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米中貿易戦争でドル円相場は?軟着陸から最悪まで「3つのシナリオ」
https://diamond.jp/articles/-/203454
2019.5.25 山本雅文:みずほ証券チーフ為替ストラテジスト ダイヤモンド・オンライン
米中貿易戦争が激化するなか、今後ドル円はどう動くのか。専門家が3つのシナリオで分析する(写真はイメージです) Photo:PIXTA
米国株・金利、ドル円、中国人民元
今後考えられる「3つのシナリオ」
今年に入り収束に向かいつつあると見られていた米中貿易戦争は、トランプ米大統領が5月6日、延期していた中国からの輸入品2000億ドル相当分に対する10%の関税を25%に引き上げる方針を突然表明し(10日に発動)、中国が13日に報復関税措置を発表したことで(発動は6月1日)、再び激化した。
米国側の説明によれば、中国側がこれまでの合意の一部を白紙に戻したことが原因とされている。23日に米国株は大きく下落し、ドル円は米中長期金利の低下とともに109円台へ下落した。今後想定される3つのシナリオごとの、米国株・金利、ドル円、中国人民元の見込みは次の通りとなる。
【シナリオ1】
中国が歩み寄り
=人民元、米株、ドル円が上昇
このシナリオは、米中貿易戦争の激化の中で、相対的に悪影響が大きい中国が、米国によるさらなる関税措置(第4弾、対中輸入の残り約3000億ドル程度に対する25%の関税賦課)を怖れ、米国の要求を飲むというものだ。この場合、6月にかけて複数回の米中閣僚級通商協議が行われ、6月28〜29日に大阪で開催されるG20首脳会議の際に米中首脳会談が開催され、最終合意に至る。結果として追加関税措置は行われず、これまで引き上げられた関税は引き下げ、もしくは撤廃されるだろう。投資環境としてはベストシナリオとなる。
このシナリオの場合、これまで売り圧力が最もかかっていた中国・人民元や中国株、豪ドルなど資源国通貨、そして、中国経済の悪影響を受けやすいと同時に中国と輸出市場で競合するアジア諸国の通貨は反発するだろう。米国でも、事業環境の不透明感が後退することから米国株が上昇し、利下げ期待も後退するため中長期金利が上昇するだろう。ドル円相場は、米株高、米金利上昇の両面で下支えされ、113円程度への上昇もあり得る。
【シナリオ2】
中国が徹底抗戦。しかし米経済・株価は持ちこたえる
=人民元は下落する一方、ドル円の下げは限定的
このシナリオは、中国当局が米国の要求を飲むことをよしとせず、徹底抗戦姿勢を示す場合だ。米中閣僚級通商協議は決裂し、米中首脳会談でも合意に至らないか、開催すらされない。こうした中、米国では淡々と対中輸入関税第4弾発動に向けた意見聴取など国内手続きが進められ、13日の計画発表から2ヵ月程度が経過した7月頃に発動に至る。
中国も報復関税を実施するが
米国と比べて影響は圧倒的に小さい
これに対し、中国も報復関税を実施するが、報復関税の規模は米国と比べ小さくならざるを得ず、米国経済や米国株への悪影響は限定的となる。なぜなら、中国の対米輸入が米国の対中輸入に対し圧倒的に小さく、米国の対中輸入関税第3弾(2000億ドル相当分)に対する中国の報復関税対象は600億ドル分程度。第4弾では米国の関税が約3000億ドルとなるのに対し、中国の報復関税対象となり得るのは500億ドル弱にしかならない。
この場合、人民元や中国株の下落圧力が大きくなり、豪ドルなど資源国通貨やアジア通貨は連れ安となる。一方、米国株との連動性が高いドル円の下落は限定的となる。
なお、本シナリオで人民元がさらに下落する場合、トランプ大統領は人民元安を中国当局による「通貨操作」と決めつけ、元安牽制を行うだろう。この場合、人民元の下落が限定的となる可能性もある。また中国当局は、資本流出加速・金融危機発生リスクを回避すべく、外貨準備を取り崩し、ドル売り人民元買い介入を強化すると思われる。
【シナリオ3】
中国の徹底抗戦で米国も打撃を受け、
米国の対中圧力が弱まる
=当初ドル円が最も下落する一方、元安は限定的
このシナリオはシナリオ2と似ており、米中通商協議が決裂し、米国が対中輸入関税第4弾を発動する一方、中国も報復関税を発動することで中国が悪影響を受けるまではシナリオ2と同じだ。シナリオ3は、中国だけでなく米国の経済・株式市場も大きな悪影響を受けると想定するもので、市場関係者にとっては最悪のシナリオでもある。
このシナリオの場合、最も悪影響を受ける通貨ペアは、米国株や米金利との連動性が高いドル円である。米景気の減速懸念が高まれば、米国株が大幅に調整され、米利下げ期待が高まり、両面からドル安圧力がかかるためである。米中両国の景気減速は、世界景気の減速をも意味するため、投資家のリスク回避傾向が強まり、円高圧力がかかる。ドル円は108円割れを試すだろう。シナリオ2の場合、対ドルでの人民元安の進行を想定したが、シナリオ3ではドル安圧力も同時にかかるため、人民元安は限定的となろう。
米国に著しい悪影響が及ぶと
トランプ大統領は対中圧力を弱める
ただしトランプ大統領は、米国の経済・株式市場に著しい悪影響が及ぶと、20年の次期大統領選での再選にとって好ましくない。このため対中圧力を和らげるだろう。こうしたトランプ大統領の変節が見られ始めると、米金利、米国株は上昇に転じ、ドル円も反発しよう。このような展開を想定する場合、米中正面衝突による貿易戦争激化を受けた当初のドルの下落が、ドル押し目買いの好機となる。なお、この場合の対ドルでの人民元の反発は、ドル反発と同時に起こるため、限定的となろう。
米中両国が、互いに全ての輸入品に対し25%程度の関税を賦課すると、これ以上の関税拡大が不可能との見方も浮上するほか、さらなる関税率の引き上げは、経済・物価への悪影響を考慮すると事実上困難との見方も成り立つ。
この場合、貿易戦争関連材料に出尽くし感が広がるかもしれず、米国株にとって下支え要因となり得る。タイミング的にも、20年夏には本格化する次期大統領選を控え、トランプ大統領としては、米国経済に大規模な悪影響が及びかねない貿易戦争拡大はあまりに危険、との判断が働きやすいだろう。
より長期的問題としての
米中技術覇権闘争
関税賦課を主な手段とした米中貿易戦争と同時進行しているが、厳密には別の問題として、米中技術覇権闘争がある。米国が安全保障の問題としている中国ハイテク企業に対する米国製部品供給制限は、本質的にはハイテク技術面で中国に覇権を奪われないための措置といえよう。中国の国家戦略である「中国製造2025」は、まずは2025年までに半導体などコア技術の70%自給自足を目指すものだが、中華人民共和国・建国100周年にあたる2049年までには、100%の自給自足と世界一を目指しているともいわれ、長期的な戦略の通過点に過ぎないとされている。そうであれば、米中間の技術覇権闘争は、貿易戦争自体は収束に向かったとしても、今後さらに激化するだろう。
(みずほ証券チーフ為替ストラテジスト 山本雅文)
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