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2019/02/18 05:00
記者の眼
AIは貴重な「社内人材」、先行投資を惜しむな
田中 陽菜=日経 xTECH/日経コンピュータ
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「本日入社いたしました、AIの××と申します。▲▲社製で、自然言語処理を得意としています。どうぞ宜しくお願いします」――。
4月まであと1カ月半。新入社員を迎える準備を始めた企業も多いだろう。
新入社員のうち一部が人工知能(AI)になる。企業は人間に加え、AIも採用するようになる。そんな光景が当たり前になる日も遠くない、と私は考えている。
AIへの投資は「先行投資」
AI投資は数年〜十数年先を見据えた先行投資だと、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は強調している。「AIは乗り物、医薬品、健康、建設、不動産、ありとあらゆる産業を再定義していく」。孫氏は2019年2月6日の決算説明会の場でこのように話した。「ニューヨーク5番街は2035年にはAIによる自動運転車だらけになる」との予測も示した。
ソフトバンクグループの決算発表会で登壇した孫正義会長兼社長
[画像のクリックで拡大表示]
孫氏は「AI革命は必ず起こる」というビジョンの下、世界中の企業に投資している。サウジアラビアの政府系ファンドなどと組んで設立した10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)を通じて投資した企業は70社を超え、「ほとんどがAIに強く関わっている会社、ユニコーンだ」(孫氏)と述べた。
孫氏の巨額な投資の根幹には、「AIによる情報革命が起きる」という信念がある。孫氏はAIの可能性を信じて、AI技術を持つ企業に先行投資をしているのである。
こうしたAIへの投資の考え方は、孫氏が手掛けている巨額かつグローバルな投資だけでなく、個々の企業によるAIシステムへの投資にも当てはまる。投資から数年または10数年を経て、大きなリターンを企業にもたらす。その点で、AIシステムへの投資は新入社員の採用に似ている。
私はこれまで企業のAI導入について取材を重ねる中で、AIが製造や交通、医療など様々な分野で活用されるのはほぼ間違いない、と考えるようになった。
取材で触れたAIシステムは、いずれも企業の「貴重な社内人材」だった。過去のデータを学習・分析することで社員の意思決定を助けたり、社員の代わりに顧客の疑問に答えたりできる。
社員のダイバーシティー(多様性)が重視される時代になったが、性別や年齢、国籍など人間の多様性に加え、今後はAIのような人間以外の「人材」を含めた多様性が求められそうだ。人手不足の中、人間の人材はなかなか確保しづらい。人間の女性やシニアだけでなく、AIも企業の救世主になり得る。
部門長などの管理職はAIの「上司」として、部下だけでなくAIをマネジメントする必要が出てくるだろう。AIをうまく使いこなし、もしくはAIを使いこなせるように部下を教育し、人間に任せる仕事とAIに任せる仕事をうまく判別して、全体としてのパフォーマンスを上げる。そんなマネジメントが求められる。
新入社員の採用と同じく、「どのAIを採用するのか」は慎重に見定めなければならない。人間と同じで、AIもそれぞれ「個人差」がある。
入社したAIへの教育方法も重要だ。企業がAIに過去のデータを学習させて精度を高めたり、運用の体制を整えたりしているのは、新しく入社した社員に仕事のやり方を教えるのと似た構造だ。
AIを導入したばかりの段階で「AIの予測精度が人間よりも低い」「業務には使えない」と言うのは、新入社員に「どうしてベテランと同じ働きができないのか」と言うようなものである。AIも入社したてのうちは、分からないことだらけだ。根気よく適切に学習させれば、そのうち仕事をこなしていけるようになる。
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AI社員が担っている2つの役割
AI社員が担っている2つの役割
私が企業への取材を通して知ったAIの役割は、大きく2つに分けられる。
1つは「人間の意思決定を補助するAI」だ。最終的な判断は人間が下すが、AIは過去のデータや他の企業のデータを情報収集して分析して提案する。さしずめ、データ分析を得意とする有能な部下といったところだろうか。例えばアサヒビールや江崎グリコなどは過剰在庫の削減を目指して、生産計画の調整などにAIを活用している。需要予測にAIを使うアサヒビールの担当者は「AIはチームメンバーの1人」と話す。
もう1つは「人の代わりに人の相手をするAI」。チャットボットやAIを搭載したロボットなどがこれにあたる。接客やサポートデスクなどの役割を果たす。社内のシステム関連の問い合わせなどに答えたり、企業が利用者の疑問に答えたり自社サービスを紹介したりするのに活用する。
こうしたAIは、顧客や利用者と企業をつなぐインターフェースを担うため、AIに「コミュニケーション能力」を身に付けさせなければならない。AIが利用者に失礼なことを言ってしまえば、企業イメージの低下につながる可能性があるからだ。
人間とAI、どう使い分ける
組織の管理職が人間の社員とAI社員をうまく使い分けるには、人間が得意なこと、AIが得意なことを正しく知り、業務を振り分ける必要がある。
AIの主な長所を挙げると、休む必要がないこと、パフォーマンスに波がないことなどだ。チャットボットの活用で言えば、メンテナンス時を除けば24時間365日、顧客に対応できる。
人間はそうはいかない。睡眠も取らなければいけないし、パフォーマンスもAIに比べれば波があり、疲れがたまれば効率は落ちてくる。コンスタントに業務をこなしてくれる点では、AIのほうが人間よりも優れている。
一方、少なくとも現時点では人間のほうがAIより優れている部分もある。野村総合研究所(NRI)の上田恵陶奈上級コンサルタントによると、「創造的思考」や「コミュニケーション能力」が求められ、「非定型」である仕事は、現時点では人間のほうがAIよりも優位性があるという。これは野村総合研究所と英オックスフォード大学が共同研究した結果だ。共同研究では国内の601種類の職業について、AIやロボットなどで代替される確率を試算した。
人間が備えるコミュニケーション能力は、人間の感情に訴えかける。医療の例で言えば、例えばAIは画像認識を通じ、人間の医者では見つけられないようながんを見つけることができる。ただ「患者が実際にどの治療を選択するかは、結局、患者と医者のコミュニケーションや、患者と医者の間の信頼関係に依存する」、と上田上級コンサルタントは語る。
患者に「安心感」を与えることは、まだAIにとって苦手な領域だろう。「AIが人間の表情や顔色、言葉の重みなどまで解析して総合的に最適な治療を判断できるようになるには、まだ10年から20年はかかるだろう」と上田上級コンサルタントは話す。
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もう1つ、人間と比べてAIが苦手とするのが「非定...
もう1つ、人間と比べてAIが苦手とするのが「非定型」の業務だ。単純に言えば「マニュアルがない仕事」を指す。
上田上級コンサルタントによれば、AIは「マニュアル」や「ルール」が確立した世界では威力を発揮する。囲碁などがその代表例だ。
だが、現代社会は産業構造が常に変化している。米ウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)のライドシェアサービスの登場などがその代表例だ。従来のタクシー業界の常識は覆され、産業構造や市場の概念などが変わり続けている。
AIは過去のデータに基づいて未来の状況をシミュレートし、人間の意思決定を助けることができる。だがAIにできるのは、あくまでこれまでの産業や市場の構造に基づいた判断にとどまる。産業構造そのものが高速に変化し続け、マニュアルが存在しないビジネス環境での意思決定には「AIはまだ使えない」(上田上級コンサルタント)。AIの導入を目指す企業は、こうしたAIと人間の特性を理解し、AIに任せたい仕事を特定した上で、AIを採用する必要がある。
こうした向き・不向きはあるにせよ、様々な業界の企業がソフトバンク孫氏と同じく「AI投資は将来に向けた先行投資」と考え、行動し始めているのは間違いない。当面は投資に対するリターンが見込めないことも覚悟の上で、先行してAIを取り入れて、活用のノウハウを蓄積している。「もっと実用的なAIが登場してから導入すればよい」などと油断していると、ノウハウの蓄積で後れを取り、数年後には大きな生産性の差として表れる恐れがあるだろう。
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2019/2/18 5:50日本経済新聞 電子版
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- Re: AIは貴重な「社内人材」、先行投資を惜しむな 偽ニュースも生成できるAI、詳細公表を見送り マスク氏支援の研究 うまき 2019/2/18 20:06:38
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- あなたの会社のAI度は? 経団連がチェックシート開発 AIに学生のメールやSNSを監視させて「危険」を検知するという試み うまき 2019/2/18 20:04:09
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