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1980年代のソ連は、経済が疲弊しているところにチェルノブイリ事故が起こり、
その収束に莫大な金がかかり、90年代のロシアの悲惨な国家破産につながった。
近い将来、原発事故後の日本でどんなことが起きるのかを予想する上で、
当時ロシアで起きたことを知るのは非常に有益である。
当時のロシアの状況を、経済評論家・浅井隆氏の著作から引用して現在の日本と比較しよう。
浅井氏は第二海援隊という投資コンサルティング会社を経営しており、著作は自社の宣伝も
兼ねているので、割り引いて読む必要があるが、当時のロシアを現地調査した日本人は少なく、
貴重な報告である。
以下、いくつか要点を挙げる。
(1) 通貨暴落 ハイパーインフレ 預金封鎖 通貨切り下げ
「
ご存知のように1990年から1991年にかけてソビエト連邦が崩壊した。それまでの共産党時代のむちゃくちゃな軍事費支出によって、すでにロシアの国家財政は破綻していたのだが、ソ連邦の瓦解をきっかけに国としての信用力もガタガタになっていった。これは私たち外国人から見ると「ソ連の崩壊」という出来事だったが、ロシア国内で生活していた人にとっては「国家破産」がある日突然、天から降ってきたという感じだった。
それは生易しいものではなく、常識を超えるような「スーパー国家破産」だった。まず、1991年から1993年にかけて、年率7000%にも達するというすさまじいハイパーインフレと、通貨(ルーブル)安がやってきた。物価が1年70倍になる(=お札の価値は1年で70分の1になる)という状況はちょっと想像できない。対外的な為替で言っても1年でルーブルが対米ドルで70分の1の価値(つまりルーブル安)になっていったというわけだ。
そして、1994年にはまさに青天の霹靂ともいうべき「デノミ」が強行された。このデノミがハンパでないのだ。単に通貨の呼称単位の変更ということでなく、信じがたいことだが、通貨の価値そのものを1000分の1に切り下げてしまったのである。
これがどういうことか。ロシア通貨ルーブルで話すより日本円で話したほうが想像しやすいかもしれない。たとえば1億円持っていた人が、「明日、1000分の1の10万円にするから」と宣告されたようなものだ。
1000万円なら、それが1万円に、10億円持っていても100万円になってしまうのである。これで、ほとんどの国民の生活は完全に破壊されてしまった。
(中略)
しかし、ロシア政府の負債があまりにも巨額だったため、このバブルと景気回復によっても借金問題は解決せず、1998年のロシア危機によって株価は再び暴落し、37ドル台へと落ち込んでいる。ちょうど1年で株価は15分の1になってしまったということだ。このロシア危機は対外的にはロシア国際のデフォルトということになっていたが、対内的には「預金封鎖」という形で表れ、ロシア国民の生活を襲った。正確にいうと、ロシア国内の銀行に預けていた預金はすべて国家に取り上げられ、一夜にして預金がパーとなったのである。
」 (引用元[1])
10年以上前から株価、円、国債の暴落が起きるか否か論議されてきたが、
日本の経済は行き詰まり、いよいよ雲行きが怪しくなってきた。
日本はバブル崩壊後、経済が長期低迷しているところへ原発事故が起き、巨額の収束費用に
あえいでいる。ロシアと状況がそっくりである。
未だにバブル絶頂期が忘れない評論家は、日本は世界有数の先進国だから大丈夫、ロシアとは違う、
ロシアの二の舞にはならないと主張するだろうが、ここまで景気が低迷するともはや何の説得力もない。
ジム・ロジャーズ氏のように日本の衰退を確信して、すでに撤退した投資家もいる[6]。
ハイパーインフレ、預金封鎖、通貨切り下げが実際に起きるかどうかはわからないが、
消費税の増税も予定されており、日本人の生活がこれからさらに貧しくなっていくことは確実である。
(2) 富裕層と貧困層の極端な二分化
「
国家破産の結果、ロシアでは極端な二極分化が進んだ。全人口のわずか3%程度のスーパーリッチと40%もの乞食同然の人々に分かれた。そこそこ食べていける「中流」はせいぜい10〜15%程度である。
」 ([2])
これもすでに日本で指摘されていることである。
かつては暮らしに余裕があった中流階級がどんどん凋落して、その日暮らしになりつつある。
すでに貧困で満足な食事ができない子どもがたくさんいる。
日本でも今以上に貧富の差が激しくなっていくのは確実である。
(3) 売春が増える
「
数年前の秋、初めてモスクワを訪れたときのことだ。ほとんど照明もないような暗い空港を出て、車で1時間ほどかけモスクワ市内に入った。結構寒い日だっ たが、道端に点々と若い女性が立っている。「あの人たちは?」と聞くと、通訳のガイドは、あまり話したくないといった様子で、「あそこに立っている女性は、国家破産の犠牲者です。彼女たちは財産も何もかも失いました。売るものがないので自分を売るしかないのです」と泣きそうな声で話してくれた
」 ([2])
これもすでに日本で起きている。
生活が苦しくて風俗業界に身を投じる女性が増えている。
日本の風俗産業は高度に発達しており、街頭に立って身を売る必要がないから
目立たないだけである。
(4) 自殺とくに高齢者の自殺が増える
「
国家破産が起きた国は、どの国でも「貧乏老人」が大量に生まれている。1990年代に国家破産したロシアでは、あまりにも貧困が厳しいため自殺する老人が無数に出た。特に、1995年から2000年にかけては経済が極めて混乱をきたしていたが、この時期のロシアの自殺率は40(WTO:人口10万人あたり自殺数)を超えて、世界トップレベルの自殺大国だった。現在、日本でも自殺者が年間3万人を超え、交通事故死亡者の6倍以上という極めて重大な社会問題になっているが、それでも自殺率は24.4(2009年)である。いかにロシアの自殺問題が深刻であったかがうかがえるだろう。
この時期の高齢者の自殺は特に際立って多かったが、実は現在でも高齢者の自殺率は極めて高い。75歳以上の自殺率は相変わらず40を超えており、男性に限定するとなんと86.5という、想像を絶する水準にある。1992年のソ連崩壊とそれにともなうハイパーインフレ、1994年のデノミ、1997年のアジア通貨に端を発した翌98年のロシア国債デフォルトと、度重なる経済の大混乱で生まれた極端な貧富格差によって、貧しい高齢者は政府からすらも支援の手が差し伸べられず、絶望の末に次々と自殺していった。いまだにその影響は続いており、高齢者の自殺率は高止まりしたままなのだ。
」 ([3])
経済変動の影響を一番受けるのは引退した高齢者、年金生活者である。
安心して余生を送るためにせっせと年金を払ってきたのに、給付年齢を勝手に
上げられたり、年金額をカットされてはたまらない。
インフレが起きれば、大幅に目減りしてしまう。
働かざるを得ないが職は見つからないし、若い頃のようには体も動かない。
すでに日本でも貧窮している高齢者が数えきれないほどいる。
中にはやむを得ず万引きなどの犯罪に手を出す人もいる。
これから自殺も増えていくだろう。
(5) 海外脱出者の増加
「
ほかの人から聞いた話では、ロシアの若くて美しい女性はほとんどアメリカへ行ってしまったそうだ。彼女たちはそこでアメリカ人の金持ちと結婚した。一部の若くて美しい人はいいが、おばあさんや男などはどうすればよいのか。お金がなければ海外にも行けない。国内にとどまり、いつどうなるかわからない陰惨な生活を送らざるをえないのである
」 ([2])
能力とヤル気のある若者はどんどん海外に活路を見い出している。
言葉も習慣も違う世界でやっていくのは大変だが、お先真っ暗の日本よりは
ましかも知れない。
日本でまともな生活ができないとなれば、国際結婚して日本を去る女性も増えるだろう。
(6) 治安の極端な悪化
「
現地の人々をインタビューしてみると、ほとんどの人が治安の悪化を指摘した。なかでも一番驚いたのが、物騒なので郊外の一戸建てには住めなかったという話だ。いつなんどき、暴漢に押し入られるかわからないのに、人気のない場所は危険だということらしい。一戸建てに対する恐怖感があるので、郊外では皆アパート形態で住んでいたとも聞いた。インタビューに応じてくれた女性は、「命があったので良かったけれど、それくらいひどかった」と
語っていた。
また、タクシーに関しても信じられないような話がある。ロシアでは多くの人が国家公務員だったので、国家破産によってあまたの人が仕事を失うこととなった。そこで、生活のために白タクになる人が急激に増え、それと同時に犯罪も急増したのだ。
日本とちがってロシアでは白タク、しかも乗り合いタクシーが珍しくないのだが、たまたま運転手と乗客が一対一になってしまうことがある。すると、運転手か客のどちらかが突然、強盗に変わってしまうというのだ。運転手がナイフを出して乗客に「金を出せ」と言うことも、乗客が運転手にナイフを突きつけて「金を出せ」と言うこともあった。どちらが先に強盗になるか、まさに食うか食われるかという状況である。ウソのような話だが、当時はそれほど治安が悪かったのだ。そのため、今でもロシアでは一般の人でもお金を持っている人は護衛をつけており、さらに「スーパーリッチ」と呼ばれる超大金持ちの中には銃で武装した施設警備団を身の回りに置く人も少なくない。
」 ([1])
日本でも凶悪犯罪が増えつつある。
不況で貧困が深刻になる上に人口急減で空家が増え、予算削減で警察も手薄になれば、
犯罪が増えるのは当然である。
あんなに安全で治安の良い国だったのに、と嘆く日が遠からず来るだろう。
(7) 食糧危機 飢餓
「
国家が破産状態になると、インフレが高進する。しかし、どれも一律に値段が上がるわけではない。生活や生き残りの必要度に応じて、値段の上がり方は違ってくる。食料品は生き残るうえでもっとも貴重なものとなるため、必然的に物価上昇率は高くなる。輸入食糧の場合、通貨安と供給不足が相まってどんどん値上がりするが、国内で生産される食糧は別の理由でも値上がりする。生産者が出し渋りをし、価格をつり上げていくのだ。その結果、法外な値段でしか食糧が入手できなくなるというわけだ。
」 ([3])
「
この国では夏に2〜3カ月の休暇がとれます。6,7,8月の3カ月ですが、とてもバケーションとはいえないもので、生活していくために農作業をするための休暇です。お金の代わりに"別荘"といわれる土地をもらい、そこに自分で家を作り農作業に従事するのです。(中略)夏の休暇のうちに作った食料で自給自足ができるようにします。ジャガイモはあっても生野菜はないので、トマトやきゆうりなど作りやすいものを作って瓶詰めにして、それを冬の間中食べます。購入するのはパンやバター、牛乳ぐらいで精一杯で、本当によく耐えていました。
」 ([4][5])
おそらくこれからの日本にとって、食糧不足が一番深刻な問題かも知れない。
衣と住は何とかなっても、食はどうにもならない。毎日、食べなければ生きていけない。
ロシアで食べものの値段が高騰し、餓死寸前に追い込まれた人たちを救ったのがダーチャだった。
ダーチャは郊外にある家庭菜園付きの別宅で、ロシア人の大半がもっているという。
そこで夏の間、栽培した農作物で何とか飢えをしのいだのだそうだ[7][8]。
日本にはダーチャはない。
そうでなくとも食糧の自給率は30%台、お米を除けば10%台と言われるほど海外に依存している。
ひとたび円が暴落したり超インフレが起きたら、たちまち食糧の値段が跳ね上がり、
餓死者が続出することになるだろう。
今は円が高いから何でも輸入品を買って食べられるが、いつまでもその状態は続くと思わないことだ。
国内にとどまって日本と命運をともにすると決意している人は、食糧危機に備えたほうがよいだろう。
幸い、これから人口急減で土地の値段は下落するから、ちょっとした家庭菜園ができるぐらいの
土地を買うか借りるかして、普段からいろいろ栽培しておくとよいかも知れない。
ダーチャを自分で準備するのだ。
終戦直後、日本は極端な食糧不足に見舞われ、高価な着物など家宝を農家に持っていって
泣く泣くお米や野菜と交換してもらった人が少なくなかった。
最後に生き残るのは食べ物をつくっている農家なのだ。
以上であるが、国家破産したロシアと同じ道を日本も確実にたどりつつあると言える。
これも放射能被ばくと同じで、「大丈夫、心配ない」という御用専門家の"安全デマ"を信じていると
とんでもない目にあうだろう。
どんな状況になっても生きていけるようよく考えて、普段からしっかり準備をしておくことが大切だ。
「かつてあったことは、これからもあり、
かつて起こったことは、これからも起こる。
太陽の下、新しいことは何一つない」
(旧約聖書 コヘレトの言葉/1章9節)
(関連情報)
[1] 「最後の2年」 (浅井隆・著 第二海援隊 2005)
[2] 「小泉首相が死んでも本当の事を言わない理由」 (浅井隆・著 第二海援隊 2005)
https://web.archive.org/web/20060426164501/http://www.h2.dion.ne.jp/~apo.2012/bookstand-asai0512.html
[3] 「国家破産を生き残るための12の黄金の秘策 (上)」 (浅井隆・著 第二海援隊 2013)
http://nawa-fumihito.com/library067.html
[4] 『国家破産サバイバル読本』 (浅井隆・著 第二海援隊 2003)
[5] 「ハイパー・インフレ下のロシア事情 」 (大村京佑のサイト)
[6] 「世界的資家ジム・ロジャーズ『私は日本関連資産を全て手放した』」 (週刊現代 2019/7/29)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66132
[7] 「ダーチャのある暮らし」 (めろんあーす 2011/11/29)
http://blog.livedoor.jp/cm4619/archives/1863241.html
[8] 「東海アマ: これから何が起きるのか? その3 『ソビエト連邦1991年に崩壊』、
『ソ連では崩壊後何が起きたのか?』」 (阿修羅・mainau 2013/1/15)
http://www.asyura2.com/12/genpatu29/msg/709.html
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