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日本でもついに明らかになった医師への謝礼金詳細
製薬企業との癒着を避けるためにボランティア医師たちが徹底調査
2019.2.19(火) 齋藤 宏章
人工気管移植手術に関する論文、英医学誌が撤回 大半の患者が死亡
スウェーデン・ストックホルムで、世界初の人工気管移植を行うパオロ・マキアリーニ医師(中央、2011年6月9日撮影、同年7月7日公表、資料写真)。(c)AFP PHOTO/KAROLINSKA UNIVERSITY HOSPITAL〔AFPBB News〕
論文を米国医師会の医学誌に掲載
私は宮城県仙台市仙台厚生病院で消化器内科医として勤務しています。医師としては今年で満4年目です。
今回、製薬企業が日本の医学会理事にどのくらいの謝礼金などの支払いをしているか私たちがまとめた論文が米国医師会の医学誌に2019年2月4日に掲載されました。
日本の主要な19の医学会の理事に、2016年に製薬企業から個人的な謝礼金などの名目で支払われた金額を調べた結果、9割近い理事が金額を受け取っており、合計で7億2000万円に上っていた、という内容です。
なぜ、一介の医師である私が今回の論文作成を行おうと考えたのか、そしてその反響はどうだったのかをお伝えしましょう。
論文の原文はこちら:
「Pharmaceutical Company Payments to Executive Board Members of Professional Medical Associations in Japan」
掲載誌:JAMA Internal Medicine
(https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2723072)
なぜ製薬企業が医師に支払う謝礼金研究に取り組んだか
私は2018年の4月頃から今回の取り組みに参加しました。
2018年初頭から、ジャーナリズムNGOのワセダクロニクルが、製薬企業から日本の医師に支払われた金額について、ウエブ上で検索を行えるようなデータベースの作成を進めていました。
すでにプロジェクトに参加している医療ガバナンス研究所の尾崎章彦医師に「データベースを元に医師への金額をまとめて論文として発信しよう」とお誘いを受けました。
私は医師4年目ですが、医師であれば論文を書いたり、学会で発表を行ったりする際に企業との関わりを開示する(利益相反の開示)ことは必要であるということは知っています。
一方で、そのこと自体を研究する意味とは何だろうと考えました。
諸外国の事情を調べると、製薬企業と医師の関係性の透明化という点で、日本が大きく遅れを取っていることに気づきました。
米国では「Sunshine Act」法という法律の下に、2013年から製薬企業などの医療関連の企業は医師個人に支払っている金額を報告することが義務化されています。
報告された金額は1つのデータベースにまとめられ、データベースに医師の名前を入れて検索するだけで、医師一人ひとりが年間いくら企業からお金をもらっているかを簡単に調べることができます。
驚くべきことは、こうしたデータベースを用いて実際に医師がどのくらいの金額をもらっているのか、分析した論文が医師会の出版している医学雑誌から年間にいくつも出版されていることです。
例えば2016年には癌のガイドラインの著者がどのくらいの金額を受け取っていたか分析した論文が掲載されました。
著者125人中105人が金銭を受け取り、平均して108万円の受け取りがあったと報告されています。医師自らが医学会の医師の動向を分析しているわけです。
翻って日本はどうでしょう。何も分かりません。なぜならばデータベースが存在しないからです。私はデータベースの作成に協力し、論文の執筆に取りかかることとしました。
製薬企業と医師の関係と聞くと、私には医学生時代の臨床研究不正の報道の記憶が呼び起こされます。
私が在学中の2014年には母校である東京大学医学部の進めていた「J-ADNI」研究のデータ改竄疑惑の報道、慢性骨髄性白血病治療薬の臨床研究の「SIGN研究」で開発元であるノバルティスが不適切な形で研究に関わった疑惑などが報じられました。
東京大学の臨床研究と製薬企業との関係性に疑惑が浮上していました。
製薬会社が開発した薬剤の研究結果を有利にしようと関与したのではないかという疑惑が浮かんだわけです。
その当時、医学部6年生であった私の同期の岡崎幸治を中心とした、5人の東大医学部生は連名で、大学の総長、医学部長、病院長に事態の説明を求める公開質問状を提出しました。
質問状を提出するという記者会見は夜7時のNHKのニュースでも報道され、世間にも大きく注目されました。
私も共に連名しました。最終的には学内で臨床研究について考える会という会合が開催され、学生に対する説明が行われました。
学生時代のこのエピソードは、医師と製薬企業の関係性の透明化が、研究や社会的にも重要な意味を持つという強烈な印象を与えました。
ワセダクロニクルという組織
今回の研究で新鮮であったのは、ジャーナリストという異職種と共に活動を進めたことです。ワセダクロニクルというジャーナリズムNGOは元朝日新聞記者の渡辺周さんを中心に有志で組織された団体です。
既存の団体からの影響を排除するために活動は原則寄付、活動するスタッフは、普段は他の職業や学生を、時間を見つけて手弁当で調査を行うという利益度外視の志で活動しています。
データベースの作成には製薬会社各社から集めた、30万件を超えるデータを整理する気の遠くなるような作業が必要でしたが、少ない人数でやり遂げていました。
誤表記の修正、追加のデータの入力、統合など多くの作業時間をかけた結果、データベースは2019年1月15日にワセダクロニクルのホームページ上で公開されています。
(http://db.wasedachronicle.org)
論文に関するデータ整理も相当量の作業量となりましたが、この志に応えなければならないと、ワセダクロニクルの方々の活動には大いに発奮されました。
今回の論文の発表はまさに、医師×ジャーナリスト、今までにない取り組みの成果です。
分析・発表を行って:周囲からの反響
さて、初めの研究ではデータベースを基に、医学会の理事が受け取っている謝礼金の金額を分析することとしました。
医学会というのは多数存在しますが、その内の「内科学会」や「外科学会」といった主要な学会はガイドラインの作成にも関わることが多く、何万人という医師が加盟しているためにとても影響力のある団体です。
そういった組織を束ねる理事は大きな影響力を与えると思われ、そこに製薬企業はどのくらいの金額を支払っているのか調べてみたかったためです。
分析を行った結果は非常に驚くべきものでした。
19学会、405人の理事のうち, 352人(86.9%)は謝金等の受け取りがあり、合計すると約7億2000万円にも上りました。
内訳として最も多かったのは講師謝礼金で約5億9000万円でした。最も多く受け取っていた理事は1年間で約1900万円の受け取りがありました。
年間に講演料だけで1000万円を超える人がいることは問題ではないだろうか?
一方で少なければ問題にならないのだろうか?
改めて、この問題は明るみにして共有するべきものだと考えました。
当初、医学会の医師に対する金銭の提供について発表することに対して恐れがなかったわけではありません。
今回の研究の対象とした学会の理事の先生方はいずれも医学会をリードする高名な先生方ばかりです。
尊敬している先生方を対象にして、発表を行うことで、同業者からの批判を浴びるのではないかという不安もありました。
一方で、そうした影響力を与える、医学会をリードする理事への金銭提供の実態を分析する研究だからこそ意義があるとも思っていました。
学生時代の活動が発信をすることを後押ししてくれました。幸いにも私の職場の仙台厚生病院の上司・同僚の先生方は私の活動を応援してくれました。環境に恵まれていたと思います。
論文が米国医師会・内科版という有名な雑誌に掲載されたことは非常に幸運でしたが、一方で日本の製薬企業から医師への支払額というテーマが国際的に非常に強い関心を集めているということを改めて実感しています。
2月4日に論文が掲載されて、そのことが報道されると、周囲からはいろいろな反響をいただきました。
「どうして研究をしたの?」「すごいね」「これはとても重要なテーマだと思います」「重要なことだとは思うけどね」
反応は様々です。しかし、予想以上に研究を応援してくれる方々が多く、非常に勇気づけられました。
論文に掲載したメールアドレスに、「with admiration(称賛と共に)」と海外の医師からも掲載を祝う連絡が届きました。
勇気を持って活動を進めることで、理解をしてくれる人の声が集まってくることは非常に嬉しいことです。
「講演や原稿料の対価として支払われているのだからいいではないか」
「最新の医療の情報を提供しているのだからいい」
「医師である以上、製薬会社からは金銭をもらうべきでない」
「金額の多さによる」・・・。
医師と製薬企業のあるべき関係については様々な議論があると思いますが、議論の土台となる現状については今回のデータベースを分析するまでは明らかにされてきませんでした。
データベースを構築し、分析することによって初めて現状が明らかになり、そのことによってそもそもの問題の認知も広まるのではないかと考えています。
私たちはこれからも研究を続けていく予定です。また、多くの人にデータベースを活用してもらうことで「医師と製薬企業の関係」という今後の議論につなげられればと考えています。
最後に寄付のお願いです。
今回私たちと共同でデータベースを構築したジャーナリズムNGOのワセダクロニクルの活動は寄付で賄われています。
データベースの構築には途方もない時間と労力が割かれました。来年以降もこのような情報公開を続けていくために、是非皆様のご協力をお願い致します。
ご協力いただける方は下記のURLを参照ください。
http://www.wasedachronicle.org/donate/
論文の概要
製薬協が定めた「透明性ガイドライン」に従い、製薬企業は1年間に医療従事者・医療機関に提供した金額を公表しています。
2016年度に各社から医師個人に支払われた金額を集計し、このうち、日本の主要な19の医学会の理事に提供された金額を解析しました。
405人の理事のうち、352人(86.9%)は謝金等の受け取りがありました(計7億2000万円)(注1)。
最も多かったのは講師謝礼金で約5億9000万円でした。理事間に金額の多寡がみられ、上位約10%(40人)の医師が全体の45.8%(約3億3000万円)を受け取っていました。
最も多く受け取っていた理事は1年間で約1900万円の受け取りがありました。
学会別にみると日本内科学会が最も多く(約1億5000万円)、日本泌尿器科学会(約1億円)、日本皮膚科学会(約8000万円)が続きました。
論文では学会はこうした金額については公に発表していないこと、これまでに医学会の理事職は企業・産業からの金銭授受はない方がいいと議論されていることに言及しています。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55517
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