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じわり「親中」を増やす中国ユーラシア外交の深謀 サウジ、イランだけでなく欧州勢も北京もうで/東洋経済オンライン
武居 秀典 の意見 ? 2 時間前
https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E3%81%98%E3%82%8F%E3%82%8A-%E8%A6%AA%E4%B8%AD-%E3%82%92%E5%A2%97%E3%82%84%E3%81%99%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%82%A2%E5%A4%96%E4%BA%A4%E3%81%AE%E6%B7%B1%E8%AC%80-%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%B8-%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%A7%E3%81%AA%E3%81%8F%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E5%8B%A2%E3%82%82%E5%8C%97%E4%BA%AC%E3%82%82%E3%81%86%E3%81%A7/ar-AA19Kq2o?ocid=hpmsn&pc=EUPP_LCTE&cvid=7a46fdcedf4d4879bdd52ca8ef565acd&ei=13
中国の仲介により、宿敵イランとの国交正常化を果たしたサウジアラビアが、今度は中国が主導する「上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization、以下SCO)」への参加を決定しました。
SCOは、2001年に、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6カ国により、地域安全保障や経済連携を目的として発足した「地域連合」ですが、実質的には、アメリカへの対抗を意識した中国とロシアの連携強化を意図したものでした。
現在はインドとパキスタンを加えた正メンバー8カ国のほか、イランなどの「オブザーバー」4カ国、トルコやエジプトに、今回加わったサウジアラビアを含む「対話パートナー」9カ国などで構成され、存在感を高めています。事務局は北京に置かれており、特に近年は、中国主導の色が濃くなっています。
いまやユーラシア大陸の半分強をカバー
SCOの発展には、2つのステップがありました。まず、2017年のインド・パキスタンの加盟です。この両地域大国の加盟により、SCOは、中国とロシアの連携強化の枠組みから、ユーラシア大陸の半分強をカバーする「ユーラシア地域連合」とも言える存在となりました。2つ目は、2021年から今日に至る中東主要国の参加です。
この間、イラン、エジプトが参加し、仕上げが今回のサウジアラビアです。中東主要国はいずれも、正メンバーの前段階にあたる「オブザーバー」や「対話パートナー」のステイタスですが、将来的には、正メンバーとして正式加盟すると思われます。
SCOは、中国にとって、アメリカとの対抗上、力強い助けになっています。G7など西側先進国はいませんし、日米豪とともに「クワッド」に参加しているインドは正メンバー、また、NATO加盟国のトルコが対話パートナーとして参加してますが、両国とも、アメリカ一辺倒という国ではありません。
ロシア、イラン、エジプト、サウジアラビアなど、アメリカと対抗、もしくは、距離を置いているSCOの「地域大国」群が、中国の力強い「補完勢力」となっています。
さらにSCO加盟国を世界地図でみると、中国本土の北・西・南西側をカバーしており、中国はこれら方面の安全保障に過度な力を割かずに済みます。
インドは国境紛争もあり、中国にとって必ずしも、安心できる相手ではありません。しかし、インド経済の中国依存度が高まっていることに加え、地域連携強化を目的としたSCOが両国の対立激化の歯止めになるとの期待もあります。
中国は太平洋側の防衛に集中できる
四方を敵対国に囲まれていると国境防衛などに大きな力を削がれますが、中国は、SCOによって内陸の防衛を省力化でき、その力を、海軍力強化など、アメリカを意識した太平洋側により集中できます。こうした地政学上の利点も大きいことから、中国は今後もSCOの拡大・強化に力を入れていくでしょう。
SCO以外でも、最近は、国際社会における中国の存在感が高まっています。冒頭で触れた中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化は、その象徴的な事例です。イランはアメリカと対立し、サウジアラビアも、近年、アメリカに距離を置きつつある中、この橋渡しをアメリカが行うことは難しく、その間隙を縫って、中国が表舞台に立ったわけです。
さらにこの1カ月間だけでも、習近平国家主席のモスクワ訪問の他、スペインのサンチェス首相、シンガポールのリー・シェンロン首相、マレーシアのアンワル首相、フランスのマクロン大統領とフォンデアライエン欧州委員長が相次いで北京を訪問しています。
北京での各首脳会談では、ウクライナ問題や経済連携について話し合われたようですが、ウクライナ紛争解決については、ロシア寄りの中国に対する不信感は依然強いものの、それでも中国を頼りにせざるを得ないといった国際社会の声は高まりつつあります。
アメリカはサウジアラビアとイランの国交正常化に続き、ここで中国に調停の手柄をたてられれば面目丸つぶれなので、中国の調停を阻止するか、もしくは自ら調停するしかありません。
しかし、武器供与などを含め、ウクライナを全面的に支援してきたこれまでの経緯からも、いきなり調停者になることは難しく、アメリカにはとりあえず中国による調停阻止しかありません。
結果として、「アメリカが前向きに動かないことによる紛争の長期化」が、さらに国際社会のアメリカ離れを進める可能性もあります。中国による調停が実現するかどうかは別としても、こうしたアメリカの動きも見ながら、習近平政権の各方面での積極外交は、ますます活発化することが予想されます。
中国がこうした外交により中長期的に目指している姿は、アメリカを追い落としたうえでの「世界覇権」ではなく、アメリカの影響力を極力排除した「ユーラシア覇権」だと筆者は想定しています。
ただし「覇権」と言っても、国々に中国と同じ「共産党一党独裁体制」を強いるわけではなく、「親中」国を増やし、中国を中心とした経済的・軍事的連携ネットワークを拡大することが目的です。
すでにSCOなども活用しながら、ユーラシア大陸の北・中央で、ロシアや中央アジア諸国との連携を強化し、南ではインドとの関係をこじらせないようにしながら、さらに中東主要国を仲間に引き入れつつあります。
欧州では「親中国」づくりで影響力を確保
大陸西側の欧州は、全体は無理にせよ、少なくとも一部の国を優遇し、親中国に留めることによって、欧州全体に対する影響力の確保を目指しています。訪中した仏マクロン大統領に対する習近平政権による異例の好待遇もここに狙いがあります。
「ユーラシア覇権」実現にはアメリカとの対立自体は避けられませんが、最終決着をつける必要はありません。アメリカとの直接的かつ致命的な争いを極力避けつつ、国際社会でうまく立ち回りながら、特にアメリカの影響力が低下した地域や国を狙い、仲間を増やしていく戦略です。
「中国による早い段階での武力侵攻」が前提となりつつある台湾情勢についても、こうした視点から再度考えてみる必要があります。
日本から中国を見る場合、どうしても、中国の「太平洋側の動き」に焦点が当たりがちです。日本がそこにあり、中国の政治・経済の重心が中国東海岸沿いにあり、アメリカとの対立、台湾問題などを勘案すると、それも当然です。一方で、日本からは見えにくい中国の「内陸側の動き」には鈍感になりがちです。SCOは、その端的な事例です。
国際社会における中国の存在感の高まりについても、日本や欧米先進国の視点では、どうしても、否定的に捉える傾向が強く、実際の姿が見えにくくなります。
中国が好きか嫌いかは別にして、実態を事実として冷静に受け止めていかなければ、中国の力を過小評価し、対応を誤る危険があります。物事を「多角的な視点」でみることは常に重要ですが、中国に対してはこの視点がますます重要になることを肝に銘じておくべきと思います。
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