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ウーバーイーツ配送員、“自由な働き方”の危険な内実…事故時も労災下りずバイト以下?
https://biz-journal.jp/2019/02/post_26774.html
2019.02.24 文=A4studio Business Journal
Uber Eatsの配達員(写真:AFP/アフロ)
街中で、黒や緑の四角いバッグを背負いながら自転車を走らせている人々を見かけたことはないだろうか。そう、彼らは食事のデリバリーサービスを行う「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の“配達パートナー”だ。
Uber Eatsは、スマートフォンを使った配車サービスを手がけるアメリカ企業のUberが2015年12月に展開を始め、翌16年9月には日本にも上陸。東京を皮切りに、サービスの提供エリアは日に日に拡張されている。
そんなUber Eatsは、空き時間を有効活用した新しい副業としても注目度が高い。サービスを支えているのは、配達パートナーに登録している一般人たちであり、彼らは配達を1回こなすごとに数百円の報酬を受け取っている。完全出来高制なので時給は発生しないが、一日中フル稼働すれば1万円を超える稼ぎも不可能ではないようだ。
一方、インターネット上では次のような事例も報告されている。注文の品を飲食店へとピックアップに向かっていた配達パートナーが、タクシーと衝突して転倒。手首を骨折するケガを負ったものの、労災保険は下りなかったというのである。
なぜなら、配達パートナーはUber Eatsに業務委託されている“個人事業主”という扱いだからだ。この仕組みを知っている人にとっては当たり前の話ではあるのだが、Uber Eatsの掲げる“自由な働き方”という謳い文句ばかりに気を取られ、アルバイト感覚で配達パートナーに登録してしまった人は、有事の際に後悔することになるだろう。
そこで今回は、どのような雇用形態だと労災保険が認められないのかという点を、Uber Eatsに絡めながら確認していきたい。
■Uber Eatsで自動適用される保険だけでは補償に限界がある
まず、前述した事例のように、Uber Eatsと労災保険をめぐるトラブルはどれくらい報告されているのだろうか。東京労働局に取材を申し込み、労働基準部労災補償課の担当者から回答を得た。
「こちらでは具体的な相談の記録や統計を取っておらず、Uber Eatsの実態についてはわかりかねる部分があります。しかし、Uber Eatsの配達パートナーは業務委託の契約を結んだ個人事業主ですので、労災保険が認められないというのは確かです。また、労働者を雇わずに自分と家族だけで事業を行っている、いわゆる“一人親方”の場合も労災保険の対象外となります」(東京労働局労働基準部労災補償課)
続いて、会社員のキャリアプランやライフプラン相談などの分野で活躍している、ファイナンシャルプランナーの杉浦詔子氏にも話を聞いた。そもそも、労災保険に加入できる人とできない人とでは、何が違うのか。
「労災保険は、会社が正社員やアルバイトをひとりでも雇うときには加入が義務づけられているものです。Uber Eatsの配達パートナーは、登録者が自分の好きな時間に働くという契約になっており、Uber Eatsがその人を雇っているのではないため、その人は労災保険に加入ができません。Uber Eatsで働く際は個人事業主扱いとなり、正社員やアルバイトといった一般的な雇用形態とは異なるということです。
なお、配達パートナーにはUber Eatsの“自転車向け保険”が自動的に適用されるため、一応のフォロー体制はあるのですが、肝心の補償内容は対人賠償と対物賠償のみ。交通事故で自分がケガしてしまったときは補償されないので、個人事業主が加入している国民健康保険に頼ることになるでしょう。ただ、労災保険であれば治療費を全額負担してくれるのに対し、国民健康保険の場合は、3割が自己負担になってしまうということは覚えておかなければいけません。
そしてもちろん、自分のケガを補償してくれる個人向けの自転車保険に加入し、Uber Eatsの保険の穴をカバーするという方法もあります。しかし、Uber Eatsで収入を得ている人が、毎月数千円かかる自転車保険に入るかというと、メリットが少ないと考え加入していない方が多いのではないでしょうか。Uber Eatsを、あくまでもお小遣い稼ぎの副業と割り切っている人にとっては、なおさらです」(杉浦氏)
■労災の特別加入制度、原付自転車は対象なのに自転車は対象外?
杉浦氏いわく、個人事業主でも労災保険に“特別加入”できる条件があるとのことだが、残念ながらUber Eatsの配達パートナーには当てはまらないのだという。
「労働者を雇っていない個人事業主でも、建設業や林業の“一人親方”や、漁船による自営漁業者などは、特例として労災保険に入ることができます。Uber Eatsに近い区分ですと、個人タクシー業者や個人貨物運送業者といった、“自動車を使用して行う旅客または貨物を運送する事業”も特別加入の範囲内。13年4月1日から原動機付自転車(=総排気量125cc以下のバイク)の使用も認められるようになったものの、通常の自転車での運送に関しては、現在の労災保険の特別加入の範囲にはありません。
郵便局の配達や寿司やそばの出前など、Uber Eats以外にも自転車での配達サービスを行っているところはありますが、その配達員たちが仮に事故を起こしても、彼らは会社に雇われているので労災保険が下ります。だからこそ今まで、自転車と労災保険との関係はあまり大きな問題にならなかったのでしょう。もともとUberは、自転車で配達するとどうなるのかをどこまで想定していたのか、気になるところですね。
もっとも、Uber Eatsのような自転車を使った事業が次第に増えていけば、行政も特別加入者の範囲を広げざるを得なくなるはずです。ただ、Uber Eatsに、副業として取り組んでいる人が多い今のままでは、状況は何も変わらないのではないでしょうか。
建設業は昔から個人事業主が多いので、17年度末の時点で実際に労災保険に特別加入している人は55万6634名います。一方、個人タクシー業者及び個人貨物運送業者の特別加入者は9311名にとどまっており、このような新しい分野であればあるほど、特別加入という制度の存在自体がまだまだ周知されていない感は否めません」(同)
ほかにどういった職種だと労災保険に加入できないのかという代表的な例として、杉浦氏は「YouTuber」を挙げる。恐らく、労災保険そのものが、YouTuberのような現代ならではの職種に対応できるような制度にはなっておらず、それはUber Eatsに関しても同じことがいえるのだろう。現在の補償内容に不満を抱いている配達パートナーたちが声を上げない限り、彼らは労災保険とは無縁な日々を送り続けるのかもしれない。
(文=A4studio)
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