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大塚家具、中国系企業の実質支配下に…経営陣刷新要求、久美子社長は父・勝久氏に泣きつき
https://biz-journal.jp/2019/03/post_27036.html
2019.03.13 文=編集部 Business Journal
大塚家具の大塚久美子社長(写真:Natsuki Sakai/アフロ)
経営再建中の大塚家具は、日中の投資家や米系投資ファンドから資本を受け入れる財務強化策を発表した。最大で76億円を調達し、財務基盤の強化を図る。同時に、家電量販大手のヤマダ電機と業務提携した。大塚久美子社長は引き続き経営トップにとどまる。
第三者割当増資を行い、2019年3〜6月に1株290円で1311万株を発行する。2月14日の終値(460円)からは4割安い水準で、発行済み株式数は現在の1940万株から7割近く増える。
越境EC(電子商取引)を手掛けるハイラインズが組成し、日中の企業などが資金を拠出する投資ファンドに18億円、米系投資ファンドのイーストモア・グローバルに20億円の第三者割当増資を実施する。
さらに、ハイラインズと同社代表取締役の陳海波氏、ならびにイーストモアに対して新株予約権を発行する。権利がすべて行使されれば、第三者割当増資と合わせて最大で76億円の資金調達となる。新株予約権が行使されると発行済み株式数はさらに830万株増える。
大塚家具の大株主は、大塚家具の資産管理会社ききょう企画が6.66%で筆頭株主。2位は資本・業務提携している貸し会議室大手のティーケーピー(TKP)で6.65%(17年12月31日現在)。
ファイナンス後、持ち株比率はイーストモア・グローバルが19.58%で筆頭株主。2位はハイラインズ日中アライアンス2号匿名組合の13.34%、3位がハイラインズの11.76%、4位に陳海波氏の5.88%と続く。ききょう企画は3.17%で5位に後退する。
ハイラインズは1号匿名組合(持ち株比率1.90%)と合わせるとグループで32.88%の株式を保有することとなり、実質的な筆頭株主に躍り出る。
■ハイラインズの陳海波氏が新しいオーナー
経営不振に陥った大塚家具は昨年6月ごろから支援先を探してきた。第2位の株主のTKPや家電量販店大手など10社と交渉したが協議は難航。昨年12月に業務提携した中国の家具販売大手「居然之家(イージーホーム)」との資本提携を探ったが、同社は株式上場の準備を理由に出資を見送った。
実は、大塚家具をイージーホームに紹介したのはハイラインズだった。今回そのハイラインズが大塚家具ファイナンスの枠組みづくりを主導した。
ハイラインズは中国のIT企業の日本法人、ユー・シー・エル(陳海波代表取締役)が越境EC事業を分離して16年11月に設立した。
イーストモア・グローバルはケイマン諸島に本拠を置く投資ファンドで、大塚家具が独自に探してきた支援先だ。大塚家具株式の高値売り抜けが目的とみられている。一方、ハイラインズは役員を派遣して業績回復を優先する方向だ。
大塚家具の18年12月期の単独決算の売上高は前年比9.0%減の373億円、営業損益は前年とほぼ同じ51億円の赤字、最終損益は32億円の赤字となった。17年同期の最終赤字は72億円。最終赤字は3期連続となり、年間配当はゼロ(17年同期は40円)となった。昨年12月20日に昨年来安値250円を記録した。
再建策をさらに詰めるため19年12月期の業績見通しは「未定」とした。事業継続のリスクがあるとして投資家に注意を促す「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」が決算短信に付いたままだ。
今回の増資によって、筆頭株主が大塚家から中国のハイラインズに交代。派手な父娘ゲンカを演じながらも、創業以来続いてきた大塚家の支配は事実上、終わる。中国企業にとって、日本の上場企業を手に入れるメリットは大きい。資金調達の打ち出の小槌とすることができるからだ。
窮余の策ともいえる資本・業務提携に対する投資家の視線は厳しい。2月15日の大塚家具の株価の終値は388円(前日比72円安)。一時、380円(80円安)まで下がった。3月4日の終値は374円。
■久美子社長が父親へ和解呼びかけたワケ
久美子社長は3月4日、陳氏と東京都内の日本外国特派員協会で記者会見を開き、2月までにまとめた業務提携・資本増強について説明した。
久美子社長は「守りから攻めに打って出る体制が整った。日本から一歩踏み出す」と述べ、中国市場に熱い視線を送った。
陳氏は「(ハイラインズの)役員を大塚家具に派遣する。日本だけでなく中国の富裕層取り込みも目指す」と資本業務提携の狙いを語った。
久美子社長は、家具販売振興を目的とする団体の設立を検討していることも明かした。「価値観を共有できるメーカーや販売会社でつくれないか考えている。その団体には父にも参加してほしいので、声をかけたい」と述べ、かつて経営権をめぐり骨肉の争いを演じた実父・大塚勝久元会長との関係改善に意欲を示した。
「父・勝久は業界一の目利き」「子供の頃、店でかくれんぼをして父に怒られた」「父から価値観やいいものとはどういうものかという美意識を受け継いだ」など、7分間にわたり父について語った。
久美子社長の唐突な父親との“和解”表明は、陳氏の意向によるものだ。
「いい家具を長く使う価値観は父と同じだ」とも述べた。お家騒動がブランドイメージの悪化を招き業績不振に陥ったことから、勝久氏との関係改善で、ブランド力を回復させたいとの思惑がある。しかし、「対決から一転して融和路線を打ち出したが、言葉だけが上滑りしている感がある」(会見に出席したジャーナリスト)と、冷ややかな声もある。
勝久氏が会長を務める家具販売会社・匠大塚との経営統合の可能性については、「経営合理性の観点に応じて検討する」と濁し、「(現時点では)考えが及ばない」とも述べた。
陳氏は久美子社長の続投を認める方針だが、「赤字を継続すれば続投できなくなる。今年は最低でもトントンにする必要がある」と全国紙のインタビューでクギを刺している。ほかの取締役については、「3年間の実績を見れば、アドバイザーとして機能していない」と指摘。経営陣の大幅な入れ替えを示唆した。
3月25日に開かれる株主総会で“新しいオーナー”となる陳氏の主導により大塚家具の経営再建が図られることになるが、前途多難であることに変わりはない。
(文=編集部)
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