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米FRBは「利下げ」を迫られるのか
https://diamond.jp/articles/-/199435
2019.4.11 嶌峰義清:第一生命経済研究所 取締役 首席エコノミスト ダイヤモンド・オンライン
米国ではFRBが年内にも利下げを行うとの期待が根強く残っている。FRBが実際に利下げを迫られる可能性は高いのか Photo:Federal Reserve
市場の利下げ期待が根強い
「3つの背景」とは
米国ではFRB(米連邦準備理事会)が年内にも利下げを行うとの期待が根強く残っている。FF金利先物価格の動向などからみると、市場が織り込む年内の“利下げ確率”は3月下旬にかけて高まる一方となったが、中国の経済指標が持ち直し(3月PMI製造業景気指数の50超え)、3月米雇用統計が良好な結果となったことなどを受けて、やや低下している。それでも、市場は年内に50%以上の確率で0.25%の利下げが行われるとみているようだ。
3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)時に公開されたFRBメンバーによる金利見通しによれば、年内の利下げを予想したメンバーはゼロだった。それにもかかわらず市場の利下げ期待が根強い背景としては、以下のようなことが考えられよう。
第1に、景気減速懸念があることだ。昨年10-12月期の米実質GDP成長率は前期比年率+2.2%と潜在成長率を上回ってはいるものの、2四半期連続で伸びは鈍化した。個人消費が主導する形での景気拡大は続いているものの、消費を押し上げている要因の1つである減税による押し上げ効果は、今後減衰していくと予想されている。
世界的に景気の勢いが衰えていること、利上げによって金利水準が引き上げられた結果、景気に与える刺激効果がなくなっていること(金利が中立ゾーンに入ったこと)、戦後最長の景気拡大記録更新が目前となり(今年6月で景気拡大期間は121ヵ月となり過去最長記録を更新する)伸び代が少なくなっていると考えられることなども、先行きの景気減速懸念を抱かせる要素となっている。
第2に、物価が落ち着いていることだ。一時期3%近くまで高まった消費者物価は、足元で前年同月比+1.5%へと伸びが鈍化している。主因は、原油価格の下落によるエネルギー価価の下落だ。FRBが政策目標としている個人消費デフレーターでみても、全体の伸びは直近1月で同+1.4%、エネルギーと食料品を除いたコアベースで同+1.8%にとどまっている。トランプ米大統領はたびたびFRBの利下げを促す発言をしているが、その背景にも物価の落ち着きがある。
1月FOMCでのFRBの変わり身は
株式市場の動きに対する動揺
第3に、FRBの姿勢に対する市場の見方の変化だ。昨年12月のFOMCで、2019年中の予想利上げ回数を2回(最も多く得票した利上げ回数は3回)としたFRBに対する市場の評価は“タカ派”であった。市場は、利上げ見通しの下方修正を期待していたが、中国経済の急減速に加え、米国経済自体の減速懸念などもあり、年末年始の不安定な動きに繋がった。
しかし、利上げは既定路線ではないとした年初のパウエルFRB議長の発言や、声明文から利上げの継続を示唆する文言を削除し、我慢強くなるとの一文を新たに挿入した1月FOMCへと連なるFRBの変わり身は、明らかに株式市場の動きにFRBが“動揺”したことを物語っている。
3月FOMCにおけるFRBの金利見通しが先行きの利下げを予想していなかったとしても、“タカの衣をまとったハト”と見なされた以上、市場がみるFRBの金融政策には“利下げバイアス”がかかって当然だろう。
それでは、FRBが実際に利下げを迫られる可能性は高いのだろうか。先に挙げた3つの要因に沿った形でみていく。
第1の要因である景気についてみると、米国景気にピークアウト感が出ていることは確かだ。景気と歩調を合わせて動く景気一致指標の1つといえるISM製造業景気指数は足元で55.3ポイントと、判断基準の分かれ目である50ポイントを31ヵ月連続で上回ったが、2017年後半から2018年秋までの水準(60ポイント前後)からはやや低下している。
景気の先行指標と言えるISM製造業新規受注判断DIも、景気指数と同様に50ポイントを上回ってはいるものの、その水準は低下傾向を辿り始め、生産活動の勢いが今後徐々に減衰していくことを示唆している。
一方で、利上げが停止され、市場金利がやや低下したこともあり、住宅需要の減少には歯止めがかかる兆候が見え始めている。減税による押し上げ効果が薄らいでいくため、個人消費の勢いは衰えていく可能性が高いが、金利水準が低下したことや株などの資産価格が底堅く推移していること、雇用・所得環境が良好なことを勘案すれば、失速のリスクは小さいだろう。
もっとも、潜在成長率(2%弱程度)を下回る成長が数四半期継続する可能性は否定できず、その状況では小幅の利下げが行われることも考えられる。
FRBの利下げの可否に重要なのは
つまるところ市場の動向
第2の要因である物価については、今後もFRBが満足するような状態(2%程度の物価上昇が継続する状態)への回帰は困難である可能性が高い。ここのところの物価上昇率の変動主因はエネルギー物価である。その源泉であるところの原油価格については、WTIでみて45-75ドル、コアレンジでは55-65ドル程度で一進一退の推移が続いており、物価全体を大きく押し上げるような力を持っていない。したがって、インフレ率は1.5-2.5%程度のレンジでの推移が続くと見込まれ、2%台が定着するような状況にはない。
もっとも、労働需給の逼迫を受けた賃金上昇率の加速リスクは完全には否定されない。3月の民間部門時間あたり賃金の伸び率は前年同月比+3.2%と、前月の同+3.4%からやや鈍化したものの、趨勢的には徐々に伸び率が高まっている状況には変わりはない。最近では、若干ではあるが労働参加率も改善(上昇)し始めており、これが失業率の一段の低下を抑制する一方で、就業者の増加傾向を維持する立役者になっている。
ISM雇用判断DIなどからみれば、企業の雇用確保意欲は引き続き旺盛で、全体的にみて賃金上昇率が高まりやすい環境は継続しそうだ。したがって、物価上昇率が目標を若干下回っているからと言って、FRBが金利水準を引き下げなければいけない環境にあるとは言い難い。少なくとも、景気が潜在成長率を下回らない状況においては、労働需給の逼迫傾向は続くはずであり、賃金上昇圧力に構える格好で利上げにややバイアスのかかった姿勢を保つことが正当化される。
そうなると、つまるところ第3の要因である市場の動向が、FRBの利下げの可否という点で、最も重大な要素になると考えられる。株式市場を中心とした市場動向をみると、昨年末から今年初にかけて市場が不安定となったような環境とは、すでに異なり始めているため、現時点では市場が不安定化する要素は大きくはない。
まず、景気に対する不安感だが、特に悪化傾向が目立っていた中国経済については、ここへきてようやく景気対策の効果によって、景気底打ちの気運が出つつある。次に、米国の利上げ継続方針が撤回され、FRBのバランスシート縮小も一旦打ち切りとなることで、市場にかかっていたストレスも相当程度解消されている。引き続き英国の動向や米中貿易摩擦など、不透明要因があるために予断は許さないが、市場を取り巻くファンダメンタルズは年末に比べれば改善していると言えるだろう。
FRBに対する「ハト派」という
市場の見方は覆らない
このように、全体としてみればFRBが年内に利下げを迫られる可能性は、市場が期待しているほどには大きくないと言える。ただし、そうであったとしてもハト派というFRBに対する市場の見方は覆らないだろう。むしろ、景気や不透明要因が払拭した後には、増長した市場の過度のリスクテイクが問題となるのではないか。
(第一生命経済研究所 取締役 首席エコノミスト 嶌峰義清)
米FRBは「利下げ」を迫られるのか(ダイヤモンド・オンライン) https://t.co/OWanyK6REb pic.twitter.com/arWOhgB4gN
— 女子力@相互フォロー (@jyoshiryoku0016) 2019年4月11日
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