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鳥貴族、赤字転落で危機突入…値上げ嫌われ15カ月連続客数減、過剰出店で客の“共食い”
https://biz-journal.jp/2019/04/post_27298.html
2019.04.03 文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント Business Journal
「鳥貴族の店舗(「Wikipedia」より)
鳥貴族が絶不調だ。同社は3月8日、2019年7月期の単独最終損益が3億5600万円の赤字(前期は6億6200万円の黒字)になる見通しだと発表した。今期中に不採算店21カ所の閉鎖に伴う減損損失を計上する。通期の最終赤字は14年の上場以来初めてとなる。従来予想は7億4700万円の黒字を見込んでいた。今期の売上高予想は従来予想より20億円少ない358億円(前期比6%増)に下方修正した。
17年10月に全品税抜き280円均一を298円に引き上げ、客離れが起きた。既存店客数は19年2月まで15カ月連続で前年割れとなっている。さらに問題となっているのが客単価の低下だ。値上げ以降は、客単価は前年を超える月が続き、値上げした17年10月から18年9月まで12カ月連続でプラスだったが、値上げしてちょうど1年後となる18年10月から一転して前年割れが続くようになり、19年2月まで5カ月連続でマイナスとなっている。この間の客単価のマイナスは2〜3%だ。値上げ後のプラスが2〜3%程度なので、客単価は値上げ前の水準に戻ってしまった。
値上げから1年たって客単価が下落に転じたのは、値上げを嫌った客が注文点数を減らした可能性が挙げられる。均一価格を値上げしたので、平均注文点数が変わらなければ客単価は上がるはずだが、そうなっていないということは、注文点数が減ったと考えられる。飲み放題・食べ放題のメニューもあるので一概にはいえない面があるが、単品ごとに注文する客のほうが圧倒的に多いので、平均注文点数が下がったと考えるのが妥当だろう。
値上げで平均注文点数が減ったとみられるのは、居酒屋がほかの飲食業態と比べて注文点数が多いことが影響したと考えられる。鳥貴族の平均客単価が仮に2000円だとして、値上げ前の均一価格が税込みで302円なので、平均注文点数は7点程度となる。7点と注文点数が多いので、客は注文点数を調節することでトータルの出費をコントロールしやすい。たとえば、常連客が値上げ前は平均7点注文していたところ、値上げ後は6点に抑え、結果としてトータルの出費が減るというケースが増えたと考えらえる。こうして客単価が低下したのではないか。
こういった現象は、ほかの業態ではあまり見られない。たとえば、牛丼1杯だけを食べて帰る人も多い牛丼チェーン「吉野家」の場合、値上げしても注文点数の調節では1回あたりの出費をコントロールすることが難しいという側面がある。値上げ分が単純に上乗せになるだけのケースが多く、そのため、鳥貴族のように客単価が値上げ前の水準に戻ることはほとんどない。
吉野家は14年12月中旬に値上げを実施し、主力の牛丼並盛りの価格を税込み300円から380円に引き上げているが、その結果、客単価は大きく上昇し、14年12月から15年12月までは前年同月比9〜19%増の大幅なプラスが続いている。この13カ月のうち11の月が2桁増となっている。その後は落ち着いて、マイナスとなる月もあったが、2桁のマイナスになる月はほとんどなく、全体的に小幅なマイナスにとどまっている。こうしたことから、値上げは客単価を押し上げたといっていいだろう。
いずれにせよ、鳥貴族は値上げによる客数の減少を客単価でカバーすることができずに苦戦を強いられているわけだが、価格面で今後問題となりそうな要因が、10月に予定している消費増税だ。税率が8%から10%に引き上げられる予定だが、増税分をそのまま価格に転嫁すれば、さらなる客離れが避けられないだろう。税込み価格において増税分をそのまま上乗せするのか、税込み価格を現状と同じにして本体価格を下げるのか、はたまた税込み価格をも下げるのかに関心が集まりそうだ。
■値上げ以外の客離れの要因
鳥貴族は客離れで苦しんでいるわけだが、要因は値上げだけではない。それ以外の要素として特に大きいのが、類似業態が増えたことだろう。ワタミの「三代目鳥メロ」、コロワイドの「やきとりセンター」、DINAMIXの「鳥二郎」、エー・ピーカンパニーの「やきとりスタンダード」などが台頭しており、鳥貴族を脅かしている。
こういった類似業態が台頭することで生じるリスクは、直接的に客を奪われることだけではない。埋没して存在感が低下するリスクも大きいだろう。鳥貴族はかつて「焼き鳥居酒屋といえば鳥貴族」という強いポジションを保持していたが、類似業態が増えるにつれて「数ある焼き鳥居酒屋の中のひとつ」という弱いポジションに移行してしまい、かつてほど存在感を発揮できなくなっている。このことが客離れにつながった側面がある。
特に台頭著しいのが、焼き鳥居酒屋「三代目鳥メロ」だ。ワタミは不振の総合居酒屋「和民」から転換するかたちで「三代目鳥メロ」を増やしている。18年9月末時点の店舗数は134店で1年前から11店増えている。から揚げが主力の居酒屋「ミライザカ」の149店を加えると、国内外食事業の6割を占めるほどで、ワタミは鶏居酒屋の色を強めて鳥貴族に対抗しようとしている。
ワタミは鳥貴族とは対照的に、集客に成功している。国内外食事業の既存店客数は2月まで5カ月連続で前年を上回っている。18年4〜12月までの累計では前年同期比1.6%増となっている。18年3月期(通期)は5.5%増だった。鳥貴族の失速を尻目に躍進を続けている。ワタミは、店舗数では鳥貴族に遠く及ばない。だが、無視できるほど少ないわけではない。鳥貴族にとっては手強いライバルといえるだろう。
鳥貴族は自社競合でも苦しんでいる。同社はドミナント(集中)出店を原則としており、関東と関西、東海に集中して出店し、店舗数を伸ばしてきた。客離れが著しかった18年7月期は大量出店しており、1年間で98店も純増している(期末店舗数は665店)。割合でいえば17%も増えた。この大量出店により、自社の店舗同士で客の奪い合いが起きた側面がある。
外食チェーンでは、規模が大きくなるにつれて自社競合の問題がついて回るようになる。ペッパーフードサービスが展開する「いきなり!ステーキ」も、自社競合が一因で客数が減るようになった。既存店客数は18年4月から前年割れが起きるようになり、8月と10月こそわずかに前年を上回ったものの、それら以外の19年2月までの月すべてがマイナスという深刻な状況が続いている。ブームの一巡や値上げのほか、大量出店による自社競合が影響したとみられる。
「いきなり!ステーキ」の2月末時点の国内店舗数は417店。1年前から204店増えてほぼ倍増した。大量出店したことで自社競合するケースが増え、それにより既存店の客数減になっている側面がある。
幸楽苑ホールディングスが全国に500店超を展開するラーメンチェーン「幸楽苑」も、自社競合で業績が悪化した。そこで自社競合していた幸楽苑を「いきなり!ステーキ」に転換したところ、転換せずにそのまま残した幸楽苑の業績は上向くようになったという。自社競合が解消されたためだ。
これらが示すように、店舗網が大きくなったチェーン店は自社競合という難題に直面する。それは鳥貴族も同様で、巧緻な対応が問われている。
鳥貴族は業績の下方修正と合わせて、18年7月期〜21年7月期の中期経営計画を取り下げることを発表した。「3商圏1000店舗、営業利益率8%」を掲げていたが、最終年度の目標達成が困難になったと判断した。営業利益率8%については引き続き経営目標として取り組む。新たな中期経営計画は19年9月をめどに改めて公表する予定だ。抜本的な対策を示せるかに関心が集まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。
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