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医薬品ネット販売から携帯事業参入まで。「我田引水」な楽天・三木谷氏は竹中平蔵に次ぐ「政商」か<森功氏>
https://hbol.jp/190885
2019.04.24 月刊日本 ハーバー・ビジネス・オンライン
photo by Guillaume Paumier, CC-BY.3.0
楽天・三木谷氏が展開するビジネスは我々に何をもたらすのか?
5G時代の到来を前に、第4の携帯キャリアとして携帯電話事業への参入を決めた楽天の三木谷浩史会長兼社長が、ここ最近活発にメディアで発言をしている。
楽天参入によって、携帯電話サービスの革新に期待する声もあるが、自ら規制改革を推し進め、新たな市場を創出し、いち早く参入するという三木谷氏のビジネス手法には批判も少なくない。例えば、2013年に安倍政権の産業競争力会議の民間議員に就任し、ネット販売解禁を推進した事例や、竹中平蔵氏とともに推進したライドシェア解禁でも、利益誘導だという疑いを持たれている。
『月刊日本 5月号』では、ビジネスありきの性急な規制改革を進め、我田引水のビジネスを仕掛ける三木谷氏の手法を検証すべく、第三特集として「楽天・三木谷浩史の光と影」を組んでいる。今回はその特集記事から、ノンフィクション作家の森功氏へのインタビューを転載したい。
「我田引水」批判を浴びた医薬品のネット販売解禁
──森さんは、2014年に三木谷氏本人にインタビューし、医薬品のネット販売解禁をめぐる舞台裏について書いています(『文藝春秋』2014年5月号)。
森功氏(以下、森):第二次安倍政権発足直後に発足した産業競争力会議の議員に就任した三木谷氏は、医薬品のネット販売解禁を声高に主張しました。三木谷氏は、医薬品ネット販売を手掛ける「ケンコーコム」を傘下に収め、医薬品ネット販売事業の拡大を狙っていたのです。こうした三木谷氏の言動が、我田引水だという批判を浴びたのも当然です。
三木谷氏を支えてきたウシオ電機会長の牛尾治朗氏でさえ、「産業競争力会議に入っている、武田薬品工業会長の長谷川閑史さんは医療のことはやらない。三木谷君も、気をつけないといけない」と語っていました。
これは、レントシーカーとして批判を浴びてきた竹中平蔵氏に通ずるものがあります。
例えば、竹中氏は2013年に産業競争力会議議員として「雇用調整助成金を減らして、転職を促すための労働移動支援助成金を一気に増やすべきだ」と主張し、実際に翌年度に労働移動支援助成金は150倍に拡大しました。それで儲けたのは、パソナの再就職支援会社です。
医薬品ネット販売解禁を強硬に主張した三木谷氏も、竹中氏と同様、利益誘導の疑いを持たれました。
2013年に、医薬品のネット販売は条件つきで解禁されました。同年11月、厚労省は、解熱鎮痛剤のロキソニンS、アレルギー用薬のコンタック鼻炎スプレーなど比較的リスクの高い23品目の販売を制限、劇薬5品目を禁止し、残りを解禁したのです。
23品目の大半は医薬品から一般薬になったばかりの薬なので、原則3年をかけて安全性を確認した上で、ネット販売を認めることになりました。いずれにせよ、一般医薬品の99.8%について、ネット販売が認められることになったのです。
規制緩和によって利益を追求したい企業家と、新たな成長戦略を宣伝したい政治家のもたれ合いの中で、なし崩し的に規制が撤廃されることは問題です。本来、それに歯止めをかけるべき官僚も、その役割を果たせなくなっています。
ところが、一般医薬品の99.8%が解禁されたにもかかわらず、三木谷氏はそれに満足せず、全面解禁を主張しました。彼は、産業競争力会議のメンバーから降りるとまで言ってゴネましたが、結局安倍総理や今井尚哉・首相秘書官らが引き留めたようです。
三木谷氏は、医薬品のネット販売を有望な市場と見ているはずです。実際、彼は亡き父親・三木谷良一との対談共著『競争力』(2013年)の中で、「処方箋薬は6兆円マーケットだから、巨額の利益です。……ただ薬を渡すだけの薬局がなぜ必要なのか、よくわかりません」と述べていました。
三木谷氏は、様々な有望新興企業に投資をし、そのうちのいくつかが当たればいいという発想で事業を拡大しているようです。規制撤廃によって新たに生まれるビジネス、しかもネットで商売になるビジネスこそが、三木谷氏の狙いどころだということです。
ライドシェアの失敗事例を研究すべき
──三木谷氏は、自ら民泊やライドシェア解禁を主張し、その分野でも事業を拡大しようとしています。
森:安倍政権は、海外での水道民営化の失敗事例を十分研究することなく、水道法改正を強行しました。民泊やライドシェアについても、海外の失敗事例を十分研究するべきです。
性急な規制撤廃が業界に悪影響を与えた過去もあります。かつて、オリックスの宮内義彦氏が推進したタクシーの規制緩和によって、タクシー台数が急増しました。
その結果、タクシー運転手の収入が3分の2に減る一方、労働時間は1.2倍に増えてしまったのです。その犠牲の上に、儲けたのはオリックスです。オリックス自動車は、車両のリース事業で利益を拡大させたのです。
──三木谷氏は竹中氏と連携しているように見えます。竹中氏自ら、2000年の初めにコロンビア大学で開かれたコンファレンスに出席した時に、初めて三木谷氏と会ったと書いています。
森:竹中氏としては、規制改革を推進する上でIT系の企業経営者との連携が必要でした。竹中氏の規制改革路線に共鳴している有力IT経営者が、それほどいるわけではありません。ソフトバンクの孫正義氏もその一人ですが、やや毛色が異なります。竹中氏は、IT経営者の中でもサラブレット的存在である三木谷氏と組みたいと考えたのでしょう。
菅官房長官と三木谷氏の発言の符号
──楽天は、今年10月から携帯電話事業に参入します。
森:『文藝春秋』5月号に「日本発『世界モバイル革命』を起こす」と題した三木谷氏のインタビュー記事が載っています。
携帯電話業界では、2年未満で解約すると高額の違約金が発生するという「2年縛り」が慣例となっています。ところが、このインタビューの中で、三木谷氏は、「2年縛りなし」を実現すると述べ、「楽天は、そういった不自由な契約から利用者を解放します」と宣言しています。
気になるのは、この三木谷氏の発言と、竹中氏の規制改革路線を高く評価している菅義偉官房長官の発言との符号です。
菅氏は昨年8月に「携帯電話料金は4割程度下げる余地がある」と述べました。さらに菅氏は、「様々な取引慣行の是正などの課題にスピード感を持って検討・対応していくことで、利用者にとって分かりやすく納得のできる料金でサービスを提供できるよう早く実現して欲しい」とも語っています。
消費者にとって料金が安くなることは大歓迎ですが、携帯電話会社の商売のやり方に政府が口を挟むのは、おかしいと思います。
──ジャーナリストの石川温氏は「携帯電話事業に新規参入する楽天の本当の狙い」と題した座談会で、「楽天の三木谷さんと菅官房長官が結託して話を進めているんじゃないか、みたいな話がある」と語っています(『アットダイム』2018年2月5日)。
森:菅氏の発言は、結果的に楽天の携帯電話事業参入を後押しすることになっています。
特定企業だけが優遇されるのは論外ですが、国民に不信感を持たれるようなあり様に問題があると思います。
<聞き手・構成 坪内隆彦 photo by Guillaume Paumier, CC-BY.3.0>
もりいさお●出版社勤務を経て、2003年フリーランスのノンフィクション作家に転身。著書に『日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能人脈』(文藝春秋)、『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』(講談社)など
2013年産業競争力会議 竹中平蔵氏「転職のための助成金を増やせ」→
— fujikuro (@fujikurok) 2019年4月24日
150倍に拡大→
パソナの再就職支援会社が儲かるhttps://t.co/wEL8RFAj3D
レントシーカー三木谷は竹中とシンクロして日本を食い物にするのか。 https://t.co/hHrcFJLNs5
— 主任・田口 (@Barthes1919) 2019年4月24日
医薬品ネット販売から携帯事業参入まで。「我田引水」な楽天・三木谷氏は竹中平蔵に次ぐ「政商」か<森功氏>https://t.co/6WTTx3kl6S
— 憤懣とうがらっしー (@yononaka_hen) 2019年4月24日
この人のビジネス手法はもっと批判されるべき。
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