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“レオパレス発”金融ショックの足音…国の違法建築一斉調査に不動産業界が戦々恐々
https://biz-journal.jp/2019/03/post_27069.html
2019.03.18 文=小林紘士/不動産ジャーナリスト Business Journal
レオパレス21(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
レオパレス21の施工不良問題が新たに発覚してから7日で1カ月が経過した。筆者が2月12日付記事『レオパレス、組織的に施工不良を主導し“犯罪的”…もっとも引越し困難な時期に退去要請』で同社について言及した後も、この問題は拡大の一途をたどっている。
同社に関する報道も相次いでおり、ついには3月5日に国土交通省がこの問題を受け、アパート建設を手掛ける大手同業他社にも違法建築物件がないか確認するサンプル調査に乗り出す方針を固めたと報じられた。
ここで簡単に、最近の報道内容を振り返ってみたい。
【2月19日】
石井啓一国土交通相が19日の記者会見で、レオパレスが昨年公表した施工不良に関し、173自治体が計1895棟の建築基準法違反を先月末時点で確認したと発表。併せて国交省は同社に対する処分の検討に入った。さらに、同社に対し、施工不良の原因究明結果を1カ月以内に報告するよう指示し、自治体には新たな施工不良の物件についても法令違反の確認を進めるよう要請した。
【2月20日】
レオパレスオーナーで構成する違法建築被害者の会は、緊急役員会議を招集し、議題として、「レオパレス21を絶対に倒産させないための検討」「違法建築の調査・修繕工事の時間短縮化の検討」「国家賠償責任についての検討」などが挙げられた。オーナー会は、レオパレスが倒産した場合、銀行の経営悪化から日本全体に悪影響を及ぼしかねないと国に警告を発信しながら、金融庁には低金利の金融支援をレオパレスに実施するように求めた。国の建築検査体制の不備もこの問題の原因として、同社を倒産させるような国の施策ならば、オーナーとしては国家賠償責任も検討に入れる意向と表明。
【2月27日】
レオパレスが「外部調査委員会設置のお知らせ」を発表。調査委員会を設置し、施工不備に関する原因について厳正かつ徹底した調査を実施し、3月18 日を目途に一定の中間報告を行い、その後しかるべき時期に再発防止策、社内役員の責任についての検討を含めた最終報告書を作成するとした。本件施工不備の原因、対応策、社内役員の責任について、社外取締役のみで客観的に検証し決定することとしており、調査報告書は、その基礎として尊重されるものとしている。
【2月28日】
レオパレスが、施工不良が発覚した外壁の改修工事を回避する方向で検討しているとわかった、という報道があった。925棟で耐火や防火に関する国の認定に合わない不備が発覚したが同社は、安全性は確保されているとして工事をせずに認定を取得したい考えとされ、国は耐火や防火試験の結果などを踏まえ、申請内容に問題がなければ認定を出すという。
【3月1日】
レオパレスが「当社施工物件で確認された外壁部分の施工不備に関する一部報道について」と題し、前日の報道を受けて、外壁部分の施工不備物件への対応を以下のように発表。「本日、当社が改修工事を回避する方向で検討している旨の一部報道がございました。当社は現在、外壁部分の施工不備物件について、その安全性の認定について準備を進めておりますが、2月7日付当社プレスリリース『全棟調査進捗状況のご報告及び調査の過程で新たに確認された不備について』でお知らせしたとおり、まずは補修工事の段取りを進めております」
【3月5日】
レオパレスの施工不備物件の問題を受けて、国交省は同じようにアパート建設を手がけるほかの会社の建物でも同様の不備がないか、調査を行う方針を固めた。調査方法としては、一定の割合で建物を抽出、耐火構造が法律の基準を満たしているかなどを調査する方針だ。調査の具体的な規模や項目などについては、今月から開催する有識者による検討会で決める。また、同省はレオパレスに対し、不備があった建物の補修を今年10月までに行うとする会社側の計画を前倒しさせ、夏までに終えるよう求めた。
【3月7日】
「国交省幹部はレオパレスの企業体質について『闇は深い』と苦言を呈する。国交省が対応の見直しを求めたのは今回が初めてではない。レオパレスは新たな施工不良発表時の記者会見では、原因究明を進めるための第三者委員会の設置について『現時点では考えていない』と言及。その後、2月27日に設置を発表したが、それも『国交省が設置を指示したからだ』(国交省幹部)という。(中略)レオパレスでは問題発覚前から入居者からの遮音性への不満が多発していた。レオパレスは平成31年3月期で最終赤字となる見通しで、問題長期化は業績にさらに深刻な影響を与えかねない」(産経新聞記事より抜粋)
【3月8日】
レオパレスは8日、2月の入居率が前年同月より6.8ポイント低い85.6%だったと発表。1月(85.4%)とほぼ変わらず、改修工事のため入居者募集を停止していることが原因と考えられる。また、同社は、天井裏の「界壁」(かいへき)で施工不良が見つかった物件の補修工事を今年の夏前までに完了することも発表した。
■業界関係者「ここまでとは思わなかった」
こうして報道をまとめてみると、石井啓一国土交通相も記者会見で吐露しているが、これだけ大きな社会問題にまで発展した事件にもかかわらず、同社主導ではなく、国交省が指示しないと動いていないことが見て取れる。また、2月28日には、同社が改修工事を回避する方向で検討しているという報道があったが、翌日には早々に同社が正式に否定している。入居者への対応と比べると、こうした対応の早さにかえって不信感を覚えてしまう人も多いだろう。
これらの報道のほか、すでに7年前には同社の顧問弁護士から、建築基準法に抵触していることを隠すことができないと指摘されたにもかかわらず公表せず、オーナー会からの指摘を受けてやっと最初の問題を公表したという経緯がある。やはり、“隠蔽体質”であることに疑いの余地がない。そんな体質は一向に変わる気配が感じられない。第三者委員会の報告で経営陣に対する指摘がどこまで踏み込むか、そしてその後、どのように変わるのかが大切になる。
さて、こうした状況を不動産業界の人間はどう見ているのか。
筆者の知る不動産業界関係者たちは、この問題について、おおむね「出るものが出てきた」「遅かれ早かれ、こうなるだろうとは思っていた」という受け止め方が多い。賃貸であれ、中古物件の売買であれ、レオパレスのアパートを取り扱ってみれば、モノ(建物)が安いと感じていたのだろうから、こうした感想もうなずける。ただ、ここまであからさまな違法建築だったと思っていた人は少ないようで、実際に「やりすぎ」「ここまでとは思わなかった」という声が多い。
だが、こうした感想を持つのはアパート業者(自社でアパートを建て販売する業者)や賃貸業者の人で、レオパレスと同業の他社は戦々恐々としているようだ。上記の記事のまとめでも出てくるが、国交省が同業他社についても調査を始めると公表したからだ。筆者が知る関係者は多くが営業サイドなので、建築の細かい点(施工の検査のことなど)については、自社を信じて販売しているが、果たして自社が施工した物件に問題がないかについて、100%の自信を持てないのも致し方ないのかもしれない。
事ここに至っては、同業他社も含めて膿はすべて出してしまったほうがいいのだろう。後々のことを考えれば、そのほうが業界のためになるといえる。
■不透明な補償の範囲
他方、今後の補償などについても気になる。
まず、今回もっとも被害を受けたのは間違いなく入居者だが、入居者についてはテレビをはじめとするさまざまなメディアで個々の入居者のコメントを紹介している。特に、3月末までに引っ越しを要請された7700人以上の入居者は、引っ越し先の確保や、一時的にしろ持ち出しとなる金銭的な問題、そもそもこの時期に引っ越しできるかといった不安など、さまざまな面で被害を被っている。さらには、次の物件は大丈夫かという住宅に対する不安にまでつながっているようだ。
移転にかかる費用は全額レオパレス側が負担すると発表しているが、全額とはどこまでをいうのか、精神的な被害に対する補償はどうなるのかという点がはっきりしていない。
オーナーについては、任意ながら同社のオーナーで構成するオーナー会があり、そこを中心に集団訴訟の動きや政府への提言などを表明しており、一定の主張の場がある。しかし、一番の被害者である入居者の被害者の会などは発足されていないようだ。本来、もっとも立場の弱い入居者の声に耳を傾けるべきだが、個々の声がメディアで小さく取り上げられるだけでいいのだろうか。
後手を踏む同社に代わり、国交省にはここにも配慮してほしいと思うばかりだ。
そして、高額な金額を支払って、違法建築物を所有していることになったオーナーも被害者であることは間違いない。特に、ローンを利用して建設したオーナーにとっては、その返済もあり、経済的・精神的に大きな負担となっている。
オーナーに対する補償としては、対象となった物件の改修とその費用を同社が負担する。当然といえば当然だ。通常なら、改修中の賃料や退去後新たな入居者が入るまでの賃料が補償の対象となるが、同社の場合、一括借り上げによる家賃保証(サブリース)を行っているので、そのまま契約通り賃料をオーナーに支払うことで、賃料については補償(保証)される。そのため、同社が倒産など経営破綻さえしなければ、オーナーは賃料を支払ってもらうことができる。この点を踏まえれば、上記の記事でオーナーの会が同社を倒産させないよう求めたことは理解できる。同社が倒れれば、オーナー(特にローンを抱えるオーナー)も共倒れとなってしまう。その場合は、同社のオーナー数は何万人もおり、先の「かぼちゃの馬車問題」でローンの支払いが困難になったオーナー数の比ではない。こう考えれば、多くの金融機関にとっても対岸の火事ではない。
また、オーナーにとっては、賃料が保証されればよいというものでもない。この問題が発覚したことからブランドイメージが傷つき、アパートを売却する際などは売却しづらくなった。つまり、資産価値が下がったのである。こうした資産の減価については、どう責任を取ることができるのだろう。投資という観点からみれば、こうしたことも自己責任の範疇になる(レオパレスを選択したことが自己責任)かもしれないが、今回のようなケースは、やはり選んでもらった同社がオーナーに対してなんらかの補償をしてもいいように思う。
■「長期一括借り上げ」制度の問題点
最後に、筆者はまだ気になることがあるので、記しておきたい。
今回の国土交通省の対処は、違法建築物を見つけ、健全な建物に改修することで入居者の身体的な安全、心理的な安心を確保する意味では重要なものだと思うが、果たして物理的な改善だけでいいのだろうか。
根本的には、やはり「長期一括借り上げ」「30年家賃保証」という仕組みに問題があるのではないかと考えている。オーナーにアパート経営(建設費のローン返済、入居者が入らないなど)の不安を和らげ、決断する重要な仕組みだが、その支払いをする企業側にしてみれば、一連のリスクを引き受けるものとなる。以前にも別の記事で書いたが、企業側はその原資を「建築費」の名目で先取りしている。その原資をできるだけ確保する意味でも、建築費は抑えたい。それが、今回の問題につながってくる。そもそも、人口減に伴い賃貸住宅の数がすでに飽和状態にあり、賃貸経営は一部の地域を除いて数年先でもどうなるかわからない。そうしたなかで、30年などの長期の家賃保証というものに何のガイドラインもないのはおかしいのではないか。
今回の問題を受けて国交省には、この点にもメスを入れてほしいものだ。
3月18日、国交省が報告を求めた「1カ月」の期限が到来する。果たして、同社の“中間報告”はどんな内容なのか。さまざまな視点で注意深く見守るべき報告になる。
(文=小林紘士/不動産ジャーナリスト)
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