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未来なき再処理工場 まるで太平洋戦争末期にそっくりじゃ 中村敦夫 怒りん坊の閻魔堂会議
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2020/05/22 日刊ゲンダイ
青森県六ケ所村にある核燃料再処理工場(C)共同通信社
福島原発事故が起きた時、国のスポークスマンとして前面に立つべきは、原子力安全・保安院だった。本来は原発の安全を管轄する最高専門機関のはずじゃ。ところが、実態は体裁だけの役所で、ほとんど素人ばかりだった。記者会見をやってもシドロモドロ。上から読んでも下から読んでも「ホアンインアホ」とおちょくられたほどじゃ。
さすがにこの部局は解散となり、現在では原子力規制委員会が、安全対策を監視している。その規制委が、青森県六ケ所村の再処理工場建設を、新規制基準で合格と判定した。審査だけで6年もかかったという。
再処理工場は、原発群と並び立つ原子力産業の中核施設である。役割はこうだ。原発を動かすためにウランを燃やすと、核廃棄物が出る。再処理というのは、この廃棄物を3種類の毒物、つまり、プルトニウムとウランと高レベル放射性廃液に分離抽出する。
ここで原発マフィアたちは、夢の核燃料サイクルに飛びついた。分離したプルトニウムに細工をこらして高速増殖炉で燃やすと、巨大な電力とともに、相当量の新たなプルトニウムが生まれるという神話だ。処理工場は、この燃料を作るのが目的だったが、失敗続きで、予定の4倍の予算(3兆円)を使ってしまった。今後も、新燃料開発の成功予測は明るいとはいえない。
それどころか、使用予定の高速増殖炉「もんじゅ」も、1995年にナトリウム漏出事故があって以来、20年以上も運転中止。合計1兆円を支出してオサラバとなった。菩薩様の名前なんかつけおるから罰が当たったんじゃろ。あわててウランとプルトニウムをこねたMOX燃料を作った。しかし、使える原発が4基だけで消化しきれん。
処理工場には、別の役目もある。広い敷地を利用し、全国の原発から送られてくる核燃料廃棄物を保管することじゃ。再処理工場の建設が中止になったら、元へ戻す約束になっている。しかし、どの原発のプールも、使用済み核燃料ですでに満杯。こんなことになるのは、とうの昔にわかっておった。
状況は、太平洋戦争末期にそっくりじゃ。パールハーバー急襲の後、半年後には敗戦は明らかだった。自分たちの愚かさを隠し、責任を逃れるため、いたずらに決断を延ばし、悲劇を拡大した。
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