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震災から8年、放射線量を測定し続けIAEAも評価する市民団体の地道な努力
https://diamond.jp/articles/-/196412
2019.3.11 中谷光希 ダイヤモンド・オンライン
市民ボランティアグループ「セーフキャスト」がつくった自動放射線計測器「bガイギー」
2011年3月11日の東日本大震災で起きた福島原発事故の直後、私たちがニュースや政府の情報から得られる放射線情報には限りがあった。そんな中、自ら計測をしようと立ち上がった市民ボランティアグループがある。それが、日本在住のオランダ人ピーテル・フランケンさんらが共同創設者となって立ち上げた「セーフキャスト」だ。彼らは自分たちで計測するにとどまらず、計器を貸し出すことで計測データを集め、オンライン上で可視化できる仕組みを作りあげた。震災から8年たった今、その活動は海外にも広がっている。(ライター 中谷光希)
正確な放射線量は
自分で測らないとわからない
ダン・サイスさん(左)とピーテル・フランケンさん(右)
「20年以上日本に住んでいて、あんなに揺れたことはなかった」
2011年3月11日に起きた地震をピーテル・フランケンさんは、こう振り返る。
フランケンさんは、オランダの大学を卒業した直後の1990年から日本に住んでおり、今では日本に家族も親戚もいる。震災当初は、妻の実家の石巻の被害の状況と、小学生の娘への福島原発事故の影響が心配だった。都心に住んでいたが、自宅の線量を知りたくても、肝心の放射線計測器(ガイガーカウンター)はどこにもない。量販店ではすでに売り切れ、粗悪品がネットオークションで、10万円以上で取引されているような状態だった。
フランケンさんは友人の伊藤穣一さん(現、MITメディアラボ所長でセーフキャストの共同創設者の一人)に相談した。伊藤さんの友人で、アメリカでガイガーカウンターを取り扱っているメドコムインターナショナル社、ダン・サイス氏の協力を得て、ガイガーカウンターを数十台、送ってもらった。そのガイガーカウンターを貸し出す形で、自分たちの家の周りから計測を始めたが、その数値はニュースで知る数値よりも高いことがわかった。
「やっぱり自分たちで測ってみないと、正確な数値はわからない。それに同じ地域でも、場所や、材質によって、数値が大きく異なることが、自分たちで測ってみてわかったのです」(フランケンさん)
それだけに、気になる場所は、自分たちで計測する必要があると感じた。さらに、計測した情報を多くの必要としている人たちと共有したい。そして、こうした考えを効率的に実行できる方法を模索するようになった。
伊藤さんの幅広い人脈もさることながら、この時に大きな力になったのは、インターネットだった。
Facebookやツイッターなどで呼びかけ、世界中から、放射線の知識のある専門家や、機械に詳しい人、アプリケーション開発者、サイト制作者など、必要なブレーンが、あっという間に集まり、セーフキャストの前身となる「RDTN」が立ち上がった。
弁当箱ほどの大きさで、
素人でも簡単に計測できる「bガイギー」
初代bガイギー。車の外側に備え付けて使う。初代は大きなサイズだが、2013年に片手に納まるパスポートサイズのbガイギーナノが開発される
一方、日本在住の技術者たちは、都内にあるIT関係の発明家たちが集まる「ハッカースペース」で、自動放射線計測器「bガイギー」(bGeigie)を開発した。「b」は弁当箱のB。「ガイギー」はガイガーカウンターからとった造語だ。
bガイギーの特徴は、素人にも簡単に計測でき、効率良く、計測点数を増やせること。ウオータープルーフのケースにガイガーカウンターとGPS、メモリーカードを内蔵したbガイギーを車の窓の外側に備え付ける。スイッチをオンにして車を走らせると、5秒ごとにその位置のGPS情報と放射線情報がメモリーカードに記録される。さらに、記録されたデータをインターネット上にアップロードすると、ウェブサイトの地図に反映される。
一枚の地図を見るだけで、どの位置の放射線量がどれくらいあるのかがわかる仕組みを作ったのだ。
セーフキャストの地図。誰にでもわかりやすいように色付けして可視化されている
また、ソフト、ハード、アプリケーションの開発から、収集したデータと、すべてを無料でオープンソース、オープンデータにした。オープンにすることで、世界中の技術者から新たな提案が寄せられたし、データの精査をする人も現れる。すべての側面でクオリティを上げることができる上、公平な立場で効率的に物事を進めることができた。
福島でも「無料」で貸し出し
累計計測ポイントは1億1500万点以上に
bガイギーの試作段階から、フランケンさんたちは週末になると福島まで運転し、福島県内の放射線量の計測を始めた。フランケンさんたちが福島県内で計測を始めたばかりの2011年4月に出会った渡邉利一さんは、当時をこう振り返る。
「自治体が出す放射線情報は各市町村で1つだったので、どの家も自宅付近の線量を知りたがっていました。そんな時に郡山の道端を測っているピーテルさんに出会って、計測器を見たら、自治体の発信する線量より高く出て、『やっぱりそうなんだな』と思いました。でも、だから怒るというより、とにかく正確な数値を知りたいという思いが強かった。当時は、みんな知らないことによる不安が大きかったので、精神的にも落ち着かない。“知る”ということの大切さをこれほど実感したことはありません」
2011年4月、渡邉さんは初めてフランケンさんらと一緒に計測をした
渡邉さんは、フランケンさんからbガイギーを借り、自宅周辺や職場、学校周辺を測り始めた。近所からも貸してほしいというリクエストが殺到し、全員に貸し出した。「みんな、数値がわかってよかった」と口をそろえていたという。
福島県西部の会津地域は、県内でも比較的放射線量が低いという情報ではあったものの、実際のところは錯綜していた。そんな時に「セーフキャスト」を知ったという、会津放射能情報センターの代表、片岡輝美さんは、セーフキャストの活動内容に驚いた。
「当時は計測器がなくて、市場でも売り切れて困っていました。そんなときにbガイギーを持ってきて『使っていいよ』と無料で貸し出してくれて、『え、こんなに気軽に?』と驚きました。さらに、これを自分たちで作ったということにも。『こんなことができるんだ!』って」
会津放射能情報センターも「自分で測り、数字を知ることの大切さ」を訴え続けていた。
「数値を知らないでやみくもに恐れるのではなく、数値がわかれば、それが判断材料になります。同じ数値でもそれを高いとみるか低いとみるかは人によると思いますが、少なくとも、自分で判断して行動をとると、後悔はしませんから」
2013年、セーフキャストは「公共のためのサービス・システム」の部門でグッドデザイン賞を受賞した
片岡さんたちも、セーフキャストから借りたbガイギーを地域の希望者に貸し出し、地域をくまなく計測した。
その後も、セーフキャストは、地域の人たちを巻き込むだけでなく、日本郵便、グローバルサーベイ社などバイクや車を多用する企業にbガイギーを無料貸与して計測を重ねていった。
1年目には累計計測点数が100万点を超え、2年目には500万点、3年目には2000万点……と、急速に計測点数を積み上げていった。2019年2月現在の累計計測ポイントは、1億1500万点以上になっている。
プロデータ、オープンデータが特徴
今や国際機関からも評価される組織に
自分で作ることのできる「bガイギーナノ」。今ではこちらが主流だ
セーフキャストの最大の特徴は「プロデータであり、オープンであること」だ。プロデータ(Pro Data)とは、データ重視という意味で、例えば、放射線についての良し悪しではなく、その数値についての議論を行う。疑問や質問があれば、誰かがそれについての意見や科学的根拠を示してくれる。
そして、計測したデータも、アプリケーションも、ハードウエアも、すべて材料や手法をオープンにしているため、世界のどこにいても、自分たちで同じものを作ることができる。こうした精神ゆえ、政府機関や行政、または大学などの教育機関からの問い合わせも多い。
福島原発事故以来、海外でも放射線計測についての関心は高くなり、DIY(自分で作る)の「bガイギーナノ」(bガイギーの新タイプ)のキットの発売も開始している(1台600USドル)。これまでに2000台以上のbガイギーナノが作られているという。
IAEAでスピーチをするブラウンさん
質問や議論に対して、常にデータ重視で議論をしてきたセーフキャスト。
「誰に対しても公平に議論をするところが、面白いと感じました。そうしたら、国際原子力機関(IAEA)や国連科学委員会(UNSCEAR)などの国際機関からも評価されるようになった」
コアメンバーの一人であるアズビー・ブラウンさんはこう話す。ブラウンさんは、普段は日本の大学で建築学を教えているが、セーフキャストでは、放射線や福島第一原発事故に関する日英の情報を集めて、その解釈も含めて発表する役割だ。市民団体の代表として、IAEAの年次総会に毎年参加している。
福島第一原子力発電所からほど近い場所に固定センサーを設置
現在も、福島県内にも頻繁に足を運び、地方行政や教育機関、企業などとも連携して情報提供などを続けている。
東日本大震災から8年たった今、セーフキャストの活動は日本から世界に、そして、移動式の放射線計測だけでなく、太陽電池で稼働する固定センサーの設置も行い、放射線だけでなく、PM1.0や2.5を含む空気線量の計測もできるようになっている。国内外の教育機関と協同して学生向けのbガイギーナノの組み立てワークショップや放射線について勉強するクラスを持つなどしている。2017年には福島第一原子力発電所からほど近い場所に、固定センサーを設置し、放射線のリアルタイムの数値が地図上で確認できるようになっている。
「震災から8年がたち、当初とは活動の形が変わってきましたが、私自身、こんなに続くとは当初は思ってもいませんでした。必要性があって立ち上がったボランティア団体ですが、これからもさまざまな方面の橋渡しの役割を務めていきます」(フランケンさん)
震災から8年、放射線量を測定し続けIAEAも評価する市民団体の地道な努力。日本在住の蘭人ピーテル・フランケンさんらが共同創設者の「セーフキャスト」自分達で計測するに留まらず計器を貸し出しデータを集めオンラインで可視化。震災から8年経て活動は海外にも広がっている。 https://t.co/6Kd1hhFXEr
— 💗山岸由花子💗 (@Love_Deluxe_YY) 2019年3月10日
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— イシカワ(頑張らないし頑張れない) (@ishikawakz) 2019年3月11日
「材料や手法をオープンにしているため、世界のどこにいても、自分たちで同じものを作ることができる」
「政府機関や行政、または大学などの教育機関からの問い合わせも多い」
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