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コラム2019年4月6日 / 05:39 / 43分前更新
財政赤字の日本でこそ、望まれる富裕層の大規模な寄付行為
田巻一彦
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[東京 5日 ロイター] - AI(人工知能)やビッグデータをビジネスに駆使しようにも、若い技術者が確保できないという声が、中小ばかりでなく日本を代表する大企業からも出ている。国や自治体などの対応が遅いという「嘆き」が満ちているが、自ら動いた経営者がいる。日本電産(6594.T)の永守重信会長だ。京都先端科学大学のトップに就任し、100億円超の私財を投じ、全く新しい工学部の設立を目指している。
日本にも富裕層が形成され、永守氏のような企業の創設者やオーナーの中には「大富豪」に数えられる経営者が何人もいるが、カーネギーホールのような社会に貢献する「何か」を寄付で形成した例は、あまりないようだ。永守氏の行動に刺激を受けて、追随する動きは出るのか──。
永守氏が理事長を務める学校法人・永守学園の傘下に、京都先端科学大学がある。今年4月1日に、京都学園大学から改称。2020年の工学部新設を目指し、文部科学省に設置認可を申請中だ。
永守氏は、同学園のサイト上で「企業からのニーズが今後も伸びると予測される、モータ工学やロボット工学を中心とした機械電気システム全般の知識を持つ人材を育てる」と明言している。
工学系の大学教育に詳しい関係者によると、東大や京大などの旧帝大や、早慶などの私立大でも、モータやロボットに関する技術を教えるコースの数が極めて少ないという。
社会ではニーズがあるにもかかわらず、大学側に対応する準備が整わず、ミスマッチが生じているようなのだ。
こうした問題は、AI分野でも顕著で、経済産業省は2020年末までにAI人材が30万人不足すると試算している。
だが、永守氏のように積極的に行動し、学部新設を目指しているのは「レアケース」のようだ。
日本国内では、概して政府や自治体が税金を使って公的に支出された資金を活用し、リスクのある事業を展開するというパターンが圧倒的に多い。
民間人が個人の名義で巨額の資金を投じ、大学教育の充実や文化事業を展開するということが、メインストリームになっているわけではない。
しかし、公的債務残高が1000兆円を超え、金利が上がりだすと利払い費の確保で政策的経費に資金が回らなくなりそうな現状では、全く新しい政策項目に1兆円単位の資金を投入することが難しくなっている。
一方、民間部門は資金余剰だ。企業も400兆円以上の利益剰余金を積み上げているが、富裕層が形成した資産残高も増大し、家計の金融資産は1830兆円にのぼっている。
この中で、永守氏のように100億円規模の寄付が可能な大富豪が、かなりの規模で存在している。「寄付税制」に不備があるとの不平も聞かれるが、高い「志」を持っている人たちが、富裕層にひしめいているのでないか。
永守氏の行動に触発され、「寄付」で日本の若い世代に何かを残す行動が、今後、継続的に出てくることを願わずにはいられない。
https://jp.reuters.com/article/nagamori-nidec-idJPKCN1RH114
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