>上がらない労働効率特に人口減少と高齢化による消費抑制(需要減)が続く日本で顕著だが 一般に先進国では、労働や社会保障など、さまざまなコストが上乗せされ 企業の投資効率を下押しするため、投資不足になりやすい それに技術革新の飽和効果もある そして高齢労働者が増え、労働者の質が下がる効果もある いくら日銀が金融緩和し政府が財政支出を拡大してMMTを行ったところで
これに関しては、あまり効果はない そして、これは日本に限らず 英国、イタリア、米国など、先進国が辿る道とも言える http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56211 再び「欧州の病人」になった英国 6つの危機が同時進行、回復には長い時間――マーティン・ウルフ 2019.4.25(木) Financial Times (英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年4月19日付)
英・EUが10月末へのブレグジット再延期で合意 ベルギー首都ブリュッセルにある欧州議会で、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)をめぐる会議に臨む加盟各国の首脳ら(2019年4月10日撮影)。(c)Olivier Hoslet / POOL / AFP〔AFPBB News〕 筆者が若かった1960年代に、英国は長引く景気低迷のために「欧州の病人」として知られていた。 だが、マーガレット・サッチャーの首相時代が終わると、この惨めな呼び名はもう当てはまらないように思えた。 ところが今、再び、筆者が海外(特に大陸欧州)へ赴くたびに、困惑と哀れみと他人の不幸を喜ぶ気持ちが入り混じった様子で「英国はどうしてしまったのか」と人に聞かれる。 質問されても、答え(あるいは複数の答え)を知っているふりはしない。だが、症状を説明することはできる。英国は今、6つの危機に同時に見舞われているのだ。 最も重要な第1の危機は、経済的なものだ。その起点は2008年の金融危機のショックだった。 だが、現時点では、この危機の最も重要な側面は生産性の低迷だ。 調査会社カンファレンスボードによると、英国の時間当たり生産高は2008年から2018年にかけて3.5%しか増加していない。重要な高所得国の中で、英国より伸びが鈍かったのはイタリアだけだ。 だが、伸びが鈍い理由は、英国の生産性がすでに高かったからではない。 それどころか、英国の時間当たり生産高は、アイルランド、ベルギー、米国、デンマーク、オランダ、ドイツ、フランス、スイス、シンガポール、スウェーデン、オーストリア、オーストラリア、フィンランド、カナダのそれに後れを取っている。 高い就業率と低い失業率は良いニュースだ。しかし、生産性の低迷は、1人当たり実質所得の低迷を意味している。 つまり、あるグループが豊かになれるのは、別のグループの生活が苦しくなった場合に限られるということだ。 これでは幸せな政治情勢は生まれない。長期にわたる財政引き締めは、政治をいっそう不幸にした。 2つ目の危機は、国民のアイデンティティーは排他的でなければならないか否かをめぐるものだ。 この疑問はすぐに忠誠心に関する疑問に発展する。多くの人は、複数のアイデンティティーがあっても何ら問題ないと感じている。 一方で、アイデンティティーは一つでなければならないと主張する人もいる。 この分裂を見る一つの方法は、デビッド・グッドハート氏が著書『The Road to Somewhere(どこかへつながる道)』で定義しているように、自分は特定の場所の出身だと考える「people from somewhere」と、出身地を気にしない「people from anywhere」の間の分裂として見ることだ。 だが、ひとたび政治化されると、この問題はより激しくなり、より大きな対立を招くようになる。 ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離)では、まさにアイデンティティーの問題が政治化された。 第3の危機がブレグジットだ。 この危機によってアイデンティティーは兵器と化し、こうした相違が裏切りの非難の応酬へと発展した。 普通の民主的な駆け引きは、共通の忠誠心の向上を呼びかける訴えの中に溶け込んでいき、その仕組みによって管理される。 ところが、ひとたび「裏切り」の概念が政治論争の一部になると、完全な勝利か完全な敗北しかあり得なくなる。 このようなものの見方は、民主的な生活における普通のギブ・アンド・テークと相容れない。 そして実際、相容れないことが判明した。英国はあまりに均等に割れ、感情があまりに激しくなっていることから、目下、解決は不可能になっている。 第4の危機は政治的なものだ。 歴史的に階級区分に基づいている既存の政党は、喜んで英国人、ヨーロッパ人の双方である人たちと、前者であれば後者にはなり得ない(少なくとも、「ヨーロッパ人」という言葉が「EU市民」を意味する場合は、なり得ない)と主張する人たちの間のアイデンティティーの分裂に適合しない。 二大政党はいずれも、この過程で破壊されているが、新しい政治的構図はまだ見えてこない。 第5の危機は政体にかかわる危機だ(ここで筆者が言っているのは、政治的なゲームのルールに関係している、という意味)。 EU加盟は、政体的な問題だ。こうした政体的な問題を解決するための道具としての国民投票の利用は、それ自体が政体的な問題になる。 国民投票でこうしたことを決めるのであれば、その決断の解釈と実行において議会が果たす役割は何でなければならないのか。 それを言えば、政体にかかわる国民投票では、合理的な決定規則とは何なのか。単純多数であるべきなのか、それとも圧倒多数であるべきなのか。 我々はなぜ、こうしたことを一切自問することなく、この大混乱に陥ってしまったのだろうか。 もしかしたら最も重要な危機かもしれない第6の危機は、リーダーシップの危機だ。 英国は、課題を先送りして土壇場で間に合わせようとする学生のようなデビッド・キャメロン前首相の「小論危機」に見舞われたと思えば、今度はテリーザ・メイ首相のラバのような強情さに直面した。 そして今、ボリス・ジョンソン氏の率いる保守党がジェレミー・コービン氏の率いる労働党と対峙する総選挙の可能性が見えてきた。 この2人には、共通点があまりない。だが筆者に言わせると、まだ国連安全保障理事会の常任理事国である国においてさえ、2人は首相候補として著しく資質を欠くように思える。 一方は常習的な道化師にしてブレグジットをあおるハーメルンの笛吹きだ。もう一方は強硬派の社会主義者にして左翼独裁者を終生支持してきた人物だ。 指導者がこれでは、混乱は悪化するしかない。そして、間違いなく悪化していくだろう。 なぜこれほど多くの危機が同時に国を襲ったのか、そして、これらの危機すべてが互いにどう関係しているのかは本当に重要な疑問だ。 移民問題など、ほかの要因も存在するものの、実質所得の伸びにおけるお粗末な経済的成果は間違いなく、国家的アイデンティティーが顕著な問題として台頭したことと関係している。 しかし、重要なのは、何がこれらすべてを引き起こしたかではなく、これらの問題をすべて解決するには長い時間がかかるということだ。 英国は悲しいかな、当面は病人のままだろう。 By Martin Wolf © The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. Please do not cut and paste FT articles and redistribute by email or post to the web. 辞めるのが怖い、働き続ける米高齢者増える Suzanne Woolley 2019年4月23日 12:11 JST • 退職年齢世代の労働参加率が57年ぶりに20%台に乗った • 24年末まで労働参加率で最も強い伸びはベビーブーマーとなる公算 A worker assembles components on a diesel engine at a factory in Seymour, Indiana. Photographer: Luke Sharrett/Bloomberg 家族の中で働くのは1人だけという世帯の消失が20世紀に始まった米国で今、高齢者の引退がなくなろうとしている。理由は同じ。お金の心配だ。社会保障のセキュリティーネットが揺らぐ中、年金プランを通じた蓄えは十分でなく、医療費高騰を背景に、仕事を引退するのは待ち遠しいというより、恐ろしい。 資金運用を手掛けるユナイテッド・インカムの新たなリポートは、退職年齢の世代の労働参加率が57年ぶりに20%台に乗ったと指摘する。今年2月時点で働いているか仕事を探している65歳以上の割合は、1985年初めの10%を少し上回る水準から倍増。少なくとも学士号を持ち65歳以上で働いている人の割合は今、53%に上る。85年は25%だった。 出典:ユナイテッドインカム。現在の人口調査 高齢の大卒従業員が増えたことで、この年齢層でのインフレ調整後の所得は平均7万8000ドル(約870万円)と、85年の4万8000ドルから63%増えた。一方で65歳未満の平均所得は5万5000ドルと、同期間の伸び率はわずか38%。ユナイテッド・インカムは国勢調査局と労働統計局(BLS)が最近公表したデータを基に算出した。 BLSの報告書によれば、少なくとも2024年末まで労働参加率で最も力強い伸びを示す見込みなのがベビーブーマー世代。「24年までにベビーブーマーは60−78歳に達する」が、「社会保障給付を受け取る資格を得た後も、一部の人々は働き続けるだろう」としている。 表面上は金銭面で不自由していないように見える人々でも、退職後の生計を考えると厳しいものがある。ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチ(NSSR)のテレサ・ギラルドゥッチ教授(経済学)は社会保障給付は退職前所得の約40−50%にしかならないと試算。仕事を辞めた後の生活には、少なくとも退職前所得の80%程度が必要だとの考えが一般的だ。 同教授の調査によれば、所得分布で下半分を占める年収4万ドル未満の人々には退職後の蓄えがなく、その上の40%の年収4万−11万5000ドルの人々は6万ドル(中央値)、11万5000ドル以上を稼ぐ上位10%は20万ドルをそれぞれ蓄えている。これら推計値に不動産など有形資産や相続の可能性は含まれていないが、それにしても蓄えはひどく少ない。 大卒で働いてきた人が退職後もそれなりに気持ちよく暮らしていくのに必要な額を同教授が大まかに計算したところ、「100万ドル以上か200万ドル」だという。これでは、引退を先送りする人が増えるのも無理もない。 原題:America’s Elderly Are Twice as Likely to Work Now Than in 1985(抜粋)
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