金繰りに支障を来す恐れがある場合に限って独占禁止法の適用を除外し、特例的に経営統合が認められるようにする。そんな方針を明確に打ち出したのだ。
2020年の通常国会でその特例法案を提出し、10年の時限措置を導入することで、苦境に陥る銀行に対して集中的に再編を促す。
これは、70歳超が急増する中小企業の経営者に事業承継を促すやり方と同じだ。18年度の税制改正で、贈与税と相続税の「100%納税猶予制度」を10年間の時限措置として創設している。
銀行が破綻して混乱に陥る前に、国を挙げて整理すべきだという意思の表れといえる。
国の動きに呼応する金融庁
銀行への「伝家の宝刀」を磨き直す
そんな国の動きと時を同じくして、銀行の監督官庁である金融庁も呼応するような動きを見せている。それが「早期警戒制度」の見直しだ。
従来重視してきた「足元の健全性」だけでなく、「将来の収益力」も銀行に強く求める方針を表明。必要があれば、その観点から「伝家の宝刀」である業務改善命令などの行政処分を銀行に下せるようにした。
それに当たって具体的に、今後約5年以内に「コア業務純益(投資信託の解約損益を除く)が継続的に赤字になる」ことが予想される、といった条件を明示したのだ。
コア業務純益とは、一般の事業会社の営業利益に当たるものだ。営業赤字が続くようであれば、足元は大丈夫でも将来的には銀行の健全性にヒビが入る。そうなる前に危機の芽は事前に摘みにいくというのが、金融庁が早期警戒制度の見直しに込めた真意だ。
それに先駆けるようなかたちで昨年、水面下ですでに収益力の改善を求める業務改善命令を受けたのが、福島銀行だ。有価証券の含み損処理や不良債権処理、店舗の資産価値の減損など、将来の損失リスクをはき出した影響もあり、18年3月期に7期ぶりの最終赤字を計上した。
それを受けて森川英治前社長は引責辞任。同じ県内地銀の最大手である東邦銀行の元専務、加藤容啓氏を社長に迎えて再建途上にある。
国と金融庁が銀行包囲網を狭める
「三つの理由」とは何か
なぜ国と金融庁は今、銀行に対する包囲網を急速に狭めつつあるのか。その理由は大きく三つある。
最大の要因は、融資事業という銀行の本業中の本業の不振にある。日本銀行が継続する異次元金融緩和によって超低金利環境が続き、貸出金を急増させてもそこから得られる金利収入が付いてこないのだ。
そこでにわかに収益源として脚光を浴びたのが、今まで銀行ではいわば“副業”扱いだった市場運用部門である。株式や債券などの有価証券の売買益や利息配当金で稼ごうとしたわけだ。
しかし、顧客にセールスをしていながら、自身の「資産運用」は得意ではなかったようだ。トランプショックなど市場の荒波にのまれて債券の運用が低迷。多いところでは数百億円規模など巨額の損失を被った銀行が続出した。それまで軽視してきた市場運用で本業の穴埋めをしようというのは甘過ぎた。
銀行の決算を救った「ヘソクリ」は
今や尽き果てようとしている
それでも銀行が決算の体裁を何とか保ってきたのは、株の売却益と与信コストという二つの穴埋め役の存在が大きい。
相場が右肩上がりの中で持ち合い株などの株の売却益が貢献した。
また、景気が堅調で企業倒産が少なく、融資の貸し倒れに備える引当金などの与信コストがこの何年かはほとんどかからなかった。それどころか、引当金が必要なくなって「戻り益」として利益計上できる銀行があったほどだ。
しかし、株の含み益は無尽蔵にあるわけではなく、景気の曲がり角が意識される中、与信コストも上がってきた。もはや利益の穴埋めに使えるヘソクリ≠ヘ尽きようとしている。
このように、今、多くの銀行は赤字体質や低収益体質から抜け出せず、決算を取り繕う材料も尽きようとしている。ただ、すぐに経営破綻に陥るわけではないので市場にはとどまり続ける。そんな「ゾンビ」と化す銀行が増えてきているのだ。
「十分な自己資本の厚みがあるので、数年で経営破綻することはない」。そう言われ続けてきた銀行業界だが、いよいよ健全性がむしばまれていく未来の姿がはっきりと視界に入ってきた。
“臨界点”を超えた銀行の危機的状況を受けて、国を挙げての「ゾンビ銀行」退治が始まる。
111銀行・259信金・
141信組を独自ランキング!
「週刊ダイヤモンド」7月6日号の第1特集は「銀行危険度ランキング」です。
今回の特集では、本当の瀬戸際に追い込まれた銀行業界の状況を鑑みて、「決定版」と呼べるランキングを作成しました。そのために次の5指標を採用して総合得点を算出し、ランキングしました。
(1)本業利益率
金融庁が銀行の本業(融資・手数料ビジネス)の収益性を分析する際に用いてきた「顧客向けサービス業務利益率」の計算方法にのっとって算出しました。
(2)運用総合利回り
本業の穴埋めに対する期待が年々高まる市場運用部門の収益力を分析した指標です。株式や債券などの有価証券の利息配当金や売買益に加えて、含み損益まで含めて評価。含み益は吐き出して含み損は抱え込む、という決算の“お化粧”の影響を排除しています。
(3)経費率
経営環境が厳しいにもかかわらず、高コスト体質にメスを入れない銀行に警鐘を鳴らす意味で加えました。
(4)自己資本利益率(ROE)
自己資本を使っていかに効率よく収益を稼ぎ出せるかという効率性の観点から指標としました。
(5)市場評価スコア
東京証券取引所第1部の上場基準引き上げ議論を踏まえて指標に加えた。市場評価が低い銀行は、単独では東証1部に踏みとどまることができず、再編圧力にさらされることを鑑みました。
この指標(1)〜(5)の個別ランキングは、特集内の各パートのテーマに応じてちりばめてあります。ぜひ、そちらもご覧いただきたいと思います。
「銀行危険度ランキング」を通して、現在の全国111銀行の赤裸々な姿を確認してみてください。
(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)
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