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激動を続ける内外政治経済情勢のゆくえ
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2019年3月29日 植草一秀の『知られざる真実』
昨年10月以来、金融市場の激動が続いている。 昨年10月初、日米株価は高値をつけた。 NYダウは史上最高値、日経平均株価は27年ぶりの高値を記録した。 波乱含みの2018年だったが、荒波を乗り越えて経済の浮上が展望できるかに見えた。 ところが「好事魔多し」である。 10月高値から一転、米国発でグローバルな株価急落が発生した。 株価下落の背景として私は三つの要因を提示していた。 1.米中貿易戦争 2.米国金融引き締め 3.日本増税政策 である。 米中貿易戦争が始動したのは昨年3月だった。 トランプ大統領が突然、中国の対米輸出に対して制裁関税を発動する方針を示した。 米国が宣戦布告するかたちで米中貿易戦争が勃発した。 実際の制裁関税は7月6日に第一弾、8月23日に第二弾、9月24日に第三弾が実施されてきた。 第三弾の制裁関税は中国の対米輸出2000億ドルを対象とするもので、制裁関税の税率は10%とされた。 第三弾の中国の報復措置は米国の対中輸出600億ドルを対象とするもので、制裁関税の税率は5〜10%とされた。 中国と米国の輸出金額に大きな相違がある。 中国の対米輸出が5000億ドル規模であるのに対して、米国の対中輸出は1300億ドル規模である。 トランプ大統領は米中が高率の制裁関税を発動する応酬になれば、米国が受けるダメージよりも中国が受けるダメージが上回ることを重視したと思われる。 この読みからトランプ大統領は激しい勢いで米中貿易戦争を拡大させてきた。 しかし、この判断は浅薄である。 中国経済が急激に悪化すれば、その影響が必ず米国にも跳ね返るからだ。 昨年10月初にNYダウが急落したきっかけは中国株価の急落だった。 国慶節の休暇明けに中国人民銀行が預金準備率を引き下げた。 金融緩和措置は本来株価上昇をもたらすものなのだが、中国株価は急落した。 中国経済の本格的な悪化が警戒されたのだと考えられる。 これを受けてNY株価が急落したが、株価下落を加速させる要因になったのが米国の金融引き締め政策だった。 FRBでは昨年2月に議長が交代していた。 イエレン議長からパウエル氏に交代した。 パウエル新議長はトランプ大統領が選出した人物だから、FRBの金融政策がハト派色を強めると予想されたが、この市場観測をパウエル議長が払拭した。 パウエル議長は2018年に4回の利上げを断行した。 4度目の利上げを決めた昨年12月19日のFOMCで、FRBはさらに2019年に2回、2020年に1回の利上げを実施する見通しを示した。 米国の金融引き締め政策が世界経済の先行き警戒感を一気に強めることになった。 日米株価は2割の急落を演じ、上海総合指数は2018年1月末から3割の下落率を記録した。 このタイミングで、10月15日、安倍首相は2019年10月の消費税率10%への引き上げを具体的に指示した。 新しい金融危機が到来する警戒感が広がったのである。 私が執筆している会員制レポート『金利・為替・株価特報』 http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html では、10月上旬号で株価下落波動への転換を警告した。 2007年後半と類似した株価下落波動が生じる可能性を指摘したが、12月までの株価推移は、その通りのものになった。 2019年は先行き警戒感が広がるなかで幕を開けたが、1月4日を境に潮流が転換した。 潮流転換をもたらしたのはパウエルFRB議長の発言だった。 上記の『金利・為替・株価特報』は、1月上旬号で潮流転換を指摘した。 実際、パウエル発言を転換点にして主要国株価が急反発した。 しかしながら、2月末以降、新たな警戒感が広がる事態に移行している。 今後の経済金融情勢をどのように読むのか。 極めて重要な局面を迎えている。 |
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