http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/407.html
Tweet |
2019年3月7日 久我尚子 :ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
「若者はお金がない」の誤解!高級車やタワマンにはお金を使う理由
バブル期より増えている
単身者の可処分所得
世間では、よく「若者はお金がない」と言われる。しかし、統計データを見ると意外な事実が分かる。実は、1990年代のバブル期の若者よりも今の20代〜30代の若者の方がお金があるのだ。
総務省「全国消費実態調査」によると、30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得はバブル期より増えている。1989年と2014年の可処分所得を比べると、男性では月平均18.4万円から23.0万円(+4.6万円)へ、女性では16.4万円から18.3万円(+2.9万円)へと増えているのだ(図1)。物価を考慮しても 男女ともプラスだ(※1)。
拡大画像表示
https://diamond.jp/mwimgs/b/f/-/img_bfd7655e2b7c837c45b70e6cadb1ba5f85176.jpg
(※1)久我尚子「若年層の消費実態(1)〜(5)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2016〜2017)
この背景には、景気低迷は続いたものの、初任給が上がり新入社員の待遇が良くなっていること(図2)、また、初任給が比較的高い大卒者が増えていることなどがあるのだろう。
拡大画像表示
https://diamond.jp/mwimgs/7/8/-/img_784b575ba434ef0de509b68a801936e567726.jpg
とはいえ、このご時勢で一人暮らしができる若者は、大企業の正社員など、若者の中でも経済的に恵まれている層なのかもしれない。ということで、非正規雇用者の若者の手取り収入も計算してみた 。その結果、25〜29歳では男性は月平均20.7万円、女性は18.4万円。やはりバブル期の一人暮らしの若者よりも2万円程度も多い(※2)。
ちなみに、25〜29歳の非正規雇用者の約3割は大卒・大学院卒だ。非正規雇用者のうち大卒・大学院卒に限定して見ると、男性は25.0万円、女性は22.0万円にもなる。
一人暮らしの正社員より
自由にお金を使える非正規雇用の若者
最近は人手不足で売り手市場だ。アルバイトの時給も上がっている。必ずしも正社員でなくても、月々そこそこ稼げるようになっている。非正規雇用者の場合、実家に住んでいる割合も高い(※3)。実家に住む非正規雇用の若者の方が一人暮らしの正社員の若者よりも自由に使えるお金が多いこともあるだろう。
また、世間では「若者はお金を使わない」とも言われている。確かに、30歳未満の単身勤労者世帯の若者の可処分所得は増加傾向にあるが、消費性向は実は低下傾向にある。つまり、増えた所得をそのまま消費に回しているわけではなく貯蓄へ回している、そして、その割合は年々高まっている。若者全体として見れば、確かに「若者はお金を使わない」のかもしれない。
(※2)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」および総務省「全国消費実態調査」より推計
(※3)総務省「親と同居の未婚者の最近の状況」
しかし、いつの時代にも消費意欲が旺盛な層は存在する。また、単純なようだが、可処分所得が多いと、やはり消費意欲は高まりやすい。
ここでニッセイ基礎研究所が実施した生活者1万人を対象とした「家計消費と生活不安に関する調査」(※4)のデータを紹介したい。20〜30代では他の世代に比べて「ものは買うより、できるだけレンタルやシェアで済ませたい」や「計画的な買い物をすることが多い方だ」、「毎月、決まった額の貯金をしている」、「日常的におサイフケータイを使い買い物やポイントサービスを利用している」にあてはまる割合がやや高い(図3)。
拡大画像表示
https://diamond.jp/mwimgs/b/f/-/img_bf14ced79958cbd6ac86d3176187dccf117170.jpg
今どきの若者らしく、安く済ませられるものは安く済ませて、ポイントなどお得なものも賢く使う、そして、計画的に貯蓄もするといった堅実な消費態度が見える。地に足の着いた賢い消費者として、“賢実”な消費態度ともいえるだろう。
一方で、30代の上位4割、20代の上位2割を占める年収400万円以上の若者を見ると、これらにあてはまる割合がさらに高まるとともに、「多少高くても品質の良いものを買うほうだ」や「普及品より、多少値段がはってもちょっといいものが欲しい」といったラグジュアリーさを求める割合も高まる。
妻が夫並みに稼ぐ共働き夫婦
パワーカップルの消費力
年収が比較的高い若者では“賢実”な消費態度が強い一方で、こだわりのあるものにはお金を使う、ラグジュアリー志向もある、そんな消費態度が見えてくる。
(※4)「家計消費と生活不安に関する調査」、調査対象:全国の20〜70歳代の一般個人、調査手法:ネットリサーチ、実施時期:2017年4月、調査機関:株式会社マクロミル、有効回答数1万305(男性5153、女性5152)
ちなみに、今の若者は上昇志向が弱く、内向き志向だなどといわれるようだが、年収400万円以上の若者では「基本的には潜在的な成功を追い求めている」(56.1%)にあてはまる割合が全体(44.0%)より+12.1%ポイントも高い。
また、最近では、若い共働き夫婦の消費が注目されている。特に不動産業界では、都心の高級マンション市場の牽引役として「パワーカップル」への視線が熱い。
「パワーカップル」とは妻が夫並みに稼ぐ共働き夫婦のことだが、共働きがスタンダードになっている若い世代ほど増えている。仮に夫婦ともに年収700万円以上の共働き夫婦をパワーカップルとすると、2017年で全国で26万世帯だ(総務省「平成29年労働力調査」)。5000万世帯を超える日本の総世帯数からするとごくわずかではあるが、近年、増加傾向にある。2013年の21万世帯と比べると+5万世帯、増減率で見ると+23.8%にもなる。また、パワーカップルで最も多いのは30歳代の夫婦で全体の約3割を占める(※5)。
所得が多く、消費力のあるパワーカップルは、やはり消費意欲が高い。長らく続いた景気低迷の中で、消費者全体として、食費や通信費などの生活に必要不可欠なもの以外、例えば、旅行やレジャーなどの娯楽費や交際費などは、できるだけ抑える傾向が強まっている。しかし、パワーカップルでは海外旅行や外食などへの消費意欲も旺盛だ(図4)。
拡大画像表示
https://diamond.jp/mwimgs/a/e/-/img_ae32bd26c13a9c50c32ff424101c5360108780.jpg
「若者のクルマ離れ」の誤解
男性は確かに減っているが…
ところで、昔から、収入に余裕ができたり、結婚したりした後の大きな買い物の1つにクルマがある。「若者のクルマ離れ」をよく耳にするが、実はここには誤解がある。
(※5)久我尚子「パワーカップル世帯の動向(2)」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2017/9/19)
先の総務省「全国消費実態調査」の若年単身勤労者世帯の自動車保有台数を見ると、男性では確かに減っているが、女性は男性並みに増えている(図5)。その結果、現在では、一人暮らしの男女のクルマの保有状況は変わらないものとなっている。
拡大画像表示
https://diamond.jp/mwimgs/6/3/-/img_63373da648fe5e1958145babd3df650283806.jpg
都市部に住む男性では利便性の高さなどからクルマの購入は減っているものの、女性では経済力が高まることで、むしろクルマを買うようになっているようだ。
ブランド物を持つことが
必ずしもステータスではない
実は今、「お金を使う」1981〜1996年生まれのミレニアル世代の若者層に向けて、クルマブランドでは施策が展開されている。
レクサスやBMWといった高級車のブランド活動を見ると、直接的に新商品を訴求するというよりも、高級車に出合うことによって消費者の生活に新たな体験や世界観をもたらすといった訴求をしている。
例えば、イベントにアーティストを呼びトークショーを行うことで、そこで新たな気づきやネットワークが生まれる、高級車に出合うことで生活に新しい体験が創出されるといったものだ。決してバブル期のようなブランド至上主義、クルマを持つことのステータスを訴求しているのではない。
モノがあふれた中で育ってきた今の若者は、ブランド物を持つことが必ずしもステータスではなくなっている。むしろブランド物をひけらかすことは格好悪いと思っている印象もある。そんな若者達でも、ブランドに出合うことで得られる新たな体験やブランドの持つ世界観、改めて感じたその機能性の高さなどに共鳴するものを感じた時、「高くても良いものを買いたい」と思うのかもしれない。
少子高齢化・人口減少社会の
マーケティングの鍵
新たな体験や世界観などにこだわる若者に向けたサービスを展開するのはクルマ業界だけではない。
高級旅館やリゾートホテルを運営する星野リゾートは、この2月に若者をターゲットにしたホテルを開業した。コンセプトは「仲間とルーズに過ごすホテル」だ。24時間利用可能な中庭のパブリックスペースにはしゃれたカフェやライブラリーなどがあり、ホットワインや焚き火なども自由気ままに楽しめる。近隣には池に張る天然氷のスケートリンクもあり、軽井沢ならではの体験もできる。
「若者はお金がない」のは誤解だ。また、全ての若者が「お金を使わない」わけではない。“賢実”な消費態度を持ちながらも、こだわりがあり納得できるものには「お金を使う」、そして、ラグジュアリーさも求める若者に対して、いかにうまくアプローチできるかが少子高齢化・人口減少社会のマーケティングの鍵だ。
(ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員 久我尚子)
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民131掲示板 次へ 前へ
- 戦後最長の好景気で雇用が増えても「賃金」が上がらない理由 生産性の高い産業の 比重が低い日本 うまき 2019/3/07 08:47:44
(0)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民131掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。