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経営統合を諦めていないルノーは日産の自滅を待っている ゴーンvs日産・ルノー 最終戦争
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/252280
2019/04/20 日刊ゲンダイ 会見するルノーのスナール会長と日産の西川社長(C)日刊ゲンダイ 4月8日の臨時株主総会で日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏は取締役を解任されたことで日産自動車にとっては「ただの人」になった。ゴーン氏が経営に与える影響は全くないだろう。これから日産にとって大きな課題となるのは、ルノーとの関係をどうするかだ。 今年3月12日、日産の西川広人社長、三菱自動車の益子修会長、ルノーのスナール会長、ボロレ最高経営責任者(CEO)がそろって記者会見し、「アライアンス・オペレーティング・ボード」を設立すると発表。これがゴーン氏なき後の3社連合の最高意思決定機関となる。 会見では西川氏もスナール氏もこの組織の運営方針について「コンセンサス(合意)ベース」と述べ、ゴーン氏のように「独裁」ではなく、話し合いで物事を進めていく考えを強調した。 この時に、スナール氏が日産の会長職にはこだわらず、会長職に代わって「取締役会議長」ではなく「副議長」に就く人事案を示した。形だけの取締役で権力はないポストだ。ルノーは会長職にこだわり、それを拒否していた日産との間には溝があったが、ルノーが譲歩した形での人事と言える。 しかし筆者は、これは一時的な「融和」とみる。いずれルノーは議長か社長ポストを求めてくるだろう。日産の43%もの株式を握るルノーの立場からこれは当然の要求だ。そして、ルノーは日産との経営統合を諦めたわけではない。今は「爪」を研ぎながら様子を見ているのだ。 スナール氏の前職は仏タイヤメーカー、ミシュランCEOで、その前はフランスの石油企業やガラス会社を渡り歩いてきた、いわゆる「プロ経営者」だ。貴族の出自で物腰は柔らかく紳士的だが、内面は計算高く、時にはリストラなどで苛烈な手法を用いる経営者といわれている。 ルノー側は密かに日産の「自滅」を待っていると筆者は見ている。日産の2019年3月期決算は、営業利益、純利益がともに期初予想から900億円減の4500億円、4100億円になる見通し。販売台数も計画から32万台減の560万台。ゴーン氏が開発コストを削り過ぎて商品に魅力がなくて売れないことが業績下落の主要因なので、一朝一夕に業績が上向くとは思われない。さらに下振れリスクがある。 そうなって日産の株価や企業体力の下落が顕著になった時に、ルノーは「株主」として日産の経営に注文を付け始め、一気に攻勢に出て、日産の株式を買い増して子会社化したり、経営統合を持ち掛けてきたりするだろう。日産が、実験データの不正が発覚して株価が急落した三菱自動車の株式を取得して一気に傘下に収めたのと同じ手法だ。 日産とゴーン氏の戦いは事実上終結したが、いずれ「日産VSルノー」の最終戦争が始まるだろう。 (おわり) 井上久男 ジャーナリスト 1964年生まれ。九州大卒業後、大手電機メーカーを経て92年に朝日新聞社入社。支局勤務を経て95年から経済部記者としてトヨタ自動車や日産自動車、パナソニックなどを担当。04年朝日新聞を退社しフリーに。文藝春秋、東洋経済新報社、ダイヤモンド社など数多く媒体で記事を執筆している。
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