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あなたのマンションも「廃墟化」する?危険な2つのステップに要注意 「買えば安心」は大間違い
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63873
2019.04.18 榊 淳司 住宅ジャーナリスト 現代ビジネス
「終の棲家」であるはずのマンション。しかし、このままでは数十年後、多くのマンションが「廃墟化」するという。どうすればマンションが「粗大ゴミ」になるのを食い止められるのか? 『すべてのマンションは廃墟になる』の著者で、住宅ジャーナリストの榊淳司氏によれば、「廃墟化」は2つのステップを踏んで進行するという。あなたのマンションでも起こっているかもしれない驚きの実情を、榊氏が指摘する。 |
第1ステップ「資産価値喪失」
私は分譲マンションの廃墟は、ふたつの重要なステップを踏んで進行すると考えている。
最初に、そのマンションの「資産価値喪失」が起こる。そのマンションの資産価値がおおよそ500万円未満になることを、ここでは「資産価値喪失」とする。
こうなると、そのマンション自体の存在意義が問われていくので、管理組合のモチベーションが著しく低下する。
詳しく説明しよう。
資産価値が500万円を切ると、区分所有者たちがそのマンションを所有していること自体に関心が薄れる。特に、非居住者にとってはそうなる。賃貸に出していて、賃料収入が得られていれば別だが、空室になっている場合は、なおさら関心が薄れる。やがて、管理費等を滞納するようになる。
管理費や修繕積立金を滞納されると、管理組合には入ってくるべきお金が入ってこなくなる。それでは困るので、支払いの督促をかける。督促業務は、通常管理会社がおこなうが、督促している主体はあくまでも管理組合だ。
督促しても支払われない場合、その住戸の競売を申し立てることになる。このときに、競売の諸費用や弁護士報酬などを差し引いても、滞納している管理費等をほぼ全額回収できるギリギリのラインが500万円なのである。
もちろん、この500万円は、滞納額の多寡によって変動する。滞納額が100万円程度なら、300万円で競落されれば元が取れるはずだ。ただ、滞納額が100万円であっても競落を申し立てるには、初期費用を百数十万円ほど用意しなければならない。これはあまり現実的ではない。
また、競売を申し立てる場合、申立人は個人か法人でなければならない。その管理組合が法人化していない場合、理事長の名前で申し立てをおこなうことになる。競売といえども、裁判の一種である。その当事者になるのを嫌がる理事長も多い。
このように、資産価値が失われることで管理費等の滞納が増えると、管理組合は督促に追われ、あるいは複数の競売案件を抱えることになる。その場合には、管理組合の事務能力が問われる。
あまりやる気のない管理組合だと、滞納を放置するケースが多い。すると、必要な収入が得られなくなる。入ってこないのだから、支払うほうも滞る。
最近、マンションの管理業界は売り手市場だ。長引く人手不足によって、管理人が集まらないのだ。だから、管理会社は業務を委託してくる管理組合に厳しい目を向けている。問題のある受託先は遠慮なく契約を解除される。
支払われるべき業務受託料が払われなかったり、理不尽な減額を要請されたりすると、管理会社は即座に「業務受託契約解除通知」を送りつけてくる。この場合、その解除日を過ぎると管理会社からは誰も来なくなる。
第2ステップ「管理不能」
管理費が徴収できずに、必要な管理業務や保全がおこなえなくなる状態が「管理不能」である。こうなったマンションは、ほぼ確実に廃墟化する。
たとえば、エレベーターは定期点検をしなければ作動できない。受水槽は定期的に清掃しなければ水道の水が濁る。ヘンな臭いも出てくる。清掃する人がいなくなった共用部分は薄汚れていく。
自転車置き場は乱雑なまま放置される。掲示板には古いお知らせがずっと残ったままになっている。マンションのなかで、どこかに不具合が発生しても補修できなくなる。マンション全体がなんともみすぼらしくなっていく。
そのうち、住む人が少なくなっていく。住みにくくなるからだ。するとますます管理不能状態は進む。やがて、誰も住まないマンションになってしまう。これこそが廃墟化だ。
廃墟化すると、ホームレスが住みつく可能性もある。何かの犯罪に利用されることもありえる。野犬などが住処にすることも考えられる。あるいは、建物の崩壊や、その一部が剥落して地上に落下することで、敷地外に被害が及ぶかもしれない。
そういった場合の法的責任も、管理組合にある。管理組合が機能していなければ、一人ひとりの区分所有者が責任を負うことになる。
たとえ廃墟になったマンションだとしても、区分所有権は法的に存在する。だから、これを行政機関なりが取り壊そうとしても複雑な手続きが必要だ。
また、うまく更地にできたとしても、それをまとめて誰かが買い取ることはできない。もとの区分所有者が、それぞれ有していた床面積割合で敷地の所有権を有しているからだ。区分所有者全員の同意がなければ、その敷地の所有権は動かせない。
今の区分所有法では、そのまま放置するしかないのが現状だ。
こういった廃墟化への進行を留まらせるのは、一にも二にも管理組合の手腕である。管理組合さえしっかりしていれば、廃墟化を防ぐことができる。その好例を新潟県・湯沢町のリゾートマンション群に見ることができる。
すでに湯沢町のリゾートマンション群は、「資産価値喪失」という廃墟化への第1のステップには十分に達している。だが、あのリゾートマンション群の管理組合の多くは、次のステップである「管理不能」という状態に陥ることに対して、頑強に抵抗している。
たとえば、競落額が300万円未満であっても、果敢に競売を申し立てている。その住戸の滞納分を回収できなくても、おかしな人に競落されて、再び滞納が発生するのを防いでいるのだ。
管理組合が自ら競落したあとは、管理費等を払ってくれる人に売却しているとか。その一連の動きは、そんなに簡単なことではないかもしれない。しかし、放置するよりも何十倍もマシな結果になると思える。
都心のマンションも安心できない
マンションという鉄筋コンクリートでできた構造体を維持するには、じつのところけっこうな手間ひまとお金がかかる。そのお金は誰が出しているのかと言えば、区分所有者だ。彼らが払っている管理費と修繕積立金が、そういう費用に充てられている。
そのお金が、日常の管理業務をおこなっている管理会社に支払われる。あるいは修繕工事をする建設会社等に支払われる。
もし、そのお金が足りなくなったらどうなるのか?
それは先ほど述べたとおり、廃墟化への大きなステップとなる。結局のところ、廃墟化に進むかどうかという問題は、区分所有者にきちんとお金を払ってもらえるか否かにかかっていると言っていい。
この点、資産価値が500万円未満にはなることはまず考えられない都心エリアのマンションでは「資産価値喪失」は起こらない。だから安心してもよいのだろうか。あるいは、数千万円以上の価値を持つマンションの区分所有者は、所有への意欲を失わないので、管理費の滞納などは起こり得ないと考えてもいいのか。
私は少子高齢化している日本社会の現状を考えれば、都心立地にあるといえども必ずしも安心できないと考える。
今は問題なくとも、この先、永遠に払ってくれるかどうかはわからないのだ。
たとえば、高齢の区分所有者がマンション内で孤独死したとする。相続人を探したが、見つからなかった場合、その住戸の管理費と修繕積立金は誰が払うのか?
マンションが老朽化すると、そこに居住する区分所有者も高齢化しているケースが多い。高齢化すると、収入も細くなる。払いたくても払えない状況に追い込まれる区分所有者も出てくるはずだ。
マンションは、老朽化するほど管理費や修繕積立金の滞納が多くなると言われている。都心のマンションといえども、老朽化が進めば管理費等を滞納する、あるいは滞納せざるを得ない区分所有者は増えてくるはずだ。
そういった場合、大きな問題となる前に、早めの対策を講じるのは管理組合の役割。しかし、現行の区分所有法では迅速な対応を不可能にしている面が多い。
マンションはどのように廃墟化してしまうのか? その危機的現実と解決策を提示する。
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