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文系の博士課程「進むと破滅」 ある女性研究者の自死
2019年4月10日07時21分
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https://www.asahi.com/articles/photo/AS20190405004237.html
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西村玲さんが研究していた資料
大きな研究成果を上げ、将来を期待されていたにもかかわらず、多くの大学に就職を断られて追い詰められた女性が、43歳で自ら命を絶った。
「家族と安定がほしい」心を病み、女性研究者は力尽きた
日本仏教を研究してきた西村玲(りょう)さんは、2016年2月に亡くなった。
04年に博士(文学)に。05年、月額45万円の奨励金が支給される日本学術振興会の特別研究員に選ばれた。
「博士漂流」問題、職に対して人募集の仕組みを 識者
実家で両親と暮らしながら研究に打ち込み、成果をまとめた初の著書が評価されて、09年度に若手研究者が対象の賞を相次いで受賞。恩師は「ほとんど独壇場と言ってよい成果を続々と挙げていた」と振り返る。
だが、特別研究員の任期は3年間。その後は経済的に苦しい日が続いた。
衣食住は両親が頼り。研究費は非常勤講師やアルバイトでまかなった。研究職に就こうと20以上の大学に応募したが、返事はいつも「貴意に添えず」だった。読まれた形跡のない応募書類が返ってきたこともあった。
安定した職がないまま、両親は老いていく。14年、苦境から抜け出そうと、ネットで知り合った男性との結婚を決めた。だが同居生活はすぐに破綻。自らを責めて心を病んだ。離婚届を提出したその日に自死した。
父(81)は、「今日の大学が求めているのは知性ではなく、使いやすい労働力。玲はそのことを認識していた」と語る。
90年代に国が進めた「大学院重点化」で、大学院生は急増した。ただ、大学教員のポストは増えず、文科系学問の研究者はとりわけ厳しい立場に置かれている。首都圏大学非常勤講師組合の幹部は「博士課程まで進んでしまうと、破滅の道。人材がドブに捨てられている」と語る。
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https://www.asahi.com/articles/ASM461CLKM45ULBJ01M.html?iref=com_rnavi_arank_nr01
「家族と安定がほしい」心を病み、女性研究者は力尽きた
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小宮山亮磨 2019年4月10日07時21分
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西村さんが研究していた部屋は、今は父が寝室にしている。本棚には大量の資料が残る
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大きな研究成果を上げて将来を期待されながら、自ら命を絶った女性がいる。享年43歳。多くの大学に就職を断られ、追い詰められた末だった。
西村玲(りょう)さん、2016年2月2日死去。
東北大学で日本思想史を学んだ。江戸中期の普寂(ふじゃく)という僧侶に注目した仏教の研究で、04年に博士(文学)に。都内の多摩地区にある実家に戻って両親と同居しながら、研究に打ち込んだ。
翌05年、日本学術振興会の「SPD」と呼ばれる特別研究員に選ばれた。採用された人に月額約45万円の研究奨励金を支給する制度だ。「これで(研究で使う)本がバンバン買える」と、両親に喜びを伝えた。「もらったお金の分は、研究成果で返さないといけない」
年に論文2本、学会発表4本。自らにノルマを課し、経典などを大量に運び込んだ2階の自室にこもった。数少ない息抜きは両親と囲む食卓。箸を動かしながら、研究の内容を早口で熱く語った。「覚えたことが出ていかないよう、頭に巻き付けるラップがあればいいのに」。そう言って笑い合った日もあった。
「博士漂流」問題、職に対して人募集の仕組みを 識者
08年、成果をまとめた初の著書を出版。高く評価され、若手研究者が対象となる「日本学術振興会賞」と「日本学士院学術奨励賞」を、09年度に相次いで受賞した。
学術奨励賞を受けた6人のうち、文科系は2人だけ。宗教研究としては初の受賞だった。指導した末木文美士(ふみひこ)・東京大名誉教授は「若手のリーダーとして、次々と新しい領域を切り拓き、ほとんど独壇場と言ってよい成果を続々と挙げていた」と記している。
文系の博士課程卒で就職も進学もしなかった人が近年は3割程度いて、進路が「死亡・不詳」とされた人も2割弱います。西村玲さんは研究職に就くことを望み、20以上の大学に応募しましたが不採用でした。
だが、特別研究員の任期は3年…
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九州大学がキャンパスを移転するのに伴い、立ち退きを求められていた、研究室の使用を黙認されていた元院生の男性が研究室に放火し、自殺したという事件です。この人物につけられた肩書が「元院生」であることが、なんだか物悲しく感じられます。
彼は憲法を専門とする元九大の院生で、博士論文を提出しないまま2010年に退学になった後、専門学校や大学での非常勤講師や、様々なアルバイトしていた人物で、46歳だったそうです。
記事を読むと、彼がこうしたことをしてしまった理由は、経済的困窮と、将来への暗い見通しだったのであろうことがわかります。
大学院生にしろ教員にしろ、研究室というのは仕事場、オフィスなわけですが、この人は経済的困窮から住まいを失い、研究室に住み込んでしまっていたようです。
キャンパス移転で研究室を使えなくなると、行き場がなくなる。加えて、非常勤の仕事も減っていて肉体労働のアルバイトを掛け持ち…。
苦境に耐えかね、またこの状況で46歳という年齢を考えると、研究者として専任職を得るのは、ほとんど希望がないようと思い、思い余ったのではないでしょうか。
彼について書かれた記事を読むと、身につまされる思いがします。
何人もの大学教員が「自分も彼のような立場になっていたかもしれない。自分は運が良かっただけ」等と書いていますが、任期付職の私なんて、はっきり言って今後彼のような状況にならないとも限りません。
社会のあり方だとか、大学や博士に関する政策だとかに言いたいことももちろんあります。
しかし、既に研究の道に足を踏み入れてしまった人間の側から、人生を防衛することを考える視点で書いてみようと思います。
彼はなかなか異色の経歴の持ち主で、中学卒業後自衛官になり、大学(学部)を卒業したのが26歳だったのだそう。4年の遅れがあります。
一度就職してから九大に(学部も九大だったようです)合格するだなんて、能力の高い努力家だったことは明らかですね。
しかし、大学教員の就職にも、年齢というファクターは非常に重要なのです。大学院スタートが4年遅れているならば、猛スピードで博士の学位を取得する必要があったでしょう。
しかしね、これ、優秀な人ほどできないというパラドックスもあるのです。
研究畑はよく知らないという人は、優秀な人から博士号をとるに違いないと思うでしょう。しかし、とても優秀な人は、自分が書こうとしている論文の穴やしょぼさが見えてしまい、「いやいやこれじゃダメだ」と思って更に完璧なものを目指してしまうことが多々あります。
しかし、それほど完璧で非の打ちどころがなく、更に斬新な論文など、駆け出し研究者にそうそう書けるものではなかったりするのです。
私の身近にも、何人もこういう人がいました。亡くなった彼が博論を書けなかった理由はもちろんわかりませんが、このパターンの人が少なからず実在するのは確かです。
しかし、昔は博士号を取得する前に就職するのが普通だったそうですが今は違うので、そこはある意味就職のためのステップとして、完璧を目指しすぎないことも必要かもしれません。アカポス就職に、学位の有無は重要視されるのが現状です。博士論文がどれほど優れているかよりも、まず博士号の有無です。
加えて、研究者を志したいがスタートが遅かったり、職を得るのに不利な要素が自分にはあるなという場合は、せめて30代のうちに、何か研究者として専任職を得られなくても食べていける保険を用意しておくべきかなと思います。(私もまあ、一応考えています)
この彼もドイツ語が非常に堪能だったそうですし、例えば首都圏でドイツ語と憲法の非常勤講師を目いっぱい探す、なんて可能ではなかったかな、とも思います。首都圏ならば語学の非常勤講師はコマ数を非常に多く抱えることが可能で、非常勤だけで年収500万越えなんて人も知人にはいます。
それから、やはり散々言われていることではありますが、アカポスの就職はとても厳しいのです。それを認識することは重要だと思います。(一部、例外的に就職しやすい分野は存在するようです)
なんとなく、偏差値の高い大学や名門校はポストを得るのが難しく(これは事実でしょうが)、反対に偏差値の低い弱小大学なら、簡単ですぐにポストが得られるのではというイメージを持っている人が多いようです。しかし、案外そんなこともありません。低偏差値弱小大は求める人物像が違っていたりしますし(実務家歓迎、就職支援ができる人、複数分野に都合よくまたがって教育できる人、雑用実績等)、立地が良ければ結構競争率は高くなるようです。逆に、田舎は人気がない様子。
それを認識せず、「首都圏からは出たくないが、そこそこの偏差値の大学がいい」などと良い、「とはいえ、いわゆるFラン大ならいざとなれば就職できる」と考えていると(こういう感じのこと言う人実際にいるんですね、同僚ですけど)、痛い目見るかもしれません。私は手当たり次第に公募に出しているので、厳しさも、低偏差値弱小=ポストget楽勝、でもないことも実感しています。
また、これは個人的な経験に基づく実感で、サンプル数が少なすぎるので信頼できるかどうかは微妙かと思いますが、「公募で求められる書類の準備が大変な場合は倍率が下がる」。これ、あるんじゃないかと思います。
推薦書を求められている。複数のシラバス作成を求められる。全提出論文や履歴書、業績書のPDFをCDRかUSBで提出…、等。こういう面倒くさい公募の方が、面接に呼ばれる確率が私のこれまでの経験では高いのです。
そういった公募を「忙しくて時間がないから」と避け、首都圏がいいけどFランでもいいとかなり妥協しているつもりになると、実は非常に高倍率な勝負しかしていない、という こともあり得るでしょう。
ずいぶん長文になってしまいました。
九大の事件、とてもショッキングでしたし、悲しいです。研究者の道に既に足を踏み入れた、テニュアのない皆さん、現実を見据えながら、お互いがんばりましょう。
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