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鳥貴族、“普通の焼鳥屋”化で底なしの客数減…過剰出店で“客の共食い”&店舗劣化が深刻
https://biz-journal.jp/2019/04/post_27429.html
2019.04.13 文=編集部 Business Journal
「鳥貴族の店舗(「Wikipedia」より)
焼き鳥チェーン店の鳥貴族が2014年の上場以来、初の赤字に転落する。
2019年7月期通期の単独売上高の予想を379億円から358億円に引き下げ、最終損益を7億4700万円の黒字から3億5600万円の赤字に大幅に下方修正した。今期中に不採算店21カ所の閉鎖に伴う減損損失を計上する。
半期決算(18年8月〜19年1月)段階で、純利益は前年同期比90%減の5300万円と低空飛行だったが、とうとう赤字に沈んだことになる。
なぜ赤字決算に転落することになったのか。鳥貴族の説明は、以下のようなものだ。
14年にジャスダックに上場したことで認知度が高まり、既存店売り上げは好調を維持した。そこで新規出店を加速させたが、人件費の高騰などから、全品「280円」(税抜き、以下同)から「298円」への値上げに踏み切った。ところが、値上げを機に客足が遠のき、既存店の売り上げが落ちた。積極的に出店したことから店舗網も過密になり、自社店舗同士の競合も発生したという。
鳥貴族は厳しい業績を踏まえ、中期経営計画「うぬぼれチャレンジ1000」(18年7月期〜21年7月期)を取り下げた。中計では4年間で国内を1000店舗に増やし、2000店舗体制を目指すというものだった。海外にも進出すると花火を打ち上げた。
しかし、「(関東、関西、東海地区の)3商圏で1000店舗、営業利益率8%」の達成は難しいと判断した。
現在の店舗数は2月末で678店。赤字店舗が増えるなど、お寒い内実だ。中間決算(18年8月〜19年1月)の営業利益率は2%にとどまる。
地に足の着いた、新たな出店計画に基づく中計を9月に発表する、としている。
■28年ぶりの値上げの影響
鳥貴族の値上げは居酒屋業界の話題をさらった。全品280円均一としていた価格を17年10月から298円に6%引き上げた。鳥貴族の値上げは1989年に250円から280円にアップして以来、実に28年ぶりのことだった。低価格で業績を伸ばしてきた鳥貴族はデフレの“勝ち組”といわれていた。
大倉忠司社長が1985年、東大阪市の近畿日本鉄道(近鉄)大阪線の俊徳道(しゅんとくみち)駅前に1号店を開いたのが始まり。開店当時は全品250円均一。89年、消費税3%が導入された時、全品280円に値上げした。消費税が5%、8%に引き上げられても、全品280円路線を守ってきた。均一価格を採用する居酒屋チェーンのなかでも鳥貴族の280円は業界最低水準とされた。
28年間値上げしなかった裏には、血の滲むような企業努力があったのだろう。では、なぜ、値上げに踏み切ったのか。人手不足による人件費の上昇や原材料の高騰で採算割れとなったからにほかならない。
外食業界関係者の間では、「改正酒税法」が値上げの引き金となったとの見方で一致する。スーパーなどでは改正後、すぐにビール価格が上がった。居酒屋などの飲食店も卸業者から仕入れるビールの価格が上昇することになる。
■値上げ後、客離れに歯止めがかからず
当初は、アナリストの間で「値上げで利益率がアップする」との前向きの評価が多かった。だが、客離れは会社側の想定を超えていた。外食各社とも客離れを警戒し、定番メニューを据え置いて、価格が高めの商品だけを値上げするなど、おしなべて慎重な姿勢を取ったが、全品均一価格の鳥貴族はこうした方法を取れなかった。
また、鳥貴族は値上げの悪影響を相殺するような販促キャンペーンなどの対策を講じなかった。宣伝文句は「全店舗うぬぼれ中!」だった。消費者のサイフのひもの堅さを読み違えた。
18年7月期の単独決算の純利益は、前年同期比32%減の6億6200万円。客数は減っても値上げが寄与し、既存店売上高は4%程度の増加を見込んでいたが、ふたを開けてみれば3%超の減少となった。
今期に入っても苦戦が続いている。18年8月から19年2月までの既存店の売り上げ(平均)は前年同期比7.5%減、客数は6.8%減、客単価0.7%減。値上げによって客単価を引き上げ、客数の落ち込みを吸収するという戦略が甘かった。
上場を機にテレビへの露出が高まり、テレビ効果でターゲット層以外の客が一時的に増えたが、それが値上げを潮に去っていった。
だが、値上げから2年目に突入しても来客の減少に歯止めがかからない。業績悪化の原因を値上げのせいにばかりにできなくなった。
1月19日付日本経済新聞は、「株式市場では根本的な『店舗力』の低下が懸念されている。消毒用アルコールの誤使用、元店長による従業員の盗撮。相次いで不祥事が発生し、消費者からの信頼が低下した。急速な店舗網の拡大で戦線が伸びきり、人材教育やオペレーション体制が追いついていけない可能性がある」と、市場の懸念を伝えた。
鳥貴族は、仕事帰りの会社員たちで賑わう焼き鳥店のイメージを一新した。女性客を呼び込むために、おしゃれな店にしようと「鳥貴族」と名付けた。「お客様を貴族のようにもてなす」との思いが込められている。それが一時的な成功による「うぬぼれ」から、“普通の焼鳥屋”になってしまったのではないのか。創業の精神に立ち戻ることができるのか。
(文=編集部)
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