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戦後最長景気の先には日本経済破綻の「崖っぷち」が迫っている
https://diamond.jp/articles/-/194321
2019.2.19 金子 勝:立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教 ダイヤモンド・オンライン
Photo:PIXTA
1月に景気拡大が「戦後最長」になったといわれるが、競争力の低下や格差拡大など、日本経済の病巣は、アベノミクスのもとでむしろ深刻化した。
毎月勤労統計の不正調査による“賃金かさ上げ”が起きたのも、政権が「アベノミクスの失敗」を認識せざるを得なかったひとつの転機だったからだろう。
2017年秋に、安倍首相は経団連に「3%賃上げ」を要請したのを踏まえ、2018年1月16日、「働き方改革実現会議」で、「アベノミクスの好循環を継続させるカギは、来年の賃上げだ」と語った。
異次元緩和による「円安・株高政策」で、大手輸出企業などは高収益を謳歌したが、消費などの内需は盛り上がらない状況に、政府が2014年から経済界に賃上げを呼び掛ける「官製春闘」が始まった。
だが、賃上げの裾野は広がらず、2018年は、首相自らが「3%」の目標を掲げるほど前のめりだった。
1月29日には、政権が同様に力を入れてきた「働き方改革」関連法案の審議で、首相は、国会で裁量労働制は一般の労働者より労働時間が短くなるとの答弁を行った。
だが、その後、首相が根拠にした裁量労働制の調査データは「不適切調査」で作り上げられたものだったことがわかる。
毎月勤労統計のサンプル一部入れ替えとデータの補正が始まったのもこの頃だ。
そして首相が「3選」を目指した自民党総裁選。対抗馬だった石破茂・元幹事長によるアベノミクス批判が強まる中、総裁選の1ヵ月前の8月7日に、6月の賃金指数が「3.3%」に跳ね上がった。
外部の識者らによる調査で、「意図的な賃金かさ上げ」や「組織的関与」はない、とされたが、その後、厚労省幹部が聞き取りを行い、調査報告の原案を厚労省が作るなどの「お手盛り」が発覚、調査はやり直しになった。
そして今、「戦後最長の景気」の記事が踊る。
アベノミクスの失敗は、政府統計を操作してごまかさなければならないところまできてしまったと言った方がよいだろう。
だが問題は、賃金が上がらず、企業や富裕層が豊かになれば滴が落ちるように、普通の人々の所得が増えるという「トリクルダウン」が起きていないことだけにあるのではない。
日本経済全体が、奈落の底に落ちかねない「2つの崖」に向かって突き進んでいる状況なのだ。
マイナス金利のカラクリ
財政赤字を付け替え
そのひとつは、アベノミクスを推進してきた日本銀行の「バブル経営」とその破綻である。
日銀は大量に国債・株・不動産信託を購入して、カネ余り状態をもたらし、“バブル”を作り出そうとしている。
だがこの実態は、日銀による国債引き受けであり、財政赤字の“粉飾”である。
そのカラクリは、マイナス金利政策に隠されている。
日銀は、銀行に貸し出し増を促すとして、2016年2月以降、銀行などが日銀に口座を持っている日銀当座預金を、<基礎残高><マクロ加算残高><政策金利残高>に分け、<政策金利残高>から手数料をとるマイナス金利政策を導入した。
だが、実際には、日銀は3者の基準比率を操作し、経営の苦しい銀行や、メガバンクなど大手銀行にはマイナス金利はほとんど適用していない。
したがって大手銀行は、融資を無理に増やすよりは、0.1%の付利がつく当座預金を着実に積み上げている。
では、マイナス金利政策はどこに適用されているのか。
10年債以下の中短期の国債において適用されている。日銀は中短期債を額面より高い価格で買い取っているのである。
これらの国債は満期になると、購入価格より低い価格で償還されるので、日銀にとっては「赤字」になる。
たとえば、2019年1月20日の日銀営業毎旬報告では、日銀が保有する国債は465兆7558億円で、そのうち国庫短期証券を除いた国債保有高は457兆8448億円になる。これは買った時の価額で、いわゆる簿価である。
これに対して、同年1月18日における日銀の銘柄別保有残高は約445兆円9137億円である。つまり、簿価の方が額面価額より、およそ12兆円多くなっている。一体、これは何を意味するか。
日銀が10年債以下の国債をマイナス金利(つまり額面より高い価額)で購入しているために、これらの国債が償還になると、約12兆円の赤字が出ることになる。
つまり、これは、本来なら政府が返さなければならない財政赤字になる金額を、日銀が意図的に国債を高く買うことで、政府の財政赤字を日銀に付け替えているのと同じである。
政府は、2019年度予算案で、新規国債発行額が7年連続で減少し、アベノミクスのもとで財政赤字が減少したと喧伝するが、一種の「粉飾会計」によって、政府の財政赤字を小さく見せているのである。
日銀の「バブル経営」が
リスクを作っている
一方で、日銀は銀行が預けている当座預金には金利(0.1%の付利)を支払わねばならない。それは事実上の「債務」となる。
つまり額面を上回る価格での国債購入や当座預金への付利で、毎年度の収支で赤字になり、それがバランスシート上でも債務が増える構造だ。
この債務を見かけ上、減らすために、日銀は当座預金の増加に対応してETF(株価連動の投資信託)を大量に購入し、株価をつり上げている。
日銀の持つETFは、日経平均株価が2万4000円を超えた2018年9月段階で、簿価では21兆7590億円だが、時価ベースでは28兆9636億円になっており、含み益が7兆2045億円にも上っていた。
銀行が国債離れをして国債買い取り額が縮小しても、日銀には銀行からの当座預金が増え続ける。その預かり金でETFを買って株価をつり上げれば、株価上昇の「含み益」でバランスシート上では黒字になるのだ。
つまり、日銀自身が、いびつな「信用創造」を使って株価をつり上げており、非常にもろい「含み益」経営に陥っているのである。
実際、この日銀の「バブル経営」は極めてもろい。
世界中で景気後退の兆候が強まっている中で、米中貿易戦争やイギリスの「合意なきEU離脱」、今は表面的には収まっているかに見えるイタリア財政危機など、株式や債券などの金融市場が一気に不安定化する引き金になる状況があるからだ。
また国内では、2018年下期の不動産取引額が前年同期に比べ34%減った。
主に、海外投資家が東京オリンピック前に、投資不動産を売り抜けていくとの予想が現実化しつつあり、国内の不動産バブル崩壊のリスクもひたひたと迫ってきている。
長く超低金利政策が続いて追い込まれた銀行、とりわけ地方銀行は貸付利息収入が極端に縮小しており、収益を得るため、不動産融資に傾斜しているところも少なくない。
また、ハイリスク・ハイリターンの米国企業向けのレバレッジドローンを大量に貸し込んでいるところもある。日銀が金融機関を追い込んでいる状況だ。
公表されていないので正確ではないが、日銀自身がETFを買い続けているので、おそらく平均株価が1万8000円を割り込めば、損失を出すだろう。
リーマンショックの時と違うのは、もし金融危機が起きた場合、アベノミクスで膨れ上がった日銀が保有する国債やETFなどの資産が巨大な損失に化けてしまい、最後の貸し手である中央銀行自身が、事実上の「債務超過」に陥る危険性が高いことだ。
しかも、極端な異次元緩和策を続けてきた結果、政策金利誘導や準備率操作といった従来の政策手段を使い切り、量的緩和策すらもこれ以上は難しくなってきている。
いざ金融危機や激しい対外ショックが起きた段階で、日銀は、金融市場の機能だけでなく、中央銀行としての本来の政策基盤を自ら壊してしまったことが露呈する。
貿易赤字が「定着」
近づく財政危機
もうひとつの「崖」っぷちは、貿易赤字と財政赤字の問題だ。
日本の貿易収支は、リーマンショックで円高に振れて赤字になった後、為替レートが元に戻ったのに、貿易黒字は大きく減少している。
リーマンショック直前の2007年の貿易黒字は約14兆円だった。2016〜17年に再び黒字になったが、その額は約5兆円で、かつての3分の1程度にとどまった。
そして2018年には、米中貿易戦争の影響もあって、再び1兆2000億円の貿易赤字(速報値)に転落した。
かつて高い世界シェアを誇っていたスーパーコンピューター、半導体、液晶製品、携帯音楽プレーヤーなど見る影もなく、逆に、スマートフォンなど通信機器や医薬品などの輸入が増えている。
対米貿易黒字の大半は自動車で、それも数量ベースでは増えておらず、円安によって見かけの売り上げや利益が増えているだけだ。対中輸出は、工作機械や部品などの中間財が中心で、中国の産業の動向に依存している。
日本の産業衰退は1986年の日米半導体協定以降に始まったが、アベノミクスのもとでも、産業の衰退を食い止めるための、正しい処方はされてこなかった。
原発推進やリニア新幹線、東京オリンピック・大阪万博の大規模公共事業とカジノといった時代遅れの「成長戦略」をとり、また「新自由主義」に従っていくら規制緩和を行ったところで、新しい産業は生まれない。
それどころか、これでは産業の衰退をますます深刻化させる。
今やなけなしの自動車も、春から本格化する実質上の日米FTA交渉で、輸出制限や高関税賦課などのターゲットになりかねない情勢だ。
世界で起きている電気自動車(EV)転換に立ち遅れれば、石油などの化石燃料輸入を大幅に減らすエネルギー転換でもなければ、日本は2020年代半ば以降に大幅な貿易赤字が定着していく危険性がある。
もちろん、海外投資の収益である所得収支が大幅に増えていけば、貿易赤字を穴埋めして経常収支の黒字を保つことができる。実際に、資金が国内投資に向かわず、海外投資が増える中で、所得収支が着実に伸びてきたことは確かだ。
しかし、高齢化と産業衰退が続けば、伸びも鈍化していくだろう。
また日本は世界の金融センターでなく、日本の金融機関が金融技術で優れているわけでもないので、金融業自体が自律的に稼ぐ力も欠けている。
貿易赤字が定着した場合、それを補って所得収支が増加するかはわからない。
今後、民間貯蓄がピークアウトする中、産業衰退で貿易赤字が定着し、所得収支の黒字幅が縮小すれば、いずれ国内で財政赤字をファイナンスできなくなる可能性が出てくる。
これだけ国債が累積すると、膨大な借換債の発行が続くだろう。巨額の財政赤字をカバーするほどに所得収支が増加するのかどうかは、見えない状況だ。
とくに、対外ショックや深刻な不況に陥った時には、政府赤字が増え、貿易赤字が拡大し、所得収支も縮小することになる。そして、国内で国債が消化できなくなる時、本当の財政危機に直面する。
外国人投資家が持つ国債の割合が増え、日本国債の格付けを下げられれば、財政危機が現実化していく。
目先の景気より
危機回避の政策に切り替えろ
成長第一を掲げるアベノミクスだが、目先の景気を追いかけるだけの今の政策では、むしろ先に見た危機の到来を促し、「崖」が近づくだけである。
何より危機を回避するための経済政策を優先しなければならない。
まず、急務なのは、日銀による赤字財政ファイナンスの正常化を図ることだ。
今の政策を続けていけば、国債残高の累積によって、借換債が巨額に膨らんで国債消化を一層困難にする。
だが、これひとつを考えても、困難を極めるものになるだろう。 性急に「出口」を求めて、日銀による国債と株の買い入れをやめれば、国債価格や株価が暴落して、たちまち財政金融は破綻してしまう。今となっては、ゆっくりとした出口政策しかあり得ない。
国債購入額は徐々に減らし始めてはいるが、買い入れる国債も、満期の近い期近ものに変えていくことで、日銀資産の縮小を徐々に図っていくしかない。
次に、金利を少しずつ引き上げていく際には、借換債の金利も上昇する可能性が高い。その状況に陥りそうになった場合には、借換債については特別勘定を設け、超長期債に入れ替えて、そこに事実上「凍結」するしかなくなる。
この特別勘定は「安倍黒田勘定」と名付けて「負の遺産」として将来世代に引き継ぎながら長期にわたって返済していくしかないだろう。
本来の筋道は、防衛費や公共事業費に偏った歳出の見直しと、環境税や法人税の増税などで、プライマリーバランスを早期に回復し、財政の持続可能性を高めるのが先決なのだが、安倍首相がそのことの重要性を認識しているかは心もとない。
さんざん「リーマンショック並みの危機」と偽って目先を追いかけて消費税を延期してきたが、今年10月に予定される消費増税について、早くも「3度目の先送り」の声も聞こえる。
だが、今に至って、首相が「延期」を考えているなら、財政再建を放棄するに等しくなる。愚かという他にない。
「地域分散ネットワーク型」への転換で
裾野の広い内需を作る
根本的な危機回避策は、地域経済の疲弊を克服し、裾野の広い内需を作り上げる政策である。
リーマンショックの際に、日本の金融機関は、サブプライムローン絡みの証券化商品をほとんど買っていなかったにもかかわらず、日本は先進諸国の中で実体経済の落ち込みが最も大きかった。
円安による輸出依存と株高に依存するもろい経済体質が露呈したからだ。
だが、次もまた同じことが起こり得る。
そのためには、地域の産業と雇用を生み出し、内需を厚くすることである。
コンピューター技術の発展の方向性に従がって、「集中メインフレーム型」から「地域分散ネットワーク型」のシステムへ産業と社会を変えていかなければならない。
原発をはじめ「集中メインフレーム型」といえる20世紀型の仕組みは、同じモノを大量生産し大量消費することで成り立つ。大規模化を追求するので、人口が増え、所得や雇用が増え、作っているモノに国際競争力がないと成り立たない。
しかし、今の日本はこれらの条件が失われつつある。
むしろ「集中メインフレーム型」の旧来型産業を守ろうとすればするほど、かえって地域から日本経済は壊れていくのである。
一つひとつは小規模で分散していても、IoTやICTの情報通信技術を基盤に連携する「地域分散ネットワーク型」への移行が求められている。
まずは、効果の薄い大規模公共事業に代えて、小規模な地域の再生可能エネルギーを中心に据えるエネルギー転換を促すさまざまな事業や、発送電分離などの電力改革が行われるべきだ。
さらに社会保障・社会福祉制度も「地域分散ネットワーク型」のシステムへ移行する。現状の制度を前提にして、財政事情を理由に現金給付をひたすら縮小するだけでは安心は得られない。
国の財源と権限を地方に譲り、医療・介護・保育・教育といった現物サービスを地域できめ細かく対応できるようにしていくことが必要である。
そして、もうひとつの危機回避の根本策は、情報通信、バイオ医薬、エネルギー転換といった先端分野で、いかに衰退から成長へ反転させるかの産業戦略だ。
今の日本は、個人や地域の間で広がった格差を是正すると同時に、新しい産業構造への転換を達成しなければならない難しい局面にまできてしまっている。
目先の景気をもたせるために、ジャブジャブの金融緩和で、日本を思考停止に陥らせたアベノミクスの罪は重い。
(立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授 金子 勝)
ダイヤモンド・オンラインに「戦後最長景気の先には日本経済破綻の『崖っぷち』が迫っている」を書きました。統計改ざんによって粉飾された「戦後最長景気」の裏で進行する日本経済のリスクについて論じています。ご一読下されば幸いです。https://t.co/vXvDoFJS3b
— 金子勝 (@masaru_kaneko) 2019年2月18日
適切な主張だと思います。経済学の示す所「ただ飯はなく(There is no free lunch.)」、アベノミクスの異次元の緩和は当然コストとリスクを伴い、だからこそ当初2年と限定されていたのがいつの間にやらもう6年、膨れ上がったコストとリスクに目を向けるべき時だと思います。https://t.co/6grKnK2J54
— 米山 隆一 (@RyuichiYoneyama) 2019年2月19日
戦後最長景気の先には日本経済破綻の「崖っぷち」が迫っている https://t.co/SXYdVZlwOC『金子勝氏の発言は至極まともなこと。日銀の黒田さんはやはりやり過ぎている。問題は日本の基礎体力が落ちていることなんじゃないか。』
— ハマのぎーちゃん (@ishihara_g) 2019年2月19日
野党の前には、経済政策について2つの選択肢があります。さらに金融緩和と財政出動を大加速する「岩田規久男・藤井聡・松尾匡」路線。金融緩和と財政出動を徐々に抑制していく「野口悠紀雄・金子勝・明石順平」路線。細部はさておき、松尾インタビューと読み比べてください。 https://t.co/NhHguKIu7y
— 田中 信一郎 (@TanakaShinsyu) 2019年2月19日
「目先の景気をもたせるために、ジャブジャブの金融緩和で、日本を思考停止に陥らせたアベノミクスの罪は重い。」
— akisuke088 (@akisuke088) 2019年2月19日
戦後最長景気の先には日本経済破綻の「崖っぷち」が迫っている(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース https://t.co/pkO0TdkkQn @YahooNewsTopics
原発をはじめ「集中メインフレーム型」といえる20世紀型の仕組みは、同じモノを大量生産し大量消費することで成り立つ。大規模化を追求するので、人口が増え、所得や雇用が増え、作っているモノに国際競争力がないと成り立たない、と金子勝先生。#安倍政権不用https://t.co/3P1Ykyi99G
— Nil admirari (@Niladmirari9) 2019年2月18日
すごいなー。いろいろ書いてるけど結局は金融経済発想から一歩も出ないし緊縮財政だし、政権批判してるようでいて実は同路線。
— 平松禎史 (@Hiramatz) 2019年2月19日
どうしたら地方産業を活性化させられるのか。貯め込んだお金を使えば良いのに、それだけは書かないんだよな。だから20年間堂々巡りなのに。
https://t.co/0MnOUqfCAS
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