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WEDGE REPORT
NYで「いきなり!ステーキ」が流行らなかった理由
2019/02/27
田村明子 (ジャーナリスト)
2月14日、「いきなり!ステーキ」がニューヨークから一部撤退というニュースが報道された。2年前にマンハッタンに進出を果たした11店舗のうちの7軒を閉店するという。
2017年2月23日、いきなり!ステーキ海外一号店がNYにオープンした(写真:AP/アフロ)
筆者も、ミッドタウンで何度か「いきなり!ステーキ」の前を通りかかったことはあるが、実を言うと毎回ほとんどお客が入っていないことに気がついていた。日本では人気店と聞いていたし、ナスダック上場など話題性もあったので、少し意外ではあった。
だが正直に言うなら、40年間ニューヨークで暮らしてきた筆者にとっては、「いきなり!ステーキ」はおそらくこの街に定着しないだろうという予感があった。
少なくても現在のニューヨーカーにとって、「ステーキイコールご馳走」という観念は、ほとんどないからである。
いまどきのニューヨーカーは
ステーキよりも寿司を好む?
ニューヨークで未だに根強く人気があるレストランガイド、ザガットニューヨークの2018年版を見ると、人気レストラントップ50の中に入っているステーキハウスは、老舗のピーター・ルーガー1軒のみだ。
NYの老舗ステーキハウス「ピーター・ルガー」(写真撮影:岩崎有里)
残りはフレンチ、イタリアンが主流だが、寿司屋が6軒、それ以外の日本食レストランが1軒入っている。トップ50の中に、ステーキ専門店が1軒で、寿司屋が6軒。これが今のニューヨークのグルメ志向の現実なのである。
もちろんフレンチやイタリアンの店に行って、肉料理を頼む人も少なからずいるだろう。でも少なくとも60年代生まれの筆者の周辺では、友人同士が集まって「ステーキを食べに行こう」という声は、このところ耳にした記憶がないのだ。
唯一の例外は、日本から知人が遊びに来た場合である。
「何か食べたいものはありますか?」と聞くと、ほとんどの人がこう答える。
「ステーキ!」
なるほど日本の人たちにとっては、今でもステーキがご馳走なのだなと実感する。
逆に日本に行ったアメリカ人は、一刻も早く本場のお寿司が食べたいと張り切るので、そのあたりはまあお互い様ではある。
肉の人気が下がってきた理由
アメリカ人の肉バナレ、というか厳密に言うと牛や豚などを主に指すRed Meatを避ける傾向は80年代から少しずつ広まっていった。
2017年3月には、ニューヨークタイムズ紙のコラムの中で、2005年から2014年の10年間で、アメリカ全体の牛肉の消費量がおよそ19%減少したという統計が掲載されている。
その理由はいくつかあるが、もっとも大きなものはもちろんアメリカの、特に知的階級の人々の間でヘルシー志向が増えたことである。
もともと食べたいものを食べたいだけ食べる、飽食文化の国であったのが、それではいろいろ健康上の不都合があることがわかってきたのだ。
加えて牛、豚、鶏などを育てるために使用されているホルモン剤、過剰な抗生物質などが人体に及ぼす悪影響についても、多くのリサーチ結果が報告されてきた。
WHO(世界保険機関)も、肉および加工された肉製品は、各種ガンのリスクを高めると正式に報告したことも、大きなニュースになった。
20年ほど前に、低炭水化物、高脂肪、高タンパク質の摂取を推進したアトキンズ・ダイエットというのが大ブームになり、一時はステーキの人気が復活しかけたこともある。
だが2003年に提唱者のアトキンズ博士が何度か心臓発作を繰り返した後に急死し、ブームは瞬く間に去った。
(写真撮影:岩崎有里)
人道的な観点からも
ついでに言うなら、何でも動画で簡単に社会に発進できるソーシャルメディア社会も一役買っている。
肉を柔らかくするために身動きできないよう、鉄の鎧のようなものをつけさせられて一歩も歩くことのできない仔牛の悲惨な姿がSNSで拡散して以来、仔牛肉の人気がガクッと落ちた。
いずれは食肉になる運命ながらも、その日が来るまでのんびりと動物たちが牧場で草を育んでいたのは、すでに過去の話。現代の非人道的な工場畜産業に対する非難の声も高まって、肉を食べるのをやめたニューヨーカーも少なくない。
そういった工場内部で生産した家畜たちと区分するために、きちんと太陽の光を当てて身動きがとれる環境で「人道的に育てた」という「Humanely raised meat」トレードマークまで登場している。
さらに牛や豚を飼育することで大量のメタンガスが発生し、地球温暖化が加速されるという統計も出ているのである。人々が週に1日、肉を食べない日を作るだけで環境保護に貢献できるという。
こういった様々な理由から、一般的にニューヨーカーにとってステーキというのは「Coolな/カッコいい」食べ物ではなくなったのだ。
ステーキは保守派の食べ物?
それでも中には、ランチからステーキを食べる一部のニューヨーカーたちもいる。
ちょっと出始めたお腹をばりっとした仕立ての良いスーツの前ボタンでしっかり隠した、エリートビジネスマンたちである。
ステーキハウスといえば昔から、保守派の中年男性たちがたむろする場所と相場は決まっていた。メイクアメリカグレイトアゲイン、というスローガンが好きそうな、(今は飲食店全て禁煙になったのでさすがに見なくなったもののかつては葉巻をくわえていた)中年男性たちである。
こういう人々は、健康志向などほとんど気にしない。たとえ病気になったところで、一流の医者にかかる財力もある。命はお金では買えないんですけど、などというのは大きなお世話なのだろう。
こういう人々が行くのは、前述の老舗Peter LugerやBenjamin Steak House, Quality Meatなど、高級なステーキハウスである。食前酒にマーティーニ、巨大なステーキと一緒に高価な赤ワインを堪能する。そういえば、知人がトランプ一家がKeen Steakhouseに勢ぞろいしたところに遭遇した、と言っていた。
そもそも接待経費で食べている彼らは、懐の心配など無用なのである。
安いステーキの需要が薄いニューヨーク
「シズラー」「アウトバックス」「テキサスBBQ」など、安くて気軽にステーキを食べられるチェーン店もあるものの、入っているのは地方からやってきた観光客ばかり。ほとんどのニューヨーカーにとっては、無縁の場所だと言って良い。
だから「いきなり!ステーキ」で、お手ごろ価格で美味しいステーキが立ち食いできる、と言われても、喜び勇んで食べに行くという社会層がニューヨークにはあまりいないのだ。むしろダラスやアトランタなど、地方都市のほうが向いているかもしれない。
それよりこのところ「Omakase」ブームで高級化していく一方の寿司を、気軽に美味しく食べさせてくれる高品質の回転寿司チェーンでも進出してくれないだろうか。というのが、大部分のニューヨーカーにとっての切実な願いではないだろうか。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15467
「肉は人工的に生産できる」 食肉の常識を変える世界のミートテック企業
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Forbes JAPAN 編集部 , FORBES JAPAN
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植物由来でありながら、ジューシーな食感を実現した「インポッシブル・フーズ」のパティ。
人工肉には大きく分けて、植物由来のものと、動物から採取した細胞を育てて肉をつくる培養肉がある。
独自の技術で牛肉、鶏肉、魚を生産する、世界で注目を集めるミートテック企業を5社紹介する。
Impossible Foods/インポッシブル・フーズ
in USA
植物由来の人工肉の先駆「インポッシブル・フーズ」は、カリフォルニアの生産施設で毎月50万ポンドの人工肉を生産している。これは、毎月200万人に同社のパティを使用した「インポッシブル・バーガー」を供給するのに十分な量に当たる。
主な原材料は大豆、じゃがいも。ジューシーな食感は、遺伝子組み換えのヘモグロビンで再現をしている。当初、高級レストランとの取引を中心に事業を展開していたが、現在は5000を超えるレストラン、さらにファストフードチェーンの「ホワイトキャッスル」でも商品を展開。
2019年1月にはIT技術イベント「CES」で新作「インポッシブル・バーガー2.0」を披露し、年内に食料品店での販売を開始することを発表した。
Finless Foods/フィンレス・フーズ
in USA
近年、世界的に魚の消費量が増える一方、海の汚染により、今後も安全な魚を食べることできるかどうかが危ぶまれている。そんな中、環境を守りながら健康でおいしく安価なシーフードの提供を目指しているのが、2016年創業、魚の培養肉を手がける「フィンレス・フーズ」だ。
第一段階の目標は、クロマグロをペースト状にしたネギトロのような商品をレストランで展開すること。将来的には市場で売られているマグロと同品質のものを、より安く一般にも販売することを目指している。また、今後はサケやティラピア(鯛のような味の外来種)の培養肉も開発予定。
全て商品化の前段階だが、アジア市場の開拓も視野に入れており、すでに複数の小売店と提携の話を進めている。
Beyond Meat/ビヨンド・ミート
in USA
「ビヨンド・ミート」は高級スーパー「ホールフーズ・マーケット」で初めて精肉売り場に並んだ人工肉。主原料はエンドウ豆で、少量のビーツが赤い色味、ココナッツオイルと片栗粉が、ジューシーな肉汁の元だ。
従来のパティをMRIで分析し、タンパク質や脂質の構造を模し、本物の肉のような食感を再現することに成功。コレステロールゼロであることも、ビーガン以外の消費者からも支持を集める理由となっている。
現在、ソーセージやパティも展開しており、すでに3万2000以上の小売店やホテル、大学で味わうことができる。「ビヨンド・バーガー」は現在、世界15か国以上で販売され、今後は日本を含む50カ国以上の現地販売代理店と提携して販売される予定。
次ページ > 出資者にはビル・ゲイツも名を連ねる
2015年に創業した、培養肉を提供するミートテック企業のリーディングカンパニー。2016年、牛と豚の幹細胞から得た筋肉繊維から、世界ではじめて培養肉でミートボールを完成させた。
ビル・ゲイツや、イギリスの多国籍企業ヴァージン・グループの会長・リチャード・ブランソンなど、各界の大物からも出資を受けている。「メンフィス・ミート」が今最も注力しているのは、市場に出たときの鶏肉、鴨肉、牛肉のコストを最低限まで抑えること。現在の製造コストは、初期の数分の1まで抑えられているという。
また、同社の注目すべき点は、 培養肉としてはじめて「食肉」の認定を得られるよう、米国農務省および米国食品医薬品局に働きかけていることだ。
Super Meat/スーパーミート
in ISRAEL
イスラエルには約250社のフードテックスタートアップがあり、食に関する事業は大きな盛り上がりを見せている。「スーパー・ミート」は、メンフィス・ミートと同じく、動物細胞の培養から鶏肉をつくるミートテック企業だ。
詳しい製造方法は公開されていないが、iPS細胞で話題になった動物の幹細胞を元に培養するという。2021年までに、高級レストランに提供できるまでの価格へ下げることを目指している。すでにアメリカ、ヨーロッパ、シンガポールのベンチャーキャピタルから400万ドルを調達するほか、ヨーロッパの大手家禽会社PHWグループと提携している。
また、イスラム教では豚肉食が禁止されているが、これは人工肉にも適用されるのか議論がされている。
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文=野口 直希 写真提供=インポッシブル・フーズ
https://forbesjapan.com/articles/detail/25565/2/1/1#
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